ホースオルフェノクと化したサラを見て、乾は思わず悪態をつく。
「チッ……冗談にしちゃあ随分タチが悪いな。よりによってその姿で来るかよ」
「…………」
タクミは彼女の姿を目にし、どこか違和感を覚えていた。
(なんだ、この姿……コイツどこかで……)
「来るわよ!」
「!!」
考えにふける間もなく、ホースオルフェノクはネクストファイズに攻撃を仕掛ける。
とっさに反応し、身をよじってすんでの所で振り抜かれた剣をかわした。
「あっぶな……!」
「油断すんなタクミ! コイツは多分、一筋縄じゃいかねえぞ!」
[Ready]
ファイズはミッションメモリーを取り外し、ファイズショットに装填し右拳に構える。
ネクストファイズも彼に続き、液晶画面のアイコンをタップする。
[Faiz Shot, Materialize]
「おお……!」
その瞬間、ネクストファイズの右拳にどこからともなくファイズショットが顕現。
どうやらファイズギアとして備わっている武器も、このようにボタン一つで呼び出す事が出来るようだ。
ネクストファイズはもう一つのアイコンをタップする。
[Knuckle Mode]
ファイズフォン20を変形させ、ファイズショットのようにもう片方の拳に装着した。
「はあっ!!」
ホースオルフェノクの攻撃をいなし、両拳の武器を使ってまるでボクシングのように連続攻撃をお見舞いしていく。
ファイズもいつもの戦闘スタイルで、蹴りなども織り交ぜ容赦なく攻撃を仕掛ける。
二人の猛攻に、ホースオルフェノクは盾を構えながらの防戦を強いられていた。
さらに──
「ふっ!!」
攻撃の合間に、バタフライオルフェノクの羽から無数の鱗粉のようなエネルギー弾が炸裂。
後方からの火力支援も抜かりなく、着実にダメージを与えていく。
反撃も許さず、ホースオルフェノクを一方的に追い詰めていった。
ネクストファイズのパンチにより吹き飛ばされるホースオルフェノク。
「…………っ」
剣を支えに、肩で息をしながら膝をつく。
「……もう限界みたいだな」
「いくら讃頌会の元締めと言えど、オルフェノク一体だけならこんなもんよ」
「…………」
ファイズは立ち上がろうとするホースオルフェノクを見ながら、とどめを刺すべくベルトのファイズフォンを開く。
その時だった。
「……!!」
ホースオルフェノクの体に付いた傷が、突然跡形も消え去る。
盾と剣を構え、
不審に思う暇すら与えず、彼女は猛スピードで距離を詰めていく。
二人は再び武器を構え、先ほどのように応戦しようとするが……
「くっ……コイツ……」
先ほどまでと、動きが違う。
ファイズショットによる一撃は盾により弾かれ、こちらの攻撃のわずかな合間に、魔剣ホースソードによる目にも留まらぬ斬撃が飛んでくる。
バタフライオルフェノクがエネルギー弾による援護を試みるが、それも盾で易々と弾き返されてしまう。
復活した後からどういう訳か、速さも力も、格段に向上していた。
「ぐわあっ!!」
横薙ぎに放たれた剣での一撃で、ファイズ達は吹き飛ばされる。
先ほどとは打って変わって、劣勢の状況となっていた。
「…………」
「どういう事だ……? さっきと比べて、明らかにパワーアップしてる……」
「……まさか」
ファイズは立ち上がりながら、周りを観察する。
「!」
彼の予想は当たっていた。
周辺に咲いている黒い花。
そこから漏れ出すミアズマが、ホースオルフェノクの体へと流れ、吸収されていたのだ。
「……そういう事かよ。おい蝶!」
「その呼び方やめて! 何?」
「お前は黒い花を消す事に専念しろ! じゃないと、こいつは倒せない!」
「……!」
バタフライオルフェノクは攻撃をやめ、黒い花を消滅させることに注力する。
それをさせまいと、ホースオルフェノクは狙いをバタフライオルフェノクに変えるが──
[Faiz Blaster, Materialize]
ネクストファイズがファイズブラスターで、とっさに止めに入る。
「お前の相手は俺達だ……!」
バタフライオルフェノクが黒い花を全て消すまでの時間稼ぎをしなければならない。
ファイズはアクセルフォームに変身しケリをつけようと考えていたが……人間である乾が加速の負荷に耐えられるかは分からない。
ブラスターフォームなら猶更だ。
ネクストファイズの方は『試作品』のためか、アクセルフォームにはまだ変身が出来なかった。
よって、今ある武器でなんとかするしかない。
持ち前の経験と戦闘センスを最大限に生かし、被弾を最小限に抑えつつ立ち回る。
「この野郎……!」
しかし黒い花のミアズマにより傷は瞬く間に再生し、時間が経過するにつれホースオルフェノクはより力を増していく。
こちらの体力が消耗していくばかり。
「蝶! あとどんくらいだ!」
「もう少しよ! あとその呼び方やめてってば!」
大量に咲いている黒い花を片っ端から消していくバタフライオルフェノク。
幸いにも他のオルフェノクによる妨害はなかった。
だが、ファイズ達の時間稼ぎも長くは続かない。
「はあ……はあ……」
「…………」
ダメージこそ大した事はないものの、二人の体力は徐々に消耗していく。
対してホースオルフェノクは涼しい顔で、じりじりとこちらに向かってくる。
ホースソードを振りかざした、その時──
「!!」
何かを察知し、瞬時にその場から飛びのくホースオルフェノク。
刹那、彼女がいた地面に無数の穴が開いた。
「……来たか!」
上を見上げれば、上空にはバスターホイールを構えながら飛行する、オートバジンの姿が。
オートバジンはホースオルフェノクに向け、ガトリングガンの射撃をお見舞いする。
「っ……!!」
彼女はとっさに盾を上に向け構え、銃弾の雨を防ぐ。
その瞬間、がら空きになった部分をネクストファイズは見逃さなかった。
「おらあっ!!」
「グッ……!!」
地面を蹴り、素早くホースオルフェノクの懐に潜り込んだネクストファイズは、フォトンブレイカーの刃でその体を刺し貫く。
ホースオルフェノクは反射的にネクストファイズを蹴り飛ばし、急いで傷の再生を試みるが……
「……!!」
その傷は途中で再生を止めてしまう。
……どうやら、
「……この馬面、手間かけさせんじゃないわよ」
無事に黒い花を『全て』消滅させたバタフライオルフェノクが、ファイズたちの所まで歩いてきた。
再生を止めた傷口を手で押さえ、僅かにうめき声を上げるホースオルフェノク。
「フッ……!!」
最後のあがきにと、ホースオルフェノクは下半身部分を本物の馬のような四本足に変形させ、疾走態へと姿を変える。
「あ」
ホースオルフェノクは立ち上がり、そのまま車を優に超えるスピードで駆け出していった。
「アイツ、逃げる気か……!」
「追うぞ!」
[Vehicle Mode]
ファイズは近くにいたオートバジンをバイクに変形させ、そのまま乗り込む。
ネクストファイズも後ろに乗り、オートバジンは全速力で発進。
ホロウ内の障害物を避け、アクセル全開で逃走するホースオルフェノクを追う。
追いかけてくるオートバジンを認識したのか、ホースオルフェノクは時折魔剣による斬撃を後ろに飛ばしてくる。
ファイズはハンドルを操り斬撃を全て避けつつも、スピードを緩める事はしない。
[1・0・3][Blaster Mode]
後ろに乗っていたネクストファイズは身を乗り出し、ファイズブラスターの銃口をホースオルフェノクへ向ける。
「はあっ!!」
そのままトリガーを引き、強力なフォトンバスターの嵐を繰り出した。
「っ! ……っ!!」
当然それに対し、ホースオルフェノクは盾を構え防御に徹するが……先ほどフォトンブレイカーによって受けた傷が原因で、すべてを防ぎきる事はできなかった。
為す術もなく弾が体に直撃し、彼女は盛大に吹き飛ばされる事になった。
「…………っ」
壁に叩きつけられ、満身創痍のまま立ち上がるホースオルフェノク。
オートバジンを止め、ファイズとネクストファイズは彼女の切り札が今度こそ尽きた事を確認する。
[Ready]
ファイズはファイズポインターをセットし、フォンのENTERキーを押す。
[Exceed Charge]
ネクストファイズも『Φ』のマークのアイコンをタップし──
[Exceed Charge]
右足に、フォトンブラッドのエネルギーをチャージする。
「……っ!!」
ホースオルフェノクはこのままやられてたまるかと、最後の力を振り絞り立ち上がる。
盾と剣を構え、二人を斬り裂こうとするが……
「ふっ!」
「たあっ!!」
力に任せた直線的な攻撃が通用するはずもなく、軽々といなされお返しの蹴りを二人同時に叩き込まれる。
そしてその蹴りを当てたタイミングで、二人の右足からポインティングマーカーが射出され、ホースオルフェノクの動きを封じた。
「行くぞ……タクミ!」
「はい!」
ファイズとネクストファイズは同時に駆け出し……同時に飛び上がる。
そして、二人のファイズは互いに息を合わせ──
『はあああああああ──ッ!!』
渾身の『ダブルクリムゾンスマッシュ』を、その身に惜しげもなく浴びせた。
二人分のフォトンブラッドエネルギーが撃ち込まれ、ホースオルフェノクの動きが止まる。
「───」
瞬く間に体から青い炎が噴き出し始め、徐々に灰と化し崩れ落ちる。
「……お前じゃ、
ホースオルフェノク──サラに向け、ファイズは背を向けたままつぶやく。
そのまま『Φ』のマークを浮かべ……ホースオルフェノクは完全に消滅した。