ZZZ × 555   作:びぎなぁ

331 / 331
闇に呑まれても

 

 

 

 

 

瞬光は今しがたタクミが言った事に対し、耳を疑った。

 

 

「……タクミ? 今、なんて」

 

「え? 昔話をするって」

 

「そ、それより後!」

 

「? 旧都陥落前、まだ俺が()()()()()()()()()()()の話って言ったな」

 

「ね、寝たきり……?」

 

 

瞬光はまだ信じられないと言った表情をする。

 

その顔を見て、タクミは何かを察した。

 

 

「……もしかして、兄ちゃんと姉ちゃんからは何も聞いてない感じか?」

 

「…………」

 

「……そうか。じゃあ話しておくと──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は小さい頃、凄く重い病気にかかってたんだ。命にかかわるレベルのな」

 

「……! 病気……」

 

「なんの病気だったかはもう忘れたけどな……けど、いつ死んでもおかしくないものだったってのは確かだ」

 

 

その病気のせいで、タクミはずっとベッドから動けないでいた。

 

都内の病院で、ひたすら回復に専念していた状態だった。

 

 

「だからその頃は兄ちゃんと姉ちゃんとは一緒に暮らせないでいた。ただ、しょっちゅう見舞いには来てくれてたけどな」

 

 

カローレと会ったのは基本的にその見舞いの時だけ。

 

一度だけだが、アキラとリンの学友とも会ったこともあった。

 

 

もしタクミが病気を患っていなかったら、彼もヘーリオスの生徒になっていたかもしれない。

 

 

「……タクミ」

 

「なんだ?」

 

「タクミの、病気って言うのは……もしかして、今も」

 

「え? ああ……ああそれなら安心しろ。今はもう完治してるから大丈夫だ」

 

「そ、そうなのね……良かった……!」

 

 

タクミの病気は、重いものではあったが奇跡的に徐々に回復へと向かって行った。

 

継続的な治療やリハビリを経て、タクミはようやく退院する事が出来た。

 

 

「まさに九死に一生を得たって奴だ。そんで『退院できたら、俺もヘーリオスに通える!』なんて思ってたら、最悪な事に退院した次の日に、例の旧都陥落は起きた」

 

「……そうだったんだ」

 

 

避難所で一人、アキラとリンを待ち続けていたあの時間は、今でも記憶に残っている。

 

 

「その話って、誰にも話さなかったの?」

 

「いや、てっきり兄ちゃんか姉ちゃんかが話して、皆知ってるもんだと思ってたから……そうか、この感じだと皆知らないっぽいな」

 

 

命にかかわる重い病気を患っていた過去。

 

それを包み隠さず話すタクミの様子は、普段と変わらない。

 

きっと彼にとってはもう終わった事なのだろう。

 

 

「……さっき、『暗闇がどうの』って話をしてたな。改めて昔話をさせてもらうと……俺は物心が付いたときから、ずっと病院のベッドの上だった。だから、一度も外に出たことがなかったんだ」

 

 

そしてリハビリ期間中、幼いタクミは生まれて初めて、外に出る事になった。

 

 

「恥を忍んで言うとだな……その時の俺は、外に出ることが物凄く怖かったんだ」

 

「……確かに、未知の事をするのは、凄く勇気がいるわよね」

 

「ああ。ずっとベッドの上にいた俺が外になんか出られるわけがない。一歩出た瞬間に、空で輝く太陽に焼かれてしまうって、あの時の俺は本気でそう思ってた」

 

 

それでもやるしかないと、タクミはなけなしの勇気を出し、外へと出た。

 

 

 

 

 

 

「……そんな俺を待ってたのは、心地いい風と、暖かい太陽の光だった。俺を焼く恐ろしい太陽なんて、何処にもなかった」

 

「…………」

 

「だからそうだな……俺が言いたいのは、進むしかないって時はとりあえず進んでみろって事だな。そこが暗闇かどうかは、進んでから分かる」

 

 

だが、「進んでみろ」と言っても、簡単に出来る事ではない。

 

とても勇気のいる行為だろう。

 

 

「もし一人じゃ進めないって時も、少なくとも俺がいる。一緒にその奈落に落ちようじゃねーか」

 

「……タクミ」

 

 

瞬光はタクミを見ながら、両手をぎゅっと握りしめる。

 

そんな彼女を見て……タクミは持ち前の脚力を使い、瞬光のいる屋根の上に軽々と跳び乗る。

 

 

「……! た、タクミ!?」

 

 

そしてタクミは、彼女の体を軽々と抱えた。

 

瞬光を抱えたまま、軽やかに屋根から飛び降りるタクミ。

 

 

 

 

そして何事もなく、地面に着地した。

 

 

「ほら、あんまり怖くなかっただろ?」

 

「……うん。そうね……アナタがいれば、きっと……」

 

 

瞬光は頬を赤らめ、おずおずとタクミに尋ねる。

 

 

「タクミ、その……()()()()?」

 

「全然。()()()()()()()()、余裕で担いでやるよ」

 

「…………」

 

 

安心からか、思わず笑みがこぼれてしまう。

 

そして、再び彼女は口を開く。

 

 

「……ねえ、タクミ」

 

「なんだ?」

 

「えっと、実はね──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()からアナタに、話したいことがあるの♪」

 

「え? ──うわあ!?」

 

 

またしてもいきなり口調と容姿が変わる。

 

瞬く間に、白い方の瞬光が姿を現した。

 

 

白い瞬光は妖艶な笑みを浮かべると、ゆっくりとタクミの腕から降りる。

 

 

「もう。そう何度もびっくりする事ないでしょ?」

 

「いきなり出てきたら誰だってびっくりするだろ……それで何の用だ? さっき瞬姐さんがなんか言いかけてたんだけど」

 

「偶然ね〜。アタシも話したい事があったの。せっかくだから教えておきたくて。この子が一体、何に悩んでるのか──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはずばり、青溟剣についてよ」

 

「……!」

 

 

白い瞬光は、青溟剣の秘密を語り始める。

 

 

「青溟剣の内部には、二つの強大で破壊的なエネルギーが渦巻いているわ。そしてその二つは、まるで闘うように衝突し合っている」

 

 

それは青溟剣の内部で絶えず起こり続け、そして爆発的なエネルギーの奔流を生み出している。

 

もし何かの拍子で、そのエネルギーが外へ漏れだそうものなら──

 

 

「この新エリー都は、間違いなく滅んでしまうでしょうね。それこそ、旧都陥落と同じ……もしくはそれ以上の規模で」

 

「…………!」

 

「ふふ、恐ろしいでしょう? そうならない為に、エネルギーを外に出さないようにする『第三者』が必要になるんだけど……」

 

「……第三者? まさかそれって……」

 

「そ。『青溟剣が選んだ剣主』が、その『第三者』の役割を担う事になるの」

 

 

剣主の存在により、衝突し合う二つのエネルギーはギリギリ均衡を保つ事が出来る。

 

そしてエネルギーがわずかに溢れ出しても、第三者である剣主が吸収するため、大事には至らないと言う。

 

そのエネルギーこそが、剣主に宿る力の源と言う訳だ。

 

 

「青溟剣の力の本質は、自分の力、五感、果てには命……そのすべてを捧げることにある。青溟剣のエネルギーを暴走させないためには、そこまでしなきゃいけないの」

 

「……つまり、瞬姐さんが青溟剣を手放したら」

 

「ええ。この子が剣主の役目を放棄する……それは、この新エリー都を見捨てる事と同義。だからこの子は、何があっても青溟剣を手放そうとは考えないの」

 

 

世界を犠牲にするか、自分を犠牲にするか。

 

瞬光は例え嫌でも、後者を選ぼうとするだろう。

 

 

「……なんて代物だ」

 

「この秘密は、存命している雲嶽山の人間は誰も知らない。知っているのは、アタシ達だけ」

 

「! 師匠も知らないのか?」

 

「そうよ。表向き伝わっているのは、『必ずや青溟剣の剣主を見い出し、雲嶽山の栄誉を汚す事なかれ』なんて、曖昧な教えだけ」

 

 

青溟剣の剣主は『英雄』ではなく、『生贄』だった。

 

誰がその教えを広めたのかは知らないが、腹立たしい事この上ない。

 

 

「……青溟剣の事は分かった。けど、なんでそれを俺に教えようと思ったんだ?」

 

「それはもちろん、アナタに助けて欲しいからよ。この子、責任感は人一倍あるから……誰が止めても、きっと世界の為に青溟剣を振るう事をやめない。けど、アタシは違う」

 

「!」

 

 

白い瞬光はタクミの身長に合うようにしゃがみ込み、顔を近づける。

 

 

「アタシは生きていたいの。関わりすらない誰かの為に命なんかかけたくない。だから、この子がこれ以上青溟剣を使わないようにして欲しいの。説得でも何でもして……ね?」

 

「……一応、話してはみる。けど、青溟剣を手放すか手放さないか……最終的にそれを決めるのは、やっぱり瞬姐さん自身だ」

 

「……アナタは、あくまでこの子の決断には関わるつもりはないって事?」

 

「ああ」

 

 

タクミの返答に、瞬光は少しの間黙り込む。

 

そして『仕方がない』と言った風にため息をついた。

 

 

「……この子がアナタに入れ込む理由、分かった気がするわ。……確かに、魅力的ね」

 

「……?」

 

「この子は、アナタが思っている以上に……アナタを大切に想っている。けど過ぎた『愛情』は呪いであり罠なの。いつまでもそんな冷たくてじめじめしたものに縋っていたら──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──いつか、()()()()()()()わよ?」

 

 

彼女の忠告は、どこか切実な……生への渇望が垣間見える。

 

タクミはその言葉に、何も言う事は出来なかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

雅が本当の兄の様に慕っていた分家の兄が、雅の母親を介錯した話。(作者:ザワザワする人)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

タイトルまんまです。▼むか〜しにpixivで同じ題名のやつをあげてました。作者一緒です。▼忘れてたんですけど、この話の本元はあにまんのスレです。『ここだけ雅に従者系の幼馴染がいた世界』このスレです。作者はスレ主じゃないです。面白いので是非是非あにまんの方も。


総合評価:1223/評価:8.17/連載:33話/更新日時:2026年07月19日(日) 14:44 小説情報

世界は貴方の思い通り(凍結)(作者:ゲーム最高)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

▼ギーツに憧れた主人公が創世の神へと転生し、曇らせ展開が多いこの世界を晴れ展開にする物語▼なお、たくさん人を救い過ぎて周りに愛される物語でもある▼報告▼2/10より「知られざる物語の章」を投稿いたしました!▼※この作品は時系列バラバラになっており、また原作沿いになっていますが、所々カットにされています。▼敵陣営は破壊されます。▼作者は文章力皆無です▼原作は最…


総合評価:860/評価:8.84/未完:24話/更新日時:2026年02月14日(土) 19:16 小説情報

ゼンレスゾーンゼロ ~ホロウ彷徨うエージェント~(作者:アキ1113)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

 旧都陥落から10年……伝説のプロキシ『パエトーン』として名を馳せていたアキラとリンの耳に、インターノットのある噂が入った。それは数々のホロウを彷徨い、エーテリアスを狩り続け、人々を助ける『銀騎士』の話だった。▼ 丁度そんな時、邪兎屋からある依頼の相談を受けることになる……。▼ どうも、作者のアキ1113です。この小説ではゼンゼロと仮面ライダーゼッツのクロス…


総合評価:468/評価:8.53/連載:9話/更新日時:2026年07月25日(土) 23:00 小説情報

脱ニート中の元職業軍人の俺が炎の銀兵士に詰め寄られている件(作者:ライハイト)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

銀の髪。▼燃える大鉈。▼ドスを効かせつつどこか芯があり、謎の色気を感じさせる(当社比)ようなしっとりしてる声。▼タイツの上からハイレグインナーを着用したことによって素肌が隠れ、線と形がより際立つことになるお尻。▼バケモンみたいなスタイルを誇る女性陣の中で慎ましいながらも健康的な色香を放つ肢体。▼その全て性癖に刺さった。▼だから書いた。▼インフレが順調に進んで…


総合評価:3278/評価:9.01/連載:34話/更新日時:2026年07月24日(金) 00:14 小説情報

ヴィクトリア家政の女装メイド(作者:ゆうぐれ)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

ひょんなことからヴィクトリア家政の『業務現場』を見てしまった主人公(♂)。▼口止め兼人材発掘と称して(半端強制的に)スカウトされてしまう羽目に。▼しかも提示された職務内容は執事ではなくメイド。▼果たして彼は女装メイドとして任務を上手くこなすことは出来るのだろうか。▼この話はオリキャラがヴィクトリア家政で頑張る話です。ゼンゼロの家政チームがお気に入りだったので…


総合評価:7623/評価:8.92/連載:46話/更新日時:2026年07月12日(日) 00:15 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>