ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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ハッピーハロウィン!(半年遅れ)


ハロウィン①

 

 

 

 

 

「トリックオアトリート~!!」

 

 

十月三十一日、お昼過ぎ。

 

ノック音が聞こえる部屋の扉を開け、飛び込んできたのは柚葉のその掛け声だった。

 

 

「元気だな柚葉……」

 

「そりゃそうでしょ! ハロウィンなんて柚葉の為にあるようなイベントだもん!」

 

 

非常に説得力のある言葉だ。

 

故に、ここに来た理由も容易に想像がつく。

 

 

「さてさて……タクミはお菓子を持ってるかな!? 持ってなきゃ……分かってるよね?」

 

「……悪いな。用意はしてたんだが、五分くらい前に来た澄輝坪の子供の分でなくなったんだ」

 

「ほう、ほうほう……! つまりタクミはイタズラの方をお望みと……!」

 

「ま、待て! 今はなくなったってだけで、もうないわけじゃない! 新しいのを作ってる途中なんだ」

 

「またまたそんな……って、え?」

 

 

柚葉は目を丸くする。

 

 

「お菓子……作ってるの? 市販じゃなくて、手作り?」

 

「ああ。一応昨日から作ってたんだけど、すぐに無くなったんだよな」

 

「ふ……ふーん? じゃあ、柚葉の分もあるって事?」

 

「そうだな。もうすぐできるから、ちょっと待ってろ」

 

 

タクミはそう言うと台所の方へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして待っているうちに、『かぼちゃクッキー』が焼き上がった。

 

タクミはクッキーが複数個入った袋を柚葉に渡した。

 

 

「わあ、ありがと……!」

 

「適当観のオーブン使うと、結構おいしく焼き上がるんだよな。まあとにかく、それがあげるお菓子だ」

 

「んー……嬉しいけど、これじゃイタズラはできないなあ」

 

「ハロウィンじゃなくてもいつもイタズラしてるだろお前は……」

 

「あはは、確かに! それにしても、なんかすごい気合入ってるね……もしかして、タクミも柚葉と同じくらいにはハロウィン楽しみにしてた感じ?」

 

「…………」

 

「……ま、聞かなくても分かっちゃうけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タクミ、バッチリ仮装してるもんね」

 

「……まあ、そうだな」

 

 

タクミは現在、吸血鬼の仮装を身にまとっている。

 

服装はもちろん、ちゃんと牙もある。

 

 

タクミは望んで仮装したわけではないが……嫌と言う訳でもなかった。

 

柚葉の言う通り、確かに楽しみにはしてた。

 

 

本当はミイラやゾンビの仮装をし、友達を『逆に』脅かしてやろうと思ったが……包帯を巻こうとしたところでなぜかリンに止められた。

 

 

「んー……確かに『そういう』タイプの仮装はやめた方がいいかも」

 

「え? なんで?」

 

「そりゃ、みんな別の意味でびっくりするかもだし。……それより、柚葉の()()、どうかな? 来た時から、感想を待ちわびてるんだけどな~」

 

 

柚葉は自分の仮装を見せびらかす。

 

彼女の仮装は黒を基調とした、いわゆる小悪魔系のもの。

 

一緒にいるかまちーも同様の仮装をしており、おそろいのツノのカチューシャが可愛らしい。

 

 

「お、可愛いし似合ってるじゃねーか。つかやけにしっくり来るな……普段が普段だからか?」

 

「ふーん……? 柚葉が小悪魔って言いたいの?」

 

「あっ、違くて」

 

「そーゆー事を言っちゃうなら……やっぱりイタズラしちゃおうかな~?」

 

「や、やめろ来るな! ごめんって! なんだその手は!」

 

 

吸血鬼対小悪魔。

 

イタズラをかけた攻防が始まろうとしていたその時。

 

 

「タクミくんっ! あたしも仮装の用意できましたよっ!」

 

「福福先輩?」

 

 

どこからか福福が飛び出してきた。

 

 

「……あれ? 柚葉ちゃんも来てたんですね!」

 

「あれ、福福ちゃんじゃん。あなたも仮装を?」

 

「ふふふ……ハロウィンはよく分からないですけど、この日は福福の威厳を澄輝坪の子供たちに知らしめる絶好の機会っ! このこわーい仮装で、その恐ろしさを思い知らせてやりますよっ!」

 

 

がおーと唸り、両手をくわっと広げる福福の仮装。

 

全身虎模様の服装で、顔には虎のお面が取り付けられていた。

 

 

(……確かに福福先輩がつけてる虎のお面はリアルだけど)

 

(なんか服装が……パジャマっぽくて可愛いって感想しか出てこない)

 

 

仮装を見た二人の感想はそれだった。

 

もちろん、口に出す事はしない。

 

 

「さあ行きますよ二人ともっ!」

 

 

澄輝坪の人達にこれを見せびらかした後、撫でられながらお菓子をもらう羽目になろうとは、この時の福福は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

そして適当観の外を出た後、柚葉達はアリス達の元へ向かった。

 

先程聞いたことだが、今日は怪啖屋の皆で澄輝坪と泅瓏囲を回る予定らしい。

 

 

ちなみにアキラとリンは一時的に六分街に帰省している。

 

あちらもあちらで、素敵なハロウィンを楽しんでいる事だろう。

 

 

「皆、お待たせ~!」

 

「あっ、やっと来たのだわ!」

 

「タクミ! それってもしかしてドッペルゲンガー?」

 

「いや吸血鬼だよ……どこがドッペルゲンガーに見えたんだ」

 

「ふふ……よく似合ってるわ」

 

 

アリス、リュシア、イドリーの三人も仮装をしていた。

 

 

イドリーは魔女。

 

本人の併せ持つ雰囲気が、魔女の仮装とよくマッチしている。

 

 

アリスはキョンシー。

 

結構意外な組み合わせだった。衣装は案の定一ミリの狂いもないシンメトリーで、顔のお札に書かれている文字までシンメトリーになっていた。

 

 

そしてリュシアは……

 

 

「……リュシアはそれ、なんのコスプレだ」

 

「アルラウネだよ!」

 

「なんだそのチョイス!」

 

 

リュシアはエーテル弾を飛ばす花のような姿をしたエーテリアス、アルラウネの仮装をしていた。

 

コアの部分からリュシアの顔が出ており、なんともシュールである。

 

 

「皆さんっ! あたしの仮装はどうですか? カッコよくて恐ろしいでしょう!」

 

「おお、福福ちゃんのコスプレはカッコよ……ん? カッコ……いい……?」

 

「……リュシア、こういう時は」

 

「とってもキュートね〜」

 

「キュゥッ……!?」

 

「あーーーーちょっとイドリーさんこっちに!」

 

 

少し離れたところでイドリーに小さい声で話す。

 

 

「イドリーさん……福福先輩には、カッコイイって言ってあげてください……!」

 

「ど、どうして?」

 

「福福先輩は可愛いよりカッコイイって言われたい人なんです……だからどうか!」

 

「そうだったのね……分かったわ」

 

 

イドリーとタクミは再び福福の元に戻る。

 

福福はがっくしと肩を落としている。

 

 

「福福ちゃん、きみのその仮装……とってもカッコイイと思うわ」

 

「え……? でもさっきはキュートって言ってませんでした?」

 

「あれはタクミに言ったの〜」

 

「おおい!!」

 

 

何故よりによって自分の事になるのか。

 

アリスとか柚葉とか『キュート』の矛先はいくらでも変えようはあったはずだ。

 

 

「なんだ、そうだったんですねっ!」

 

「なんで納得するんだ!」

 

「事実だからじゃない〜?」

 

「おうそれどういう意味かな柚葉チャン」

 

 

ちょくちょく『可愛い』と呼ばれるのが納得いかない。

 

タクミもどっちかって言うと『カッコイイ』と言われたい派なのだ。

 

 

「……つかさっきから聞きたかったんだけど、真斗はどこ行ったんだ?」

 

「真斗は、バイトがあるから来れないと言っていたのだわ。時間が空いたら来るとは言っていたのだけれど──あら?」

 

「?」

 

 

どうしたのかと聞く前に、足音が聞こえてきた。

 

 

 

……誰かか、こっちに走ってくる。

 

 

あの耳にあのガタイは、間違いない。

 

 

「真斗! バイトはもう終わったの? 随分早かったね──って」

 

 

今の真斗の格好を見て、柚葉は顔をしかめる。

 

 

「真斗……そのカッコはなに? それってもしかして仮装のつもり?」

 

「…………」

 

 

真斗の仮装はシンプルにおばけがモチーフ。

 

……なのだが、明らかに白い大きい布を被っただけで、その布には顔すら書かれていない。

 

真斗の姿は完全に隠れており、頭頂部の耳だけが飛び出していた。

 

 

「……まあいっか、ちゃんと来れただけ。ガタイは良いから、威圧感はあるかもね?」

 

「まあとにかく、これで全員揃ったな」

 

「そだね。それじゃ、さっそく澄輝坪をまわって行こっか!」

 

 

 

こうして、怪啖屋+福福によるハロウィン凱旋が始まった。

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