けど俺めげないぜ!(修造並感)
「──は!?戻ってきたぞ!?」
一方その頃、クリティホロウでは。
ホロウの中では、何でも屋『邪兎屋』の従業員、アンビーとビリーがエーテリアスと逃走劇を繰り広げていた。
二人は『キャロット』を持っていなければ、『プロキシ』がいる訳でもない。
故に空間の座標が不安定なホロウで目的地に辿り着くのは困難を極める。
なかなかエーテリアスを撒くことができない。
「クソッ、キリがねぇ!これじゃ弾代だけで大赤字だぜ……!」
「──っ来る、構えて」
アンビーは刀を、ビリーは二丁拳銃を構え、迎撃態勢に入る。
すると2人の背後から何かが転がってきた。煙幕弾だ。
煙を吹き出したそれは、瞬く間にエーテリアスの視界をくらませた。
「……」
「……へ?あ、いや、俺じゃねぇって!」
すると──
「おーい!こっちだよ!急いで!」
二人の背後から声が聞こえた。電車の影から一匹のボンプがこちらに手を振っている。
二人は急いでそこへ避難し、そのボンプの元へと向かう。
ボンプはアンビーとビリーにとって見覚えのある姿だった。
「二人とも、お疲れ様!」
「……スカーフの、喋るボンプ……」
「おおっ!もしや、『パエトーン』!」
「ふふっ。──って、アンビー!ビリー!後ろ!」
「「ッ!!」」
振り返ると先程とは別のエーテリアスが、手に持った武器を振り下ろす直前だった。
このままでは躱しきれない──
その時。
「オラァッ!!」
そのエーテリアスに、一つの人影がそのエーテリアスを思い切り蹴り飛ばした。
吹っ飛ばしたエーテリアスは壁に叩きつけられたのち、そのまま消滅した。
その人影の姿も、二人にとっては見覚えのあるものだった。
「──おいアンビー、ビリー、大丈夫か!」
エーテリアスを蹴飛ばしたのはファイズだった。
「私は大丈夫よ、『ファイズ』。ありがとう」
「おお!スゲー良いタイミングだったぜ!」
こうして二人は無事『パエトーン』と合流したのだった。
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「──あの上級エーテリアスの声はもう聞こえない」
「よ、良かった……走りすぎて足の油圧ロッドが折れるかとも思ったぜ……」
クリティホロウ、古い地下鉄分岐駅のとある場所にて。
先程までエーテリアスとの鬼ごっこを繰り広げていたアンビーとビリーは、これで一安心とばかりに胸を撫で下ろした。
「適度な休憩を取ることを提案する。いい?プロキシ先生」
「お疲れ様。ゆっくり休んでね」
「それじゃあ見張りは俺がするぜ」
「ありがとう、二人とも」
そう言ってアンビーは腰を下ろした。
「ふう……さっきは危なかったぜ……まさかあの赤牙組のおっさんが、あんな風に異化しちまうとはなぁ」
「赤牙組の首領の事か?そういやニュースで、ホロウに落ちたって言ってたな」
「ああ……どうやらおっさん、エーテル適応体質じゃなかったみたいでな……俺とアンビーが来た時には、もうエーテル結晶が全身に広まっちまってた」
赤牙組の首領──シルバーヘッド・ミゲルはホロウに落ちてしばらくしてエーテル侵蝕が進み、異化。エーテリアスとなってしまったらしい。
「まあ何はともあれ、店長が俺達をあそこから連れ出してくれて助かったぜ……さすが『パエトーン』、相変わらず頼もしいな!」
「いやいや、プロキシの役目を果たしたまでだよ」
「ニコの事だから、節約のために自力で対処するように言ってくるのかと思った……それがまさか、かの有名なパエトーンを探してくるなんて」
アンビーは感謝の言葉を述べる。
「プロキシ先生とファイズが駆けつけてくれなかったら、私たちはエーテリアスの領地から脱出出来なかったはず」
「気にすんなよアンビー……ここまで案内してくれたプロキシはともかく、俺はただ横からエーテリアスを蹴っ飛ばしただけだからさ」
「それでも命を救ってくれた事は変わりないわ……ありがとう」
「……ああ」
ファイズは気恥ずかしそうに頬をかいた。
「ところでさ、前から聞きたかったんだけど」
「? どうしたの、ビリー?」
「いや、店長の設備って、ボンプと感覚を同期できる上に、ホロウ内部ともリアルタイムで通信できるんだろ?それって、治安局やホロウ調査協会よりよっぽどスゲェじゃねぇか!」
ビリーは目を輝かせながらそう言った。
「そんな切り札があるなら、なんで調査協会に加入しねぇんだ?俺らみたいなホロウレイダーと働いてたら、メリットよりリスクの方が──」
「グルルル……」
何かが唸る声が聞こえた。
「……エーテリアスの声だ」
「……はやくね?横になろうとしてたとこだったのに!」
「すぐに撤退しないと……でもまあ、ビリーが望むならここで永遠に眠るのもいいかもね。来年のスターライトナイトの新作のベルトを貴方の墓前に供えてあげる」
「そーいうことを真顔で言うなよ……本気が冗談か分かんなくなるだろ!?」
ちなみにスターライトナイトとは、ビリーが愛してやまない特撮番組に登場するヒーローの事である。
ベルトを墓前に供えたら墓参りに来る人が困惑しそうだ。
「移動するよ、しっかり着いてきてね」
「道中での戦闘は任せて」
「今回はファイズもいるから、何とかなりそうだな!」
「あんま期待し過ぎないで欲しいんだけど」
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「フッ、ハァッ!」
「トリャアッ!」
三人はエーテリアスの集団と交戦していた。
ビリーは二丁拳銃を駆使し、的確にエーテリアスの急所を貫いていく。
アンビーの方は電磁ナタを駆使し、雷を使い敵を切り裂いていく。
時々ビリーの攻撃の合間を塗るようにアンビーが斬撃を繰り出し、邪兎屋の従業員同士ならではの連携も見せていく。
一方ファイズは──
「フンッ!はぁっ!」
「ガァァアア!!」
「やぁっ!!」
「グルルルァァァア!」
腕を全力で振り回して力いっぱい殴り。
倒れたエーテリアスに追撃と言わんばかりに蹴りを入れ。
掴みかかっては膝蹴りをお見舞いし。
挙句の果てにエーテリアスの足を踏みつけ、逃れられないようにしつつ攻撃をしていた。
──二人と比べると、お世辞にもスマートとは言い難い。これがファイズの闘い方である。
ファイズ──もといタクミは、別に何処かで訓練していたとか、兵役についていたとかそういう過去がある訳では無い。
中学時代に少しヤンチャしていたぐらいで、基本的には闘いとは縁のない暮らしだった。
故にタクミの闘い方は、喧嘩のようなラフファイトが基本になる。
それでもなおエーテリアスと渡り合えているのは、ファイズのスペックによるものだろう。
ファイズの力は強大なもので、並のエーテリアス相手なら雑に殴ればすぐに消滅してしまう。
また、タクミは戦闘センスも突出しており、複数が相手でも咄嗟に機転をきかせ有利に立ち回ることが出来る。
これが、ファイズをファイズたらしめている要因である。不良やチンピラのような戦い方でもなんとかなってしまうのだ。
「くらえ!!」
「グルァァァ!!」
そうこうしているうちに、ファイズがトドメの一撃をさし、エーテリアスを無事殲滅させることが出来た。