ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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亡者の声

 

 

 

 

 

「……『殺す』、ですか」

 

 

ダイアリンはタクミが出した答えに、何か変わった反応を示す事はなかった。

 

肯定しているとも否定しているともとれない、彼女の表情。

 

 

自分の言葉を聞いてダイアリンが何を思うかなど、エスパーでもないタクミには分からない。

 

 

「仮にそうしたとして、誰かから恨まれてしまったとしても、ですか? もしかしたら最期の最期で、殺された当人からも、不当に恨み言を吐かれるかもしれませんよ。それでも……手を汚すことを選ぶと?」

 

「…………」

 

 

ダイアリンの問いに、ファイズは黙って頷いた。

 

 

「……」

 

「……まあ、あくまでも最悪の場合です。他に方法があるならそっちを選びますから。俺が殺される場合だったにしても」

 

「……ま、そうですよね」

 

 

ブランコから降りた後、ダイアリンは背伸びをする。

 

 

「でも、タクミくんも酷ですねえ。もしあんたがオルフェノクとして暴走しちゃったら、誰に手を汚させるつもりですか?」

 

「それなら、多分大丈夫です。多分誰も手を汚すことはないと思いますよ。俺の周りには、俺より強い人がたくさんいますから」

 

 

きっと彼女たちなら、殺さずともタクミを止める事が出来るだろう。

 

その辺の心配はそこまでしていない。

 

 

「そうですか……ま、タクミくんがそう言うなら大丈夫ですね。……にしても、『殺した相手に感謝する』場面と言えば、タクミくんが今言った事が答えでしょうか」

 

「……まだあるんじゃないですか? 例えば、『自分が犠牲になる事で自分の大切な人が生き延びられる』……とか」

 

「…………」

 

 

ファイズの言葉を聞き、ダイアリンは黙って考え込む様子を見せる。

 

 

「……てか、なんで急にそんな事を聞いたんですか?」

 

「さっきも言いましたがなんとなくですよ。完成済みのジグソーパズルに、違うパズルのピースが一つが混じってたら誰だって気になるでしょ? 『声』だって同じ事ですよ」

 

「声……? どういう事ですか」

 

「ん? 照ちゃん先輩から何も聞いてないんですか? あたし達の事」

 

「……いや、何も」

 

「そうなんですか? なら教えますとですね──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたし、ホロウの中で亡者の『最期の声』を聴く事が出来るんです」

 

「……モウジャノサイゴノコエ」

 

 

ダイアリンが打ち明けた事実に、ファイズは固まる。

 

 

「あれ、どうしたんですかタクミくん」

 

「ななななんでもないっす」

 

「声震えてますよ?」

 

「きっ、気のせいじゃねっすか──ゲホッゲホッ

 

「なんでむせてんですか……」

 

 

亡者の最期の声。

 

それはいわゆる、あれなのだろうか。

 

 

「ダイアリンさん……その声って、幽霊的なアレですか」

 

「んー厳密には違いますね。ホロウの中で一つの命が尽きる時、その死に際に放たれる声……それが、残留思念みたいな感じで聞こえるんです」

 

「残留思念……」

 

「そうです。あたしは黒枝の裁決官として、その『声』から真実を探り、審査し……そして対象者に裁定を下すんです。あくまであたしのやり方では、ですけどね」

 

 

生気を振り絞り、放たれたその最期の声は、嘘偽りのない本心の言葉。

 

ダイアリンはその死者の声を聞き、真実を見極めるのだそうだ。

 

ただ、声の主は『幽霊』ではなく『死者』であるため、話をしようとしても返事が帰って来る事はない。

 

 

「つまり……今も聞こえてるって事っすか?」

 

「バリッバリ聞こえてますよ~。まあ場所が場所なので、仕方ないですね。絶え間なく断末魔にも近い声を聞かされて、ノイローゼにならないあたしってスゴ腕オペレーターだと思いませんか?」

 

 

確かに、タクミなら間違いなく二度とホロウには行かなくなるだろう。

 

オペレーターというもう一つの職業も、ある意味ダイアリンにとっては天職なのかもしれない。

 

 

「……つかその能力のこと、話しても大丈夫なんすか?」

 

「あんたとプロキシさんお二人は、黒枝にとってはお友達と言っても差し支えないですから、いいんじゃないですか?」

 

「そんな親しくなってたんすか俺ら……」

 

「一回協力した仲じゃないですか~。あたし達もうツーカーですよツーカー」

 

 

ニヤニヤし、肘でファイズを小突きながらそんな事を言うダイアリン。

 

かつて預けたファイズドライバーはしっかり返って来たので、信頼はできるかもしれない。

 

 

「……っと、名残惜しいですが、おしゃべりはここまでにしましょう。ここには何もなかったんで、プロキシさん達のとこに行きましょうか」

 

「あ、そうっすね……」

 

 

ファイズは歩き出すダイアリンに着いて行く。

 

ふと、考えが浮かぶ。

 

 

(『殺した相手に感謝する』、か。ダイアリンさんは、亡者の『感謝』の声が聞こえたって事か? 誰に、感謝してたんだ……?)

 

 

……今は気にしても仕方がないだろう。

 

ファイズは頭の中の疑問を外に追いだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公園を出て、ダイアリンとタクミは鉄格子の門がある場所まで向かう。

 

そこには、すでにリン達が揃っていた。

 

 

「皆さん、何をしてらっしゃるんですか?」

 

「ダイアリン、タクミ! さっきここの門の向こうに、お兄ちゃんとサラの姿が見えたの!」

 

「え、本当か?」

 

「うん。ミアズマの幻で、二人の姿が出てきたの。二人も前に、ここに来てたの。会話の内容から察するに、あの門の向こうに『陣』があるみたい」

 

 

サラと釈淵は既に、門の向こうに行ってしまったらしい。

 

 

「門の向こうへと行けば、件の『陣』を見つける事が出来よう。しかし、ここから先は更に用心せねばなるまい。尋常ならざるミアズマの気配、そして──」

 

「ちょくちょく流れてくる変な声、ですよね?」

 

「! ダイアリン殿も聞こえておったのか」

 

「ええ。ホロウに入ると、自分に似た声が頭の中に絶え間なく聞こえてくるんです。『いつもの』とは違う、奇妙な声。誰がやってんのかは知りませんが、腹が立つったらありゃしません」

 

「自分の声……?」

 

 

ダイアリン達の話を聞き、リン達は顔を見合わせる。

 

 

「……あれ、皆さんは聞こえませんでしたか?」

 

「ワタシは何も……」

 

「俺も特には聞こえなかったな……」

 

「おかしいですね……てことはあたしと盤岳先生だけ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『───傾聴せよ』

 

 

「「!!」」

 

 

真っ先に振り向いたのは、盤岳とダイアリンだった。

 

居住区の広場から聞こえる、女性の声。

 

 

……だが、そこにいたのは人間ではない。

 

 

『始まりの主の声を……受け入れなさい』

 

「コイツは……!!」

 

 

まるで天使のような巨大な羽を生やし、広場に降り立つ怪物の影がひとつ。

 

 

「あれは……サクリファイス!?」

 

「あの気配……そうと見て間違いないであろう」

 

 

まさかサラ達がこちらに気づき、けしかけたのだろうか。

 

サクリファイス──コヴェナント・ガーディアンはその刃のような大きな羽を広げ……こちらに襲い掛かる。

 

 

「ッ!!」

 

 

一行は四方に分散し、攻撃を避ける。

 

 

『全てを受け入れ……全てを捧げよ……!!』

 

「……っ! まーたスピリチュアルなお客様がおいでなさいましたね!」

 

「皆の者、用心せよ!」

 

 

ダイアリン達は戦闘態勢に入る。

 

 

(……こうなったら、出し惜しみはなしだ……!!)

 

 

ファイズはファイズブラスターを取り出し、コードを入力する。

 

 

[5・5・5][Standing by…]

 

 

そしてバックルからファイズフォンを取り出し──ファイズブラスターにセットした。

 

 

 

 

[Awakening]

 

 

 

その体は、瞬く間に赤い光に包まれる。

 

 

 

そしてファイズは……ブラスターフォームへと変身した。

 

 

[1・4・3][Blade Mode]

 

 

ファイズブラスターをフォトンブレイカーに変形させ、ファイズも戦闘態勢に入る。

 

 

『……聞きなさい。始まりの主の、その声を……!!』

 

 

まるで電話から出ているような声と共に、コヴェナント・ガーディアンは白銀の刃を構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしていの一番に、ダイアリンへと襲い掛かった。

 

 

「!!」

 

「うおっと!? いきなりこっち来るんですかぁ!?」

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