ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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ロックスプリング

 

 

 

 

 

無事ファイズに変身したタクミを見届け、照はポンと両手を叩く。

 

 

「それじゃあ、ここからは別行動だねえ。キミたちは葉釈淵の捜索、ザオちゃんはホロウの拡張と異常なミアズマの原因の調査。終わったら、埠頭で合流ね」

 

「え? 別々で行動するの? いくら照さんでも、ひとりは少し危険なんじゃ……」

 

「それは……要らない心配かなあ。だってザオちゃんはこう見えて、『常勝不敗』って呼ばれるほど、任務は一度も失敗したことはなかったの」

 

「常勝、不敗……」

 

「そうそう。だからザオちゃんを信じて、キミたちはやる事をやって来てくれたらいいから。それじゃあ、また後でねえ」

 

 

照は身の丈に合わない程の大きな剣を掲げ、その場を後にした。

 

 

「『常勝不敗』か……まあ黒枝の人だし、嘘って訳でもなさそうだね」

 

「……そうね。照さんの言う通り、ワタシたちはお兄ちゃんを探しましょ」

 

 

三人は照から共有してもらった座標へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラマニアンホロウで最近その存在が確認された未知のエリア。

 

ここに人がいた形跡はまるで確認できず、まさに『無人区域』と言うべき場所だった。

 

 

『ガァアアアア!!』

 

 

しかし、ホロウである以上エーテリアスはしっかりいる。

 

 

「はあっ!!」

 

 

ファイズはいつも通りの闘い方で、エーテリアスたちと応戦をする。

 

攻撃をいなし、隙を見て反撃を叩き込む基本戦闘スタイル。

 

 

ヤクザキックで蹴り飛ばし、立ちはだかってきたエーテリアスは大方片付けられた。

 

 

「……ふう」

 

「タクミ、大丈夫だった?」

 

「ああ。一応小さくなっても戦えはするみたいだ」

 

 

しかし、案の定全体的なスペックは元の姿の時と比べ下がってしまっている。

 

ライオトルーパーより少し強いくらいのもので、上級エーテリアスまでなら戦えるが、要警戒が相手となるとさすがに苦戦を強いられるかもしれない。

 

 

「もし危なそうだったら、いつでもワタシの後ろに隠れていいからね」

 

「ありがとう。……にしても、この状態ってアクセルやブラスターの力は使えるのか……?」

 

「……危なそうだしやめた方がいいんじゃない? 負荷に耐えられるか分かんないし……」

 

 

座標地点まで進みながら、そんな事を話していると。

 

 

「エラー……データエラー、再編成を実行……」

 

 

「……ん?」

 

『マスター、前方に正体不明のボンプを発見』

 

 

道の先には黒いボディの見知らぬボンプがぺたりと座っていた。

 

 

「照がキャロット用に連れてたボンプ……じゃないよね?」

 

『型式番号を照合……失敗。新エリー都のデータベースに、該当するボンプは存在しません。対象のボディから、高レベルの知能データ体が検出されました』

 

「どうして無人区域にボンプが……? それになんか様子が……」

 

 

警戒しつつ、黒いボンプへと近づく。

 

そのボンプは片目が絆創膏のようなもので覆われており、その場に座ったままじっと動かなかった。

 

 

「……エラー、再編成を実行……」

 

「……! この子、共通語を話してるわ……!」

 

「エラーって言ったか? もしかして、俺達が見えてねーのか?」

 

「もしもし、聞こえる?」

 

 

リンの呼びかけに、ボンプの体が少しだけ反応する。

 

しきりに独り言をつぶやいた後……ボンプはようやくこちらを向いた。

 

 

「……やあ友達。聞こえているよ」

 

「良かった……アナタは? どうしてここに?」

 

「僕の名前は……ロックスプリングだ。何故ここにいるのかは……僕にも分からない。どうやら記憶モジュールに、問題が起きているらしい……」

 

 

ロックスプリング、と名乗ったボンプは自身の状況を説明する。

 

意識がはっきりした時には、すでにこの無人区域にいたらしい。

 

 

「ずっと出口を探していたけど、どこに行けばいいのかすら分からなかったんだ」

 

「……以前までの記憶は分からないけど、名前だけは覚えてるって感じか」

 

「うん。幸いにも、自身の名前、型式番号……そして『造られた目的』は忘れずに済んだ」

 

 

ロックスプリングは、初代虚狩りのミス・サンブリンガーによって創られた。

 

ミス・サンブリンガーは、マルセルグループのCEOでもありボンプの生みの親でもある人物。

 

タクミも、顔は見た事はないがその事は知っていた。

 

 

「僕は彼女が初期に製造した『高火力戦闘型ボンプ』なんだ。型式番号はGU-0001。とっくの昔に、製造は中止されたけどね。きっと僕と同じ機種のボンプは、既に廃棄されてしまったんだろう」

 

「戦闘用、ボンプ……今の時代に造られてるボンプも、戦えはするでしょ?」

 

「そのボンプたちと、僕は違う。高火力戦闘型ボンプは、一言で言えば殺傷能力が非常に高いんだ」

 

 

ロックスプリング曰く、全盛期の頃はかなり攻撃的だったと言う。

 

それを聞いたファイズは、無意識にフォンブラスターに手をかけるが……

 

 

「安心していいよ、ファイズ。今の僕の中にある戦闘モジュールはとっくに壊れている。仮に敵意があっても、君たちには傷一つつけられないだろうさ」

 

「……そうか、それなら──ってちょっと待て! なんでファイズの事を知ってるんだ!?」

 

「え……?」

 

 

自分でも不思議だと言った感じで、ロックスプリングは目を丸くする。

 

 

「……確かに、どうしてだろう。無意識にそう呼んでしまっていた……もしかしたら記憶モジュールの中に、朧げにファイズに関する記憶が残っていたのかもしれない」

 

「タクミ、ロックスプリングと会ったことあるの?」

 

「……いや、ないな。というかもし会ってたとしたら、さっきの話の辻褄が合わなくなる」

 

 

 

だが、ロックスプリングの言う『ファイズの記憶』は確かにあるのかもしれない。

 

と言うのも、ファイズドライバーはいつから新エリー都に存在していたかが未だに分かっていない。

 

 

もしロックスプリングが戦闘用ボンプとして働いていた時代に、既にファイズドライバーが存在していたのなら……きっとファイズの姿も、その時に見たのだろう。

 

とすると……

 

 

(……俺がファイズのベルトを拾うずっと前に、別の人間が変身してた……? でも、そんなの今まで聞いたことが……)

 

 

……仮定に仮定を重ねても仕方がない。

 

そもそもロックスプリングの言う事が本当なのさえ分からないのだから。

 

 

「とにかく、僕たちボンプは、人類に尽くすために生まれてきた。高火力戦闘型ボンプである僕の場合は、『人類を守るため』に。……けど今の僕に、その力はもうない」

 

「どうして高火力戦闘型ボンプは生産中止になっちゃったの?」

 

「恐らく維持コストが他機種に比べ高かった事と、故障しやすかった事が原因としてあるんだと思う。僕がそのいい例だね」

 

 

自嘲気味にそう語るロックスプリング。

 

記憶モジュール、戦闘モジュール、言語モジュールが故障している彼は、もはや廃棄されるまで時間の問題だっただろう。

 

 

「……けどどういう訳か、僕ははっきりと意識が残っている。ただやる事も、行く場所もないから、こうして毎日廃墟を彷徨い続けているんだ」

 

「それなら、ワタシ達に着いてきなさい! 外へ連れ出してあげる!」

 

「本当? ありがとう……えっと」

 

「……あっ、ワタシは葉瞬光よ。瞬光って呼んでね。こっちは妹弟子のリン! で、こっちは弟弟子のタクミ!」

 

 

瞬光は自己紹介がてら、ロックスプリングにここへ来た訳を説明した。

 

 

「……なるほど。それなら、少しだけお役に立てるかもしれない。実はこの辺で、前とは全く違うタイプのミアズマを観測したんだ」

 

「! もしかして、そう言うのも分かるの?」

 

「これでも戦闘用ボンプだからね。それで、そのミアズマなんだけど……ホロウにある白い花に付着すると、花が変異するようなんだ」

 

「その花ってどこにあるか分かる?」

 

「白い花ならここ辺りにたくさんあるよ。近くの見張り台に登れば、すぐに見つかるはずだよ」

 

「ありがとう、ロックスプリング! 二人とも、早く行きましょ!」

 

 

瞬光たちはロックスプリングを連れ、調査を再開した。

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