ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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日常と事件①

 

 

 

 

 

 

タクミは洗面所の鏡の前で、自身の頭部を確認する。

 

 

「──うん。怪我はもう治ってるな」

 

 

包帯を取ってもいいと許可が出て、タクミは早速邪魔な頭の包帯を取り外した。

 

自分を縛り付けていたにっくき包帯とようやくおさらばだ。これでやっとファイズとして復帰できる。

 

とは言えこの期間、ずっと暇だった訳では無い。友人達のおかげで割と退屈しない時間を過ごすことが出来た。

 

 

「あ、いたいた」

 

 

後ろから姉のリンが声をかけてきた。

 

 

「お、姉ちゃん。どうしたんだ?」

 

「今日はある仕事を手伝って貰おうと思って。復帰早々ごめんね?」

 

「全然良いよ、むしろバリバリ働きたいぐらいだ。それで、なんの仕事なんだ?」

 

「今回はビデオ屋の仕事だよ。新しいビデオを仕入れに行くの。だからタクミには荷物とか色々持ってもらいたいなって」

 

 

荷物持ち。思ったより簡単な仕事ではあるが、復帰がてらのリハビリとしておあつらえ向きだろう。それに三人の中で一番体力があるのはタクミだ。

 

まあ最近運動不足だったので、タクミとしては丁度いい機会だ。

 

 

「それじゃあ一緒に行こう。お兄ちゃんが外で待ってる」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……こんなに仕入れるならやっぱり車の方が良かったかなぁ」

 

 

思ったより仕入れるビデオの数が多くなりそうだったので、ひとまずビデオ屋に帰ることにした三人。

 

色々な物が入っている荷物を持ち歩くタクミ。極めて重い、というわけではないが、これを持ちながら長距離を歩くのは体にこたえる事だろう。

 

 

「『もう一つの仕事』も振り出しに戻ってしまったし、収入はかなり減るだろう……ビデオ屋の方も本腰を入れないと」

 

「それもそうか──でも、なんでスローな映画ばっかりなの?スリリングな方が良くない……?タクミもそう思うよね?」

 

「えっ」

 

「リン、あのね……僕は万人受けする映画を選んでるんだ」

 

「ホントに『万人受け』? ほとんどアートとドキュメンタリー映画ばっかりなのに……?」

 

「それは……こ、こういう映画を求める人は多いんだよ。新エリー都での生活は大変だからね。タクミもそう思うだろう?」

 

「えっ」

 

 

リンは兄に反論する。

 

 

「……ていうか、前回はお兄ちゃんが選んだんだし、次は私だよね?」

 

「あれは『三人で』選んだんだ」

 

「あれはお兄ちゃんに乗せられたの!結局はお兄ちゃん一人で選んだんじゃん!タクミだってそう思うでしょ?」

 

「なんでさっきから俺に同意を求めてくるんだよ。どっちの味方もしねぇからな?」

 

「むー……いいもん、次は私がビデオを選ぶ!」

 

「すみません!ホロウ調査協会の者ですが──」

 

「すんません、間に合ってます」

 

 

荷物を持ちながら、勧誘を断るタクミ。その光景を他所にリンがアキラに突っかかる。

 

 

「お・に・い・ちゃん?いいよね?」

 

「けど、今月は僕が……じゃなくて、お客さんがドキュメンタリーを見たいって言ってたし、元のプランで良いんじゃないかな」

 

「聞こえたよ〜!?そうやってお店のお金を自分の趣味に!」

 

「さて、なんの事やら……」

 

(お互い引かねぇなぁ……)

 

 

いつもの光景である兄と姉の会話を適当に聞き流していると、店の前に誰か立っているのを見つける。

 

情報屋の『羊飼い』だった。

 

 

「……もう一つの仕事の依頼人だ──さて、仕入れに変更は無し。次回は……いや、さっきにこっちの仕事だ、リン」

 

 

そう言ってリンの方を向く。しかしリンは……

 

 

「お兄ちゃん、少しプランを変更しない?」

 

 

いつの間にポケットから取ったのか、彼女の手には車の鍵が握られていた。

 

 

「!いつの間に……」

 

「依頼人の方はお兄ちゃんに任せるよ!私は……ビデオを仕入れてくるね!」

 

「まさか……一人で行くのか?おい、リン!」

 

「しっかり、『万人受け』を選ぶから!それじゃ二人とも、店番よろしくね〜!」

 

 

そう言うとリンは紙袋を持って行ってしまった。

 

ようやく、といった様子で羊飼いが会話に参加する。

 

 

「……あー、お得意さん。今日は三人揃ってお出かけか?」

 

「だったけど、今君に邪魔された」

 

「おっと、そうなのか?すまんすまん。間の悪い時に来ちまったみたいだな」

 

「……」

 

 

兄の大人気なさに呆れるタクミ。羊飼いは話を続ける。

 

 

「今日来たのは他でもない。あんたらが気にしとく価値のある依頼が今、この手元にあるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

店に入り、羊飼いは依頼の詳細を説明する。

 

どうやら原生ホロウ『クリティ』と『ラマニアン』の活性がここ最近上昇しているらしい。最悪新しい共生ホロウが生まれる可能性がある、との事だ。

 

依頼の内容は、ホロウ鎮圧用の軍用メカが数台ほど、エーテル活性の高いエリアで制御不能となっているらしい。

 

それらの制圧をしてくれる人間を探している。

 

 

「──こいつをやり遂げれば、こっちはその部署に借りを作れる。今後の情報収集に役立つ事間違いなしだ。どうだ?受けるか?」

 

「……それについては覚えておくよ。でもその前に、家の用事を片付けなきゃ」

 

「おっと、そっちの方が大事か?まあいいけどよ……だが時間が出来たら、忘れず返事をくれよ」

 

 

そう言って、羊飼いは店を出ていった。

 

 

「──さて、タクミ」

 

「?」

 

「店番は頼んだ。僕はリンの所へ行ってくる」

 

「は?ちょ……おい!」

 

 

そう言ってアキラも店を出ていってしまった。

 

 

「……どんだけ自分でビデオ選びたいんだよ」

 

 

ぼやきながら、タクミは店のカウンターの椅子に座り、18号を抱きながら兄と姉の帰りを待つ。

 

タクミは部屋に置いてあるベルトの入ったアタッシュケースの事を思い出す。

 

 

(……ベルトの出処の調査、なかなか進展ないなぁ)

 

 

アタッシュケースやファイズのベルトに書かれてある『スマートブレイン』のロゴ。

 

インターノットにあるあらゆる記事などを調べたが、例の『スマートブレイン』に関する情報は一ミリも手に入らない。

 

まるで『スマートブレイン』が架空の企業であるかのように、なんの手がかりも得られなかった。

 

 

(ニコならなんか知ってるかなぁ)

 

 

情報通であるニコに調べてもらえば何かわかるかもしれない。依頼料はかなり高くなりそうだが。

 

そんな事を考えていると、店の扉が開く。そこには先程リンの所へ行ったはずのアキラがいた。

 

 

「お帰り、早かったな……つーか兄ちゃん、弟に店番押しつけんのは──」

 

「リンが……」

 

「──え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リンが、ホロウ災害に巻き込まれたかもしれない……!」

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