ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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歩む道

 

 

 

 

 

イゾルデが召喚したミアズマ兵士達。

 

ミアズマから生み出された彼らが着ていたのは、以前駐屯地で見た視覚記録のものと同じ、旧都健在の頃の防衛軍の制服だった。

 

 

「無念の死を遂げた戦友達の怨嗟の声……君もその耳で聞くといい」

 

「……っ!」

 

 

規律の取れた動きで、ミアズマ兵士たちはファイズへと襲いかかる。

 

フォトンブレイカーで迎撃をするが……一人一人が旧都時代の訓練された兵士であるミアズマ軍隊達は、一筋縄では行かない。

 

 

「くっ……!!」

 

 

さらにいくら斬り伏せても、ミアズマからはとめどなく次の兵士が現れては、ファイズに攻撃をする。

 

いくらブラスターフォームとて、これほどの数を相手取るのは厳しい。

 

 

そして相手はミアズマ兵士だけではない。

 

 

「!!」

 

「遅いぞっ!!」

 

 

オーガ自身もその剣を片手にファイズへ攻撃を仕掛ける。

 

兵士の援護射撃とオーガの攻撃に対し、ファイズは為す術もなかった。

 

ミアズマ……そしてオーガのパワー全てが、ファイズを一気に追い詰めていく。

 

 

多勢に無勢という言い方もできるが……イゾルデとの戦いは、今までの戦闘経験がまるで通用しなかった。

 

 

「フッ!!」

 

「ぐわあっ!!」

 

 

オーガストランザーの斬撃により、ついにファイズは変身が解除されてしまう。

 

弾き飛ばされ、地面に転がるファイズのベルト。

 

 

 

「……力の差は歴然だ。君に私を止めることはできない」

 

「……っ」

 

「仮に私と互角だったとしても……君の負けは変わらなかっただろう。君は私を殺す気がない……拳銃があっても、引き金を引く覚悟がない。鬼火と同じようにな」

 

 

 

そう言うとイゾルデは、再び右手を掲げる。その合図で、ミアズマ兵士達は武器を構える。

 

 

「…………」

 

 

無数の銃口が、タクミへと向く。

 

 

 

 

そして───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「…………何?」

 

 

突然の光景に、オーガは仮面の下で目を見開く。

 

兵士が消えたのは、彼女が消したからではない。

 

 

「……まさか」

 

「…………」

 

 

 

蜂の巣になるはずだったその少年の目は、イゾルデに向いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()が、彼女を見据えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「っ、撃て!!」

 

 

イゾルデは再び、ミアズマ兵士達に命令を下す。

 

即座に銃を構え、一斉射撃を試みる。

 

 

しかし。

 

 

 

 

「─────」

 

 

 

 

立ち上がったタクミが、その手をかざすと……先程と同じようにミアズマ兵士が跡形もなく消滅する。

 

 

 

一人、五人、十人、二十人と……『ミアズマの構造物』である兵士が次々と消えていく。

 

 

放たれた銃弾も、まるで手品のように消え、タクミに当たることはなかった。

 

 

 

「これは……」

 

 

予想だにしなかった光景に、流石のイゾルデも面食らう。

 

 

「……なるほど。これが例の……」

 

 

あっという間にミアズマ兵士を全滅させたタクミ。

 

オーガは剣を構え直し、彼との距離を詰める。

 

 

 

「────」

 

 

 

その時だった。

 

 

「!!」

 

 

突如、オーガの周りの地面からミアズマが飛び出し、彼女の動きを封じたのだ。

 

 

「なっ……! 馬鹿な……ここにあるミアズマは全て……」

 

 

オーガのパワーですら振りほどけない程のエネルギーで、彼女を縛り上げる。

 

 

「────」

 

 

身動きが取れなくなったオーガの元へ、タクミは一歩ずつ、ゆっくりと歩いてくる。

 

オーガは抵抗もままならないまま、至近距離まで接近を許してしまう。

 

 

「……っ!」

 

 

タクミは色のない瞳で彼女を見つめながら、その手を振りかざした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───だが、その手が彼女目掛け振り下ろされる事はなかった。

 

 

「く……っ」

 

 

タクミは突然膝をつき、先程までの様子が嘘だったかのように、息を切らし始める。

 

それと同時にオーガの動きを封じていたミアズマも消え、拘束から開放される。

 

 

 

「…………これは」

 

 

 

オーガはタクミを見下ろす。

 

彼女を見上げる彼の目は、先程の灰色に濁ったものではなくなっており、代わりに体力切れを暗に告げるかのような、そんな疲労の色を灯していた。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「…………力を使い切ったのか」

 

 

倒れないようにするだけでも精一杯のタクミには、抵抗する気力さえも残っていなかった。

 

 

「……君はつくづく、不幸な人間だな」

 

「…………」

 

「だが、これで分かっただろう。復讐の道に……本当の意味で終わりが来ることはないと。君の試みは、最初から不可能だった」

 

「…………イゾルデ、大佐」

 

「創世の為の、尊い犠牲者。君の名を……私は決して忘れない」

 

 

オーガはオーガストランザーを構え……タクミ目掛け振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──その刃を、炎のレーザーが撃ち抜いた。

 

 

「!!」

 

 

突然の奇襲に、オーガは咄嗟に後ろへと身を引く。

 

 

 

「……鬼火。来たか」

 

 

 

オーガがその名をつぶやくと同時に、リンと儀玄、オボルス小隊のメンバーがこの場へ到着した。

 

 

「……!! タクミっ!!」

 

 

既にボロボロの状態だったタクミを見て、オルペウスは悲鳴にも近い声を上げた。

 

すぐさま駆け寄り、今にも倒れそうになっているタクミを支える。

 

 

「ぐ……おる、ぺうす……」

 

「大丈夫でありますか!? しっかりしてください……!!」

 

「だ……大丈夫だ……それよりも──」

 

『傷が開く……下手に口を開くんじゃない。アイツは我々に任せろ』

 

「ど、どうしてタクミがここに……!? 釈淵さんと一緒にサラを追ってたはずじゃ……」

 

 

 

「私が彼をここへ呼び寄せたのだ」

 

『!!』

 

 

タクミの怪我をチェックしていた鬼火は、オーガの方を向く。

 

 

『…………お前、その声はまさか』

 

「そうだ……私だ。甘さゆえに引き金を引けなかった、弱い君の……かつての戦友だ」

 

『……!』

 

「イゾルデ大佐……タクミを呼び寄せたって、どういう事?」

 

「……言葉通りだ。私には、彼が持っていたベルトが必要だった。全ては……『最後の牲祭』の為に」

 

「『最後の牲祭』だと……? まさか讃頌会を仕切っていたメヴォラクと言うのは……お前さんだったのか」

 

「そ、そんな……イゾルデ大佐……!」

 

「察しが良いな……雲嶽山の宗主。だが、知ったところで止める事はできない」

 

 

 

鬼火は悲しみと怒りを露わにし、イゾルデに叫ぶ。

 

 

 

『イゾルデ……! 何故こんなことを……!!』

 

「……鬼火。君は先程私に対して、いとも容易く引き金を引いたな。なぜそれを、ロレンツに対しても同じようにできなかった?」

 

『…………!』

 

「鬼火……君は、あの時引き金を引けなかった。私は、君の弱さに裏切られたんだ。もう、同じ道を歩むことはない」

 

 

 

明確な失望の表情。

 

イゾルデの言葉に、鬼火は押し黙る。

 

 

「最後に一つ、答えろ。君と私は、同じ道を歩む同志だったはずだ。同じ感情を持っていたはずだ。何故、その怒りを引き金に込めなかった」

 

『………私は、オブシディアン大隊の兵士だ。それが"敵"でない限り、撃つことはできない』

 

「…………」

 

『お前の言う通り、私とお前は同じ志、感情を持っていた。命を散らした戦友達の仇に、必ず報いてやると……そう誓った。その仇であるロレンツに対して殺意を抱いた事も、嘘では無い』

 

「……ならばなぜ」

 

『私達は……もう一人ではないからだ。新エリー都の法云々を抜きにしても、私達の後ろにはオボルス小隊の皆がいる。一時の感情で、コイツらを巻き込む訳にはいかない』

 

「…………そう、か」

 

 

 

鬼火の答えに対して、オーガは納得したかのように俯く。

 

 

「そうだったな。もう、一人ではなかったのだな」

 

『ああ。だから戻って来てくれ、イゾルデ』

 

「……鬼火。君の答えだが、一つ訂正してもらおう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勘違いするな。()()()()()()()()()のは……君だけだ。"私達"ではない」

 

『!』

 

 

オーガは再びその憎しみの感情を、ミアズマとともに剣に込める。

 

 

「君が復讐の道から外れたなら……誰が忘れ去られた魂を、安寧に導けると言うんだ」

 

『イゾルデ……!!』

 

「っ、ミアズマがどんどん濃くなってる……!」

 

 

 

 

 

 

「君の元に戻ることは出来ない。見届けるがいい……牲祭の始まりを……創世を」

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