ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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2-4章:いまでも夢を覚えていますか
入門


 

 

 

 

 

夜のラマニアンホロウ。

 

空に浮かぶ月が、一人の少年を照らす。

 

 

「…………もうすぐだ」

 

 

少年は空を見上げ、呟く。

 

 

「もうすぐ……全てが変わる。そしたら……」

 

 

笑みに満ちる、少年の顔。

 

年相応の、無邪気な顔。まるで好きなものを与えられたような、そんな笑顔。

 

 

「……随分と嬉しそうね」

 

 

そんな少年の様子を、サラは見ていた。

 

 

「当たり前でしょ。僕はずっとこの時を待ってたんだ……貴女も喜びなよ。僕の目的が果たされる事は、貴女にとっても悪いことじゃない」

 

「……どうかしらね。貴方がこれまで繰り返してきた事。それに意味はあるの?」

 

「あるに決まってる。讃頌会の集めたミアズマ。そして僕が集めたモノ……少し長かったけど、これで思う存分ゲームに勤しめる」

 

「"彼"はどうするの? 貴方の目的になくてはならないものでしょう。彼は讃頌会に強い拒絶の意志を示した」

 

「心配しなくていいよ。じきにアイツも、その気になってくれるからね」

 

「自信満々に言うのね」

 

「そりゃそうさ。僕もアイツも、ゲームは大好きだから」

 

 

少年は一層、深い笑みを浮かべる。

 

 

 

 

「ああ……会えるのが楽しみだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある日の適当観。

 

目が覚めたタクミは、身支度を済ませた後に部屋の外に出た。

 

 

「…………ん?」

 

 

中庭に行ってみると、儀玄達の姿が。

 

アキラとリンも既に起きており、一緒に話をしていた。

 

 

儀玄は起きて来たタクミに気づく。

 

 

「ん……来たな」

 

「おはようございますっ!」

 

「おはよう……って、これは……」

 

 

儀玄、福福、潘の三人は何やら出かけの準備をしていた。

 

 

「……? 師匠たち、どっか出かけるんですか?」

 

「ああ。ちょいと断れない集まりがあってな……ここを離れて市内に行かなければならなくなった」

 

 

衛非地区で起こった事件の数々。

 

それに深く関わった雲嶽山の人間は、その集会に行くことになっているらしい。

 

 

「俺達も行くんですか?」

 

「うんにゃ、アンタら三人は入門した経緯が行きがかりってのもあるから、行かなくてもいいとさ」

 

「その代わり、お弟子ちゃん達にはお留守番をお願いしたいんです!」

 

「お留守番……分かった、適当観は私達に任せて!」

 

「頼んだぞ。さて、タクミ……ちょうどいいタイミングだ。お前さんにも大事な話をしておく」

 

「大事な話?」

 

「ああ。福福、茶を持て」

 

「はいっ!」

 

 

福福は元気な返事の後、お茶を準備しに行った。

 

 

「……ラマニアンホロウの調査。最初はそれを共同で行う為に、名目上での弟子となった。だが、お前さん達はその後も衛非地区で起こった数々の事件の解決に、多大な貢献をしてくれた」

 

「…………」

 

「アキラとリンだけではない。タクミ、お前さんも民を守る為に力を振るい、戦った。ちょいと危なっかしい所もあったが……その実力の高さは、私から見ても明らかだ」

 

 

儀玄はコホン、と咳払いをする。

 

 

「そこでだ。こうして留守を任せる以上、弟子という"肩書き"だけなのもどうかと思ってな。お前さんを、雲嶽山の正式な弟子として迎え入れたいと思っている」

 

「…………!」

 

 

タクミはアキラとリンを見る。

 

それにアキラはにこりと笑い、リンもサムズアップで応えた。

 

 

「も、勿論……喜んで」

 

「よし、それが聞きたかった。では、ここを発つ前に……入門の儀式を執り行うとしよう」

 

「入門の儀式……?」

 

「緊張しなくてもいい。適度に体の力を抜け」

 

 

ちょうどその時、福福がお茶を持ってタクミ達の元へ戻ってきた。

 

 

「はいタクミくん、これを持ってください!」

 

「あ、ああ……」

 

「その後に、お師匠さまの方を向いて、丁寧にお辞儀をしてください! "師匠、お茶をどうぞ"って!」

 

「し、師匠……お茶をどうぞ……!」

 

 

別に知らない仲でもないと言うのに、やけに緊張してしまう。

 

差し出されたお茶を儀玄は手に取り、ゆっくりと一口飲んだ。

 

 

「よし……良いだろう。これでお前さんは、正式に雲嶽山の弟子となった」

 

「やったあ!! タクミくん、改めて雲嶽山にようこそ! あたしが貴方の姉弟子ですよっ!」

 

「うわっ!? ちょ……分かってるよ、そんなはしゃがなくても……」

 

「なんでタクミより喜んでるんだ福姐は……」

 

 

抱きつきそうな勢いではしゃぐ福福をなんとか落ち着かせる。

 

 

「……てか師匠、儀式ってこれで終わりなんすか? もっとこう、時間のかかるものだと……」

 

「本来はな。雲嶽山での二年の修行を経て、吉日と共に師と誓いの儀式を行う……そうしたしきたりの後に、初めて正式に弟子として認められる。だが、お前さん達三人は既にこの儀玄が認めている。ひとまずはそれだけで充分だろう」

 

「なるほど……そういえば、兄ちゃんと姉ちゃんはもう儀式は終わったんですか?」

 

「ああ。お前さんが寝てる間にな」

 

「ふふん、惜しかったねタクミ〜。早めに起きてたら、私達の兄弟子になれたかもなのに」

 

「え……? あっ!!」

 

 

タクミはハッとする。

 

確かに、これが正式な雲嶽山の入門となるなら、アキラとリンより早く起きておけば二人の兄弟子になれた。

 

 

「マジか……兄弟子になって姉ちゃん相手に威張り散らして使いっ走りにするチャンスをみすみす逃してたとは……」

 

「タクミってたまーに私に対して容赦なくなる時あるよね」

 

「あはは……」

 

「ふっ……何はともあれ、これで憂いなく適当観を任せられるというわけだ。それでは頼んだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出かける準備を終わらせた三人。

 

タクミは福福から、留守中にやる事をまとめたリストを受け取った。

 

 

「いや〜それにしてもめでたいなぁ。前までは瞬ちゃんが一番下の弟子だったが……晴れてあの子にも弟弟子と妹弟子が出来たってわけだ」

 

「? 瞬ちゃんて誰ですか」

 

「あっ、瞬ちゃんって言うのは、雲嶽山のもう一人の弟子なんですよ。今は大事な用があって会えませんけど、タクミくん達の姉弟子にあたる人なんです」

 

「へぇ……」

 

 

彼女の名前は瞬光しゅんこう

 

福福曰く『ふわふわで大きいしっぽ』と、『栗色のロングヘア』と、『可愛らしい赤い飾り紐』が特徴の少女らしい。

 

 

「もし見かけたら、姉弟子って呼んであげてくださいっ! ……あっでも、仲良くなりすぎてあたしの事忘れたりしないでくださいね?」

 

「しないよ……何その忠告」

 

「忠告が何かな??」

 

「うぅわッッ」

 

 

もはや何度目かも分からないリアクション。

 

そろそろそれも飽きられるかと思えば、後ろから突然話しかけてきたその少女はそうでもないらしい。

 

 

「ゆ、柚葉……後ろから至近距離で話しかけるなって何度も……」

 

「いやいや、あんな無防備な後ろ姿に対してそうしないのはむしろマナー違反じゃない?」

 

「どんなマナーだよ……そんで、何の用だ?」

 

「今日は輝磁の加工品を仕入れにオシシのとこに来たの。最近奇々怪々の商売が上手くいってて、品切れが多発してるんだ」

 

「そうなんだな……あれ、真斗は? あいつも一緒じゃないのか」

 

「うん、一応荷物持ちで連れてくつもりだったんだけどね……」

 

 

どうやら自身の知り合いが誰かと揉めているらしく、真斗はそれを仲裁しに行ったのだそうだ。

 

柚葉に頼まれ、タクミは真斗の様子を見に行く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真斗がいると言う場所に来てみると……作業着の男と、スーツの男がなにやら揉めていた。

 

 

「お前、どういうつもりだ! いくらポーセルメックスの人間だからって、横取りが許されるとでも思ってんのか!!」

 

「横取りとは人聞きの悪い。こちらは前からずっと備えをしてきたんだ。これだから素人は……」

 

「何ぃ……!!」

 

「おいパウル、落ち着けっての……」

 

 

 

この光景、どこかで見たことがある。

 

確か衛非地区に来たばかりの頃も、鉱山の労働者とポーセルメックスの社員が対立している所を目にした覚えがある。

 

 

 

「競争がしたいなら受けて立とう。最も、お前には勝つチャンスすらないだろうがな」

 

「チャンスなら今掴み取ってやるよ、この拳でな……!!」

 

「だから落ち着けって! いらねぇ面倒事増やそうとしてんじゃねぇよ……」

 

 

対立する二人の間には、なんとか場を丸く収めようと苦心する真斗の姿があった。

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