ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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贖罪

 

 

 

 

 

ダイアリン曰く、寧謙は以前からサラと密かに接触をしていたらしく、サラは彼の憎しみに付け込み協力関係を結んだ。

 

残党から情報を引き出せたのも、陣法に関する書物が都合よく手に入ったのも……全て寧謙が仕組んだ事だった。

 

 

「──彼が道場に弟子入りしたのも、復讐の機会を伺っていたと考えるのが自然でしょうね」

 

「復讐……まさか陣法を使って……?」

 

「大方そうだと思います。あたし達黒枝がどうこうする以前に、寧謙さんは盤岳先生を『鍵』にするつもりだったんでしょう」

 

 

恐らくだが、昨日瞬光のもとに届いた手紙も寧謙らが仕組んだものだろう。

 

全ては、盤岳を陣まで誘導するためのものだった。

 

 

「昨日……あの手紙の事を盤岳先生に教えた後、明らかに表情が変わった気がしたのよね。お兄ちゃんが『鍵』になる事を、きっと阻止しに行ったんだと思う……」

 

「盤岳先生の罪悪感を利用した、って事だね……」

 

「…………」

 

 

タクミは昨夜、盤岳が言った言葉を思い出す。

 

 

『人の歩みは、重き荷を置いて彼方へ行くが如し。来たし方の過ちは路傍の石となり、己だけでなく、共に行く者の足をも止めるだろう』

 

 

 

 

 

("過ち"……盤岳先生は多分、全部分かったうえで、自分から『鍵』になりに行ったんだ)

 

 

寧謙から憎しみを向けられていた事を、彼はもう知っていたのだろう。

 

彼は贖罪のために……自分の『役目』を果たしに行った。

 

 

「はあ……今思うと、陣の起動に『鍵』が必要だと言うのは、全てサラが後からでっちあげたものだったのかもしれません」

 

「どういう事?」

 

「考えてもみてください。莫大なエーテルエネルギーと、陣に吸収されるミアズマ……それら全部に、行先があると思いませんか?」

 

 

さらに事件当初、鉱員の証言にあったミアズマの沈静化。

 

彼はそれを『まるで引き潮のよう』だと言っていた。

 

 

「引き潮……まるでどっかに集まっていくみたいじゃないですか。今までの事を振り返ると……ミアズマを利用する讃頌会にとっては、あまりに好都合が過ぎますよ」

 

「沈静化されたミアズマも、陣法のためのエーテルエネルギーも……全部サラ達が集めてた……って事?」

 

「まだ憶測の域を出ませんけどね。ただ裏付けできるような証拠はまだありますよ。謎の声が盤岳先生とあたしにだけ聞こえた理由……とか」

 

 

謎の声は、サクリファイスを通じ、『力を捧げよ』と二人に語り掛けた。

 

盤岳の膨大なエーテルエネルギー。

 

ダイアリンの『死者の声』を聴く力。

 

 

これらは『陣』の存在も含め、全て……『始まりの主』を降臨させるための器だったのだとダイアリンは考えた。

 

 

「寧謙さんがどこまで知ってたかはともかく、まんまとサラに利用されちゃったって訳ですね」

 

「……もしそうなら、早く止めに行かないと!」

 

「おや、良いんですか? さっきも言いましたが、盤岳先生はかつてあなたの両親を助ける事はなかったんですよ。あなたも寧謙さんと同じように、盤岳先生を憎む権利はあるはずです」

 

「……ワタシは、あの人を憎んだりしないわ。先生が今まで見せてくれた優しさは……紛れもない本物だったから」

 

「!」

 

「もちろん寧謙さんの憎しみを否定するつもりはないわ。ただ……それでもワタシは、あの人に大きな恩があるの。十年前のあの日から、ずっと」

 

 

鉱区の大きな橋を駆け抜けながら、瞬光と釈淵を抱えたあの大きな腕。

 

冷たくて暖かな、あの大きな腕。

 

かつて助けてくれたその人物を、瞬光は今、思い出した。

 

 

「絶望から救い出してくれたあの山のように大きな人……あれは、盤岳先生だったんだから」

 

「……瞬光、もしかして思い出したの?」

 

「うん。盤岳先生はそんな事、一度も話したことはなかったけど……ワタシ達兄妹を世話してくれたのも、雲嶽山に入門させてくれたのも……全部あの人だったわ」

 

「……なるほど」

 

「だからあの人がどんな過去を背負っていようと、ワタシが感じているこの恩は消えない」

 

 

瞬光は決意を改め、ダイアリン達を見る。

 

 

「ワタシ、お兄ちゃんと盤岳先生を助けたい……! その為にも、戦うわ!」

 

「……ふむ。今の瞬光ちゃんの顔、青溟剣の継承者っぽいですよ! それじゃ行きましょうか、取り返しのつかない事になる前に!」

 

 

時間は残されていない。

 

瞬光たちは早速、ラマニアンホロウの鉱区跡地へと急行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラマニアンホロウの鉱区跡地に入り、一行は早速弟子たちを発見した。

 

どうやら既に盤岳に救出されていたらしく、当の彼はミアズマの異変の元へ急いでいった。

 

 

だが……途中まで同行していたシシオの視覚記録によれば、盤岳はその場所で大きなミアズマの渦に閉じ込められてしまっていた。

 

 

先ほど予想していた通り、盤岳はもう『鍵』となってしまっていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、この先だよ!」

 

 

リンたちと一緒に、『陣』がある場所まで急ぐ。

 

既に開かれている緑のゲートをくぐり、立ちはだかるサクリファイスを殲滅する。

 

 

[Ready]

 

「ハアッ!!」

 

 

ファイズはファイズショットを右手にサクリファイスを殴り飛ばす。

 

ミアズマの異変により、いつもより数が多い。

 

 

[5・2・7・6]

 

[Faiz Shot 2, Put in to motion]

 

 

ファイズショットを新型の方へと変形させ、その巨大なガントレットで、サクリファイスを軽々と『トス』する。

 

 

[Exceed Charge]

 

 

直後にフォンのENTERキーを押し、フォトンブラッドをチャージ。

 

そして群れで束になっている他のエーテリアス数匹に向け──

 

 

「オラア!!」

 

 

まるでスマッシュをするかのように、落ちてきたサクリファイスを殴り飛ばした。

 

ボール代わりに吹き飛ばされたサクリファイスは、そのまま他のエーテリアスに直撃。

 

 

見事、一掃する事に成功した。

 

 

「これで……敵は全部?」

 

「みたいだな」

 

「盤岳先生はあっちですね! 手遅れになる前に、急ぎましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして目的地へとたどり着いた一行。

 

遠くに見えるのは、禍々しいミアズマで出来たドーム状の渦。

 

 

近くに、負傷した同門の弟子がいる。

 

 

「アナタ、大丈夫……!?」

 

「ゲホッ、俺は大丈夫だ……! それよりも、盤岳先生とその弟子が、あの渦の中に閉じ込められている!」

 

「寧謙さんも!? 盤岳先生だけじゃなかったのか?」

 

「分からん……あの青年は半ば自暴自棄な様子だった。ともあれ、あの中にいては無事では済まないぞ!」

 

 

どうやら寧謙は盤岳を道連れにし、その命を絶とうとしているようだった。

 

 

「どうにかして、あの陣に近づけませんかね……?」

 

「さっき助けようとしたが……ミアズマの濃度があまりにも高すぎて、近づくことすらできなかった……」

 

「ひとまず、あたし達もあそこに近づいてみましょう」

 

 

弟子の手当てをシシオに任せ、ダイアリン達は陣がある場所まで向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてミアズマの渦の近くまで来た四人。

 

 

「盤岳先生! 寧謙さん!」

 

 

試しに渦の中にいる二人に呼びかけてみるが、返事は返ってこない。

 

 

「……っ! 返事が返ってこないのは『亡者』だけで十分ですって!」

 

「……」

 

 

ファイズは聴覚を研ぎ澄ませ、渦の中にいる二人の声を聞こうと試みる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……頼むよ……! 姉ちゃんのもとに、逝かせてくれ! 俺を楽にしてくれよ、師範!』

 

『おぬしには……まだ歩むべき道の先がある。我輩の命を賭してでも、おぬしを守り抜こう!!』

 

 

「……!!」

 

 

絶望に叫ぶ寧謙の声と、捨て身の覚悟を決めた盤岳の声。

 

盤岳は陣の中で絶えず湧き出すエーテリアスから、寧謙を守っていた。

 

 

「まずいな……盤岳先生、本気で自分を犠牲にミアズマを鎮めるつもりだ!」

 

「! 早くなんとかしないと……!!」

 

「案の定、渦には近づけませんね……近づいたら、侵蝕で今度はあたし達が無事じゃ済みません!」

 

『Fairy、陣の解析を頼んだ! あれを消す方法が、きっとあるはずだ……!』

 

「…………」

 

 

ファイズは前方に見える巨大な渦を見つめる。

 

 

(……オルフェノクになった今なら、あれミアズマを鎮められるんじゃ……?)

 

 

オルフェノクの力ミアズマを()()()()すれば、盤岳と寧謙を助けられるかもしれない。

 

さらにオルフェノクは侵蝕を受けない体質。

 

ミアズマにも、臆せず触れる事が出来るはずだ。

 

 

「……俺がやる。ミアズマを、鎮めてみる!」

 

「!? ……え!?」

 

「さすがに無茶ですよ、タクミくん!」

 

「本当に無茶なら、すぐに戻ってくる。けど、やってみなきゃ分かんないだろ?」

 

「……!」

 

「じゃあ行ってくる!」

 

「あ、ちょっと……!」

 

 

ファイズは瞬光たちの返事を聞かず、渦に向けて一直線に走り出す。

 

 

(思い出せ……解悩水の患者の侵蝕を消した、あの時の感覚を!)

 

 

神経を研ぎ澄ませ、ミアズマの渦に……その手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして程なくして確かに感じた、ミアズマが()()()()()()()感覚。

 

 

『マスター。前方に渦巻くミアズマの濃度が、僅かに低下しました』

 

『! なんだって……!?』

 

 

タクミの予想は、幸運にも当たっていた。

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