ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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カクレンボ

 

 

 

 

 

『リン! タクミ!』

 

 

エーテルの裂け目に吞みこまれてしまった二人。

 

アキラは必死に何度も二人の名前を叫ぶが……返事は返ってこない。

 

真斗は二人を消したもう一人のタクミに掴みかかる。

 

 

「テメェ! 二人をどこへやりやがった!」

 

「怒んないでって言ったじゃん、二人はちゃんと生きてるよ。さっきも言ったけど、僕はただ遊びたいだけなんだ」

 

「なんだと──ぐっ!?」

 

 

突如、真斗が掴んでいた「タクミ」の体が消える。

 

「タクミ」の足元に現れたエーテルの裂け目が彼を飲み込み、姿を消したのだ。

 

 

どこに行ったのかと辺りを見回していると、「タクミ」の声がどこからか聞こえてくる。

 

 

『この場に残った皆々様方には、かくれんぼの鬼になって欲しいんだ。どこかに姿を消してしまった二人を、君達が探す。これはそう言うゲームだ』

 

『どうしてこんな事を……君の目的はなんだ!』

 

『もう~何度も説明させる気? 僕はただ遊びたいだけなんだって』

 

 

何の気なしにそう言う「タクミ」。

 

いつも聞き慣れているこの声が、今だけは気味悪く感じる。

 

 

「アキラ、こうなったら探すしかないわ。二人を失う結末になんか、わたしはさせない」

 

「そうっスよ。野郎の目的は知らねぇが、見つけさえすればこっちのモンだ」

 

「探すのはあたし達に任せて! アキラはプロキシとしてガイドをお願い!」

 

『……分かった。それなら任せたよ』

 

『助手二号。現在地から数十メートル離れた先に、二つの生命反応を検知。追跡対象として設定いたします』

 

『!』

 

 

二人はまだそう遠くへは離れていない。

 

アキラは皆を先導し、二人を探すことにした。

 

 

『……あ、そうそう。あともう一つ、大事なことを伝えるね』

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君達以外に、"鬼"がもう一人いるんだ。ソイツより先に二人を見つけないと……大変なことになっちゃうかもよ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!」

 

 

同じくラマニアンホロウ内で、タクミは目を覚ます。

 

先程とは違う場所。

 

どうやらまたしても分断されてしまったようだった。

 

 

「あの野郎……」

 

 

いつの間にか変身も解除されており、カイザのベルトもどこにも見当たらない。

 

だが……

 

 

「! 姉ちゃん!!」

 

 

タクミは近くで、倒れ伏せているリンを発見する。

 

すぐさま駆け寄り、彼女の体を起こす。

 

 

「姉ちゃん、姉ちゃん! しっかりしろ!!」

 

「…………」

 

 

何度も体をゆすり、起こそうとするが……起きる気配はない。

 

息はしており、どこもケガをしたわけではない。

 

だが、何をしてもリンが起きる事はなかった。

 

 

恐らくイドリーと行動していた時と同じように、リンも「タクミ」によって眠らされてしまったのだろう。

 

 

「……っ、仕方ねぇ……!」

 

 

すぐにでもアキラと合流しなければならないが……リンが起きなければ、どうにもならない。

 

タクミはリンの体を両手で抱え、安全な場所へ向かおうとする。

 

 

 

 

 

 

 

その時、タクミの背後を何かが過ぎ去った。

 

 

「……!」

 

 

反射的に振り返るが、何もない。

 

タクミは近くの壁を背にし、警戒レベルをマックスに引き上げ、周りを注視する。

 

 

「…………」

 

 

エーテリアスはいない。

 

慎重に、タクミは歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間だった。

 

 

『グォオオオオオアアアアア!!』

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「なっ……!?」

 

 

完全に意識の外にあった死角から、身震いするような咆哮と共に『ホワイトシャークオルフェノク』が襲い掛かる。

 

 

「ぐっ!!」

 

 

タクミはギリギリで反応し、すんでのところでシャークオルフェノクの牙をかわす。

 

 

「くっそ……! あの野郎マジで……!!」

 

 

あのオルフェノクは、十中八九もう一人の自分がけしかけたものだろう。

 

今はカイザギアもないため、タクミはリンを抱えながら逃走を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『かくれんぼ』開始から、十五分ほどが経過した。

 

「タクミ」が言っていた『もう一人の鬼』。

 

その存在より早く、二人を見つけなければならない。

 

アキラはプロキシとしての頭脳をフル稼働し、Fairyの力を借り進んでいると……

 

 

「! みんな、あそこに幻が……!」

 

「!!」

 

 

イドリーが指を差す先。

 

大きな瓦礫の物陰に、ミアズマでできた二つの影が浮かび上がる。

 

 

『……!』

 

 

一人はタクミ。

 

顔はぼやけて見えないが、間違いはないだろう。

 

 

もう一人はリン。

 

彼女は……タクミに抱えられたまま、ぐったりとしていた。

 

 

「リン……気絶しているのかしら」

 

『……大丈夫だ。Fairyの言う事が正しければ、今のところ二人とも無事のはずだ。それに少し前に、タクミ達はここにいた。状況を掴むいい手掛かりになる……!』

 

 

幻のタクミは辺りをしきりに見渡し、何かを警戒している様子だった。

 

そして彼は口を開き、呟き始める。

 

 

『姉ちゃんはまだ起きないか……あのオルフェノク、やり口が反則だろ……! なんだよ地面を潜るって……!』

 

 

 

「……! オルフェノク、だと……!?」

 

「オルフェノクって、エーテリアスよりも強いやばいやつの事だよね……!? まさかとは思うけど、それが『もう一人の鬼』……!?」

 

『もううかうかはしていられない……! 皆、先を急ごう!』

 

 

リンの容態もそうだが、このままではタクミも危ない。

 

一行は全速力で、タクミ達の行方を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして道中、またしても二人の幻を発見。

 

 

『はぁ……はぁ……くそ、さすがに疲れた……』

 

「……! タクミ……!」

 

 

先程見た時よりも、明らかに疲れ果てている様子だった。

 

リンは、いまだに目を覚ましていない。

 

 

「なんで……どういう事……?」

 

「イドリーさん、どうしたんだ?」

 

「タクミの幻が……はっきりと見えないの。リンは上手くいっているのに、どうして……」

 

『……!!』

 

 

確かにイドリーが再現した幻は、リンの姿は顔まではっきりと映っているが……タクミの方は所々がぼやけ始めている。

 

 

「イドちゃんの力にも、限界が来てるのかも……無理はしないで!」

 

「そういうわけにも、いかないわ……なんとしても、二人を見つけなきゃ……!」

 

『大丈夫だ、イドリー。二人には確実に近づいている。生体反応も今のところ二つとも消えていない。諦めなければ、きっと……!!』

 

 

 

アキラがそう言った直後、幻のタクミが叫ぶ。

 

 

『うわっ! こっちに……くそっ!!』

 

 

悪態をついたあと、タクミは立ち上がって一目散に逃げていく。

 

 

そこで幻は消え去った。

 

 

「……幻は見えねぇが、今もタクミはオルフェノクに追いかけられてる……って事で良いんだよな」

 

「……っ!」

 

 

四人は顔を見合わせ、すぐさまその場から駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オルフェノクとの『かくれんぼ』も、既に三十分が経過した。

 

廃墟に隠れたタクミの体力も、限界に近付いている。

 

タクミはリンを寝かせ、休憩を取る。

 

 

本来なら、同じ場所で待っていればアキラ達がこちらを探しに来てくれるだろう。

 

だが、シャークオルフェノクの絶え間ない奇襲が、それを許さない。

 

 

こちらから動こうにもホロウの中ではどうしようもない。

 

空間転移をしながら、どこへ向かうのかも分からないまま、ただ闇雲に逃げるしかなかった。

 

 

かくれて、見つかって、逃げる。

 

先程からずっとその繰り返しだった。

 

 

 

だが幸いにも、対処法はある。

 

と言うのも、シャークオルフェノクは本物のサメと同じく鼻の頭が弱点だという事がわかった。

 

襲ってきた際に、鼻の頭を蹴り飛ばせばシャークオルフェノクを怯ませられ、一時的に撒く事ができる。

 

 

そうしながら何とか逃げてきた訳だが……アキラ達からは、遠ざかるばかり。

 

 

リンも、まだ目を開ける様子はない。

 

 

だがどんなに疲れていても、諦めるわけにはいかない。

 

今タクミにはリンの命が預けられている。

 

 

何より、この事態になった張本人であるもう一人の自分は、どこかでほくそ笑んでいる。

 

タクミはそれが気に食わなかった。

 

 

(……)

 

 

タクミは呼吸を整え、疲労した体に鞭打ち、立ち上がる。

 

そして廃墟の窓から、様子を見る。

 

シャークオルフェノクの姿はない。タクミは安堵のため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一瞬の油断。

 

それを、シャークオルフェノクは見逃さなかった。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

壁や地面の中からでは飽き足らず、今度は廃墟の()()から、捕食者が飛び出す。

 

大口を開け、天井から落ちてくるシャークオルフェノク。

 

 

 

『グォオオオオオアアアアア!!』

 

 

 

その先には、地面に横たわるリンの姿。

 

 

「……あ」

 

 

 

状況を理解するよりも。

 

 

大事な家族の名前を叫ぶよりも。

 

 

 

その体は、既に動き出していた。

 

 

 

 

右手をリンの方へ伸ばす。

 

 

 

 

時間が何分にも、何時間にも感じられるほど長く感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして捕食者から救い上げたその命。

 

タクミの中に沸く『安堵』。

 

 

それは、身体に走る『激痛』すら消し去ってしまうほどだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………そんな」

 

 

リュシアたちは、絶望にも似た感情に襲われていた。

 

タクミ達を追っていた先で見つけたのは……血。

 

 

赤黒い血が、地面に散らばっていた。

 

 

『……何かの、間違いだ』

 

 

アキラは小さくつぶやく。

 

 

「…………クソッ」

 

 

ホロウにある血は、エーテリアスのものではない。

 

では誰のものなのか。言葉を交わさずとも、予想はついた。

 

 

地面に落ちる血は、とある方向に点々と続いている。

 

 

 

 

 

……その先に、幻が見える。

 

 

アキラ達は、『違っていて欲しい』と願いながらそこへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして見つけた二人の幻。

 

 

『……タクミ』

 

 

リンはまだ、静かに眠っている。

 

 

タクミの方は──

 

 

 

『嘘だと……言ってくれ……!』

 

 

 

その全身に、見るに堪えない重傷を負っていた。

 

 

適当観の道着は赤い血にまみれ、ボロボロになっている。

 

ぼやけてこそいるが、その痛々しさは一目見て分かった。

 

 

 

『……姉ちゃん。ごめん、今だけは起きないでくれ』

 

 

 

ぼたぼたと、血が滴る。

 

タクミの顔色は分からないが、血色は目に見えて悪くなっている。

 

今までの負傷とは訳が違う。今生きているのが不思議なくらいだった。

 

 

 

『ゲホッ……やっぱり、痛い……な……』

 

 

 

 

 

 

「……タク、ミ」

 

 

 

膝をつくリュシア。

 

息が詰まる。心臓の鼓動が早くなる。

 

 

「おいリュシア、諦めんな! まだどっちも生きてる、そうだろ!? ここでモタモタしてる暇はねぇぞ!」

 

『……真斗くんの言う通りだ。まだ、死んだわけじゃない。それに……タクミは……すぐそこにいるはずだ。まだ……諦めては……』

 

「……タクミ」

 

 

イドリーは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

タクミの幻が、イドリーの意思に関わらず、ほぼほぼ消えかけているのだ。

 

対するリンは未だにハッキリとした姿のまま。

 

 

彼が弱っていくと同時に、幻としての姿も次第にぼやけていく。

 

それが何を意味するのか……もはや気にする余裕もない。

 

 

 

『……姉ちゃんだけでも、守んないとな。あのサメ野郎は……どうせまた来るだろうしな』

 

 

 

 

 

 

 

 

タクミはそう言うと、リンを片腕で抱え、足取りもおぼつかないまま歩き出す。

 

 

 

『……まだ、大丈夫だ』

 

 

 

まるで、痛みなど感じないかのように。

 

 

 

 

 

 

 

そこで幻は消える。

 

もはや一刻の猶予も許されない。

 

タクミが失血死してしまうその前に、見つけ出さなければならない。

 

 

 

 

だが

 

 

『……皆様』

 

『Fairy?』

 

『皆様に……お伝えしなければならない事があります』

 

 

 

 

 

 

 

 

時折、迫り来る運命と言うのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『追跡中の二つの生体反応のうち一つが……今先程、消失しました』

 

 

小さな希望すら、いとも容易く踏みにじる

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