ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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黒い花

 

 

 

 

 

外に広がっていたのは、空は赤い雲に覆われ、至る所に黒い花が咲いている異様な光景。

 

 

「これ、ホロウの無人区域に咲いてた……」

 

「この様子じゃきっと適当観の外も……すぐに皆と合流しなきゃ!」

 

 

そう言い、二人は正門から外へ出ようとしたが……ミアズマでできた植物により、通り道が塞がれていた。

 

 

「正門が塞がれてる……ここにもミアズマの異変が……」

 

「……どうやら時が来たようだな、葉瞬光」

 

「!」

 

 

いつの間にか、陸老師が二人の近くに立っていた。

 

彼の顔を見たタクミは反射的に顔をゆがめる。

 

 

「青溟剣は雲嶽山の財産……みだりに扱うべきではない。しかし今、その力を振るうべき時が来たのだ」

 

「陸老師……」

 

「己の使命を果たす時だ。青溟の力で澄輝坪を救い、雲嶽山に栄光を取り戻すのだ!」

 

「…………」

 

 

思わず舌打ちしかけるタクミだが、なんとかこらえる。

 

そして瞬光に耳打ちをする。

 

 

「瞬姐さん、この人の言葉なんて聞かなくていい。さっき瞬姐さんが言った通り、まずは皆と合流するぞ」

 

「彼女の道を阻むでない! 雲嶽山の剣主として、青溟剣を使う事こそが……葉瞬光の運命なのだ!」

 

「それを決めんのはあんたじゃねえだろ……! 瞬姐さん行くぞ!」

 

「! う……うん!」

 

 

タクミは瞬光の手を握り、陸老師から逃げるように裏口へ向かう。

 

幸い道を塞ぐものはなく、すんなりと外へ出る事が出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

適当観から澄輝坪の街中へと出てきた二人。

 

案の定、街は大混乱に陥っていた。

 

 

適当観だけでなく、澄輝坪全体に異常なミアズマによる現象が起こっている。

 

 

「タクミ! 瞬光!」

 

「兄ちゃん!」

 

 

広場に行くと、アキラ達の姿が見えたので、合流する。

 

彼らの近くには、適当観と同じ黒い花が咲いている。

 

 

「二人も見たかい? あの黒い花を」

 

「うん、見たわ。適当観だけじゃなくて、街中にも異変が起きてるなんて……」

 

「なんとか術法でこの黒い花を消そうと試みているけれど……どうも上手くいかなくてね」

 

 

見てみると、リンが今その術法で花を消そうとしている最中だった。

 

 

「リンちゃん、どうですか?」

 

「ううん、やっぱりダメ……私の覚感の術でも壊せない」

 

「お弟子ちゃんでもダメかあ……」

 

「…………」

 

「……タクミくん?」

 

 

 

一言もしゃべらないまま、俯いているタクミを不思議に思った福福は、顔を覗き込む。

 

 

 

 

 

 

「……!? タクミくん、大丈夫ですかっ!?」

 

 

彼の顔を見た福福は大きな声を上げた。

 

それもそのはず、タクミは明らかに健康と呼べる顔色ではなくなっていたのだ。

 

息も上がっており、汗も浮かんでいる。

 

 

「俺は……大丈夫だ、福姐さん……」

 

「おいおい、どう見ても大丈夫って状態じゃないだろう!」

 

「さっきまで元気だったのに……まさか、この黒い花のせいで侵蝕が……?」

 

「……俺はオルフェノクだから、侵蝕は効かない。つまり原因は、多分……」

 

 

認めたくはないが……オルフェノクの力が暴走しかけているのかもしれない。

 

まさか黒い花がその要因となっているのだろうか。

 

 

(でも、なんだ……? 何か、()から……前とは、何か違う……)

 

 

殺人衝動を促す、例の『声』は聞こえない。

 

まだ理性も意識も残っているが、それがいつまで続くか分からない。

 

 

「早く、この花をどうにかしないと……っ! 」

 

「……福姐さん、今からワタシの言うようにやってみて!」

 

「え?」

 

 

瞬光は黒い花を浄化するコツを福福に教える。

 

 

「……澄んだ、水に……分かりました、やってみますっ!」

 

 

そして福福は深呼吸をし、瞬光が言うように静かにその手を黒い花へ伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして十数分後。

 

 

「っ!!」

 

 

黒い花はまるで溶けていくかのようにその形をなくし……やがて完全に消滅した。

 

 

 

「……!」

 

 

それと同時に、タクミの気分もほんの少しだけマシになった。

 

 

「やった……やったわ!」

 

「凄く……疲れますね、これ……」

 

 

今の方法は自身のエネルギーを使い、黒い花の内部にあるコアを探し出し、それを内側から浄化すると言うもの。

 

しかし今のようにかなり時間がかかるうえ、エネルギーの消費も激しい。

 

 

「瞬姐さん、花を浄化する方法なんてよく知ってたな……」

 

「うん、()()()が教えてくれたから……でも、この調子だと街中の花を浄化するには時間が……」

 

「確かに、かなりの人数が必要になるね。師匠はまだ戻って来てないし……」

 

 

瞬光は背中の剣棺に目をやる。

 

彼女の意図を察したのか、福福は瞬光の手を優しく握る。

 

 

「……大丈夫ですよ、瞬光ちゃん! さっき教えてくれた方法を潘さん達も使えば、澄輝坪の花はきっとすぐに浄化できます! ただ……」

 

「……そうだな。それだけではホロウの拡張は止まらない……ホロウの中の花も、浄化する必要がある」

 

「それなら、ワタシが行くわ! 青溟剣の力は、異常なミアズマに特別効果があるみたいだから……! ホロウに入って浄化してくる!」

 

「で、でもそれじゃ、瞬光ちゃんの体が……!」

 

「大丈夫よ! あの方法を使えば、普通にやるよりはずっと安全だもの!」

 

 

瞬光が言っているのは、恐らく白い瞬光に浄化をさせるという方法だろう。

 

しかし、それで本当に上手くいくかは、やってみないと分からないはずだ。

 

 

「…………」

 

「何をもたもたしておるか! 青溟剣の剣主として、果たすべき責務を果たすのだ!」

 

「陸老師……」

 

「今の適当観の人員では、澄輝坪の花を片付けるので精一杯だろう。しかし、おぬしのその力があれば文字通り百人力! 黒い花を一掃し、災難を止めるのだ!」

 

「ま、待ってください陸老師! 瞬光には、もう危険な目に遭わせないようにって……」

 

 

儀玄とは未だに連絡がつながらない。

 

ファイズが同行するとしても、無事に原因を突き止められるかは怪しい。

 

 

そんな時だった。

 

 

「みなさん、お困りごとかなあ?」

 

「……! 照さん! ロックスプリング!」

 

 

ちょうどいい時に照、そして修復が完了したロックスプリングがやって来た。

 

 

「状況は一刻を争う状況だねえ。念の為、この子も連れてきたよ」

 

「おかげさまで、基本モジュールの修復はほぼ完了したよ。僕もあの異常なミアズマについて、少なからず役に立てるはずだ」

 

「うんうん。それにラマニアンホロウに入った時、キミの青溟剣が反応したことも、ザオちゃん色々と引っかかってるんだよねえ」

 

 

その青溟剣と瞬光の存在こそが、異変の原因を突き止め、そして取り除くカギになると照は考える。

 

人員を割く余裕がない以上は、最早そうするしかないだろう。

 

 

「……分かりました。それじゃああたし達は残って黒い花の処理をします!」

 

「お願いね。ザオちゃん達は駅で待ってるから、瞬光ちゃん達も準備が終わったら早く来てねえ」

 

「うん、ありがとう二人とも!」

 

 

照は手を振った後ロックスプリングと共にロープウェイ駅へ向かう。

 

潘達も黒い花の対処をしに別々の場所へ散っていった。

 

 

 

タクミ達も照のところに行こうとした、その時。

 

 

「……」

 

「あ……た、タクミくんっ!」

 

 

福福に呼び止められる。

 

 

「……福姐さん?」

 

「や、やっぱり……タクミくんも、ホロウに行くんですか?」

 

「……ああ。ここにいたら、余計まずいからな」

 

「…………っ」

 

「今はただでさえ黒い花の事で手一杯なんだ。俺の都合でみんなに迷惑はかけられない」

 

 

 

タクミが万が一暴走してしまった場合の事を考えると、澄輝坪に残るよりはラマニアンホロウに入っていた方がいい。

 

それは福福も聞いており、タクミの言う事も理解できていた。

 

 

 

しかし、タクミ自身がこれから辿るかもしれない末路。

 

 

福福は、彼が二度とホロウから帰ってこないかもしれないと、不安で仕方がなかった。

 

後ろの瞬光とリンも、やはりその不安は拭えないようだった。

 

 

「……かえって、きてくれるんですよね?」

 

「……断言はできないな」

 

 

正直に、そう告げる。

 

タクミはここで、無責任に『帰って来る』とは言えなかった。

 

 

「大丈夫よ、福姐さん! ワタシとリン、それに照さんもいるもの! 仮に暴走しちゃっても、きっと止められるわ!」

 

「うん。きっとみんなで一緒に帰って来るから、待ってて。タクミには誰も傷つけさせないし、傷つけもしない」

 

「…………」

 

「……分かりました。それじゃあ、お願いしますっ……!」

 

 

少し涙目になりながらも、福福は自身の役目をこなすため、その場を後にした。

 

 

「ワタシ達も行きましょう! 黒い花を片付ければ、きっとタクミも暴走はしないはず……!」

 

「うん。さっさと浄化して、さっさと帰ろう!」

 

「……そうだな」

 

 

タクミは二人と一緒に照の待つロープウェイ駅まで向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……体の中から絶え間なく伝わる、おぞましい力の波動に顔を歪ませながら。

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