「はあっ!!」
「ガァアアア!!」
勢いをつけた拳での一撃でサクリファイスを吹き飛ばすカイザ。
手首をスナップさせた後、カイザはカイザポインターを取り出しミッションメモリーを装填。
[Ready]
[Exceed Charge]
そのままポインターを右脚の脛部分のエナジーホルスターにセットし、カイザフォンのENTERキーを押した。
黄色いフォトンブラッドが右足に集まる。
カイザは右足に銃身を乗せ腰を溜め……そのまま走り出した。
「ふっ!!」
勢いのまま大きく飛び上がり、サクリファイスに向けポインティングマーカーを発射。
金色の円錐状のエネルギーがサクリファイスをとらえる。
「はぁぁぁあああっ!!」
カイザは片足を伸ばし、サクリファイスに向け渾身の『ゴルドスマッシュ』をお見舞いした。
「───!!」
断末魔さえ上げられず、サクリファイスは「Χ」のマークを浮かべ消滅した。
そうしてサクリファイスを全滅させた後、瞬光は捕縛した導師に剣の切っ先を向ける。
「さあ、白状しなさい! アナタ、ここに来て何をするつもりだったの!?」
「無傷で帰れると思わないでよね! あんた達の好きにはさせないんだから!」
「……貴様ら……」
導師に詰めよるリンと瞬光。
カイザもフォンブラスターの銃口を向け、目を光らせている。
……と、そこにダイアリンが割って入る。
「ダメですよ~お二方、そんなんじゃこの人はいつまでも口を割りません。なんたって彼には黙秘権がありますからね。見た感じこの『お客様』は、見間違いでなければ讃頌会の人間ですよね?」
「そうだけど、讃頌会は防衛軍が殲滅させたはず……また何か企んでやがるのか?」
「どうでしょうね~。ま、この人が口を割るつもりがないなら、適当に防衛軍に引き渡しちゃいましょう」
「……ふん、そうすればいい。貴様ら愚者共が何をしても無駄な事だ」
「あれれ、ホントにいいんですか? 防衛軍の方々、例の件で随分讃頌会にヘイトを向けてましたからねえ。あそこじゃ多分、人間らしく扱ってもらえる保証はありませんよ?」
「ぐ……!」
導師の顔が、わずかにゆがむ。
もちろん、その瞬間をダイアリンは見逃さない。
「上の人間の為に義理立てしようとする姿勢は立派ですが、ぶっちゃけ割に合わないと思いますよ? あんたがそれでも良いと仰るなら、止めはしないですけどね」
「……っ、分かった、分かったよ! 言えばいいんだろ!?」
彼は半ばやけくそ気味にそう叫んだ。
やはり導師自身も、割に合わないと思っていたのだろう。
「俺だって、こんな生活はうんざりさ……讃頌会はほぼ壊滅状態だってのに、サラ様は『古の陣』を探せなんて命令してくるんだ! しかも唐突に!」
「古の陣……? 何それ?」
「それは、俺にもわからん……嘘はついてない! それが何なのか知らされないまま、俺達は何日も『古の陣』とやらを探し続けてきた……」
サラは、『百年以上の時を経ていて、なおかつその場に相応しくないもの』を見つけたら、直ちに報告せよと導師たちに指示したらしい。
「それが人なのか物なのかエーテリアスなのか……はっきりしないまま、気づけば数日が経過していた。もちろん、何の成果も得られなかった」
「…………」
敵ではあるが、カイザはほんの少しだけ、目の前の導師に同情の念を抱いた。
「こんな事なら、讃頌会に入るんじゃなかったよ……入って間もないうちに司教様はいなくなり、サラ様のあいまいな命令に振り回され、逃げ続ける毎日。もうこんな生活を送るくらいなら、防衛軍に引き渡された方がマシかもな……」
「えーっと……そこまで自暴自棄にならなくてもいいんじゃない? 今度は真っ当な道で、一からやり直せば……」
「やり直すか……サラ様達が元に戻したサクリファイス達なら、文字通りそうする事ができるかもしれんが……」
「……ん? 今なんと? サクリファイスを、元に戻した?」
「え? ああ。実に不思議な話だが……俺は確かに、その目で見たんだ」
メヴォラク亡きあと、『始まりの主』はサラにとある力を授かったらしい。
導師は、サラがその力を使ってサクリファイスを侵蝕の跡一つ残さず人間に戻す光景を目撃したとの事。
「確かサラ様は……それを『始まりへの回帰』だとか呼んでいたな」
(そう言えば……前に見た釈淵さんの幻が、『サラが悪夢を取り除いてくれた』みたいな事を言ってたけど……それと同じ力?)
「その力は、はっきり言って俺の理解を超えていた。サラ様の行動も、奇妙さを増すばかりで……今彼女の元にいるのは、栗毛の陰気そうな男と──」
「……!!」
「ちょ、ちょっと待って! それって……!」
話を聞いていた瞬光が身を乗り出す。
「な、なんだ? どうしたんだ?」
「あ……えっと……その男の人って、どこにいるのか分かる?」
「……悪いが、それについてもさっぱりだ。サラ様共々、どこに行ったのかは俺達にも分からん。分かるのは、あの二人が共に行動をしていたという事だけだ……」
「……そっか」
導師の様子や声色からして、嘘をついている訳ではなさそうだ。
「んー、彼にはあとで引き続き色々と答えてもらうとして……そろそろ救助を再開しましょうか」
「そうだね。盤岳先生の生徒の人も、まだ崖下に閉じ込められてるし……」
なんとかして、彼の元にある植物をどうにかしないといけない。
だが彼がいる崖下に降りようにも、ミアズマの茨が邪魔をし降りる事が出来ない。
どこかに、『崩解の法』で消せるコアがあるはずだ。
「……! 姉ちゃん、コアを見つけた!」
「ホント!?」
カイザはエックスファインダー等を駆使し、コアを発見した。
しかし……そのコアは植物の
「裏側ですか……となれば、遠回りして向こう側から行くしかなさそうですねぇ……」
「Fairy、向こう側までのルートを測定して!」
『既に完了しております。現在地からの目的地までの距離は約七十メートル』
「よし、それじゃあ行こう!」
目的地へと向かうリンに、瞬光たちも着いて行く。
カイザも出発しようとした、その時だった。
「…………ん?」
ふと目に入った、その姿。
ここから遠く離れたホロウの崖上で……灰色のフードを被った何者かが、こちらを見つめている事に気が付いた。
「…………」
フードで隠れており、その顔は見えない。
カイザを見つめる人物は、こちら側が視認したにも関わらず、逃げる事はしなかった。
(誰だ、アイツ……? まさか、もう一人の俺……いや、それにしてはなんか小柄だな……)
一体誰なのか、思い当たる節がない。
身長からして、サラでも釈淵でもないだろう。
「タクミ? どうしたの?」
「いや、あそこの崖上ににフード被ったやつが……」
「え、どこ?」
「いやほら、あそこ……ってあれ?」
フードの人物がいた場所を指差すカイザだったが、そこには既に誰もいなかった。
「んー……? 今確かにいたんだけどな……」
「見間違いとか……?」
「瞬ちゃん、タクミ、何してるの?」
「早く来ないと置いてけぼりになりますよー!」
「あ待って、すぐ行く!」
リン達の元に走っていく瞬光。
「……??」
カイザは訳も分からないまま、リン達の元へと向かった。
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引き続き目的地へと向かうリン達……だったが。
『瓦礫で埋まっている……』
「見事に行き止まりですねー……」
コアを消せる場所まで向かおうとしたが……巨大な瓦礫の数々で道がふさがれてしまっていた。
「……仕方ないな。瞬姐さん達はさっきの場所に戻って待っててくれ。目的地には俺と姉ちゃんが行く」
「行く? 行くってどうやって」
「どうやってって……跳べばいいだろ跳べば」
「え? 何を言ってええっ!?」
「!?」
「わお〜、凄いですねぇー!」
カイザはリンの体を両手で抱き上げると……そのまま空高くジャンプした。
一跳び三十メートルのジャンプ力を持つカイザにとって、この程度の瓦礫を超えることなど造作もなかった。
リンを抱きかかえたまま、瓦礫の向こう側に着地するカイザ。
「さ、着いたぞ。行こうか」
「う……うん、ありがとう」
そう言えばファイズやカイザはこういう事が出来たのだと、リンは今になって思い出したのだった。