ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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底へ

 

 

 

 

 

テラーラプトルを倒した後、リン達は黒い花が群生しているエリアへとたどり着く。

 

すると瞬光の剣棺が再び共鳴しだした。

 

 

「……見つけたわ」

 

 

瞬光が指を差す先にある、一輪の大きな黒い花。

 

 

「あの花だけ、他とは違うミアズマの気配を感じる。まるでここら一帯の『心臓』みたいに……」

 

「こいつを浄化すれば、周りの花も消えるって事か?」

 

「うん。……皆は、下がってて」

 

「瞬光、大丈夫? 疲れてるなら、無理はしないで!」

 

「大丈夫……だってこれは、ワタシがやるべき事なんだから」

 

 

瞬光はまるで自分に言い聞かせるようにそう口にした後、剣を掲げる。

 

 

「……この血を、以て──待ちなさい。命を投げ出すつもり?」

 

「!」

 

 

突如、瞬光の口調が切り替わる。

 

それを認識する間もなく、瞬光の髪はあっという間に白くなっていく。

 

不安がにじみ出ていた表情も鳴りを潜め、白い瞬光はより高く、剣を掲げた。

 

 

「この血を以て、魂を契る……散れ!」

 

 

そう唱え、剣で一閃。

 

目の前の黒い花は、うめき声にも近い音を立てながら、溶けるように消えていった。

 

 

「……!!」

 

 

それと同時に、周りの花も一斉に消滅していく。

 

瞬光の言った通り、『心臓』となる花を消せばおのずと周りの花も消えるようだ。

 

 

「やっぱりその剣が、異変解決のカギになるみたいだねえ」

 

「……ふう」

 

 

瞬光は剣を収め、力が抜けたかのようにゆっくりと座り込む。

 

 

「瞬姐さん!」

 

 

瞬光の元へ、ファイズが慌てて駆け寄る。

 

彼女はそれをいい事に──

 

 

「よいしょ……っと」

 

「うわっ……!?」

 

 

遠慮など知ったものかと言わんばかりに、ファイズの体にもたれかかって来た。

 

反射的に落っこちないように支えるファイズ。

 

 

「……大丈夫か?」

 

「大丈夫に……見える? 凄く疲れちゃったから、しばらくはこのままでいさせて……」

 

「寄りかかるなら俺より姉ちゃんの方がいいんじゃないのか? 装甲とかが硬いだろ」

 

「……もう、ニブチンね。アタシはアナタがいいの」

 

 

そう言いながら、白い瞬光は全力でファイズの体で休息をとる。

 

 

「……やっぱり、『この方法』でも何事もないってわけじゃなさそうだね」

 

「そうね。けど前にも言った通り、この子がやるよりかはずっとマシなの。ホントはこんな事、したくないんだけど」

 

 

瞬光は物憂げにため息を吐く。

 

 

「この子があまりにも本気だから、アタシがこうやって出てこざるを得ないの。アタシとこの子は一蓮托生……もし何かあったら、可愛い可愛い後輩クンに、二度と会えなくなっちゃうもの」

 

「…………」

 

「とは言え、アタシがこうして力を使うのにも限界があるの。……たっくん、前に言った事忘れないでよね?」

 

 

その言葉を最後に、白い瞬光は目を閉じ、姿を消した。

 

そうして元に戻った瞬光は、ゆっくり目を開ける。

 

その様子は、完全に回復した……とは言えないものだった。

 

 

「瞬光、やっぱり体の負担が……他の方法を考えてみる?」

 

「ううん、大丈夫……まだ疲れが取れてないってだけだから。それに……青溟剣が、このエリアの『何か』と共鳴してるみたいなの」

 

「共鳴?」

 

「うん。照さんが言ったように、ラマニアンホロウの異変が青溟剣と何か関係があるなら……これは剣主であるワタシの使命。……ワタシは、もう逃げたくないの」

 

「…………」

 

 

その言葉に、ファイズは何の言葉も返す事が出来なかった。

 

 

 

そんな彼の頭に、瞬光の手が優しく添えられる。

 

 

「……ふふっ。顔は見えないのに、やっぱりアナタって分かりやすいのね。何も言わないけど、心配されてるのは凄く伝わってくるわよ?」

 

「…………」

 

「ごめんね。アナタに信じてもらうには、まだまだワタシは不甲斐ないみたい」

 

「……違う。瞬姐さんを信じてない訳じゃないんだ。俺は……自分を、信じ切れていないだけだ」

 

 

タクミは『瞬光を信じる』と、心にそう決めたはずだった。

 

皆の為に戦う彼女の意思を尊重すると。

 

しかし、今になってその自分の決断は正しかったのかと……タクミは自分を疑い始めた。

 

 

 

「……ひでえ話だ。瞬姐さんは俺をずっと迷わず信じてくれてるってのに」

 

「…………ねえ、タクミは覚えてる? 一緒に過ごした日の事」

 

 

共に景色を見て、ケーキを作ったり食べたり。

 

映画を観たり、皆に料理を振る舞ったり。

 

 

雨上がりに、きれいな虹を見た事もあった。

 

 

「ワタシね、この街が……澄輝坪が好き。皆と過ごす、この日常が大好き」

 

「……」

 

「瞬光……」

 

「だからワタシ……そんな日常を守りたいの。少なくとも、やれるだけの事はやってみたい」

 

 

そう言葉にする瞬光の意思は、まぎれもなく本物だった。

 

使命感でも、義務でもない。心から守りたいと言う『決意』。

 

 

「それにもう分かったの。ワタシは独りじゃないって……この先何があっても、振り返れば皆がいる。それが分かってるから。そうでしょ?」

 

「…………」

 

 

ファイズはしばらく俯いたあと、また瞬光の方を見る。

 

 

「……信じるとか信じないとか、そんなんで迷ってる暇なんてなかったな。瞬姐さんがそう言うなら、俺は黙って隣に立つだけだ」

 

「うん! ワタシ、信じてる! きっとそばに居てくれるって」

 

 

彼女はもう戦うと決めたのだから、こちらも安心して背中を預けられる、そんな頼れる弟弟子でなければならない。

 

ファイズも、そう強く決意した。

 

 

「……ザオちゃんは瞬光ちゃん達が眩しく見えるよ。それじゃ、探索を再開しよっか。ロックスプリング、ここ辺りには何かある?」

 

「僕のメモリが正しければ、この近くの工場内部に、より大きなミアズマがあるはずだ。もしかしたら、コアもそこにあるのかもしれない」

 

「それじゃあ行こっか。瞬光、立てる?」

 

「うん、もう大丈夫よ。ありがとう」

 

 

次の目的地は工場内部。

 

 

 

いざ出発しようとしたその時、イアス越しから連絡が来た。

 

 

『リン、聞こえるかい? 緊急の連絡だ』

 

「お兄ちゃん!」

 

『今、弟子たちが総動員して、ようやく澄輝坪の黒い花をすべて浄化する事が出来た。……けれど、ホロウの拡大は、まだ止まっていない。そちらはどうだい?』

 

 

今のアキラの言葉で、リン達はほぼほぼ確信した。

 

 

「今、工場に行くところだよ。もしかしたら、異変の元凶もそこにあるのかも!」

 

『分かった。くれぐれも気を付けてくれ。……それと、タクミと瞬光の方はまだ大丈夫かい?』

 

「ワタシ達なら大丈夫よ、アキラ! 安心して、すぐに解決して、一緒に帰って来るから!」

 

『……そうか。それなら、信じて待っているからね。幸運を祈っている』

 

 

その言葉を最後に、通信は切れる。

 

一行は顔を見合せ頷いたあと、引き続き目的地へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

工場の内部に入ったリン達。

 

そこで彼女たちは、驚くべきものを目にした。

 

 

 

 

 

『この力……懐かしさを感じるわ。まるで、妖刀無尾のような──』

 

 

 

 

 

「あれは……」

 

「カローレ先生……!?」

 

 

ミアズマで形作られたカローレの幻が、再びリン達の前に姿を現したのだ。

 

 

『……雲嶽山の青溟剣、ね。その"代償"も、解決できる術があるかもしれないわ』

 

「……! 今、青溟剣って……」

 

「今の話を聞く限り、青溟剣について知識があるようだね……追いかけてみる?」

 

「そうしよう。なんか青溟剣の代償を抑える、みたいな事も話してたし……確かめてみる価値はあるはず。ロックスプリング、ここの案内はお願いしていい?」

 

「もちろん。ただ内部は少なからず複雑なつくりだからね。ミアズマには気を付けながら行こう」

 

 

ミアズマの濃度も、次第に強さを増していく。

 

一行は最大限警戒をしながら、カローレの幻を追いかけていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうしてカローレの幻を追いかけて行くうちに、いくつか分かったことがある。

 

 

雅が扱う妖刀『無尾』、そして青溟剣は『戎具』と呼ばれている事。

 

その『戎具』には重い代償……そして触れられざる邪悪な秘密があると言う事。

 

 

そしてカローレは、その代償を最小限に抑える方法を探すため、危険を冒していたという事。

 

 

幻の話を聞いたリンは思慮にふける。

 

 

(……間違いなく、先生は青溟剣の代償を克服する方法を知ってる。けど、先生はどうしてそんな事を……青溟剣の秘密……先生は、何を知って……)

 

「姉ちゃん!」

 

「っ、な……なに?」

 

「気を付けろ。いつの間にか、『コア』の場所までたどり着いたみたいだ」

 

「!!」

 

 

幻を追いかけていくうちに、黒い花が群生しているエリアに到着したようだ。

 

そこは広い部屋で、奥に『心臓』らしき花が咲いている。

 

 

「うん、この嫌~な気配からして、ここが異変の元凶が起きてる場所で間違いなさそうだねえ」

 

「……ん? なんだ、アレ」

 

 

ファイズは部屋の奥に、何かがある事に気が付く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには部屋の主らしき巨大なエーテリアスが、ボロボロの状態で力なく横たわっている。

 

そのエーテリアスは近寄る間もなく、跡形もなく消滅してしまった。

 

 

一瞬の出来事に、リン達は戸惑う。

 

 

「……今のエーテリアスが『コア』?」

 

「ミアズマの感じからして、それっぽい……でも出会うなり消えちゃった」

 

「自滅、って感じでもなさそうだねえ。もしかしてザオちゃん達が来る直前に誰かが……って、瞬光ちゃん?」

 

「…………」

 

 

瞬光は部屋に入り、黒い花を見渡す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……大丈夫」

 

 

何かを呟いた後、彼女は先ほどと同じように……剣を掲げ始めた。

 

 

「! 瞬光待って、もう少し休んだ方が……」

 

「異変は、まだ収まってないもの。これ以上休んでいられないわ……ワタシがやらなくちゃ」

 

「……瞬姐さん」

 

 

決意をその瞳に宿し……青溟剣の解放とともに、髪が再び白色に変わる。

 

瞬光はファイズを一瞥したあと、花の方へ向き直る。

 

 

「…………この血を以て、魂を契る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──散れ!」

 

 

 

 

白い輝きを放つ、その一閃。

 

先ほどと同じく、その輝きにより黒い花が一つ残らず消滅していく。

 

 

「…………く……っ」

 

「っ!! 瞬姐さん!!」

 

 

完全に消滅しきったと同時に……瞬光は力尽きたように倒れる。

 

地面に着く前に、ファイズが間一髪で受け止めた。

 

 

リン達も彼に続いて瞬光の元に駆け寄る。

 

 

「瞬光! しっかりして!!」

 

「……本当にこの子も、人遣いが、荒いわね……でも──」

 

 

瞬光は震える手で、ファイズの頬に手を添える。

 

今にも消えてしまいそうな、弱弱しい笑みを見せる。

 

 

 

「……アナタとこの子の日々を守れるなら……悪くないのかもしれないわね」

 

「…………!」

 

 

 

 

 

 

 

彼女の瞳に映るのは、後悔か、安堵か……それとも、未練か。

 

 

「…………」

 

 

その言葉を最後に、瞬光は再び元の姿に戻った。

 

 

 

 

しかし。

 

 

「……瞬光ちゃん、平気?」

 

「…………」

 

「……瞬光? なんで、返事をしないの?」

 

「…………!!」

 

 

彼女を抱えていたファイズは、理解した。

 

たった今青溟剣が彼女にもたらした、重い代償を。

 

 

 

 

肌は冷たく、その瞳は先ほどまでの光はない。

 

その姿は、まるで生気を失った人形のようだった。

 

 

「な……なんで!? さ、さっきまでなんとか耐えられてたのに……!」

 

「……この子、青溟剣の侵蝕が……取り返しのつかないとこまで言ってた事を、黙ってたんだね」

 

「しゅ、瞬光! 私の顔は見える!?」

 

「…………」

 

 

いくら呼び掛けても、手を振ってみても、瞬光は反応を示さない。

 

視覚も、機能していないようだ。

 

 

リンは涙目になりながらも、瞬光に必死で呼びかける。

 

 

「だ、ダメだよ……! こんな、急にお別れなんて……瞬光、返事をして! 私たちはまだ……!」

 

「……ここまで来たら、もう手遅れかも。ザオちゃん達の声も、もう聞こえないんじゃないかな」

 

「……瞬姐さん」

 

 

ファイズは腕の中で動かなくなった瞬光をしばらく見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて、決心をしたように顔を上げた。

 

 

「……いや、まだだ!」

 

「……っ、え……?」

 

 

ファイズはおもむろにファイズフォンを取り出し、通話終了ボタンを押す。

 

赤い光とともに変身が解除され、続けてタクミは装着していたファイズドライバーを取り外す。

 

 

「……タクミ? 何、してるの?」

 

「まだ諦める時じゃねえって言ってんだ。成功するかどうかは分からないけど、やるしかない!」

 

「な、何を言って──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リンが真意を問おうとする間もなく、その変化は訪れた。

 

 

 

 

 

「──変身!」

 

 

顔に模様が現れる。

 

タクミの体は変化し、瞬く間にホッパーオルフェノクへと姿を変えた。

 

 

 

そしてその刹那。

 

 

「……っ!?」

 

 

ホッパーオルフェノクの内部から、莫大なエネルギーが放出されていく。

 

そのエネルギーの光は次第に大きくなり、やがてホッパーオルフェノクと瞬光を包み込んでいく。

 

 

(……なに、これ……タクミの中から……)

 

 

リンはそのエネルギーに、既視感を覚えた。

 

かつて、タクミが暴走した時に感じた、あの雰囲気。

 

 

(まさか……これ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(──『始まりの主』の、エネルギー……!?)

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