ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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かつて在った扉

 

 

 

 

 

起動に成功した輝大侠は、光を放ちながら部屋にあるミアズマを最大効率で吸収していく。

 

その影響で、繭の方も徐々に消滅し始めた。

 

繭の中にいた人達も、侵蝕症状が悪化した様子はない。

 

 

「これは……」

 

「うん、感じるわ……心の奥底に絡みついた暗闇が、解けていくのを……」

 

「やった! 作戦は成功だね!」

 

「モスの野郎が妨害してきやがった時はどうなるかと思ったけどな……」

 

 

繭から解放された人達は、すでに目を覚ました者もいれば、まだ意識がない者もいる。

 

どちらにせよ、全員命に別状はないようだ。

 

 

……と、ここで部屋に盤岳が入ってきた。

 

 

「皆の者、首尾は──おお……! どうやら、試みは成功したようであるな!」

 

「盤岳先生! その様子だと、輸送部隊も無事にここに来れたみたいだね」

 

「うむ、先ほどまで講堂の外で夢縋りと交戦していたのだが……突然彼奴らが跡形もなく霧散したものでな。故に、ここまで来ることができた」

 

 

あとはここにいる被害者をここから連れ出せば作戦は成功だ。

 

 

『……けど、まだ消えていない繭もあるみたいだな。まるでまだ夢から覚めたくないと言わんばかりに……』

 

「モスも、その繭の中みたいっスね。ったく、とっとと起きりゃあいいのによ……」

 

「何はともあれ、皆の者ご苦労であった。あとはこの盤岳に任せるがよい」

 

 

カイザは周りを見る。

 

パウルやウェストは、すでに目を覚ましているようだが……その足取りはおぼつかない。

 

だが、病院でしっかり治療を受ければ大丈夫なはずだ。

 

 

「……」

 

「?」

 

 

被害者の手助けをしようとしたその時、ふとイドリーが壁を見つめている事に気が付いた。

 

 

「イドリーさん、どうしたんですか? そこの壁になんか──」

 

「サラ……」

 

「え?」

 

「見えるの。壁のあたりに、彼女の……サラの幻があるのを」

 

「! イドリー、その幻って再現できたりとかする?」

 

「……できるかは、分からないけど……やってみるわ」

 

 

イドリーは壁を見つめ、念じる。

 

すると壁の所に、二つの人影と……巨大なエーテルの裂け目が姿を現した。

 

男性一人と女性一人。顔はぼやけて判別はつかないが……女性の方は間違いなくサラだろう。

 

 

幻たちは、会話を始める。

 

 

『この裂け目から……多大なエーテルが溢れ出てくるのが分かるわ。始まりの主は、きっと私をお呼びになっている』

 

『サラ様、俺も一緒に連れて行ってください! この時の為に、俺は讃頌会に……!』

 

『ダメよ。貴方にはまだその資格がない……あの方の恩寵を受けるにはまだ早いの。自分でも分かっているでしょう──モス』

 

 

「!!」

 

「い、今サラ……モスって言った!?」

 

『まさか、讃頌会の一員だったとはな……』

 

 

女性の方はサラだと分かったが……まさか男性の方がモスだったとは思いもしなかった。

 

 

『サラ様……俺の病気の事は既に御存知でしょう! お願いします! 俺も、あの方の許しを……』

 

『落ち着いて。何も貴方に"その時"が永遠に来ないと言っているわけではないの』

 

『…………』

 

『貴方には、使命がある。"あの人"がここに来るまで、この町を守っていて欲しいの。そしてあの人が来たら、裂け目を通って私を探せと伝えて』

 

『……そうすれば、俺にも……』

 

『ええ。いつかきっと、謁見を許される日が来るわ。ただ、その時まで……一人で来ようとは思わない事よ』

 

 

幻のサラは、モスの方とは別の方向に顔を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

『さあ、行きましょうか』

 

「……?」

 

 

サラのその言葉を最後に、幻も消え失せた。

 

 

 

この巨大な裂け目は、イドリーが何度も再現を強いられていた『かつて在った扉』というものなのだろう。

 

サラは、その裂け目の向こうに行ったようだ。

 

 

 

……それとは別に、もう一つ大きな謎が残った。

 

 

「サラは最後、誰に向かって話してたんだろ……」

 

「……」

 

 

幻のサラは何もない所に向けて何か言った後……そのまま裂け目の方へ入って行ってしまった。

 

 

「この場にいた幻は、一人残さず再現したつもりだったけど……」

 

「モスとサラ以外に、誰かがいたのかな……?」

 

 

讃頌会とグルで、サラと共に行動していそうな人物。

 

思い当たる節と言えば……

 

 

「……もう一人の俺、か」

 

「!」

 

「夢の中の話だけど……アイツは讃頌会に入ったとか言ってた。それが与太話じゃないなら、この場にいてもおかしくはない」

 

「そんならよ……なんで幻として出てこなかったんだ?」

 

「……そう言えば、もう一人のタクミと会った時、顔がはっきりと見えていたのは……それと関係しているのかしら?」

 

「そのセンはあり得ると思います。アイツは何らかの方法で、自分の周りのエーテル活性を極限まで下げたんだ」

 

 

輝大侠のように、自分の周りだけに簡易的な透明シェルターを作り出した。いや、防護服と言った方が適切だろう。

 

彼の周りにエーテルが全くなかったから、顔がはっきりと見えた。

 

その為か、幻として姿が再現されることもなかったのだろう。

 

 

と、ドヤ顔で予想してみたが……あっている確証はどこにもない。

 

 

「まあ真相はともあれ、あの裂け目の向こうにサラがいるなら……行かない選択肢はないね」

 

「ああ。アイツの企みで、イドリーさんみたいな被害者が増えたらたまったもんじゃねぇ」

 

「わたしも行くわ。もう誰も、同じ目には遭ってほしくないもの」

 

「では我輩は、ここに残り繭と人々を守ろう。安心して行ってくるがよい」

 

「ありがとう、盤岳先生。それじゃあ行くよ!」

 

 

リン達が巨大な裂け目の中に入る。

 

カイザも続いて、裂け目の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裂け目を抜けた先、一行がたどり着いた場所は……見たことも行ったこともないエリア。

 

 

『ここは……ラマニアンホロウだろうか』

 

『衛非地区のマップデータと照合。ここは既に使われなくなった航空宇宙試験場エリアだと予想されます。最後に人類の活動が記録されたのは、旧都陥落前です』

 

「十年以上も放置されてたんだね……」

 

 

辺りは霧が立ち込めており、十メートル先も見えない状態。

 

 

「ここは……人が全くいないわね。みんなの顔も、簡単に見分けがつくわ」

 

「え、ほんと!? じゃあ、あたしは誰でしょう!」

 

 

リュシアは左拳を胸に当て、右手を高く上げながらブンブンと振り回している。

 

 

「えーっとぉ……デュラハンに化けた、『夜魔の語り部』ちゃん!」

 

「正解、さっすが『いちごパフェ』! それでは食らえいデュラハンチョップ!!」

 

「あら」

 

「ぎえー!!」

 

 

「……ん?」

 

 

イドリーに向けて放たれたリュシア渾身のデュラハンチョップ。

 

当然易々とかわされ、その右手はイドリーの後ろにいたカイザのフルメタルラングに直撃した。

 

周りの光景を見ていたカイザは、リュシアから攻撃を受けたことに気が付かなかった。

 

 

「ぐおおお……効いたぁ……!!」

 

「……? リュシア、なんで蹲ってるんだ?」

 

「気にすんなタクミ、ニセデュラハンが自滅しただけだ。んな事より、ここ……なんか変じゃねぇか?」

 

『ああ、今の時刻はまだ昼前だけど……この場所はまるで夜のように暗い』

 

「ここはいつも、こんな感じだからね」

 

「そうなのか……ここにいると時間の感覚が──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ん?

 

 

「みんなも、かくれんぼしに来たの?」

 

「!? ら、ランタンベアラー!?」

 

 

一行の前に突然現れたのは、子供の姿のリュシア……もといランタンベアラーだった。

 

 

「みんなはどうしてここにいるの? モス達は……負けたの?」

 

「……うん、そうだよ。夢縋り達はみんな、エーテルの海に帰ってったの」

 

「……あたし、夢縋りって名前、好きじゃない。だってあたし、ただおとうと遊びたいだけだもん」

 

「おとう……ワンダリングハンターと、一緒に遊んでるってこと?」

 

「そうだよ! 町で遊び疲れたらね、鈴を鳴らせば、おとうが迎えに来てくれるの! 町にいた時は、ずうっとかくれんぼしてたなぁ」

 

 

どうやら鈴が鳴った時にワンダリングハンターが現れたのは、ランタンベアラーが呼んでいたかららしい。

 

 

「……ねえ。君はどうして、ワンダリングハンターをおとうって呼んでるの?」

 

「知りたいの? それじゃあ教えてあげる──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしを見つけられたら、ね!」

 

「え? あ、ちょっと!?」

 

 

瞬く間に姿をくらますランタンベアラー。

 

直後、彼女の『かぞえ唄』が、どこからか聞こえてきた。

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