ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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昔日の丘

 

 

 

 

 

夜魔。

 

それはリュシア曰く、誰も見た事の無い幻のエーテリアスだと言う。

 

HIAやホワイトスター学会でも、その詳細については何も知らない……らしい。

 

 

「──けど! 『夜魔の語り部』であるあたしならその全てを教えることができる! どう、聞きたい?」

 

「えっと、そうだな──」

 

「聞きたいよね!? 言わなくても分かってるよ、聞きたいって顔してたもん!」

 

「えっ」

 

「あの……そこまでして知りたいわけじゃ──」

 

「怖がらなくてもいいよ! 確かに未知の世界との邂逅は尻込みしちゃうものだけど、一度踏み込む勇気を出せば、あっという間に虜になっちゃうから!」

 

「あのですね」

 

「さあ夜魔について知りたい人は挙手! はいタクミくん早かった!」

 

「いや上げてねぇ!」

 

 

こちらを完全に置き去りにするほどの勢い。

 

とにかくリュシアは教えたくてたまらない様子だった。

 

 

「リュシア、その辺にしとけ。エーテリアストークは後だ。これからホロウでどう動くかは、ちゃんと分かってるよな?」

 

「はいはい、分かってるって! 輝嶺石の新しい鉱区を探すためにラマニアンホロウの昔日の丘に行くんでしょ?」

 

「そうだ。その後は──」

 

「その後はジェムゴーレムってエーテリアスを見つけて、ジンジャー糖水でマインドリーダーの隠れ家を吐かせるんだね?」

 

「全然ちげぇよ! つーかリュシア、お前まさかあの噂を本気で確かめるつもりじゃねぇだろうな……?」

 

「ジェムゴーレム……って何?」

 

 

ジェムゴーレムは怪啖屋のフォーラムで話題になっていたエーテリアス。

 

タクミも目撃情報が書かれたその投稿を見たが……一度も目にした事はない。

 

当然真斗達もない。

 

 

「ブラストスパイダーよりも小さい石ころみたいなエーテリアスなんだけど……鉱石だと思って近づいた相手の身体を、瞬時に乗っ取っちゃうんだって! その後はひっぺがすためにジンジャー糖水を使うの」

 

 

やはり聞いた事がない。

 

そもそもなぜジンジャー糖水がエーテリアスに効果的なのかが分からない。

 

 

「鉱区を見つけるついでに、どうにかして見つけたいんだよね〜、ジェムゴーレム! 絶対いると思う!」

 

「本当にいるのか……?」

 

「その疑惑はごもっとも! けど、この幻のエーテリアスを探すのには『居ないかも』なんて考えを綺麗さっぱり捨てるのが大事なんだよ!」

 

「はいはい、わーったよ……とにかく、さっさと出発しようぜ。リンちゃん、案内よろしくッス」

 

「おっけー、任せて!」

 

 

見つけるべくは、まだポーセルメックスが手をつけていない鉱区。

 

善は急げという事で、四人は早速ラマニアンホロウへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[5・5・5][Standing by…]

 

 

「変身!」

 

 

[Complete]

 

 

 

ラマニアンホロウに入った後、タクミはファイズドライバーを装着し、ファイズに変身。

 

その様子を、リュシアは興味深く見つめていた。

 

 

「……どうしたんだ、リュシア」

 

「えっとね、真斗くんから聞いたんだけど……そのファイズの力って、めっちゃ早く動くことも出来るんだよね?」

 

「ファイズアクセルの事か? 確かにできるけど……」

 

「おお! なら……!」

 

「?」

 

 

リュシアはファイズに一本のペットボトルを渡す。

 

……中には、ジンジャー糖水が入っている。

 

 

「もし怪しそうな人を見つけたら、その糖水を手につけて、その人の耳を叩いてみて! そのファイズアクセルで素早く近づけば、上手くいくはずだよ!」

 

「…………」

 

「……タクミ、嫌な時は嫌って言っていいんだぜ。つーかリュシアお前、そんなんしたら普通に失礼だろ」

 

「うん。ジェムゴーレムじゃないに関わらず普通にぶたれそう……」

 

 

 

気を取り直して、昔日の丘のエリアを進んでいく。

 

 

「そういえば真斗、パウルさんがどこに行ったのかは分かったのか?」

 

「あー……それがよ。あの後何度か連絡したんだが、一向に繋がらなかったんだよな。ここらを探せばいるはずだとは思うけどな……」

 

 

エーテリアスを倒し、先に進むと……誰かが慌てた様子で立ち往生している光景を目にした。

 

 

「……ナッシュ? なんでお前がここにいんだ」

 

「あっ、真斗くんか! 助かった……! 実はパウルが、先に行っちまって……!」

 

 

パウルと同じ鉱区の作業員であるナッシュ。

 

彼もパウルに誘われ、鉱区を探しにここに来たのだが、その時運悪くポーセルメックスの社員と鉢合わせしてしまったらしい。

 

パウルは彼らに食ってかかり、なし崩し的に口論もヒートアップ。

 

 

このまま先を越されてたまるかと、彼はナッシュを置いて先へと行ってしまったのたそうだ。

 

 

「エーテリアスもいるから、下手に後を追いかけられないでいたんだ……あいつらはダムの方へと走って行った」

 

「ダムか……ちょうど進む先だね」

 

「頼む、なんとかしてパウルを連れ帰ってやってくれ!」

 

「ああ、勿論そうするつもりだ。ったく、パウルのヤロー……」

 

 

ナッシュと別れ、真斗達はダムの方へと進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして進んで行った先。

 

特になんのアクシデントもなく、パウルを見つける事ができた。

 

 

できたのだが……

 

 

「おっ! 真斗のアニキ、無事にプロキシを見つけてきたみたいですね! これで鉱区は俺らのもんだ!」

 

「パウル……? なんだ、そのカッコは」

 

『なぜパウルさんが、適当観の道着を着ているんだい……?』

 

 

全員が困惑する。

 

記憶違いでなければ、彼は適当観の弟子ではなかったはずだ。

 

そもそも、鉱区を探しに行くうえで作業着ではない事もおかしい。

 

 

「お前……いつもの作業着はどうした?」

 

「作業着? 俺が着るものと言ったらこれしかありませんぜ! 適当観の人間たるもの、道義を貫き、世のため人のためにならなきゃいけません!」

 

「……?」

 

『……マスター、オシシ様に確認をしたところ、適当観で道着の販売、ならびに貸出は行っていないとの事でした』

 

「はぁ……まあなんだっていい。ひとまず目の前のこいつが幻じゃねぇ事は確かだ。パウル、さっさと鉱区を見つけて、ここを出ようぜ」

 

「いえ……それはアニキ達でやってください」

 

「は?」

 

 

パウルは決意のこもった眼で、真斗達に言う。

 

 

「俺は適当観の武術師範として……邪崇を滅するため、ここにいるんです! それが俺の使命ですから!」

 

「何言ってんだよお前は……」

 

 

パウルが適当観の武術師範。リンとタクミは当然、思い当たる節がない。

 

 

「……真斗、パウルさんって」

 

「いや、違ぇぞ。後先考えねぇヤツではあるが、ここまで変な奴じゃなかった……大方、侵蝕で変なモンでも見てんじゃねぇか」

 

「変な奴……あっ!」

 

「おいリュシアやめろ、そのジンジャー糖水しまえ」

 

 

ファイズがジンジャー糖水を手に付け始めたリュシアを止めていると……遠くから声が聞こえる。

 

 

「パウルくん! ここらの調査は済んだからそろそろ──って、あれ? 真斗くんじゃないか!」

 

「……アンタは……ひょっとしてモスか?」

 

「この人も、真斗くんの知り合い?」

 

「……そうッスね。けどコイツ、二年近くも音信不通だったんスよ。なんで急にバッタリ再会することになんだ……?」

 

 

調査員の服を着たモスは苦笑する。

 

 

「はは……連絡もよこさなかったのは悪かった。少し、自分の道を見つけるのに時間をかけてしまってね」

 

「……アンタが調査員のナリをしてんのは、それが自分の道だったからって事かよ?」

 

「その通りだとも。子供の頃からの夢でね……っと、ここで昔話するのは少々危険だな。皆、着いてきてくれ。この先の町にある仮拠点で、話の続きをしよう」

 

「ま、町……? ホロウの中に?」

 

 

先程から訳の分からないことが起こっている。

 

ポーセルメックスを見返してやると意気込んでいたパウルは何故か適当観の道場師範を名乗っており。

 

二年近く音信不通だったらしいモスは何故か調査員になってここにいる。

 

 

挙句、ホロウの中にある「町」とやらを仮拠点にしていると来た。

 

 

「ふむふむ……」

 

「……リュシア? 何か見つけたのか?」

 

「ここまで不思議な事が起こってるとしたら……やっぱりいるかもしれないね。マインドリーダー!」

 

「……」

 

 

リュシアは目を輝かせ、ワクワクした様子でそう言った。

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