ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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番外編⑫


 

 

 

 

 

「タクミ、服買いに行かない?」

 

「服?」

 

 

朝食を食べていると、リンが唐突にそう言ってきた。

 

 

「ほら、今のタクミの体じゃ適当観の道着も普段着もサイズが大き過ぎるでしょ?」

 

「そうだな」

 

 

もう数日前の事になる。

 

体が十歳相当まで戻ってしまったタクミ。

 

リンの言う通り今まで着ていた服はサイズが大きすぎるため、盤岳からサイズが小さい道着を何着か借りている状況だ。

 

 

「別に盤岳先生の道着が悪いって言いたいわけじゃないけど……それだけじゃなんだし、今日一緒に買いに行かない?」

 

「あ、ワタシもそれ賛成!」

 

「確かに人混みに溶け込めるような服は必要かもしれないな。タクミはどうするんだい?」

 

「俺は……別にいいけど、いつ元に戻るかも分かんないぞ。数日で使い物にならなくなるかもしれない」

 

「だいじょぶだよ~。そこまでお金かけるつもりはないし! 古着屋に行けば、ピッタリなのがすぐ見つかるよ!」

 

 

釈淵の件で、儀玄たちが帰って来るのはまだ先になる。

 

タクミ達四人はせっかくなので、手ごろな服を買いに行く事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルミナスクエア外れにある古着屋に訪れた四人。

 

……と、もう二人。

 

 

「古着屋さんって独特な雰囲気があってなかなか乙なものですよね~」

 

「……」

 

 

ダイアリンと盤岳も訪れていた。

 

……と言うより、偶然ばったり会っただけなのだが。

 

 

「ダイアリン達も古着屋に?」

 

「いえいえ、たまたま皆さんを見かけただけですよ。今は黒枝の新入りさんの研修の最中なんです」

 

「新入り……ああ、そう言えば盤岳先生、新しく黒枝の一員になったんだっけ?」

 

「然り。黒枝において我輩は若輩者であるが故……ダイアリン殿にご指導を賜っておる最中なのだ」

 

「……ま、今は休憩中ですけどね~。せっかくなんでその時間で盤岳先生にルミナスクエアを案内してたんですよ。彼あんまりここに来た事がないみたいですから」

 

 

その途中で偶然タクミ達を見かけ、今に至る。

 

 

「せっかくですし、ご一緒してもいいですか?」

 

「もちろん! 今からタクミの服を選ぶとこなんだけど……タクミったら、『服はなんでもいい』なんて言うのよ?」

 

「だって本当になんでもいいし……」

 

 

ファッションズボラなタクミは基本『着易ければそれで良い』のスタンス。

 

六分街にいた頃から着ていた普段着も、アキラとリンに選んでもらったものだ。

 

 

「と言っても、今のタクミに似合う服がなんなのかは、僕達にも分からない……」

 

「昔……五、六年前に来てた服はもう全部捨てちゃったし。その服が似合うかと言われたらうーんってなるんだよねえ」

 

「そんな気使わなくていいって……無地とか、そういう無難な奴でいいからさ」

 

「ダメよ! せっかくの機会だもの、タクミには似合ってる服を着て欲しいの!」

 

「ええ~……」

 

 

今のタクミは何か命の危険があるわけではなく、本当にただ子供に戻ってしまっただけの状態。

 

確かに必要以上に焦る事はないのだが……だからと言ってこの状況を楽しみすぎである。

 

 

「ふうむ……それなら、盤岳先生に選ばせてみたらどうですか?」

 

「盤岳先生に?」

 

「……頼みと申すならば引き受けるが、我輩が役に立てるのか……」

 

「だーいじょうぶですって~。盤岳先生は昔から小さい子供の相手をしてるんですから、きっと良いのを選べますよ!」

 

「ダイアリンさん、俺別に中身まで子供な訳じゃないんすけど」

 

 

とは言え、盤岳なら確かに無難なものを選んでくれるかもしれない。

 

……別にタクミ自身が選べばいい話なのだが、それはダメだと言われた。

 

 

「……あい分かった。せめて不格好とはならぬよう、可能な限り力を尽くそう」

 

「お願いします」

 

「じゃああたし達はルミナスクエアの広場で待ってるんで、あとはお願いしまーす!」

 

「楽しみにしてるからね、タクミ!」

 

 

そう言うとリン達はタクミと盤岳を残し、この場を後にした。

 

 

「では、参るとしよう」

 

「あ、はい」

 

 

身長200センチの盤岳と、身長138センチのタクミ。

 

見せに入る二人の姿は、通行人から見たら奇異なものに見えただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

古着屋店内、キッズコーナーにて。

 

 

「…………」

 

 

タクミは並べてかけてある中古の服を見る。

 

『スタナイ』や『セイラープー』の服もあるが、さすがにこれを着たいとは思わない。

 

 

リン達に見せたらドン引きされるだろう。

 

 

いくらズボラなタクミでも、体裁はある程度保っておきたい。

 

 

「タクミよ、この服は如何か?」

 

「!」

 

 

盤岳が選び、持ってきたのは……中々いい感じの服だった。

 

子供っぽ過ぎず、かと言って大人っぽ過ぎる事もない。

 

 

もしかしたら、盤岳に頼んだのは正解だったかもしれない。

 

 

「ありがとうございます盤岳先生、試着してきます!」

 

「うむ」

 

 

タクミは盤岳から服を受け取り、試着室へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……しかし、試着室には先客がいた。

 

 

「あ……ごめんなさい、友達が使っていて。少し待ってくれる?」

 

「大丈夫っすよ、別の試着室に行きます……か……ら……」

 

 

その先客と、目が合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……タクミ?」

 

「あ、アンビー……」

 

 

ここはルミナスクエアの外れとは言え、普通にルミナ区内。

 

こうして出くわすことは、なんら不自然ではないのだが……ここで会うのは初めてだった。

 

 

「……どうしたの、その姿」

 

「……あーその……色々あって」

 

 

タクミが小さくなってしまった事は、まだ彼女たちには話していない。

 

オルフェノクの時のように知り合い全員に話してもよかったのだが、わざわざそのために再度時間を作ってもらうのも申し訳ないと考え、会ったら都度話すという事にした。

 

 

なので今こうして小さくなったことを知られるのは、特段マズい事ではない……のだが。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

謎の緊張感。

 

普段はアンビーより身長が高いタクミだが、今は逆転している。

 

見下ろしている。アンビーが。タクミを。

 

見上げている。タクミが。アンビーを。

 

 

 

圧が凄い。

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンビー、どう? あたしのファッションセンスの方が───ってタクミ!? あれっ……え!?」

 

「むごごごごごごおお」

 

 

試着室から出てきた猫又が見たのは、アンビーに頬をこねくり回されているタクミの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……成程、おぬしらもタクミの知り合いであったか」

 

「そう」

 

「むごごごごごご!!」

 

「にゃはは~」

 

 

タクミの声を聞き駆けつけた盤岳は、アンビーから話を聞いた。

 

アンビー曰く、邪兎屋一同揃ってセール品狙いでここに来たらしい。

 

 

 

「親分やべえぞ緊急事態だ!! 4XLサイズのスタナイシリーズの服が全然ねぇ!! どうすりゃいい!?」

 

「あるわけないでしょ! てかあたしに伝えてどうすんのよそんな事!」

 

 

……遠くからビリーとニコの声も聞こえる。

 

 

 

「……その親しい様子を見る限り、おぬしらは良き友同士であるようだな」

 

「ええ、とても仲良しよ」

 

「これ親しいって言うかなんか愛玩動物みたいな扱いされて──うわあっ!? おい猫又、髪をわしゃわしゃすんじゃねえ!」

 

「にゃはは~」

 

 

ちなみに猫又は先程から現在タクミの頬や髪をいじりまくっている最中である。

 

ちなみにリン達にも同じ事をされている。

 

 

「……あそうだ! タクミ、服買いに来たんでしょ? あたしが直々にチョー似合う服を選んであげるぞ!」

 

「私も選ぶわ」

 

「真であるか。アンビー殿、猫又殿、感謝いたす」

 

(…………これ任せていいやつか?)

 

 

少し不安だが、どうせ拒否権はないのだろう。

 

タクミは彼女らのチョイスを、有難く受け入れる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は正午前。

 

タクミと盤岳はアンビー達と別れ、リン達がいる場所へ戻って来た。

 

 

「お、戻って来ましたね。お帰りなさ~い」

 

「二人とも、どうだった?」

 

「うむ。彼女らの助力もあり、中々に有意義な『しょっぴんぐ』であった」

 

「それで、服は何を選んだの?」

 

「これだな」

 

 

タクミは袋から三着の服を取り出し、リン達に見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『震 天 動 地』

 

『はんばっか』

 

『自分を持ちたいなら、サバになれ!』

 

 

 

「これダサTじゃないですか!!」

 

 

訳の分からない言葉が服の前面に印刷された、訳の分からないTシャツ。

 

 

「これ……二人は満場一致で良いって思ったの?」

 

「ああ。子供っぽ過ぎず大人っぽ過ぎずのちょうどいい塩梅だ」

 

「確かに子供も大人もこういうのは着ないけれども……」

 

「あ、でもこの鯖の絵、ちょっと可愛いかも……」

 

 

盤岳とタクミの服のセンスがここまで悪い方向に似通っているとは思わなかった。

 

やはり同行すれば良かったとダイアリン達はため息を吐いた。

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