ついに敵意をあらわにした『町』の住人達は、ファイズ達へと襲い掛かる。
[Start Up]
「ハァッ!!」
ファイズはアクセルフォームに変身し、応戦した。
相手は人間の姿こそしているが、その正体はエーテルの構造物である夢縋り。
つまり、エーテリアスとあまり変わらない。
なのでファイズたちの方も、わざわざ手加減はしなくて済むわけだ。
「っ!? み、見えな──ぐぅっ!!」
「今そっちに──うわあっ!!」
だからと言って本気を出すほど、彼らは強いわけでもない。
ファイズは高速移動で夢縋り達の死角に潜り込み、軽く殴って吹き飛ばす。
[Time Out][Reformation]
粗方吹き飛ばした後、制限時間を迎え通常形態に戻ったファイズ。
「なんとしてでも町から帰すな!」
「食らえ!」
ファイズが動きを止めた隙を伺っていたのか、防衛軍の兵士の姿をした夢縋りが、遠くからスナイパーライフルで銃弾を放つ。
銃声が聞こえたファイズはすぐさま避けようとしたが……その必要はなかった。
『グォォォッ!』
間にタナトスが割って入り、ファイズを守るかのように腕の刃で銃弾を切り裂いたのだ。
紫色の体をしたタナトス。野良のエーテリアスではなかった。
「ナイスだリュシア!」
「ふふん!」
リュシアが召還したタナトスは、今度は兵士に向けて襲い掛かった。
夢縋りとの闘いは、向こうが多勢ではあるもののこちらが優勢に進んでいた。
しかし……
「……! 次々と、住人達が襲ってくるわ……!」
ハンマーで夢縋りを吹き飛ばしながら、イドリーはつぶやく。
「確かに、倒しても倒してもどんどん出てくるね……!」
「夢縋りだから、そうなのかも……繭を壊さないと、夢縋りは消えないんだ!」
「ならこんな事してる場合じゃねぇ……! 早く澄輝坪に戻んねぇと!」
ワンダリングハンターも、いつ乱入してくるか分からない。
一行は襲い掛かる夢縋りの相手をしつつ、シェルターへと急いだ。
そしてシェルターへ向かう道中。
またしても、何者かが前方にて立ちふさがっていた。
大剣を担ぐ、白い髪の大男。
「……」
「む、あの者は……真斗殿か?」
「あれは……真斗くんの夢縋りだよ!」
「あ、あの野郎なんでこんな時に……!!」
もうこの際無視して突っ切ろう。
そう考え、一行は走るスピードを速めた。
……が、それを白い真斗は許さなかった。
「オラァッ!!」
「むぅっ!?」
白い真斗は大剣を振りかざすと、一直線に盤岳の方へ走り出し……そのまま彼目掛け剣を振り下ろしてきた。
盤岳は立ち止まり、白真斗の攻撃を受け止める。
「バン公よぉ……どこに行くんだ? オレと闘ろうじゃねぇか!」
「……! おぬしは……」
「おいテメェ! 盤岳先生に何しやがんだ!」
「分かんねぇかよ腑抜け……! テメェがやりたかった事を、オレが代わりにやってやるんだよ!」
「んだと……!?」
白真斗は大剣を力いっぱいに振り、攻撃を防いでいた盤岳を後ろに弾き飛ばす。
「オレはテメェが諦めた夢だ。テメェと違って、オレは『狛野真斗』の為にこの剣を振れる。それを証明してやるっつってんだよ」
そう言うと白真斗は、盤岳の方へ剣先を向ける。
「おいバン公。ここなら邪魔は入んねぇ。本気で来いや」
「……ならぬ。この盤岳、とうに誓いを立てた身。この拳は世を救い、人々の力に成る為に存在している。決して、みだりに人を傷つけるためなどではない!」
「……ハッ。どいつもこいつも、甘っちょろいヤツらばっかだな……ああ!?」
「!!」
白真斗は雄叫びと共に、再び襲い掛かってきた。
……しかし、その剣が盤岳に届く事はなかった。
「ぐっ……もう、やめろ……!!」
「真斗!」
間に真斗が割って入り、その大剣で白真斗の攻撃を受け止めた。
ファイズはその瞬間、真斗が何か痛みに耐えるような表情を浮かべたのが見えた。
「ケッ、その怪我で攻撃を止めた事だけは褒めてやらぁ」
「け、怪我? 真斗くん、まさか怪我したの!? 私をかばった時に……」
「……何、ヘーキっスよこんなモン」
先程の闘い。
夢縋りの兵士が放った銃弾からリンを守るため、真斗は密かに負傷していたのだった。
「おい夢縋り……そんなに闘り合いてぇんなら、オレが相手になってやる! だから他のヤツらを巻き込むな!」
「テメェが、だと? 今のテメェに何が出来んだよ。まさかその状態で決着をつけろなんてほざく訳じゃねぇよな」
「今はやんねぇよ。万全の状態になったら、改めてサシで相手してやる。その時まで待て」
「……仕方ねぇな。今は、テメェの言葉を信じておいてやる」
そう言うと、白真斗の周りに赤い霧が立ち込める。
霧は、徐々に彼の体を飲み込んでいく。
「くれぐれも怪我すんじゃねぇぞ。ダチにかまけて腑抜けになったテメェと、どっちが強えか……証明してやんだからよ」
「……」
その言葉を最後に、白い真斗は姿を消した。
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ようやくシェルターに戻ってきた一行。
「イドちゃんと繭の中身……両方とも助けるには、結局どうすればいいんだろ……」
「繭をなんとかすればいいんだろうけど、輝磁の匣も、大した効果はなかったからね……」
「タクミ、モスの野郎は繭が町にとっての大事なもんだって言ってたんだよな? アイツの言う事……信用できんのか?」
「正直信用できるかは分からない。でもアイツは、繭が危ないって分かった途端急に敵意をむき出しにしてきた」
少なくとも繭が壊されたりなくなったりすれば、町の存続は難しくなる。
モスの言う事は、あながち間違ってもいないのだろう。
「まあとにかく、一旦澄輝坪に戻るしかないね。イドリーはまたシェルターで待つことになっちゃうけど……それでもいい?」
「構わないわ。むしろ、繭の事がなんとかなると分かるまでは……ホロウを出るつもりはなかったから」
「そうだね。誰一人犠牲になることなく帰る……それが最善だもんね」
『……タクミ。ちゃんと聞いていたかい?』
「な、なんで名指しなんだよ……」
まるでタクミが自己犠牲を厭わないみたいな言い方である。
確かに昔はそうだったのかもしれないが、最近は自分の意思に関わらず巻き込まれているだけ。
決して自分から巻き込まれに行ってるわけではない。はずだ。
負った怪我を隠そうとする事については……追々なくしていく事にする。
「ハハハ。タクミ、兄貴の言う事はちゃんと聞いとくもんだぜ」
『ちなみに真斗くんにも同じ事が言えるからね』
「「……」」
「問題児コンビだね~」
「だ、誰がだよ……」
強く言い返せなかった。
「タクミ。今度はきみも、リン達と一緒にホロウを出て。少しだけでも、休んで欲しいの」
「一人でも大丈夫ですか?」
「今は大丈夫。あの時きみが一緒にいたおかげで、町の真実を知ってもなお、わたしはここに戻ってこられた。一人だったら……モスに言いくるめられて、また講堂に囚われていたかもしれないわ。ほら、わたしって……ちょっと流されやすいところがあるから」
「イドリーさん……」
「それに、リン達と約束したもの。約束した以上、誰が来てもあそこに戻るつもりなんてないわ」
優しい声音ながらも、強い決意を感じる彼女の言葉。
この調子なら、彼女は大丈夫だろう。
「あ、そうだ! ねえイドちゃん、このタンバリンあげるよ!」
「え、タンバリン……?」
「これがあれば、ノックンがシェルターのドアをノックして来ても追い払えるよ──お、タクミくん何か聞きたいことが!?」
「ノックンてなんだ?」
「い~い質問だねえ!」
意気揚々と『ノックン』の解説をするリュシア。
「……アイツ今なんも言われてねぇのに手ぇ挙げたな」
『リュシアのノリに普通に着いて行けてるね……』
「タクミのカテゴリは『変人』と『天然』だからね」
本人は否定するだろうが、恐らく反論することもできないだろう。
あとがき番外編
〜その頃六分街〜
「……ねえ、猫又」
「うん?」
「前に映画で見たんだけど……猫のシリオンは『好きな人を独占する為に首に噛み跡を付ける』というのは本当?」
「…………」
「……猫又?」
「……ふん、アンビーは相変わらずの映画脳だにゃ。そんな事をする奴なんか見たことないぞ。そろそろ映画と現実の区別でもつけたら?」
「……なら、少し前に見たタクミの首元を虎視眈々と狙っていた光景は、私の幻覚と言う事?」
「…………」
「……猫又?」
「…………」
「……猫又。あなたの場合は虎視眈々じゃなくて、猫視眈々と言うのが──」
「あああああもう!! あんたといるといっつも調子狂う!!」
「猫又」
「なに!」
「猫視眈々とタクミの首を──」
「その言葉気に入りすぎでしょ! とにかくあたしはそんな事してないから!」