ZZZ × 555   作:びぎなぁ

327 / 327
不穏

 

 

 

 

 

──少年は、ヒーローに憧れていた。

 

 

窓から小さく見えるホロウを見る度に思い浮かべる。

 

『スターライトナイト』のように、自身がヒーローとなり人々を助ける姿を。

 

そんな日を、叶わない願いと知りながらも微かに望んでいた。

 

 

 

『もう大丈夫だよ。僕が助けるからね』

 

 

 

夢の中では、ろくに動かすことのできない自身の体も、自由となる。 

 

ホロウで勇猛果敢にエーテリアスに立ち向かい、人々を救ける。

 

 

重い体も嘘のように軽く、ホロウの中でも縦横無尽に駆け回ることができる。

 

 

今日も夢の中、()()()()でエーテリアスを吹き飛ばし、襲われていた子供を助けた。

 

その子供は、彼に名前を聞こうとした。

 

しかし彼は、ヒーローは見返りを求めないと言わんばかりに、何も言わず去っていく。

 

 

 

 

 

『…………』

 

 

 

 

 

月明かりが差し込むベッドの中で、今日もそんな自己満足とも言える夢を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「! 二人とも、見て! あそこにお兄ちゃんがいる……!!」

 

 

 

調査を進めていく程に、数を増していく白い花。

 

そして座標へと進む道中、ついに瞬光は釈淵の姿を発見した。

 

 

瞬光達はすぐさま彼を追おうとしたが……

 

 

「も〜、しついこいなあ!」

 

「!」

 

 

遠くから聞こえる、照の声。

 

何事かと様子を見れば、複数体のエーテリアスに追いかけられている彼女の姿が。

 

 

「……! どうしよう、照さんがエーテリアスに……!」

 

「どうする? 手分けするか?」

 

「……いや、それはやめた方がいいかも! ここで私たちが別々に行動するのは、悪手な気がする……!」

 

 

 

安全のため、なるべく固まって行動した方がいいとリンは考える。

 

 

「……それなら、ひとまず照さんを助けましょ! お兄ちゃんはひとまず無事だって分かったし、またきっと見つけられるはず!」

 

「分かった。じゃあ早速行こう!」

 

 

瞬光達はエーテリアスに囲まれている照の元へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、エーテリアスに追われているうちに逃げ場を失った照。

 

後ろは壁。

 

 

 

「……オシゴトの邪魔をしないで欲しいなあ」

 

 

 

絶体絶命とも言うべき状況だったが、照は焦りを見せる事はなかった。

 

冷静に周りを観察し、大剣を構える。

 

 

そして襲いかかろうとしたエーテリアスに生まれた隙を見極め、反撃を繰り出そうとした……その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前のエーテリアスが、真っ二つに割れる。

 

 

「……!」

 

 

ファイズエッジのフォトンブラッドで焼け爛れたエーテリアスの断面が見える。

 

そして間髪入れず、今度は白い剣閃がもう一匹のエーテリアスを貫いた。

 

 

 

『ガァァアアアア!!』

 

 

 

激昂した上級エーテリアスが狙いを照からファイズへと変える。

 

 

[Exceed Charge]

 

 

ファイズは咆哮に怯むことなく、フォトンブラッドをチャージしたファイズエッジを構え、走り出す。

 

 

「ふっ! たぁっ!!」

 

 

そして『スパークルカット』でエーテリアスをバターのように一刀両断。

 

『Φ』のマークを浮かべ、最後のエーテリアスが消滅した。

 

 

「照さん、平気!?」

 

「……もしかして、ザオちゃんの事を助けに来てくれたの?」

 

「うん。さっき照さんがエーテリアスに襲われてるのを見て、ほっとけなかったから……」

 

「キミのお兄ちゃんの事は探さなくていいの?」

 

「実は、さっき姿だけは見つけたの。ただ、一応無事だって分かったから照の方を助けようって」

 

「…………」

 

 

照は複雑な表情を浮かべながら、頬をかく。

 

 

「……別に助けてもらう必要はなかったのに。まあいっか、調査を手伝ってくれるって約束だったもんね。せっかくだし、手伝ってもらおっかなあ」

 

 

照はそう言った後、瞬光たちが連れてきたロックスプリングに目を向ける。

 

 

「それで瞬光ちゃん、この子は?」

 

「この子はロックスプリングって言うの。故障のせいで、ここを出られないでいたみたいなの」

 

「初めまして、照さん。ここへ調査に来たなら、力になれると思うよ。僕はこの辺りに詳しいからね。その代わり、僕をホロウから連れ出して欲しいんだ」

 

「こんなとこにボンプちゃんが一人でいたの? よく生きてこられたね?」

 

「僕は一般的なボンプより、戦闘に関する資質が優れているからね。壊れかけで記憶も朧げだとは言え、コアとなるコードにはあらゆる戦いの記録が刻まれている」

 

「なるほどねえ……」

 

 

照は何か引っかかる事があったのか、少しの間考え込む。

 

 

「……ま、土地勘があるコがいるのは助かるし、同行をお断りする理由もないねえ」

 

「ありがとう、恩に着るよ」

 

「それじゃ、オシゴトの話に戻るけど……このあたりを調べてたんだけど、案の定異常なミアズマがたくさんあったの。不自然なくらいにね」

 

「照さんも見たの? 実はワタシたちも、白い花と一緒にそのミアズマを見たの。さっきのエーテリアスも、そのミアズマを纏ってたみたいだし……青溟剣も、少しだけど反応してた」

 

 

この異常なミアズマがホロウの拡張の原因の一端を担っているのは間違いないだろう。

 

しかしそのミアズマは実体がないため、単純に術法などで浄化させることは難しい。

 

 

「白い花と一緒に、ねえ。その白い花ってさ、そのミアズマが付着する性質があるみたいだね?」

 

「! そう、ロックスプリングもさっき言ってたの。『異常なミアズマは白い花を変異させる』って」

 

「変異……じゃあ、その変異したお花を探したほうがよさそうだねえ」

 

「それにしても、異常なミアズマ然り白い花然り、これもすべて『始まりの主』って奴の仕業なのか……?」

 

「なんだって! って言いたいとこだけど……断定するにはまだ証拠が不十分かなあ」

 

 

ひとまず、照が言ったように『ミアズマが付着した白い花』を探す事にしたリン達。

 

その時だった。

 

 

『マスター。付近に異常なエーテル波動信号を検出しました』

 

「え? 信号?」

 

「どうしたの?」

 

「向こうの方に強いミアズマの信号があるみたい……行ってみよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fairyが示した座標の場所へ向かう一行。

 

そこにあったのは……

 

 

「あれは……カローレ先生!?」

 

「うん? 知り合い?」

 

「兄ちゃんと姉ちゃんが昔、世話になったって人です。にしても、なんでこんなとこに……?」

 

 

以前にも見た、カローレの幻。

 

映像記録のように、彼女は一人喋り始める。

 

 

『……なるほど。あのお方に降臨して欲しいのね』

 

 

誰かと会話をしているようだが、相手の姿は分からない。

 

 

『計画が成功し次第、私もあのお方に謁見する。この機会を逃す手はないわ』

 

「先生……? 誰と、喋って……」

 

 

リンは問いかけるが、当然返事は返ってこない。

 

 

『この両手が血に染まろうとも……私は必ず……』

 

「…………」

 

 

その言葉を最後に、カローレの幻は姿を消した。

 

 

 

「……カローレ先生は、何を話してたの……? 先生は、ここに来てたって事だよね……?」

 

「ミアズマの性質から察するに、そう考えて間違いないだろうね。それと彼女が言っていた『あのお方』と言うのは、もしかして……」

 

「十中八九『始まりの主』、みたいだねえ」

 

「…………」

 

 

幻を見る限り、カローレはその『始まりの主』を降臨させようとしているように見えた。

 

やはり、この異常なミアズマは讃頌会と『始まりの主』が絡んでいたようだ。

 

 

「キミの先生は、もしかして……」

 

「ううん、違う……! 先生に限って、そんなことするわけない……!」

 

「リンの言う通りよ! きっと誰かが偽物の幻を作り出したんだわ!」

 

「……そうやって信じすぎない方が身のためなんだけどなあ」

 

 

照がボソリと呟いた言葉が、ファイズにのみ聞こえたが……ファイズは聞かなかった事にした。

 

 

 

「とにかくこののミアズマも、ダイアちゃん達が見たっていう『引き潮』も、全部始まりの主が目覚める前兆なのかも。手遅れになる前に、例の花を探しに行こ」

 

「うん、そうね。青凕剣の反応も次第に強くなってるし、ミアズマの気配も濃い……もしかしたら、すぐ近くにあるのかも」

 

「……姉ちゃん、行けるか?」

 

「……うん、大丈夫。ありがとう」

 

 

 

後ろ髪を引かれるような思いでカローレの幻の元を離れ、一行は先を急いだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

世界は貴方の思い通り(凍結)(作者:ゲーム最高)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

▼ギーツに憧れた主人公が創世の神へと転生し、曇らせ展開が多いこの世界を晴れ展開にする物語▼なお、たくさん人を救い過ぎて周りに愛される物語でもある▼報告▼2/10より「知られざる物語の章」を投稿いたしました!▼※この作品は時系列バラバラになっており、また原作沿いになっていますが、所々カットにされています。▼敵陣営は破壊されます。▼作者は文章力皆無です▼原作は最…


総合評価:859/評価:8.84/未完:24話/更新日時:2026年02月14日(土) 19:16 小説情報

ヴィクトリア家政の女装メイド(作者:ゆうぐれ)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

ひょんなことからヴィクトリア家政の『業務現場』を見てしまった主人公(♂)。▼口止め兼人材発掘と称して(半端強制的に)スカウトされてしまう羽目に。▼しかも提示された職務内容は執事ではなくメイド。▼果たして彼は女装メイドとして任務を上手くこなすことは出来るのだろうか。▼この話はオリキャラがヴィクトリア家政で頑張る話です。ゼンゼロの家政チームがお気に入りだったので…


総合評価:7568/評価:8.92/連載:46話/更新日時:2026年07月12日(日) 00:15 小説情報

脱ニート中の元職業軍人の俺が炎の銀兵士に詰め寄られている件(作者:ライハイト)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

銀の髪。▼燃える大鉈。▼ドスを効かせつつどこか芯があり、謎の色気を感じさせる(当社比)ようなしっとりしてる声。▼タイツの上からハイレグインナーを着用したことによって素肌が隠れ、線と形がより際立つことになるお尻。▼バケモンみたいなスタイルを誇る女性陣の中で慎ましいながらも健康的な色香を放つ肢体。▼その全て性癖に刺さった。▼だから書いた。▼インフレが順調に進んで…


総合評価:3270/評価:9.01/連載:33話/更新日時:2026年07月16日(木) 00:44 小説情報

ゼンレスゾーンゼロ ~ホロウ彷徨うエージェント~(作者:アキ1113)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

 旧都陥落から10年……伝説のプロキシ『パエトーン』として名を馳せていたアキラとリンの耳に、インターノットのある噂が入った。それは数々のホロウを彷徨い、エーテリアスを狩り続け、人々を助ける『銀騎士』の話だった。▼ 丁度そんな時、邪兎屋からある依頼の相談を受けることになる……。▼ どうも、作者のアキ1113です。この小説ではゼンゼロと仮面ライダーゼッツのクロス…


総合評価:425/評価:8.53/連載:8話/更新日時:2026年06月21日(日) 00:00 小説情報

一般常識人に新エリー都は生きづらい(作者:こなひー)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

 旧都崩落からどのくらい経っただろうか。これまで常識だった日常が崩壊し、人々の安寧が根底から覆された世界。▼ エーテルの侵蝕に抗う町新エリー都、そこで人間たちはこれまで通りとはいかなくとも、日々の生活を送ることができている。▼ 新エリー都の一部である六分街、とある一角に昔懐かしなビデオ屋が佇んでいる。そこでバイトをする彼、サクは今日も住民たちの非常識に振り回…


総合評価:2882/評価:8.09/連載:53話/更新日時:2026年03月06日(金) 21:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>