ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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隠された物語

 

 

 

 

 

講堂の隠された部屋にあったミアズマの繭。

 

その中には、ホロウに入って行方不明となった人々の姿があった。

 

 

モスの他に、パウルやウェストの姿も見られる。

 

いずれも意識はなく、呼びかけても返事が返ってくる事はなかった。

 

 

「これは……まさか……」

 

「そう。君達が探していた、俺たち夢縋りの本体だ。まあ、俺としては『かつての本体』と呼びたいところだがね」

 

「繭にあの人たちを閉じ込めたのは、アンタなのか……!?」

 

「違う。繭を作り出したのは……町そのものさ」

 

「町……」

 

「イドリー。君がここに囚われていた理由……覚えているか?」

 

「……ええ」

 

 

ホロウに佇んでいた講堂。

 

讃頌会のサラは、プロキシであるイドリーに調査依頼という形でそこへと連れて行った。

 

 

彼女の目的は、イドリーのホロウの記憶を映し出す能力を利用し、『かつて在った扉』というものを探すことだった。

 

イドリーはサラの罠に嵌り……リンに救助されるまで、講堂に長く囚われ続けることになった。

 

 

「この"町"がいつからあったのかは俺にも分からない。だが、これだけは言える。町は、繭は……君の手によって作られたものなのだと」

 

「……なんでそんな事が分かるんだ」

 

「分かるとも。初めて町を訪れた時の俺は、侵蝕によってエーテリアスに変えられる直前だった」

 

 

満身創痍状態で、町の講堂に迷い込んだモスは……そこで囚われていたイドリーの姿を目にした。

 

だがこの時の彼に、彼女を助ける余裕はなかった。

 

命尽きようとしたその瞬間、奇妙なことが起こった。

 

 

「ミアズマで出来た繭が現れ……本体の俺を包み込んだ。すると不思議な事に、今にも俺の命を奪おうとしていたエーテルの侵蝕が、ピタリと止まったんだ」

 

 

そして夢縋りとして現れたもう一人のモスは、確信した。

 

自分を救ったのは、彼女なのだと。

 

イドリーの意思が、ここへ迷い込んだ哀れな人間を救ったのだと。

 

 

「イドリー。この町の意思は、繭は……君のものなんだ。君と町は、もはや一心同体とも言っていい」

 

「……!!」

 

(この繭が、イドリーさんをホロウから出るのを妨げてるって事か……? なら……!)

 

 

[Ready]

 

 

ファイズはファイズショットを装備する。

 

町が存在する限り、彼女がホロウから出ることができないのなら、今すぐ繭を壊し、繭の中の人共々助ける他ない。

 

しかし。

 

 

「! 待つんだ、タクミくん!! その繭を壊してはならない!」

 

「!!」

 

「早まるんじゃない。確かに繭を壊せば、夢縋りは消えるだろう……しかしそれは、繭の中にいる彼らを殺すことに他ならないんだ」

 

「……どういう事だ」

 

「これは脅しじゃない。かつて、俺も同じことを試そうとしたことがある。だがあの時の俺は、今の君と同じような勘違いをしていた。繭は、侵蝕を後退させる効果があるのだと……そう思い込んでいたんだ」

 

 

だが、実際は違った。繭は、あくまで侵蝕を一時的に()()()だけ。

 

侵蝕を緩和させる効果は、一切ないのだ。

 

 

「その繭を壊し、ホロウの外気に晒せば……止まっていた彼らの侵蝕症状は再び進み、今度こそ瞬く間にエーテリアスへと異化してしまうだろう」

 

「……」

 

「……そんな」

 

「断言しよう……今の君たちに、為す術はない。だが、何も悲観的になることはない。この町では、夢と共に、新しい人生を歩む事ができるんだ」

 

 

モスはイドリーの肩に手を置く。

 

 

「君はこの町で『眠り』、町に迷い込んだ人々に、新たな選択肢を与え導く。そして君は、それを見守っていくんだ」

 

「……わたし、は」

 

「イドリーさんに妙な事を吹き込むな。イドリーさんには、イドリーさんの人生がある」

 

「君も理解したはずだ。彼女自身の物語は、ここで幕を閉じる他ない」

 

 

モスは出口の方へ向かい、扉の取っ手に手をかける。

 

 

「……だが、それでもホロウを出たいと言うなら、足掻いてみればいい。『彼女』の意思がそれを許すなら……な」

 

 

そう言い残し、モスは部屋を出ていった。

 

町の真実を知ったイドリーは、壁に寄りかかり、座り込む。

 

 

「……わたしは、ここで……」

 

「イドリーさん、アイツの言う事に耳を貸したらダメです。繭の中の人達と一緒に、無事にホロウを出る方法が、きっと見つかるはずだ」

 

「……そう、ね。ありがとう」

 

(けど……今の状況だと、俺たちじゃどうする事も……そうだ……!)

 

 

ファイズは思い出す。

 

町での機器の接続不良を改善するためにTOPSから借りた輝磁の匣。

 

元々はイドリーをホロウから出すため、その匣を使うという計画だったが……繭の中にいるモス達を救出するのにも、同じ手が使えるのではないだろうか。

 

 

明日の早朝、リン達はシェルターに戻ってくるはずだ。

 

その時に、モスが話した町の真実を、彼女たちに伝えなくてはならない。

 

 

「イドリーさん、ひとまずシェルターに戻って姉ちゃん達を待ちましょう。これ以上、ここに長居する理由はない」

 

「……ええ、そうね」

 

 

傷心状態のイドリーを支え、立ち上がる。

 

 

 

 

繭がある部屋を出て、二人は講堂を後にした。

 

 

ファイズフォンを開き、時刻を確認。既に深夜の一時を過ぎていた。

 

 

「……流石に、今日は疲れたな」

 

「ごめんなさい、タクミ。きみを守るつもりが、こんな事に……」

 

「一応言うと保護対象って別に俺じゃないんですよね」

 

 

もうタクミを護衛する事が共通認識となってしまっている。

 

なんと嘆かわしい事だろう。

 

 

「ともかく、行方不明者の居場所も分かったんだ。あとは出る方法さえ確立させれば──」

 

「…………あら?」

 

「?」

 

 

イドリーが突然、声を上げる。

 

どうしたのかと聞く前に、イドリーが前方を指差した。

 

 

 

 

彼女が指差した先にいたのは、学生服姿の少年。

 

本物と寸分違わず同じ顔をしたもう一人のタクミが、そこに立っていた。

 

 

「あの子……タクミと同じ顔をしているわ」

 

「……俺の夢縋りか。このタイミングで出くわすとはな」

 

「彼、こっちを見ているわね……どうするの?」

 

「今はアイツに構ってる暇はないです。さっさとシェルターに──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

「?」

 

 

途中で気づいた、強烈な違和感。

 

 

「……イドリーさん、今なんて……?」

 

「え?」

 

「今、『俺と同じ顔をしてる』って……そう言ったんですか?」

 

 

今いるのは講堂の外。

 

町の中であり、ホロウの中である。

 

 

 

 

 

 

 

そんな場所でイドリーが、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「っ!!」

 

「……」

 

 

前方に立っている『タクミ』は、にこりと笑う。

 

イドリーも、今しがた起きている事態の異常さに気づいた。

 

 

「アイツは……」

 

「あの時と、同じ……! リンと同じように、彼の顔がはっきり見えているわ……!!」

 

 

イドリーが最初にラマニアンホロウに訪れた際に見かけたという、タクミと同じ顔。

 

あれと同一の存在だと言うのなら……

 

 

「…………」

 

 

ファイズはアルティメットファインダーで、正体を暴くために透視機能を使って『タクミ』の姿を視た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佇む彼からは、ミアズマの気配を感じなかった。

 

にこりと笑う彼は、エーテルの構造物ではなかった。

 

歩き出した彼は、夢縋りでも、ましてやドッペルゲンガーでもなかった。

 

 

近づいてくる彼には、内骨格が存在した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の彼は、生きている人間だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

日が昇り始めた早朝。

 

リン達は予定通り、ラマニアンホロウへと突入。

 

 

するはずだったのだが。

 

 

ホロウに入って間もなく、リンが突然ボーっとしたまま動かなくなってしまったのだ。

 

 

「……」

 

「ん? リンちゃん?」

 

「…………」

 

『……リン? どうしたんだい? どうして何も言わないんだ?』

 

「…………」

 

「んー……えいっ!」

 

「んひゃっ!?」

 

 

リュシアが頬を軽くつねった事で、リンは意識を取り戻した。

 

 

「……あれ? 私今、海の中に……」

 

『海? リン、もしかして寝ていたのかい? 昨日は休むように言ったはずだよ』

 

「ちゃ、ちゃんと寝てたよ? でも……あれ?」

 

「まあ、ここ数日の事を考えりゃあ、疲れが溜まんのも無理もないっスけどね」

 

「ご、ごめんね皆……はやくシェルターに行こっか」

 

 

一行はタクミとイドリーが待つシェルターへと向かっていった。

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