「……またエーテリアスが現れたわね」
「た、倒せば倒すほど増えていくであります……!」
穢安の灯台エリアにて。
オボルス小隊の方も怪啖屋と同じく、大量のエーテリアスとの持久戦を強いられていた。
「やっぱりあの岩を先にぶっ壊しちゃった方がいいかも~?」
「そうするには、やはりエーテリアスの猛攻を掻い潜らなければ……」
少数精鋭のオボルス小隊。
持ち前の隙のない連携により、囲まれていたとしてもピンチに陥る事はなかった。
だがいくら彼女らと言えど、次から次へと現れるエーテリアスに対し無限に戦いを続ける事はできない。
ジリ貧のこの状況、少しの油断が敗北につながるだろう。
だが、それでも鬼火たちの眼から闘志が消える事はない。
「まだです……エーテリアスなんかに、負けませんよっ!」
『我々オボルス小隊の辞書に、"敗北"も"撤退"もない! 多勢に無勢だろうと、我々の士気は決して揺らがん!』
「──その通りだ、鬼火」
『……! なっ……』
唐突に背後から聞こえた、厳かでありながらも暖かい声。
[Ready]
漆黒のアーマー、そして金色のフォトンストリームを纏ったその姿に、鬼火たちは見覚えがあった。
冥界の剣『オーガストランザー』を掲げ、赤い複眼が輝く。
ミアズマで形作られたオーガの幻が、姿を現した。
「諸君、くれぐれも後れを取るなよ。オボルス小隊の真の力を見せてやれ」
「……その声は……イゾルデ大佐……!?」
オーガに変身したイゾルデは、左手を上げ数十人程の数のミアズマ兵士を呼び出す。
『馬鹿な、イゾルデ……! なぜお前が、ここに……!?』
「迷っている場合か、鬼火? 兵士たるもの、己の手で進む道を切り開かなければならない……君がいつも言っていた事だ」
『……ああ、分かっているとも』
「君にはまだ同じ道を歩む戦友たちがいる。くれぐれも、それを忘れるな」
「そしてそこにいる、『小さな戦友』の事も」
イゾルデがそう言った直後。
オボルス小隊を囲んでいるエーテリアスの向こう側から、裂け目が現れる。
「……!! タクミ……!?」
「え!? ええっ!?」
浮かび出てきたその姿を見て、オルペウスは思わずその名を呟いた。
突如現れたネクストファイズは、エーテリアスを見るなり持っていたファイズブラスターを構え、群れに向かって一直線に突撃。
「ふっ! やあっ!!」
フォトンブレイカーの刃を振りかざし、エーテリアスを次々と斬り伏せる。
「目標、エーテリアス! 総員射撃用意!」
イゾルデのその一声で、ミアズマ兵士たちは銃を構え、エーテリアスへ一斉射撃。
そしてオーガも剣を構え、ネクストファイズと共に周りのエーテリアスを殲滅していく。
「た、隊長……自分、今何が起こっているのかが分からないであります……」
『フン……分かってたまるか。それに、今はそんな事はどうでもいい』
鬼火は再び声を上げる。
『オボルス小隊、再び戦闘準備! ぼーっと見ているだけの我々ではない! エーテリアスを一匹残らず片付けるぞ!』
勢いを盛り返したオボルス小隊はエーテリアスの波に押される事なく、次々と撃破していく。
焼き斬り、撃ち抜き、吹き飛ばし、叩き潰す。
各々の最善のやり方で、エーテリアスの数は次第に減っていった。
「鬼火! 私達がエーテリアスを相手取る。その隙に、岩を破壊しろ!」
『了解! トリガー、シード! ターゲットをあのデカい岩に集中させろ!』
「ラジャー!」
「おっけー、ぶっ壊しタイムだね~!」
『オルペウス、構えろ! 最高出力だ!』
「は、はい!」
ライフルの狙撃と、ビッグ・シードのミサイル。
鬼火の高出力レーザーが、岩へと直撃する。
「……タクミくん」
「……!」
エーテリアスを倒していたオーガとネクストファイズは互いに目を合わせた後、頷く。
そして互いに背を向け──
[Exceed Charge]
[Exceed Charge]
ファイズブラスターからは赤色の刃、オーガストランザーからは金色の刃が同時に伸びる。
二人は剣を構え──
『ハアッ!!』
横へと振り抜いた。
赤と金、それぞれの半円状の斬撃の軌跡が合わさって完全な円状となり、その餌食となったエーテリアスは一匹残らず消滅していく。
それと同時に。
ドコォオオオン!!
鬼火達の方も巨大な岩を壊すことに成功。
ミアズマとともに、岩は完全に消滅した。
「や……やりました、隊長……!」
『…………』
「……隊長?」
『……いや、なんでもない。岩は無事に破壊されたようだな。皆、よくやった』
彼女はそう言いながらも、どこか違和感を覚えていた。
(始まりの主の創造物しては……やけにあっさり壊れたな。まさかとは思うが、デコイか……?)
そう考えたが、断定出来る証拠がない。
それにミアズマの気配が弱くなった事は事実なので、鬼火は気の所為だと結論づけた。
「……成長したじゃないか、鬼火。オルペウス隊員も、前より銃身が安定したように思える」
「イゾルデ大佐……」
仮面越しではあるものの、彼女が二人に微笑みかけている事は分かった。
『……イゾルデはなぜここに……いや、聞くのも野暮というものか』
「……つかの間とは言え、こうして再び肩を並べ戦う事が出来た事を……喜ばしく思う」
『……フン。そうか』
「よし……次こそは姉ちゃんのとこに」
「ちょぉーっと待つでありまァす!!」
「ぐええーッ」
裂け目を使い、人知れずその場から立ち去ろうとしたネクストファイズの襟首をオルペウスが引っ掴んだ。
「何を黙って立ち去ろうとしているんでありますか! 今一番説明が必要なのはタクミであります!」
「そうですよっ! ま、まさか幽霊になっちゃったとかじゃないですよね……?」
「ゲホッ……え、えっと……」
『お前まさか、わざわざ私達を助けに来たのか? 全く……だとしたら余計なおせっかいだ』
「…………」
鬼火の言葉に、ネクストファイズは俯き押し黙る。
『……ん? どうしたタクミ。なぜ黙っている』
「……どうやら、望んでここに来た訳はないようだな」
「!? な、なんで分かったんすか」
「君は分かりやすいからな」
「…………」
仮面越しでも表情が分かるとは、やはり軍人というのは侮れない。
タクミがそう思った時、イゾルデの視線はより暖かいものとなった。
「そもそもたっくん、零号ホロウにいたんだよね? どうやって来たの?」
「実はンナンナしかじかで」
「なるほど~」
『おい、何がなるほどになったんだ!』
要するに裂け目を使ってリン達の元に行こうとしたタクミが、誤って今度はオルペウス達の元に来てしまったという事である。
「……そうか。そういう事ならば、行ってくると良い。岩を破壊したとは言え、始まりの主の力が健在である限り、またじきにエーテリアスが現れるだろう」
「ここは自分たちに任せるであります!」
「ありがとう。行ってくる」
「絶対無茶しちゃダメですからねっ! もし無茶したらその時は……その時は、お仕置は何にしましょう?」
「何にしましょうか?」
「行ってきまァす!!」
オルペウスと福福の口から恐ろしい言葉が飛び出る前に、ネクストファイズは逃げるように裂け目に飛び込んでいった。
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同時刻、鉱区跡地。
盤岳、ダイアリン、そして雅の三人も、例に漏れずエーテリアスとの長期的な戦闘が続いていた。
雅は先ほど無尾で岩を両断を試みたが……失敗した。
なのでエーテリアスが湧くより早く敵を殲滅させる作戦に出たが……
「…………!!」
「盤岳先生、どうしたんですか……? ちょっと休憩します?」
「気遣い、痛み入る。だが不要!」
「そうですか。あたしはちょっと休憩したくなっちゃいました……!」
エーテリアスの群れは倒しても倒しても次から湧き出てくる。
雅はそれらを斬りながら、岩の方を見る。
(……やはり、あの岩を)
エーテリアスの群れを手っ取り早く抑えるには、やはり岩を破壊した方が早いと考えた。
「ダイアリン殿、盤岳殿。私は再びあの岩を斬ってみる。エーテリアスの相手を」
「承知いたした……ふっ!!」
「早めにお願いしますね! ツーオペって意外としんどいですから!」
無尾を構え、上空に浮かぶ巨大な岩の上へ飛び乗る雅。
「はっ!!」
そして青い炎を纏った刀身を、直接岩に叩きつけた。
無尾も青溟剣と同じく、異常なミアズマに対して高い効果を持っている。
だが、岩を纏うミアズマの壁は、無尾を以てしても打ち破るのは容易ではなかった。
刀を押し返すように、エネルギーの反発が襲い掛かる。
「…………」
雅は精神を研ぎ澄ませ、堅い壁から僅かな隙間を探る。
張り巡らされた無数の糸。
刀を、構える。
「そこか」
重力に従い落ちる一粒の雨のように。
腕の力を抜き、無尾を振り切った。
その瞬間、巨大な岩はものの見事に真っ二つに裂け、そのまま落下していく。
二つの岩は地面にぶつかると粉々に砕け、そのまま消滅した。
「……?」
その時、雅は形容し難い微かな違和感を感じた。
だが今は気にすべき時ではないとすぐに思考を切り替えた。
雅はそのまま地面へ降り立ち、ダイアリンと盤岳の元へ向かう。
「戻った」
「……! おお、ミアズマが結構薄くなってきたんじゃないですか!?」
「感謝いたす! このままこの地を守り抜こうぞ!」
雅たちは引き続き、残ったエーテリアス達との戦闘を再開。
「…………すげえな」
なお、その様子をネクストファイズは少し離れた場所から、エーテリアスと戦いながら見ていた。
またしても座標がコントロールしきれず、今度は雅たちのところへきてしまったタクミ。
岩の破壊をしようと考えたが、そうする前に雅が斬ってしまっていた。
やはり虚狩りは格が違った。
敵を蹴散らし続ける三人を見ながらネクストファイズは最後のエーテリアスを倒す。
そしてそのまま、裂け目を使いそそくさと消えていった。
「……む?」