ZZZ × 555   作:びぎなぁ

246 / 302
ゼンゼロリリースから555日が経ちました
だからどうと言うわけではないですが


激情

 

 

 

 

 

エレベーターに乗り、鬼火たちはロレンツの避難先である泅瓏囲まで向かう。

 

 

そして泅瓏囲に向かうまででの間、鬼火は自身のロレンツへの怒りを爆発させてしまわないよう何度も自分に言い聞かせた。

 

 

もしここにいるのが鬼火()()ならば、憎きロレンツの顔を見た瞬間高出力レーザーを浴びせていたことだろう。

 

しかし、鬼火は一人ではない。

 

 

オルペウスを始め、自分を信じ着いて来てくれた"同志"を一時の感情で裏切るわけにはいかない。

 

 

「隊長……極力冷静に、でありますよ!」

 

『分かっているさ……私も子供ではない』

 

 

"極めて冷静に"、ロレンツの過去の罪を追及するつもりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてついに泅瓏囲に到着し、鬼火たちはロレンツと対面。

 

彼女たちの姿を見たロレンツはこちらへと向かってくる。

 

 

「ようやく来たか、オボルス小隊。来るのが少々遅いんじゃないか? 道中怪物に襲われでもしたら──」

 

『ロレンツ少将』

 

「……? なんだ」

 

『十一年前、貴官がしでかしたアガムメノン小隊への非人道的行為について……いくつか質問に答えていただきたい』

 

 

鬼火はロレンツに対し、イゾルデが無線越しに語った真実をそっくりそのまま話した。

 

鬼火が知りたいことは一つ。

 

ロレンツのやった事が本当かどうかだ。

 

 

話を聞いたロレンツは顔をしかめる。

 

 

「……鬼火隊長。その根拠のない噂を……どこで耳にした」

 

『質問しているのは私の方だ。私が冷静さを欠かないうちに、イエスかノーで答えろ』

 

「っ……! こ、これは上官に対する侮辱行為だ!! あらぬ疑いをかけ、この俺を陥れようなど……貴様、己の立場を分かって──」

 

()()()()。もう一度言うぞ……イエスかノーで、答えるんだ」

 

「く……!! 十一年前、俺が指揮を執ったオブシディアンの小隊の数は計り知れない!」

 

 

鬼火の静かな怒りに気圧されたロレンツは、半ば罪を認めるような形で彼女に反論をする。

 

 

「アガムメノン小隊と言ったな…………"上"からの重圧に苦しんでいたのは前線にいたお前たちだけではない! 想像できるか? 連中のご機嫌取りの為に、様々なものを犠牲にしなければならなかった俺の心情を!」

 

『…………』

 

「一端の兵士とは比べ物にならない程、俺は苦しんできた! 鉄砲風情には、理解する事もできんだろうがな……!」

 

『貴様……』

 

 

鬼火の追及に対し、ロレンツが取った行動は懺悔ではない。

 

己の薄汚い欲を棚に上げ、自身が一番の被害者であるかのように振る舞う。

 

鬼火は、内心自身の怒りを抑えるのに精一杯だった。

 

 

「それに鬼火隊長……お前はさも"失うものがない"かのような態度をしているが、後ろにいるお前の部下の事は忘れない方がいいぞ」

 

「脅しなら無駄だよ、ロレンツ少将。私が市長の特使で来てる以上、あんたもお咎めなしじゃ済まないからね」

 

「……どいつもこいつも利己的な連中ばかりだ。せいぜい、その吐き気のする正義感で身を滅ぼさんことだな」

 

 

防衛軍の人間とは思えないセリフを残し、ロレンツは護衛を連れその場を去る。

 

鬼火は彼を追いかける事はしなかった。

 

怒りで銃身が震えこそしたが、最後まで引き金が引かれることはなかった。

 

 

『…………』

 

「鬼火隊長……」

 

「……鬼火隊長の判断は正しいよ。憎い奴を前にして、自分の感情を抑える事は、そう簡単じゃなかっただろうけどね……」

 

『……感情のままに動くべきではない事くらい、分かっている。奴の言う通り……私の後ろには隊員たちがいる。イゾルデも、私が怒りに吞まれることを望んではいなかったはずだ』

 

 

鬼火は船の停留所へと向かうロレンツの背中を見ながら、そう言う。

 

……ただ、罪の意識を一ミリも感じていないロレンツの顔を見ると、どうしても湧き出る怒りの感情に苛まれてしまう。

 

 

『……駐屯地に戻るぞ。これ以上アイツの顔は見たくない』

 

「そ、そうでありますね……!」

 

「……そういえば、イゾルデ大佐は今どこにいるんだ?」

 

「あ、確かに……もう駐屯地にお戻りになっておられるのでありましょうか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ロレンツ少将」

 

『……?』

 

 

ふと、停留所の方から聞き慣れた声がし、鬼火は振り向く。

 

その声は、幻聴ではなかった。

 

 

『……イゾルデ?』

 

 

遠くからではあるが、船の上でロレンツを待っているイゾルデの姿が確かにあった。

 

 

「これはこれは。大佐……今回の任務、お手柄だったな」

 

「……お手柄、か。そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が死に追いやった兵士たちにも、同じことが言えるか?」

 

「? 何を──」

 

 

──すぐ近くにいた護衛ですら、反応ができなかった。

 

イゾルデが隠し持っていた拳銃から放たれた鉛弾は、何にも妨げられることはなく、真っ直ぐロレンツの心臓を貫いた。

 

 

「!? なっ……!!」

 

『イゾルデ!? 何を……!!』

 

 

イゾルデの行動を目にした鬼火たちはすぐさま引き返し、彼女を追うが……イゾルデは船を操縦し、護衛の銃撃を搔い潜りながら逃亡する。

 

 

『待て、イゾルデ!!』

 

「…………鬼火」

 

 

鬼火の声は届いている。

 

イゾルデは彼女を一瞥した後、操縦室へと姿を消す。

 

そのまま船は、ラマニアンホロウへと向かっていく。

 

 

『い、イゾルデ……! 何故だ……!!』

 

「…………っ」

 

[3・8・2・1]

 

 

ファイズはイゾルデを追いかけるべく、ファイズフォンでジェットスライガーを呼ぼうとするが……

 

 

(いや……ダメだな)

 

 

途中で冷静になり、その手を止める。

 

この期に及んで、一人で行動するのは愚策中の愚策だろう。

 

 

「…………」

 

 

もう既にイゾルデの乗る船は見えない。

 

ファイズはただ彼女が消えたラマニアンホロウを見つめる事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

凶弾に倒れたロレンツが護衛によって搬送された数分後。

 

街でサクリファイスを掃討した儀玄と弟子たちは銃声を聞き、すぐさま泅瓏囲へと駆け付けた。

 

さらにイゾルデが逃走したタイミングでラマニアンホロウに異変が発生。

 

 

すぐさま行動を起こすべきなのだろうが……鬼火はイゾルデがした行動が未だに信じられない、といった様子だった。

 

 

(イゾルデ大佐……まさか全部、この復讐の為に……)

 

 

タクミは海辺を見ながら考え込む。

 

 

(…………)

 

 

彼女のあの毅然とした顔の裏には、燃え盛るような憎悪が募っていたのだ。

 

ルクローの死も、イゾルデのやったことを考えると『偶然』とは考えにくくなる。

 

 

それより気になるのが、鬼火の心情だ。

 

いくら復讐のためとはいえ、イゾルデのした事は鬼火に強いショックを与えた。

 

 

タクミは浜辺で佇んでいる鬼火とオルペウスの方を見る。

 

 

「?」

 

 

オルペウスは遠くから、何故かタクミを手招きしていた。

 

今はそっとしておいた方がいいと考え、あえて話しかけなかったが……何かあるのだろうか。

 

ひとまず二人の元に行ってみる。

 

 

「どうした、オルペウス」

 

「えっと……隊長から、タクミ殿にお聞きしたい事があると……」

 

「? 俺に?」

 

『…………ああ。少し気になった事がある』

 

 

鬼火は単刀直入に聞く。

 

 

『タクミ、お前……ホロウに逃げたイゾルデを、さっき一人で追いかけようとしただろ』

 

「……!! あ、いや……んな事は」

 

『本当に分かりやすいなお前は……私には全てお見通しだ。まあ、思いとどまっただけ良しとしてやる。私が知りたいのは、そうした理由だ』

 

「!」

 

『わざわざ危険を冒してまで、お前はイゾルデを連れ戻そうとした。これまで防衛軍ともイゾルデ個人とも深い関わりがなかったお前が、何故そこまでしたのか……その理由が気になった』

 

「……それ、は……色々あって……」

 

『その色々が知りたいんだ、私は』

 

「……個人的で、身勝手な理由ですよ。知っても隊長に得はないって言うか」

 

『構わん、話せ』

 

「…………その」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───イゾルデ……! 何故だ……!!

 

 

 

 

 

 

「…………隊長にあんな悲しそうな声を出させたイゾルデさんに……ちょっと腹が立って」

 

『…………』

 

「タクミ殿……」

 

 

イゾルデの心情を否定したい訳ではない。

 

深い理由などない。ただ、タクミはあのような声を聞きたくはなかったのだ。

 

 

「す、すみません……流石に馬鹿らしすぎるっすよね……」

 

『……タクミ』

 

「?」

 

『生意気なヤツだな、お前は』

 

「ぐ……」

 

『要するに"私が可哀想だから"そうしたという事だろう? 年端もいかん子供に心配される程、私は甘ったれてはいないぞ』

 

 

ぐうの音も出ない。

 

誰が見ても余計なお世話だっただろう。

 

 

『まあ、ただ……私の為にそこまでした事については……一応感謝しておくべきか』

 

「……」

 

『イゾルデの事については……当然何も思わないわけじゃない。だが、傷心ムードに浸っている訳にはいかない。今は──』

 

 

 

 

『警告! ラマニアンホロウ全域のエーテル活性が急激に上昇。過去に観測されたピーク値に近づいています』

 

「!!」

 

 

話の途中、Fairyがラマニアンホロウの異常を告げる。

 

再び、衛非地区に危機が訪れようとしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。