ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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講堂へ

 

 

 

 

 

「真斗のアニキ! 戻ってきたんですかい?」

 

「! パウル……」

 

 

いざ講堂へ……と思った矢先に、パウルとモスがこちらを出迎えに来た。

 

依然として、パウルは適当観の道着を着たまま。

 

横にいるモスも、前見た時と変わらずだった。

 

 

「また輝嶺石を探しに? 手伝いますぜ。あ、そうだ! こんな時のために、護身用の拳法を編み出そうと思ってるんですよ。皆さんも一緒に稽古しませんか?」

 

「……パウル。武術師範ってのになりてぇなら、なんで行動を起こさねぇんだ。『町』に引きこもってる場合じゃねぇだろ……」

 

「そう言わないでやってくれ。夢想することこそ、人の最も得意とする才なのだから」

 

「ハッ、夢想ねぇ。ならタクミが出くわしたエーテリアスは、アンタが夢想して呼び出したものって訳か?」

 

「エーテリアス……まさかランタンベアラーとワンダリングハンターの事か? 誤解だ、あれは俺がけしかけたものじゃない」

 

 

モスは弁明する。

 

 

「町に住む俺たちも、あの存在を恐れているんだ。呼び出しただなんてとんでもない」

 

「ランタンベアラー? ワンダリングハンター? 何それ」

 

「あれは……言わば幽霊のようなものだ。なんの前触れもなく町に現れ、混乱を引き起こす……」

 

 

ワンダリングハンターが現れる時は、町に鈴が鳴る音が聞こえると言う。

 

住人は基本立ち向かう術は持っていないため、鈴が聞こえたら隠れるしかないと言う。

 

 

「鈴か……確かにあの時、聞こえたな」

 

「すまなかった。本来ならあの時、教えておくべきだったが……その暇がなかった」

 

「……ちっ。やっぱり危険な場所じゃねぇかここはよ。本当にけしかけたんじゃねぇんだろうな?」

 

「本当だ。とにかく、今度奴が現れたら、前もって知らせるよ」

 

「不要。次に"わんだりんぐはんたー"とやらが現れた暁には、我輩がこの場で退治してくれる」

 

「おお、それは頼もしい。助かるよ」

 

「…………」

 

 

ファイズはこっそり、マスクのアルティメットファインダーでモス達を透視する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!」

 

 

X線カメラで見えた彼らには──内骨格が存在していなかった。

 

真斗達と違い、やはりモス達はミアズマの構成物という事が目に見えて分かる。

 

 

「皆、君たちの事を歓迎しているんだ。好きに見て回ってくれ」

 

「……分かったよ。そんじゃお言葉に甘えるとするぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてモス達と別れた後。

 

ファイズとリン、そしてアキラは、歩きながら町を散策していた。

 

 

「……姉ちゃん」

 

「どうしたの?」

 

「さっき透視してわかった。町の住人は全員、夢縋りで間違いない」

 

「!」

 

 

改めて見回してみても、内骨格を持った人間が誰一人としていない。

 

夢縋りを操っている人間がいるかと思ったが……それもいないようだ。

 

 

「ホントだ……覚感の術で視ても、まともな人間がいないね……」

 

『エーテル活性の反応も、恐らくその住人達から来ているんだろう』

 

 

 

 

 

町の住人と話をしながら、講堂へ行くと……やはり見張りがいる。

 

おおかた、モスの許可がないと通れないのだろう。

 

 

「ねえタクミ。ファイズアクセルでパパっといけない?」

 

「行く事自体はできるとは思う。けど静かには動けないから、見張りにはすぐにバレる」

 

「んー、そっか。それじゃ普通に説得は……まあ無理だよね」

 

「出来りゃとっくにそうしてんだけどな。こうなりゃもう、力づくで行くしかないな」

 

 

ファイズの声が聞こえたのか、見張りのホロウレイダーはこちらを睨んでくる。

 

しらばっくれて明後日の方向を向いていると。

 

 

 

「タクミくん! リンちゃん!」

 

「?」

 

 

二人を呼ぶ声とともに、こちらに手招きするリュシア。

 

二人は彼女のところに行く。

 

 

「丁度良かった、二人に協力してもらいたい事があってさ……講堂に行く方法、思いついちゃったんだよね!」

 

「! 本当か? どうするんだ」

 

「あたしがまず、エーテリアスを呼び出すでしょ? それで見張りの気を引いて、その隙に二人が講堂へ行くって作戦!」

 

「……エーテリアスを呼び出す? そんなこと出来るの?」

 

「できるよ。まあ、本物を呼び出す訳じゃないけどね。数秒間だけ、描いたエーテリアスをエーテル固結物として動かせるの。どのエーテリアスにする?」

 

「じゃあニネヴェでお願い!」

 

「おっけーニネヴェ──ニネヴェ!?

 

 

どデカい声を出すリュシア。

 

 

「ニネヴェレベルはさすがに無理だよ〜! あたしが十人ぐらいいて作れるか作れないかなんだから!」

 

「そもそも見張りの気を引くのにニネヴェはやり過ぎだな……」

 

「そうかな? 軽く空を飛ばせるだけでもビビらせられると思うけど。私は普通にビビったし」

 

「……ちょっと待ってリンちゃん。まさかとは思うけど、ニネヴェに会ったの?」

 

「会ったよ」

 

「会ったのっ!?」

 

 

どデカい声を出すリュシア。

 

見張りがこちらを見ているので、声は抑えて欲しい。

 

 

「零号ホロウで何回か見たことあるんだよね。まあ見ただけだけど」

 

「み、見ただけでもすごいよ!? あの伝説のエーテリアスに会えるなんて……こうしちゃいられない、今すぐ零号ホロウに……!」

 

「おい落ち着けリュシア、今は講堂だろ!」

 

 

居てもたってもいられずと言った感じのリュシアを落ち着かせるファイズ。

 

ちなみにファイズの方も、リンと共に零号ホロウに立ち入った際に一度見た事がある。

 

ファイズと言うパエトーンと違って隠せない身分である都合上、零号ホロウに入ること自体があまりないため、それっきりではあるが。

 

 

「えっと……ニネヴェのお話は後でゆっくり聞かせてもらうとして、とりあえずまずは小さめのエーテリアスから行こっか」

 

「小さめ……ハティとか?」

 

「お、ナイスチョイスだね! それで行こう!」

 

 

リュシアはスケッチブックを床に置き、エーテリアスの絵を描き始める。

 

そして──

 

 

「──よし、こんなとこかな! ハティちゃん、行っておいで!」

 

 

『ガァァアアッ!』

 

 

リュシアは三匹のハティを召喚。

 

ハティ達は見張りの所まで向かった後、まるで犬のように彼らにじゃれつき始める。

 

 

「なんだ……!? どっから湧いてきやがった!?」

 

「ま、まずい! 町の方に……待て!」

 

 

逃げるハティを追いかける見張り。

 

リュシアはハティを操り、上手く気を引くことに成功した。

 

 

「ナイス、リュシア……!」

 

「よし、早く講堂に行くぞ!」

 

 

リン達は見張りが居なくなった隙に、講堂の方へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門を超えた先。

 

リン達は慎重に講堂へと向かう。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

[Ready]

 

 

講堂から急に何かが飛び出してもいいように、ファイズはファイズショットを装備する。

 

 

『エーテル活性が町にいた時よりも強くなっている……二人とも、気をつけてくれ』

 

「モスさんの言ってた"大事なもの"が、この中に……」

 

 

警戒しながら、歩みを進める三人。

 

すると──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────真なる渇望を、受け入れよ

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

突如リンの耳に入ってきた、謎の声。

 

 

「どうした、姉ちゃん」

 

「二人とも、今の声……聞こえた?」

 

「声? 何の話だ?」

 

「え、聞こえなかった? 急に変な声が聞こえて……」

 

『僕は何も聞こえなかったけど……』

 

 

アキラとタクミは何も聞こえなかった。

 

講堂に、何かがいるのは確かだろう。

 

 

 

 

 

 

 

講堂に着いた三人。

 

ゆっくりとドアを開け、中に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………!!」

 

 

そこで見た光景。

 

濃い瘴気の中、見上げるとそこにはミアズマの導線のようなものに囚われている女性の姿が。

 

 

タコのシリオンの女性。

 

生きてはいるようだが……何かにうなされていた。

 

 

『誰か、囚われてる……!』

 

「大事なものってまさかこれか……!」

 

「待ってタクミ! 下手に刺激したらマズい気がする……!」

 

 

フォンブラスターを構えるファイズを止めるリン。

 

なんとかあそこから助ける方法はないか考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

 

その時、リンの目に違和感が走る。

 

 

まるで走馬灯のように、誰かの記憶が映像としてリンの頭の中に流れ込んでくる。

 

 

 

 

 

そしてその違和感に狼狽える間もなく、女性を縛り上げていた導線が途端にプツンと切れた。

 

 

『! マズい……!!』

 

 

重力に従い落下する女性。

 

ファイズは咄嗟に走り出し、彼女が地面に叩きつけられる直前になんとか受け止める事が出来た。

 

その衝撃か、女性は目を覚ました。

 

 

「大丈夫!? しっかりして!」

 

「……?」

 

 

抱えられたその女性は、駆けつけたリンとファイズを交互に見る。

 

 

 

「……おは、よう?」

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