モスの合図とともに、武器を構えた夢縋り達が一斉に襲い掛かってきた。
ホロウレイダー、僧兵、防衛軍の兵士など……彼らは数にものを言わせ、リン達を倒そうとその殺気をあらわにしていた。
「オラァ!」
「ふんっ! はぁっ!!」
当然カイザ達はこれに対し応戦。
繭を傷つけないように気を付けつつ、所狭しと暴れまわる。
「繭を死守しろ!」
「この町を守るんだ!」
「チッ……テメェら、なんだって現実から逃げやがる! 一生ここで暮らせると思ってんのかよ!」
「逃げてなんていねぇ! 俺達は見つけたんだよ、本当に帰るべき場所をな!」
真斗に勝るとも劣らない屈強な体格のホロウレイダーは、そう言いながら攻撃の手を緩めない。
「お前たちも繭の一員になれっ!」
「そんなのごめんだよ! そうなったら、マインドリーダーに探せなくなっちゃうし!」
「みんな、ごめんなさい……わたしも、夢の中に居続ける事はもうしたくない……!」
繭の近くにいるからか、夢縋り達のパワーが先ほど戦った時と比べ上がっている気がする。
そのせいかさらに、倒されてから復活するまでの時間も異様に短くなっている。
「……! 町を脅かす元凶は、
「っ!」
[Burst Mode]
闘いの最中、リンの持っている輝大侠に目を付けたモスが彼女に近づく。
それを遠くからカイザがブレイガンで阻止。
すぐさま倒れたモスの元に駆け寄り、押さえつける。
「姉ちゃんに……さわんな……!!」
「あがくだけ無駄だ……! 繭がある限り、俺達は消えない!」
「タクミ! 後ろ!」
「!」
力づくで押さえつけていたところに、死角から新たな夢縋りが襲ってくる。
「はあっ!!」
モスを遠くの方へ乱暴に蹴り飛ばしつつ、彼らに向けてカイザブレイガンで放射状に弾を発射。
夢縋りは弾に撃ち抜かれ、消滅するが……案の定、すぐに復活した。
カイザはリンの近くに守るように立つ。
「タクミ、これマズいよ……!」
「ああ……こうもすぐに復活されるとな」
この部屋に輝大侠を設置し、起動さえしてしまえばこちらのものなのだが……そうする隙がない。
繭がある限り、夢縋りは無限に復活する。確実に設置を妨害しようとしてくるだろう。
繭を直接壊せば復活する事はもうないが、それでは本末転倒。
「…………」
部屋にいる夢縋りはモスを含め十人強。
不幸中の幸いと言うべきか、増援がこの部屋に来る事はなかった。
盤岳達が外で足止めをしているおかげだろう。
だが、楽観視はしていられない。
夢縋り一体一体はそれ程の強さではないにしろ、復活する特性を利用し、集団でこちらの体力を消耗させてくる。
モス達の方も、十中八九長期戦に持ち込み、ジリ貧まで追い込む算段なのだろう。
(増援も期待はできなさそうだし……どうすれば……)
リンは少しの間、考え込み……
「タクミ!」
「なんだ?」
「サイドバッシャー……だっけ? あれを呼んで!」
「? 呼んでも、倒すことは……」
「大丈夫。倒すことができないなら、倒さなきゃいいんだよ!」
カイザは一瞬リンの言っている事が分からなかったが……すぐに理解した。
「そう言う事か……それなら!」
[9・8・2・1][Side Basshar, Come closer]
すぐさまカイザフォンを開き、コードを入力する。
直後、どこからか颯爽とサイドバッシャーが登場。
[Battle Mode]
カイザはサイドバッシャーに乗り込み、ボタンを押してマシンを巨大ロボットに変形させた。
「な、なんだぁ!?」
「うわああ! すっご!!」
サイドバッシャーを操縦し、巨大な足音を立て夢縋り達にズンズンと足音を立て近づく。
そして──
「うわぁあああっ!?」
腕部の巨大バサミ、グランドマニピュレーターと脚部のパワーレッグを振りかざす。
そしてモス達夢縋りを数体、一気に抑え込んでその動きを封じた。
「は……はなせっ!!」
「ぐっ、動けない……!」
誤って倒さないよう、パワーを調整する。
リンの考えた作戦は、単純明快。
復活されるなら、復活させなければいい。
こうして倒さずに動きを封じさえれば、夢縋り達を無力化できる。
流石に夢縋りに分身能力はなかったため、あっという間に優勢に傾ける事ができた。
「リュシア! エーテリアスを呼んで、残りの夢縋りを捕まえろ! 倒さずに、動けないようにするんだ!」
「っ! 分かった!」
リュシアはスケッチブックに即興で絵を描き、ファールバウティを二体ほど呼び出す。
ファールバウティ達は夢縋りを壁際に追い詰めた後、サイドバッシャーのように彼らの動きを力づくで封じた。
「グウゥゥ……!!」
「く、くそ……!」
「……! すごい! 部屋のエーテル活性が高いから、召喚してもすぐにエーテリアスが消えないよ!」
『よし……今だリン、輝大侠を!』
「うん!」
リンは輝大侠を持って部屋の中央へと向かい、設置する。
そして天面にあるボタンを押すと……容器が青白く輝き始めた。
「よし、このまま……!」
「ぐ……させ、るかっ!!」
「なっ!!」
サイドバッシャーに体を抑え込まれていたモスは……最後の悪あがきに、持っていた拳銃を取り出し発砲。
その銃弾は……よりにもよって起動中の輝大侠に命中してしまった。
「や、やば……!」
「てめえ!!」
「ぐっ……! ふ、フフ……町は……不滅だ……!!」
衝撃が加わり……その拍子に容器からエネルギーが溢れ出す。
このままでは起動に失敗してしまう───その時だった。
「……!! オレがやるっ!!」
「真斗くん!?」
真斗が輝大侠の元に駆け寄り、容器を拾い上げる。
溢れ出るエネルギーの衝撃をものともせず、真斗は両側面にあるハンドルを握りしめ、容器をこじ開け始めた。
彼は輝大侠を、手動で起動させるつもりだった。
「ぐぅうっ……!! 開きやがれ……!!」
真斗の全力を持ってしても、輝大侠の容器は莫大なエネルギーで反発する。
カイザも真斗に協力するべく、サイドバッシャーを降りようとした。
しかしそうする前に何者かが乱入し……真斗が持っていた容器の片方のハンドルを手にした。
「よう……手こずってんな」
「! オマエは……」
ハンドルを握ったのは……夢縋りである、もう一人の白い真斗だった。
彼はにやりと笑うと、力を込めハンドルを引っ張り始める。
「今回だけだ……! 足引っ張んじゃねぇぞ!」
「……っ!」
「行くぞっ!!」
「おう!!」
真斗の方も握っていた容器のハンドルに力を込め、反対方向に引っ張り始めた。
『オオオオオオッ……!!』
雄叫びを上げる二人の真斗。
容器は溢れんばかりのエネルギーとともに轟音を立て暴れ回る。
それでも二人はひるまず、輝大侠の起動に死力を尽くす。
やがて──
「!!」
輝大侠の起動音とともに、容器から金色のエネルギーが放出される。
「……っ、やった……!!」
起動に成功した輝大侠は、眩く淡い光を放ち……部屋にある繭を消滅させていく。
「!! ばか……な……」
繭が消滅した事により、カイザ達が捕まえた夢縋り達もゆっくりと消滅していく。
そして。
「チッ……潮時か」
「!」
夢縋りの真斗も、徐々にその体がエーテルの粒子と化していく。
「もう……オレの出る幕はねぇ。分かってんな」
「ああ……分かってら」
モス達と違い足掻くこともせず、ただ消滅を受け入れる白い真斗。
その目に、微かながら穏やかな光が宿る。
「証明してみやがれ……新しい夢には、追う価値があると。……けどよ、どこに行こうが──」
───昔の夢を、忘れんな
「…………」
彼は最後にそう言い残し……静かに虚空へ消えていった。