グレーテルを連れ帰った翌日、アンドーからの情報を元に、ホロウ用工業デュアルショベル『ハンス』を探すべくホロウへと入った。
「プロキシ。信号の感じだと、今から探しに行くデュアルショベルはこの辺にいるみてぇだ……ここは工事エリアじゃねえから、オレらにキャロットはねぇ。つーわけで、頼りにしてっからな!」
「任せて!依頼料に見合った仕事をしてみせるから!」
ボンプ姿のプロキシは、小さな手でトンと胸を叩いた。
「ハハハッ、邪兎屋の連中も言ってたぜ!パエトーンは依頼料こそちっとばかし高えが、シゴトは完璧だってな!」
そう言ってアンドーはデュアルショベルについて説明をする。
「デュアルショベルが行方不明になる前の話だが、現場で出た廃材を運ぶために、毎日持ち場を往復させてた。見た目の割に身軽で、仕事の早いヤツなんだぜ……今日び、アイツなしじゃ回んねぇんだ」
「デュアルショベルは何で家出したんだ?デモリッシャーみたいに添い遂げたい奴がいるとか?」
「原因は分かんねぇ。ただまあ、一筋縄じゃあいかねぇだろうな」
「……うーん……」
デュアルショベルについて会話をしていると、横でベンが何かを考えていた。
「どうした、ベン?」
「あぁいや……今の話を聞いて、ふと大昔の話を思い出しただけだ」
「おお、熱血男児の物語だな?」
「あー、どうだかな……主人公は確かに男だが、熱血かどうかまでは分からない。これはあくまで俺の推測だが──」
自己学習機能により日に日に頭が良くなっていったデュアルショベル。
しかし、論理コアのアップグレードにより、『持ち場を往復するだけのつまらない仕事』に嫌気が差すようになり、家出してしまったのだろうとベンは予想した。
「『持ち場を往復するだけのつまらない仕事』だと?ベン、それは違ぇぞ!」
しかしアンドーはそれをハッキリと否定する。
「物語に出てきた男も、うちのデュアルショベルも、毎日立派に筋トレしてたんじゃねぇか! ホンモノの漢はな、そういう仕事を蔑ろにしたりしねぇんだ。なんたって、筋肉を作り上げるのは日々の鍛錬だからな!」
「アンドーさん……」
「それにだ!一見大した事ねぇような積み重ねこそが、魂を昇華させるんだぜ!そうやって磨かれた魂は、ダイヤモンドより頑丈になる!」
「……おお。なんか感銘受けちゃった」
「ま、アンドーはこういうヤツだからな。着工式の時もそうやって場を盛り上げてたし」
クレタが皆に呼びかける。
「ほら、行くぞ。まずはデュアルショベルを見つけて、グレースにじっくり点検させるのが最優先だ」
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しばらくした後、目的地に到着した一行。そこには信号の通り、デュアルショベル『ハンス』がどっしりとこちらを待ち構えていた。
『──ハン、ようやく来よったな……待ちくたびれたで!』
ハンスは二つのショベルをガシンガシンと叩く。
「コイツもデモリッシャーみたいに喋んのか」
「随分エラそうだなオイ……なんだよそのボイスは!」
「お前……論理コアが壊れてんじゃねぇのか?帰って点検を──」
『フンッ!』
ハンスはクレタの言葉にも構わず、ショベルで投石をかます。
「ッ!? 」
ファイズはとっさにファイズショットを装備し、飛んできた投石を殴り砕く。
『病院にガキ連れてくんとちゃうで!オレちゃんは堂々たる漢なんや!』
そしてハンスはその視線をファイズの方へ向ける。
『おい、そこの機械人!』
「え、嘘、機械人!?どこにいるんだ!?」
「グレース落ち着け!」
周りを見るが何処にも機械人はいない。ハンスは大きなショベルでファイズを差す。
「……? 俺の事言ってんのか?」
『せや! 自分、喧嘩慣れしとるやろ? 雰囲気で分かるで! オレちゃんと決闘せぇや!!』
「おいお前、さっきから勝手な事ばっか──」
「待てアンドーさん」
ファイズが手でアンドーを制し、ハンスの方を向く。
「……その決闘ってのに俺が勝てば、大人しく俺達と一緒に帰ってくれるな?」
『フン、ええで!漢に二言はあらへん!』
「……分かった、んじゃやろうか」
「ファイズ!」
「大丈夫だ、俺がコイツに勝って連れ帰れば問題はない」
『ハッ!簡単に連れて帰れると思ってんちゃうで!! 秒で倒したるわ!!』
こうしてファイズとハンスのタイマンでの決闘が始まった。