「オラァ!!」
「っ!!」
赤い霧が立ち込める町の中、絶え間なく響く剣の打ち合う音。
町との闘いは、既に始まっていた。
「どぉした真斗ォ! テメェも打って来いやぁ!!」
「るせぇ……言われなくても!」
事は数分前。
真斗ら第一班が町に到着した時……予想通り、夢縋り達が講堂前で待ち構えていた。
その中には白い真斗の姿もあり、その目には燃え滾るような闘争心が込められていた。
白い真斗は何も言わず、剣先を真斗の方へ向ける。
真斗は捜索隊のメンバーを安全な場所まで避難させた後……彼の宣戦布告に応じた。
かくして、真斗同士の決闘は幕を開けた。
「そのしがらみだらけの剣で、オレを倒せるわけねぇだろ……! 『ダチ』なんぞくだらねぇモノを背負ったテメェの剣でよぉ……!!」
「これはオレが選んだ道だ!! それをテメェにあーだこーだ言われる筋合いはねぇ!!」
真斗は火炎を刀身に纏わせ、白真斗の攻撃をはじく。
その際に距離が離れるが、逃がすまいと追撃を加えに走り出す。
白真斗の方もひるまずに迎撃する。
「馬鹿馬鹿しいだろぉが……他人なんぞのためにキズだらけになんのはよぉ、ええ!?」
「……っ、この……!!」
大剣を軽々と振り、連撃を叩き込む白真斗。
真斗は防戦一方に追い込まれ、やがて──
「!!」
最後の一撃で、真斗の剣が手から弾き飛ばされてしまった。
「ハッ……勝負はついたな。これで分かったかよ、どっちが強えのか……どっちが狛野真斗に相応しいのかをよぉ」
「……」
とどめを刺すべく、白真斗は地面を蹴り駆け出す。
「繭を受け入れろ。テメェに代わって……オレが狛野真斗に──ホワイトハーツのカシラになる!!」
「……オレの、代わりにだと?」
真斗目掛け、振り抜かれた拳。
「マジに言ってんのか……テメェは」
「!!」
白い真斗の一発は、容易く受け止められた。
他の何者でもない、真斗の手によって。
「本気でそう思ってんのなら……」
拳を受け止めた掌に、信念の炎が宿る。
「テメェは狛野真斗を──ナメすぎだぜっ!!」
「ぐっ!!」
地面をえぐり取るほどの爆発と共に、放たれた渾身の反撃。
白真斗は防ぐ暇もなく、後ろ側の講堂の壁まで吹き飛ばされた。
「……立てよ」
「……!」
眼に宿る、夢縋りと同じ程に燃え滾る闘争心。
「──こっからは本気だ」
「……ハッ。いい眼してんじゃねぇか」
───────────────────────
[1・0・6][Burst Mode]
[Burst Mode]
「はぁっ!!」
「うわぁっ!」
一方その頃。
遅れて町に入ったリン達第三班だが……案の定、身を潜めていた夢縋りたちに囲まれ、妨害に合っていた。
カイザはフォンブラスターとカイザブレイガンで、攻撃を仕掛けてくる夢縋り達を的確に撃ち抜いていく。
だが……これもやはりと言うべきか、倒しても倒しても夢縋り達は復活し、攻撃の手が緩められる事はなかった。
「やっぱり、倒しても倒しても出てくるわね……」
「もう~! ここで足止めを食らってる場合じゃないんだけどなぁ……!」
「こうなったら……みんな、少し身をかがめろ!」
[Ready]
カイザはカイザフォンをバックルにしまい、カイザブレイガンを『ブレードモード』に切り替える。
[Exceed Charge]
そのままフォンのENTERキーを押し、刀身にフォトンブラッドをチャージする。
直後、全方位から襲ってくる夢縋り達。
「はぁあああっ!!」
フォトンブラッドの熱放射量はアルティメット。
刀身が限界まで伸びた状態で、カイザは『カイザスラッシュ』の全方位回転斬りをお見舞いした。
圧倒的なエネルギーを前に消滅する夢縋り達。
「数がぐっと減った……!」
「今だよみんな! 夢縋りが復活しないうちに、先に進もう!」
そうして夢縋りの足止めを乗り越え、講堂前までたどり着いたリン達。
「これは……」
「真斗!」
「おう……ちょうどいい所に来たじゃねぇか」
講堂前の広場にある、二つの影。
一つは剣を掲げ、その場に立っている真斗。
もう一つ、剣に支えられ膝をついている白い真斗だった。
二人の周りに広がるのは凄惨な戦いの跡。
中心に静かに佇む二人のその姿は、真斗が勝利を掴んだ事を暗に示していた。
「決着……着いたんだね」
「ああ。テメェの力だけで、勝ち取ってやったっスよ」
「…………」
敗北した白い真斗は膝をついたまま、呆然と地面を見つめていた。
「真斗くん……」
「コイツの事は今はほっとけ。時間がねぇ、さっさと講堂ン中に行こうぜ」
「……そうだね。皆、行こう!」
一行はモス達の待つ講堂……繭のある部屋へと向かって行った。
そして一人、取り残される白い真斗。
「……」
打ち負かされた直後、真斗が言ったとある言葉。
それが、彼の頭から離れないでいた。
『オレはな……何もテメェの言う夢を忘れたわけじゃねぇ。ただあの頃のガキを、ガレキの山から引っ張り出してやりてぇだけなんだ』
「…………」
ガレキから這い出した少年は、裸足で歩き出す。
少年は歩いていく中で、様々なものに出会った。
かけがえの無い、大切な人と出会った。
その大切な人を守るために、力だけでは何も出来ないと……闇雲に歩く中で気づいた。
そして数々の出会いは、新しい夢と成った。
これからも、狛野真斗は剣を振る。
誰かを守るために。誰かを守る自分を守るために。
「……ケッ」
───────────────────────
ドォン!!
固く閉ざされた扉が、勢いよく蹴破られる。
「……っ、やはりここに来たか」
「やっぱここにいたんだね、モス」
繭がある部屋には、モスを始めとした夢縋り達がリン達を待ち受けていた。
「こうなるくらいなら……最初に君たちが町を訪れた時点で、さっさと始末しておくべきだった。だが……そうできない自分も、確かにいた」
「何……?」
「俺たちは、君を受け入れたかったんだ。君たちを町の一員にし、その夢を知り……乾くことのないオアシスに、身を委ねて欲しかった」
夢縋りたちは繭を庇うように立ち、武器をこちらに向ける。
「かつての夢と向き合って、君たちはそれでもなお……戦う事を選んだ。……雲嶽山の修行者。君達が来てから、すべてが変わってしまった」
「!」
モスはリンを睨む。
「何が目的だ……? 君は町を混乱に陥れ、あまつさえその存在を消し去ろうとしている」
「目的も何も……私はプロキシとして、迷った人を家まで送り届ける──その使命を果たしてるってだけだよ」
「家だと? 馬鹿を言うな!
「前になんか進んでないよ。どんなに夢が心地のいいものでも……いつかはその夢から覚めなきゃいけない。夢は夢、現実は現実だって受け入れないと、前には──」
「黙れ!!」
モスが強引に言葉を遮る。
その様子からは、かつての温厚な立ち振る舞いは影も形もなかった。
「もういい、話すだけ時間の無駄だ。それ以上歩を進めるのなら……俺たちは繭を守るため、君たちを始末する!」
「ハッ、長ったらしく御託並べやがって……ハナからそのつもりで来りゃあ良いんだよ」
「繭は絶対に消してやる。いい加減夢から覚める時だ!」
「させるものか! 住人達よ、町を守るんだ!」
モスの声に応えるように雄叫びを上げ、士気をあげる夢縋り達。
こうして、町との最後の闘いが幕を開けた。