ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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その道の先

 

 

 

 

 

オーガはオーガストランザーを構え、戦闘態勢に入る。

 

 

『……っ、オボルス小隊、戦闘準備……!』

 

「は、はっ! リン殿、タクミをお願いします!」

 

「分かった!」

 

 

オルペウスは負傷したタクミをリンに預け……鬼火と共にオーガの方へと向き直る。

 

 

「イゾルデ大佐……必ず貴女を、連れ戻してみせます……!」

 

「…………」

 

 

そうして、再び戦闘が始まった。

 

ファイズギアとファイズブラスターについては、イアス姿のアキラが拾ってきてくれたため、奪われる心配もないだろう。

 

ただこの戦いにオーガが勝ってしまえば、その安心も無意味となる。

 

だがリンに支えられてるタクミは、ただその戦いを見守る事しかできなかった。

 

 

「ぐ……」

 

「! タクミ、動いちゃダメ……! ここは隊長たちに任せよ?」

 

「わ、分かってる……」

 

 

先ほどの戦いでは、ファイズはオーガに手も足も出なかった。

 

しかし儀玄とオボルス小隊の加勢により、状況は優勢になったと言えるだろう。

 

 

それに──

 

 

「くっ……!」

 

 

オーガは、彼女たちの猛攻に苦戦しているように見える。

 

恐らくタクミが先ほどミアズマを大幅に削ったのが効いたのだろう。

 

だが──彼女も一筋縄でいく相手ではない。

 

 

「っ……ハァッ!!」

 

「うっ……!」

 

 

オーガは猛攻を弾き飛ばし、オーガストランザーに刃にさらに強力なミアズマを纏わせる。

 

()()()()()()()()蝕んでいくほどの大量のミアズマが、彼女に力を与える。

 

 

 

『イゾルデ……なぜ、始まりの主なんてものに縋ろうとする!』

 

「なぜかだと? すでに道を違えた君に、理解できるはずもない……!」

 

「!!」

 

 

防戦に入っていたオーガが、攻撃を仕掛ける。

 

オルペウスたちを召還したミアズマ兵士でけん制しつつ、超リーチを誇るオーガストランザーで纏めて斬り払う。

 

 

要警戒エーテリアスですら容易く真っ二つに出来るほどの切れ味。

 

儀玄が術法を使ってバリアを展開し、オボルス小隊をギリギリで守るが……オーガの攻めは止まらない。

 

 

[Exceed Charge]

 

 

「どれだけあがこうとも無駄だ……!」

 

「! 皆、来るぞ」

 

 

金色のフォトンブラッドをその刃に集約させ……刀身は何倍にも伸びていく。

 

 

「私の……邪魔をするなっ!!」

 

『! イゾルデ……っ!!』

 

 

怒号と共に振り下ろされるオーガストラッシュ。

 

鬼火は全力を込めた高出力レーザーでこれを迎撃。

 

 

「お前さんの企みもここまでだ……!」

 

「ビッグ・シード、最高出力〜!!」

 

 

儀玄とビッグ・シードも加勢し、オーガの一撃を押し返していく。

 

 

遠くにいるタクミたちですらも余波を感じるほどの、強大なパワーのぶつかり合い。

 

 

「鬼火……!!」

 

『イゾルデ! 私の中にも、お前と同じ復讐の炎が燃えている……だが──』

 

「──その感情に……吞まれてはダメです!!」

 

「!!」

 

 

さらに出力をあげ、鬼火たちの攻撃はオーガストランザーの刃を砕いていく。

 

そして──

 

 

 

 

 

 

 

「…………ッ!!」

 

 

炎の光線が、オーガを貫く。

 

オーガストラッシュを打ち破られ、オーガは派手に吹き飛ばされ、変身は解除された。

 

 

(イゾルデ大佐……)

 

 

あれほどファイズが苦戦したオーガとの闘い。鬼火たちが駆けつけてからは、実に早い決着だった。

 

それには、鬼火たちの強さも一つとしてあったが……一番の要因は、イゾルデが扱っていた二つの力にある。

 

 

 

 

一つはミアズマの力。

 

タクミはイゾルデと戦っていた時に分かった。

 

司教メヴォラクとして讃頌会を動かしていた彼女が……密かにミアズマに侵蝕されていた事を。

 

そのミアズマはイゾルデに多大な力を与えたが……それと同時に、彼女の体を徐々に蝕んでいったのだ。

 

 

 

もう一つは、オーガの力。

 

ブラスターフォームを超えるスペックを持ったオーガのベルトの力。変身中、イゾルデの体には途轍もないほどの負担がかかっていただろう。

 

人間である彼女がなぜ変身できたのかは分からないが、変身した以上無事では済まないはずだ。

 

 

 

諸刃の剣とも言えるこの二つの力を、イゾルデは復讐の為に惜しげもなく使った。

 

仮に鬼火たちに勝っていたとしても、彼女はもう長くはないはずだ。

 

 

(イゾルデ大佐は……まさか最初から……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

膝をつくイゾルデのもとに、オルペウスと鬼火が歩いてくる。

 

今の彼女に、戦う力は残っていなかった。

 

 

「ゲホッ……鬼火、なぜ分からないんだ? 私が君たちの元に戻ろうと、失ったものが帰ってくるわけじゃない」

 

『そうだな……お前の言う通りだ。死んだ戦友たちが戻ってくることはない』

 

「!」

 

「だから……だから私たちは前へと、進むのであります……!」

 

『何度でも言うぞ、イゾルデ。戻ってこい……私たちはもう、戦友を失いたくはない』

 

「……失いたくない……か」

 

 

 

 

 

イゾルデは、呼吸を整えながらゆっくりと立ち上がる。

 

 

「……一人消えたとて、変わらないだろう」

 

 

 

 

イゾルデは、懐に隠していた拳銃を手に取る。

 

 

「君のその弱さが、甘さが──命取りになる」

 

「!!」

 

『オルペウス!!』

 

 

鬼火がそれにいち早く反応し、ナイフを咥えて止めようとするが……それも空しく、引き金は引かれる。

 

 

「…………あ」

 

 

飛び散る鮮血。

 

放たれた弾は、無情にもオルペウスの額を──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──貫くことはなかった。

 

 

『…………なっ』

 

「……へ? こ、これは……ディニー?」

 

 

額にくっついた一枚の硬貨を見て、二人は驚愕する。

 

 

「……ふっ」

 

「! イゾルデ大佐!!」

 

 

イゾルデはおもちゃのディニーガンを片手に、うっすらと笑みを浮かべる。

 

鬼火のナイフで貫かれた肩から血を流し……その場に倒れた。

 

 

『イゾルデ……!』

 

「……何度も言っただろう、鬼火。私は戻らないと……戻ることなどできないと。私の命は……もう長くない」

 

 

そう言うイゾルデの体は、既に取り返しのつかないほどにミアズマに侵蝕されていた。

 

 

『お前……このようになるまで……なぜ私に、何も言わなかったんだ。なぜ全てを、一人で抱え込もうとしたんだ』

 

「……それは、君が"オルフェウス"だからだ」

 

『……!』

 

 

かつての鬼火の名前。

 

イゾルデは安らかな顔で、鬼火を見つめる。

 

 

「オルフェウス……君は私よりも多くのものを失くしてきた。身体も、戦友も、人生も……全て。そんな君に、私はこれ以上失わせたくなかった」

 

 

 

イゾルデは自ら復讐の道を選んだ。

 

彼女自身、それが破滅の結末を迎えようとも……本懐を遂げられるならばとそれを望んでいた。

 

 

 

「復讐で得られるものもあれば、復讐で失ってしまうものもあるだろう。思えば……私達が道を違えることは、なるべくしてなったことだったのかもしれないな」

 

『イゾルデ……多くのものを失ったのは、私だけではない! お前も同じくらい、大事なものを……』

 

「そうだな……だが、私は既に多くのものを奪ってしまった。この手は、多くの血と過ちに染まってしまったんだ」

 

 

 

彼女は、密かに後悔をしていた。

 

痛みを分かち合うべき同志を切り捨て、復讐の道を選んでしまったことを。

 

 

彼女は、密かに望んでいた。

 

再び同志として、鬼火達と再び同じ道を歩める事を。

 

 

 

『……だったら』

 

 

そんなイゾルデの目を鬼火は見つめ、固く誓う。

 

 

『私がお前の罪を……過ちを償う。どれ程長くなろうとな』

 

「オルフェウス……」

 

「じ、自分も! 鬼火隊長と一緒に、大佐の過ちを償うであります! 隊長が負の感情に侵され、道を誤らないよう努めます!」

 

『…………オルペウス』

 

「……君は、幸運だな。オルフェウス」

 

 

イゾルデの身体が、徐々に消え始める。

 

 

「オルペウスは、良い子だ。君は私と同じ苦しみを抱えてはいるが……彼女を失望させる事はないと信じているよ。オルフェウス」

 

『ああ……決して失望などさせないさ』

 

「……ははっ。本当に裏切ってしまったのは……君ではなく、私だったようだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ああ……久しぶりだな。「オルフェウス」

 

 

───ずっと、会いたかった……どうか、こんな私を許してくれ……

 

 

 

 

 

『…………』

 

「……大佐」

 

 

彼女を支えていたオルペウスの腕から、重さが無くなる。

 

イゾルデの身体は……ラマニアンホロウの空へと消えていった。

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