ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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「夜魔の語り部」

 

 

 

 

 

『ポーセルメックスの連中に先越されてたまるかってんだ! アニキ、俺は行きますぜ!』

 

 

ポーセルメックスの社員に腹を立てたパウルはそう言った後、真斗の制止を振り切り一人でどこかへと行ってしまった。

 

一人取り残された真斗。

 

 

「……真斗、一体どうしたんだ?」

 

「ああ、タクミか……悪ィな、見苦しいとこ見せちまってよ」

 

 

真斗はこうなってしまった事情を説明する。

 

 

パウル達はここ最近、ラマニアンホロウにある『昔日の丘』という場所に大量発生していたミアズマが小さくなっていることを知った。

 

まだ誰もつけていないそこのエリアでは、輝嶺石が山ほど取れるうえ、謎の巨大施設があると言う目撃情報もあったため、準備をしたうえで探索に行こうとした。

 

 

「──だが、その矢先にポーセルメックスの連中に先を越されちまってな。調査のため、大勢のプロキシとホロウレイダーを大金で一人残らず雇いやがったんだ」

 

「だからあのパウルって人はあんな怒ってたのか」

 

「ああ。正直オレもポーセルメックスのやり方には腹が立ってるけどよ……だからってプロキシもいない状態であそこに行くわけにゃ──」

 

 

そう話す途中で、真斗はハッとした表情をする。

 

タクミも、同じ考えに至ったようだ。

 

 

「そうだ……プロキシと言やぁ、アキラくんとリンちゃんがいるじゃねぇか! しかもそんじょそこらのプロキシじゃ及ばねぇほどの凄腕のプロキシだ!」

 

「よし……あの二人にも話しとく。多分喜んで協力してくれるはずだ」

 

「頼んだ。そんじゃ、準備が済んだら奇々怪々に集合だ。パウルにはとりあえず連絡は入れとくとして……ついでにあの子も呼んどくか」

 

「あの子?」

 

「前に話してたろ? 『夜魔の語り部』ってハンドルネームの子だよ」

 

「ああー……なるほど」

 

 

タクミは前に真斗から『近いうちに怪啖屋でオフ会をする』という話を聞いた。

 

真斗達と『夜魔の語り部』はネット上での知り合いかつ怪啖屋のメンバー同士であり、昨日オフ会の為に澄輝坪へとやってきたらしい。

 

 

……タクミも一応怪啖屋ではあるのだが、インターノットでは完全にROM専だったため、ほとんど交流がなかった。

 

「夜魔の語り部」からしたら、タクミのアカウントは怪啖屋でありながら何の投稿も返信もしない謎のアカウントになっているのだろう。

 

 

「一応お前の事も紹介しといた。あの子、お前に会いたがってたぞ」

 

「『夜魔の語り部』……さんってどんな人なんだ?」

 

「まあ何つーか……変わった子だな。悪い奴じゃねぇんだが……変わった子だ。仲良くはなれるんじゃねぇか?」

 

「そうなのか……」

 

 

 

『変わった子』を強調しているのが引っかかるが、気にしないでおく。

 

準備のため、タクミは適当観に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

適当観に戻ってきたタクミ。

 

既に儀玄達は出発しており、先程いた柚葉ももう仕入れを済ませ、帰っていったようだ。

 

 

タクミはアキラとリンに事情を話す。

 

 

「なるほどね……よし、そう言う事なら喜んで協力するよ! 場所は奇々怪々の前で良いんだよね?」

 

「ああ、でも……適当観の事はどうする?」

 

「ひとまずはオシシと朔に任せよう。僕も一応残るけど、H.D.D.でイアスと感覚同期をする事になるから手伝うことはできない……かな」

 

「まあそうだよね……でも、多分そんな時間はかかんないでしょ!」

 

「そう言って毎回時間かかるんだよな……」

 

 

今回はスムーズに目的を達成できる事を祈りつつ、準備に取り掛かった。

 

 

 

「そういえばさ、タクミはインターノットじゃ何の投稿もしたりしないの?」

 

「しないな……するとしても閲覧ぐらいかな」

 

「怪啖屋の皆とも、ネットで話したりしないの?」

 

「ノックノックではたまに話すけど……大体はリアルで話せるしな……」

 

「……タクミのインターノットのハンドルネームって」

 

「『User-356534』」

 

「それアカウント作成したときのデフォルトのやつだよね……ハンドルネームって言わないよ……」

 

 

ここだけの話、アイコンも無機質な初期アイコンである。

 

ノックノックでもデフォルトネームと初期アイコンなのを時折ツッコまれているが……面倒くさくて変える気にはならなかった。

 

 

「大丈夫だって。インターノットの方は最近新しい名前に変えたから」

 

「どんなの?」

 

「『555』」

 

「より無骨になってない!?」

 

 

怪啖屋でオフ会をするにあたり、"そろそろハンドルネームを決めとけよ"と真斗に言われたタクミは、一分ほど悩んでこの名前にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準備を済ませ、奇々怪々へと向かったリンとタクミ。

 

そこには二人を待っていた真斗と……奇々怪々の店のショーケースを眺めている山羊のシリオンの少女がいた。

 

 

「二人とも来たな。リンちゃんも、協力感謝するっス」

 

「いいよ全然。あれ、そう言えば柚葉とアリスがいないね? てっきり来てると思ってたけど」

 

「あいつらは外せない用事があるって言ってました。だからホロウに行くのはオレら四人、って事になるッスね。んで、話してた『夜魔の語り部』なんスけど──」

 

 

真斗は未だショーケースを眺めている少女に声をかける。

 

 

「おい、リンちゃん達来たぞ!」

 

「!」

 

 

その少女……「夜魔の語り部」は振り返り、タクミ達を見る。

 

 

「お互い会うのは初めてだな。こっちはリンちゃんとタクミ、信頼できるダチだ。んで、こっちは怪啖屋の──」

 

「どうも~! あたしが『夜魔の語り部』だよ! 『荒魂丸』のお友達なんだ!」

 

「へ? なに丸って言った?」

 

「おいリュシア……オフ会のノリからはいったん離れろ。本名でいいだろが……」

 

「え~? ハンドルネームの方がカッコよくない?」

 

「あのな……遊びじゃねぇんだよ、分かってんだろ? ……あー、二人とも。この子はリュシア、怪啖屋の一員だ」

 

「むむ……」

 

「?」

 

 

リュシアはしばらく二人を見た後、真斗に耳打ちをする。

 

 

「……ねえ、真斗くんが言ってた『トリプルファイブ』くんってどっち?」

 

「あ? なんだよ『トリプルファイブ』って」

 

「『555』ってハンドルネームの人だよ! 今日会えるんでしょ?」

 

「あー……『555』はタクミの方だ」

 

「!」

 

 

リュシアはタクミの方を向く。

 

そしてタクミの元まで行き、握手を交わした。

 

 

「初めまして『トリプルファイブ』くん! あたしが『夜魔の語り部』のリュシアだよ!」

 

「は、初めまして……『トリプルファイブ』ってなんすか?」

 

「へ? 『555』ってそういう読み方じゃないの?」

 

「……一応、『ファイズ』って読み方があります」

 

「ファイズ……Fiveが三つあってFivesだからファイズって事!? なにそれ、すっごくカッコいいじゃん!」

 

「あ、あざす……」

 

 

別にファイズの読み方はタクミが考えたわけではないが、言う必要はないだろう。

 

 

「あーその……まあここにリュシアがいる経緯は、大方さっき話した通りッス」

 

「柚ちゃんとアリスちゃん、それとタクミくんにはこうして直接会ったんだけど、あと一人来るはずだった人とはまだ会ってないんだよねぇ」

 

「『いちごパフェ』さん、ですか?」

 

「そうそう! ただずっと待つのもなんだし、こうして真斗くん達と一緒にホロウに行く事になったってわけ!」

 

「そんな感じだな。そんじゃ二人とも、なんか他に聞きたい事は?」

 

「あ、えっとそれじゃあ……」

 

 

リンが質問する。

 

 

「さっきリュシアが言ってた……『なんとか丸』って言うのは?」

 

「『荒魂丸』の事? 『荒魂丸』はね、真斗くんのハンドルネームなんだよ! バトル中に叫んだらカッコいいと思うんだけどねぇ……あ、あと、真斗くんには前使ってたハンドルネームがあって──」

 

「おいリュシア! ハンドルネームの話はもう良いだろ……」

 

 

話を止める真斗。

 

絶対に知られたくない……と言うわけではなさそうだが、本人はあまり乗り気ではない様子だった。

 

 

「んー、それじゃ二人とも、他に聞きたい事はあるかな?」

 

「じゃあ……『夜魔の語り部』の『夜魔』ってなに──」

 

「あっそれ聞く!? 聞いちゃう!? 知りたいんだね!?」

 

「!?」

 

 

急に『よくぞ聞いてくれた』と言った感じに興奮しだすリュシア。

 

目をキラキラと輝かせる彼女からははどこぞの変人エンジニアと同じ雰囲気を感じた。

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