「あの時は助かったよ。あんたやお友達が来てなければ今頃どうなってたか……」
「気にしないで。大事がなくて何よりだわ!」
タクミ達は奇遇にも、鉱区跡地でミアズマに閉じ込められていた鉱員の一人と再会した。
ちなみにタクミに関しては素顔で会うのは初めてとなる。
鉱員は目の前にいる少年がカイザだったとは思っていないだろう。
「本当にありがとうな。今回の件は、ぜひお礼をさせて欲しい!」
「そう? それじゃあ、一つ聞きたいことがあるんだけど……」
「なんだ? 何でも聞いてくれ!」
「えっと……鉱区跡地に、『ミアズマを吸収する陣法』……みたいなのがあるって知ってる?」
「ん? なんだ、あんた達も知りたがってるのか」
「え?」
鉱員は陣法について知っている事を話し始める。
「昔、親父から聞いたことがあるんだ。ここ数十年、鉱区によその人間が来ては、鉱員たちにその陣法とやらについてを尋ねてくるって。素人のくせして、鉱区の奥まで入って調べようとした奴もいたんだとさ」
「それで……その人達は何か見つけたんすか?」
「さあな。ただ……十二、三年くらい前かな。夫婦らしき二人組が鉱区に来た事は覚えてる。その人達もその陣法を調べてたな」
「……!」
その夫婦は鉱区に来てから、住民たちの病気を診たりなど、かなり打ち解けていたらしかった。
恐らくその夫婦は……瞬光の両親の事だろう。
横にいる瞬光の顔を見るに、彼女もそれに気づいたようだった。
「まあそれから数年も経たないうちに……例の事故が起きたってわけだ。あの二人が調べてた『ミアズマを吸収する陣法』も、きっと見つからなかったんだろうな」
「……そうだったのね。その十年前、何か覚えてた事はない?」
「覚えてた事か──そうだ、あんたはホロウに入った時、やたらデカくて白い花を見たか?」
「あ……それならホロウに入った直後くらいに見かけたわ」
今までどのエリアでも見かけなかったあの白い花。
ミアズマが引いたとされる鉱区跡地エリアで、侵蝕の気配もなく咲いていたものだ。
「実は十年前の鉱区でも、同じようなものが咲いていたんだ。事故が起こる少し前の頃だな」
「そうなの……? どうりで昔見たことがあると思ったわ……」
「他に覚えてる事は……もうないな。十年前のゴタゴタで俺もはっきりとした記憶はないんだ。親父の事もあったし、友人とも疎遠になってたからな。だが……」
鉱員は話を続けようとしたが……少し言いよどんだような顔をする。
「……どうしたんすか?」
「んー……まあ恩人だし、話してもいいか。実は数日前に、陣法について聞いてきた奴がもう一人いたんだ。若い長身の男だった」
「!! そ、それってどんな姿だった!?」
「あー……黒い髪に、黒い服を着てて……丁寧な言葉遣いの男だったよ」
「黒い髪……じゃあ、お兄ちゃんじゃない……?」
「その人って眼鏡はかけてました?」
「ん? いや、かけてなかったな……本当はその人は、危険な事に巻き込みたくないからって、俺に口止め料を渡してきたんだ。恩人相手じゃなきゃ、ここまで話さなかったさ」
栗毛でも眼鏡をかけていたわけでもなかった……と言う事は、釈淵ではないのだろう。
恐らく讃頌会の残党なのだろうが……
(……話を聞く限り、全くの他人ってわけでもなさそうだぞ……どういう事だ?)
「ありがとう、お兄さん。色々と教えてくれて」
「気にすんな。少しでも役に立てて良かったよ。にしてもあんたら、ここへは何をしに──ああ~」
鉱員は口角を上げ、やたらと暖かい視線を向け始めた。
「すまん、こいつは野暮ってやつだったな。せっかくの大事な時間、無駄にさせちゃ悪いよな」
「え?…………ええっ!?」
「?」
鉱員の言葉に、なぜか瞬光の顔は真っ赤になる。
タクミは鉱員の言っている意味がまだ理解できていない。
「それじゃ、俺はこれで失礼するよ。お幸せにな~」
「ちょ、ちょっと待って! ワタシとタクミは、そういうのじゃ……!!」
瞬光の制止も適わず、鉱員はそのまま何処かへ行ってしまった。
「…………!!」
「……瞬姐さん、あの人なんの話をしてたんだ?」
「へっ!? な、何かしら……わ、ワタシもよく、分かんなかったわ……!!」
「……?」
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適当観へ戻った後、瞬光はリン達に鉱員から聞いたことを話した。
「うーん……じゃああの白い花はやっぱり……」
「うん。あれが『前兆』だとしたら……近いうちに、ミアズマの大量発生が起こるのかも。そうじゃなくても、何かがある事は確かだとおもうわ」
「僕も瞬光と同じ意見だ。それに例の陣法も、話を聞く限り本当に実在している可能性があるな」
「サラがその陣法を探してる理由が、瞬光さんのご両親と同じなのかはさておき……ひとまず鉱区跡地の居住区に行ってみる必要がありますね」
「…………」
「瞬光は大丈夫? 昔住んでた場所に行くって事になるけど……」
「ワタシは大丈夫。皆がこうして協力してくれたんだもの。向き合う覚悟はできてるわ」
一行は早速準備を整え、再びラマニアンホロウの鉱区跡地エリアへと向かった。
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そしてやって来た鉱区跡地エリア、居住区付近。
十年前は人で賑わっていたであろうこの場所も、今ではエーテリアスが蔓延る恐ろしい場所となっている。
[5・5・5][Standing by…]
「変身!」
[Complete]
タクミはファイズフォンをセットし、ファイズへと変身した。
あれから色々とあったが、やはりこの姿が一番である。
一行は居住区を目的地に進み始めた。
立ちはだかるエーテリアスを片付けながら進んでいく。
「『我念ずるは、剣の往く先』……後は、『空明に映じ』……だったかしら」
瞬光は、青溟剣を操る呪文を口にしていたが……
「その次は『星々流転』……ううん、これじゃなかった気が……いや、これで合ってたはず……よね」
「……瞬姐さん?」
「どうしましたか? もしかして、スランプだったり?」
「ち、違うの。昔住んでた場所の近くに来てるから……どうにも落ち着かなくて」
そう言いながらも、瞬光は片手間にエーテリアスを斬り倒しているが……きっと、本調子ではないのだろう。
「大丈夫? 焦らなくてもいいからね」
「大丈夫よ! 『星々流転……青溟よ、我を導け!』……ほら、言えたでしょ? ただ気が散ってただけだから! 早く先に進みましょ!」
瞬光はエーテリアスを掃討した後、足を速め先へと進む。
「……」
その後ろ姿を見て、ファイズは何やら胸騒ぎがした。
それからは特にアクシデントもなく、一行は居住区のすぐ近くまでたどり着いた。
目の前にある大きな橋を渡れば、かつて瞬光と釈淵が住んでいた居住区に到着する。
するのだが……
「…………むう」
『瓦礫がたくさんあるな……これでは先に進めない』
橋の前に、まるで通せんぼするかのように無数の大きな瓦礫が散らばっていた。
「これ程の瓦礫……我輩の力でも動かせるかどうか……」
「動かせたとしても、全部どかそうとすると日が暮れちゃいそうですねえ~……」
「近くに瓦礫を動かせるものはないかな……」
「……」
ぼやくリンをよそに、ファイズは瓦礫の近くまで行く。
「……この大きさなら」
「タクミくん? 何をしているんだ?」
寧謙が尋ねるが、ファイズは既に行動をし始めていた。
全長五メートルはありそうな大きさの瓦礫を見つめる。
「よいしょっと」
「!?!?」
ファイズはそれを軽々と持ち上げ、横に放り投げて無理やりどかした。
「タクミ……今瓦礫放り投げた!?」
「ああ。これなら上手くいきそうだ」
「タクミくん……凄まじい力を隠し持っていたんだな……」
オルフェノクに覚醒したことにより、素のパワーが格段に上がったタクミ。
それとファイズのスーツの力が合わさった事で、純粋なパワーだけなら盤岳をも超えるようになったのだ。
「ただ瓦礫の数からして、結構な時間はかかりそうだね……」
「それなら大丈夫」
ファイズはアクセルメモリーを取り出し、ファイズフォンに装填する。
ただどかすだけならファイズブラスターかジェットスライガーを使い、派手に吹っ飛ばせばいい。
……が、それでは橋まで壊しかねないので、この方法が一番確実だった。
[Complete]
フルメタルラングを展開させ、アクセルフォームに変身するファイズ。
「……え、まさかタクミ」
「少し待っててくれ。十秒だけ」
[Start Up]
ファイズの体から響き渡る駆動音。
これから何が起こるのか……アキラとリンにとっては最早想像に難くなかった。