ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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価値

 

 

 

 

 

ホロウの出口へ向かう道中。

 

 

「ロックスプリング、調子はどう?」

 

「調子がいいとは言えないけど……かと言って致命的なものであるとも言えない。今のところはそこまで急がなくても大丈夫だと思う。でも……」

 

「……これから起こるアクシデントを考えたら、ちょっと急いだ方がいいかもな」

 

「え? どういう事?」

 

「やっぱりタクミも気づいていたね。皆、前方に何者かが潜んでいる。気を付けて」

 

 

リンが算出した脱出ルートでは、エーテリアスもおらず距離もそこまでではない。

 

このまま行けば問題なくホロウを出られるだろう。

 

 

 

 

だが、それは()()()()()()による横やりがなかった場合の話。

 

 

「……見つけたぞ」

 

「!!」

 

 

突然黒づくめスーツ姿の男が複数人、物陰から武装した状態で現れた。

 

リーダーと思しき男が前に出る。

 

 

「……お前が青溟剣の剣主、葉瞬光か。どういう事だ……? なぜもう回復しているんだ」

 

「……! アナタたち、何者?」

 

「……もしかして、私達を狙ってる?って言うか、さっき起きてた事をなんで知ってるの……?」

 

「…………」

 

 

黒服のリーダーは、瞬光に向けて手を差し出す。

 

 

「手荒な真似はするつもりはない。我々の要求はただ一つ。その青溟剣を、こちらに渡してもらおうか」

 

「青溟剣を……? これは雲嶽山のものよ! それを手にしてどうするつもり……!?」

 

「お前らが知ってどうする。それを持って帰らないと俺たちの任務が終わらないんだ。ご理解願おうか」

 

「こんなタイミングで、無理に決まってるじゃん! 澄輝坪や衛非地区がどうなってもいいの!?」

 

「俺たちが知るか、そんな事。顔も知らん奴より任務を遂行できるかどうか。そっちの方が大事なんでな」

 

 

罪悪感もなく、平然とそう言ってのける黒服。

 

周りにいる男たちもじりじりと瞬光達を追い詰めていく。

 

 

「さあ、青溟剣を渡せ。さもないと──」

 

 

[1・0・6]

 

 

「……? 何の音だ?」

 

 

唐突に響き渡る電子音。

 

男たちは、それがなんなのか認識する間もなく──

 

 

 

 

[Burst Mode]

 

「!? うわあっ!!」

 

 

いきなり飛んできたフォトンブラッド弾が、彼らの足元にまき散らされた。

 

思わず後退してしまう黒服たち。

 

 

どこからか飛んできたのか。

 

それは、()()()()()からである。

 

 

リンにおぶわれたままのタクミが、フォンブラスターで男たちに威嚇射撃をしたのだ。

 

 

「こ、このガキ……」

 

「帰れ変態ども……! こっちは急いでんだよ! ……姉ちゃん、今のうちだ!」

 

「ナイスタクミ! 皆、こっちだよ!」

 

「…………」

 

「……照さん、どうしたの? 早く行きましょ!」

 

「わ、分かってるよ」

 

 

一斉に走り出すリン達。

 

黒服たちは当然、後を追おうとするが──

 

 

「こっちくんな!!」

 

「くっ……!」

 

 

タクミが後ろに放ったフォンブラスターの弾に邪魔をされ、足止めを余儀なくされてしまう。

 

 

次第に小さくなっていくリン達の背中。

 

 

「……くそっ」

 

 

黒服のリーダーはそれを忌々しげに見つめる事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。

 

ラマニアンホロウから出た後、一行は無事に澄輝坪に戻って来た。

 

 

「……! 皆、無事だったか!」

 

「お兄ちゃん、ただいま!」

 

 

ロープウェイ駅で待っていたアキラが、リン達を出迎える。

 

 

「やれやれ……心配したんだぞ? もう少し遅かったら、僕もホロウに入っていたところだった」

 

「ごめんね。ちょっと色々あって……」

 

「まあ、皆無事で何よりだ。瞬光もタクミも──タクミ?」

 

 

アキラはリンにおぶわれているタクミを見て目を丸くする。

 

さもありなんだろう。

 

体の大きさがいつの間にか元に戻っていて、そのうえおぶわれたままぐったりとしていた状態だったのだから。

 

 

「……ただいま、兄ちゃん」

 

「……はあ。聞きたい事がまたいくつか増えたけど、ひとまず無事な事は分かったよ。とりあえず、おかえり」

 

「はは……」

 

「……ねえアキラ。師匠はもう、帰って来てるのよね?」

 

「ん? ああ。師匠が戻って来てくれたおかげで、澄輝坪にあった黒い花も迅速に片づける事が出来たんだ。適当観で待ってるから、早く顔を見せに行くといい」

 

「う、うん」

 

 

顔を若干引きつらせながら、瞬光は返事をする。

 

これから儀玄に叱られるであろう事が分かっているからだろう。

 

 

「あ、そうだお兄ちゃん! ロックスプリングをまたエンゾウさんとこに連れてかなきゃ! また変なエラー吐いてるみたいなの!」

 

「エンゾウさんか……明日には六分街に帰ると言っていたし、早めに行かないとな」

 

「二人ともありがとう。迷惑をかけるよ」

 

「瞬光、タクミの事お願いしていい?」

 

「あ、うん、もちろん!」

 

 

リンは動けないタクミを瞬光に預けた後、アキラとロックスプリングと一緒にその場を後にした。

 

 

「タクミ、落ちないようにしっかり掴まってね」

 

「ああ……ありがとう」

 

 

瞬光におぶられたタクミは、背中に彼女のもふもふの尻尾の感触を感じる。

 

暖かくて心地がいいが、セクハラになるので言わない。

 

 

「それじゃあ、ワタシ達も帰らなきゃね」

 

「そうだな」

 

「照さん、今日は本当に色々とありがとう! また今度、お礼させてね!」

 

「…………」

 

「……照さん?」

 

 

照は黙り込んだまま、返事もせずに俯いていた。

 

あの黒服たちに会ってから、どことなく様子がおかしい気がする。

 

 

……しばらくして、ようやく照は口を開く。

 

 

「……キミたちはさ。ザオちゃんの事、どれくらい信用してるの?」

 

「え? いきなりどうしたの?」

 

「正直に答えて欲しいな。適当観を訪ねてきたあの時から、ザオちゃんを少しでも『怪しい』とかは思った事はなかった?」

 

「……」

 

 

タクミと瞬光は顔を見合わせる。

 

 

「……最初の最初は、確かにそう思ったけど……今では、照さんの事は大事な仲間って思ってるわ。ね、タクミ」

 

「ああ。それになんだかんだ『黒枝』は色々と協力してくれてるしな」

 

 

照の表情は晴れない。

 

彼女は瞬光たちの行動原理が、まだよく分かっていなかった。

 

 

「……初めて一緒にホロウに入った時、ザオちゃんがエーテリアスに追いかけられてた時あったよね。そんな時にキミたちは迷わず助けに来てくれてたけど……その時から、もう『大事な仲間』って思ってたの?」

 

「……? 仮にそう思ってなくても、襲われてたら助けるのが当たり前でしょ?」

 

「それが罠だったとしても?」

 

「照さんは、そんな事しないでしょ?」

 

「……そういうとこなんだって。ザオちゃんがよく分かんないのは」

 

 

そう言う彼女が二人に向ける視線には、複雑な心境が込められている。

 

 

「もし逆の立場なら、ザオちゃんは間違いなく助けたりなんかしないよ。助ける価値があるか、それによってもたらされる利益はあるか。それがあるって分かって、初めてザオちゃんは助けに行くの」

 

「…………」

 

「そういう『ルール』が、どんな関係にもある。皆、なんとなくそれを分かったうえで生きてると思うんだあ」

 

「……確かに、それもあると思うわ」

 

 

照の言う事にも、一理あるだろう。

 

世の中には利用する、利用される程度の関係もごまんとある。

 

 

しかし。

 

 

「何も世の中、価値と利益だけが人の関係って訳じゃないと思うわ。そういうのを気にせずに、お互い助け合えるような……ワタシ、そんな『愛情』を皆から教えてもらったの」

 

「……愛情、かあ」

 

 

今まで照は、生きていくためには自身が『価値ある人間』であることを証明する事が……それだけが全てだと、そう信じながら生きてきた。

 

 

「……ザオちゃんとキミたちの間にも、そういうのがあるって事?」

 

「そう! ワタシとっくに、照さんがいい人だって分かってるもの!」

 

「……ふうん。ザオちゃん、キミ達のことが羨ましいよ」

 

 

照は瞬光から目を逸らすが……再び目を合わせ、いつもの笑みを浮かべた。

 

 

「まあいいや。それより二人とも、そろそろその『照さん』ってのやめたら? もうそこまで短い付き合いでもない訳だし。ちゃん付けでいいよお」

 

「……! うん、照ちゃん!」

 

「ふふん。ほら、たっくんも」

 

「照さんちゃん」

 

「ザオちゃんにほっぺむにむに攻撃をお見舞いされたいのかなあ?」

 

「すみませんでした」

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