ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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かくれんぼ

 

 

 

 

 

ランタンベアラーが忽然と姿を消した後、どこからともなく聞こえてくる『数え歌』。

 

 

「これ……探せって事か?」

 

「……だと思う。あたし、ランタンベアラー見つけてみるよ!」

 

 

こうしてなし崩し的に、ランタンベアラーとのかくれんぼが始まった。

 

どこへ隠れたのか、見当もつかないが……ひとまず歌が聞こえる方へ進むことにした。

 

 

「あっちから聞こえる……」

 

 

リュシアは一行の先頭に立ち、くまなく周りを探している。

 

 

「リュシア、気を付けてね。ランタンベアラーを見つけた瞬間、ワンダリングハンターが襲ってくる……なんて事もあり得るから」

 

「うん、分かってる」

 

 

歌声に近づく感覚は今のところない。

 

そもそも歌声が聞こえる方向にランタンベアラーがいるとも限らないが、それでも分かりやすい指標とはなるだろう。

 

 

「……あら?」

 

「? どうしたの、イドちゃん」

 

「前の方に……幻が見えるわ。あれは……防衛軍?」

 

 

イドリーが指を差すと同時に現れる、複数の人影。

 

幻として現れた男たちは、イドリーの言う通り防衛軍の制服を着込んでいた。

 

 

『皆、慎重に進むんだ。この先に何が待ち受けているか……』

 

 

先頭を歩く男が、武器を構えながら後ろにいる人間にそう告げる。

 

彼らは恐らく過去にこのホロウに入った分隊なのだろう。

 

 

「あの制服……確か旧都陥落前のものだったよな?」

 

『という事は、あの幻はその時のものか……十年以上誰もこのエリアに立ち入って来なかった事を鑑みるに、間違いないだろうね』

 

「……この声。顔は見えないけど、聞き覚えが……」

 

「……それって」

 

「うん。マインドリーダー……かな? もしかしたら、見つけられるかも!」

 

「…………」

 

「……タクミ、あたしは大丈夫だよ。それに、『一緒に探す』って……言ってくれたもんね?」

 

「……ああ。一緒に見つけよう」

 

 

 

 

引き続き先を進むと、再び兵士達の幻が姿を現す。

 

 

 

『くっ……エーテリアスの数が多すぎる! 捌ききれない!』

 

『分隊長! このままでは……』

 

『慌てるな! もうじき増援が来るはずだ……それまで持ちこたえろ!』

 

 

会話を聞くに、恐らくエーテリアスと交戦中なのだろう。

 

かなり切羽詰まっている事が分かる。

 

 

「……っ」

 

 

兵士の声を聞いたリュシアの顔に、焦燥の色が浮かぶ。

 

やがて、兵士の幻は消え去った。

 

 

「んー……」

 

「イドリー? どこか具合が悪いの?」

 

「いえ、そうじゃないわ……だんだんと、幻を再現するのが難しくなってる。力が……衰えてきてるんだわ」

 

 

イドリーは苦い顔をしながらそう言う。

 

確かに、先ほどの幻は……少し『薄かった』ような気がする。

 

 

「暴走しなくなったって事? 良かったじゃん!」

 

「確かに、もう迷惑をかけないで済むのは良い事だけど……この力が役に立つかもって思った矢先に、残念だわ」

 

「大丈夫だよイドちゃん。もう十分役に立ってるし、その力のおかげでいろんな人を助けられたんだから!」

 

「……ありがとう、リュシアちゃん。ならせめて、ここを出るまでは役に立たせて。この物語の結末を……しっかりきみに見せたいから」

 

「……うん」

 

 

(……ん?)

 

 

二人の会話を聞いていたカイザは、とある違和感に気づく。

 

 

(数え歌が……聞こえなくなってる? いつの間に──)

 

「ねえ!」

 

「うわっ!?」

 

 

いきなり大きな声が後ろから聞こえたので振り向いてみれば、いつの間にかランタンベアラーが立っていた。

 

彼女は頬を膨らませ、プリプリと怒っている。

 

 

「かくれんぼするんでしょ? なんで途中でやめちゃうの! ズルはダメだよ!」

 

「あ、待って! 君にお願いしたいことがあって……あたし達さ、お友達にならない? もちろん、ワンダリングハンターも一緒に!」

 

「? どうしてエーテリアスとお友達になりたいの?」

 

「それは……上手くは説明できないんだけど……あたし達の関わり方って、本当に『戦う』ことしかないのかな……なんて」

 

 

リュシアの言葉に、ランタンベアラーはきょとんと首をかしげる。

 

 

「だって……それが普通でしょ? そうやって普通と違う事ばっかりしてると、お友達がいなくなっちゃうよ」

 

「お友達ならいるよ。あたしが変な事しても、見放さずに着いて来てくれる……大事なお友達が」

 

「……そのお友達がいるなら、リュシア達がお友達になる必要なんてないよ。あんまり欲しい欲しいしてると、そのお友達だっていなくなっちゃうんだから」

 

「え? ……あっ、待ってよ!」

 

 

ランタンベアラーはまたしても姿を消した。

 

そして、再び聞こえ始める『数え歌』。

 

 

「……っ!」

 

「あ、おい待てリュシア!」

 

 

リュシアは目に見えて焦った様子で、歌の聞こえる方へ走って行ってしまった。

 

 

「なんだ……? アイツ、何をそんなに慌ててやがんだ?」

 

「とにかく、追いかけよう!」

 

 

あっという間に姿が見えなくなったリュシアを追うため、リン達も先を急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

数え歌は、次第に大きくなっていく。

 

ランタンベアラーを追うリュシアを追いながら、リン達は『結末』がもうそこまで来ている事を直感する。

 

 

「! また幻が……」

 

 

イドリーは再び自身が見た幻を現像する。

 

またしても、その幻は防衛軍のものだったが……兵士は一人しかいなかった。

 

 

『隊は……全滅か。エーテリアスを撒けたはいいが、侵蝕症状もかなり悪化してしまっているな……』

 

 

おぼつかない足取りでも、冷静に自己分析をする兵士。

 

 

『だが……なんとしても帰らなければ。まだあの子とは……かくれんぼの最中なんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──リュシアに……まだ見つけてもらっていないんだ』

 

「……!!」

 

 

カイザは、弱った兵士の小さい呟きが聞こえた。

 

リュシアの反応で予想はしていたが……彼はやはり──

 

 

『みんな! あそこにリュシアが!』

 

「ホントだ……! リュシア!」

 

 

リン達は立ち止まっているリュシアの元へ走る。

 

 

「あ、みんな。ここに来たら……『数え歌』が止まったの」

 

「『数え歌』? さっきまで聞こえてたアレか?」

 

「うん。小さい頃、おとうとかくれんぼする時によくってたから」

 

「……ここにも、過去の幻が」

 

 

イドリーはリュシアを見る。

 

それに対し、彼女は何も言わずにこくりと頷いた。

 

 

「……それじゃあ、再現するわね」

 

 

イドリーがそう言った数秒後……ミアズマの人影が浮かび上がる。

 

先程は一人しかいなかったが……今度は二人いた。

 

 

 

一人は兵士で……もう一人は小さな少女だった。

 

 

『おとう、エーテリアスになっちゃうの?』

 

『! リュシア……!? なぜここに……もしや、侵蝕が見せる幻覚と言うやつか。幻になっても、君はかわいいな……』

 

『おとうは……もうやり残したことはないの?』

 

『もちろん、あるとも……まだあの子とのかくれんぼが──いや、かくれんぼだけじゃない。あの子とやれていない事が、まだ沢山あるんだ』

 

『ふーん。じゃあ、リュシアとかくれんぼする? どんな姿になっても、おとうはずっとあたしの傍にいてね!』

 

『……ああ、いいよ。それじゃあ遊ぼうか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──願わくば、あの子ともう一度……』

 

 

 

 

「……そっか。そうだったんだね」

 

 

消える幻を見つめ、リュシアは呟く。

 

 

「ランタンベアラーは……あたしの夢縋りなんかじゃなかった。……あの子は……あのこは……っ、おとう、の……!」

 

「リュシアちゃん……」

 

「……っ、ごめんね、いどちゃん。こんなとこにいたんだね……マインドリーダー」

 

 

涙をぬぐい、顔を上げる。

 

 

「おとうは……ずっと待っててくれたんだね。ずっと……あたしが見つけるのを」

 

「……行くのか、リュシア」

 

「……うん。今からあたし、おとうに会いに行く。かくれんぼ、そろそろ終わらせなきゃね」

 

「わたしも行くわ。きみと一緒に……結末を見届けたいの」

 

「ああ。ここまで来て、やっぱりやめたなんて言うつもりはねぇよ」

 

「……みんな、ありがと」

 

 

涙で目を腫らしつつも、笑顔を見せるリュシア。

 

一行は前方にある、数え歌が聞こえてくる扉の方へと進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………かくれんぼか。いいね、悪くない遊びだ」

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