鉱区、坑道入り口前。
逃げたロックスプリングを追おうとした瞬光と照は、絶え間なく現れるエーテリアスに足止めを食らっていた。
「……っ、数が、多い……!」
「瞬光、大丈夫!?」
「まだ、大丈夫……でもやっぱり、青溟剣の力を使って浮いてる岩を壊さないと……いつまでも終わらないかも……!」
「……っ」
この状況では、リンも無責任に止める事はできない。
瞬光が再び迫ってくるエーテリアスを迎撃しようとした、その時。
眼前のエーテリアスが突如、真っ二つに裂けた。
「!」
エーテリアスの背後から、複数の人影が現れる。
「我ら、雲嶽山より加勢に参った!」
瞬光たちのピンチに駆けつけてきたのは、橙色の道着を纏った雲嶽山の門下生たち。
そして、もう一人。
「……お兄ちゃん!」
「瞬光、ここは僕達に任せて欲しい。ここまで、よく頑張った」
そう言う釈淵は剣を構え、瞬光たちの周りにいたエーテリアスを目にも留まらぬ速さで駆逐していく。
鍛錬を積んだ実力者揃いの門下生たちも、負けじとエーテリアスを次々と打倒していく。
「釈淵さん、どうしてここに?」
「……僕は雲嶽山を許したわけではないですが、だからと言って澄輝坪を見捨てる理由にはなりません。瞬光が愛した町であるなら猶更です」
エーテリアスを斬り伏せながら、釈淵は答える。
その直後、虚空から再びエーテルの裂け目が現れた。
「……あれは」
リン達は一瞬、オルフェノクがまた現れてしまったのかと思ったが──
裂け目の中から光る黄色い複眼を見て、すぐに誰が来たのかを理解した。
ファイズブラスターを右手に、ネクストファイズが姿を現した。
「タクミ!!」
「……!」
ようやく目的の場所に辿り着いたネクストファイズは瞬光たちを一瞥した後、上空に浮かんでいる巨大な岩に視線を移す。
そして──
[Exceed Charge]
「ふっ!!」
迷わず銃口をそれに向け、一発ぶっ放した。
フォトンバスター弾は、ブラスターフォーム変身時より威力は劣るとはいえ、それでも岩を破壊するには十分な威力。
弾が直撃した岩は粉々に砕け散り、そのまま消滅。
同時に、釈淵達の方もエーテリアスを全て片付け終えた。
ネクストファイズは武器を納めるなり、リン達の元へ向かう。
「皆、怪我は?」
「わ、ワタシは……大丈夫。タクミ、なのよね?」
「ああ。大分寄り道したけど、やっとここに来れた」
「…………」
「うん? ちょ、瞬姐さん?」
瞬光は疲労で気が抜けてしまったのか、ネクストファイズの胸元に倒れこむ。
突然の行動に、彼は戸惑う事しかできなかった。
「……来てくれて、良かった……」
「…………」
「瞬光ちゃん、それって白い瞬光ちゃんのマネだったり?」
「えっ……あっいや、ちち違くて! タクミが来てちょっと安心しちゃったと言うか……ご、ごめんなさい、まだ戦いの途中なのに……」
我に返った瞬光は顔を赤くしながら謝罪する。
自分でも今の行動が理解できなかったという顔だった。
「大丈夫だよ、瞬光。任務の途中でも栄養補給は大事だもんね」
「栄養補給?」
「少しだけ休憩しよっか。無理はせずに栄養補給してねえ」
「栄養補給??」
「あ……ありがとう、二人とも。栄養補給ぅ……」
「栄養補給???」
誰もツッコむこともないまま、瞬光は再びネクストファイズの体に身を預ける。
その時、アキラから連絡が入った。
『タクミ! そこにいるのかい?』
「兄ちゃん」
『乾さんから、君がそっちに向かっていると連絡があった。一応聞くけど、どうやってそこに……?』
タクミはアキラに事情を説明する。
『……なるほど。裂け目を通じて、各地を点々としてきた訳だね。君がそんな事までできるようになっていたとは……』
「タクミ、体力の方は平気なの?」
「俺は大丈夫だ。戦ったとは言え、ちょっと手を貸しただけだしな」
「タクミくんが岩を壊してくれたおかげで、ホロウのミアズマの気配は著しく弱くなりました。ですが、やはり根本的な解決にはなっていないようです」
『ああ。岩を壊しても、エーテリアスはまだ湧き続けている。岩の有無とエーテリアスの出現は、どうも直接的な関係は薄いらしい』
今も他のチームはエーテリアスと応戦し、ホロウの拡大を抑えてくれている。
始まりの主の力を封印する事で、ホロウの拡大を完全に止める事が出来るはずだ。
「……そう言えば、ロックスプリングは? さっきから姿が見えないぞ」
「……!」
「……えっとね、たっくん。これはキミがここに来る前の出来事なんだけど……」
照から事情を聞いたネクストファイズは、仮面の中で眉をひそめる。
「……あの野郎が誑かしたのか」
「本人の意思って感じもあったと思うけどねえ。詳しい事情は、本人を追って直接聞かないと分かんないかなあ」
「であれば、ここは僕たちに任せて先に行ってください。恐らく、この場所にはまた無数のエーテリアスが姿を現すはずです」
「お兄ちゃん……」
「澄輝坪には師匠がいる限り安全だろう。瞬光は、自分の使命を果たしに行くんだ」
「……分かったわ」
釈淵の言葉に、瞬光は強く頷く。
「……さて、休憩タイムは終わりだね。さっさと始まりの主を封印して、澄輝坪に帰ろう!」
「うん! ワタシ、絶対にやってみせる!」
休憩を経て体力を取り戻した瞬光たち。
そのまま、坑道の入り口へと向かって行った。
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エーテリアスを退け、坑道を抜け地下へと向かった先。
そこには、巨大な空間が広がっていた。
「これは……壮観だねえ」
「こんな広い場所があったなんて……」
遠くには巨大な岩に埋め込まれていた球体型のものと同じオブジェクトも見える。
そして。
「……やはり、ここに来たね」
どこからか、ロックスプリングが姿を現した。
「……ロックスプリング。お前……」
「タクミ……君の考えている事を当ててあげよう。『なんとかして傷つけず、説得できないか』……だろう」
「…………」
「あいにくだけど、僕を説得する事は不可能だ。そしてこのまま強引に止めようとすれば……ここにいる全員が傷ついてしまうだろう。それは僕も本意じゃない」
ロックスプリングはネクストファイズを見つめる。
その眼差しからは、敵意は感じられない。
それがより不気味に感じられた。
「僕を説得する方法はない。けど、誰も傷つかないようにする方法ならある」
「──それは、君がもう一人の君と融合し……『王』となる事だ」
「……王」
「君は聞いたことはあるかい? すべてのオルフェノクを従える……『オルフェノクの王』の存在を」
ロックスプリングはネクストファイズに近づく。
「始まりの主が創る世界。それに仕えるオルフェノクの王の存在がいれば、世界の平穏と安寧は約束されたも同然」
「…………」
「あの方はもうじき目覚める。君はファイズの力を捧げ──『王』として……新しい世界を、護っていくんだ。……そして、葉瞬光」
「!」
「君が持つ青溟剣……そして君の存在自身もまた、あの方の降臨には必要不可欠」
「ワタシの……存在が……?」
青溟剣などの戎具の力は本来始まりの主に由来するもの。
故に、ロックスプリングは青溟剣とその剣主である瞬光を始まりの主に捧げようと考えた。
「君たちも知っての通り、始まりの主の力と青溟剣の力は同質のものだからね。『虚狩る戎具』は、始まりの主が力を取り戻すのに必要なものなんだ」
「……? ちょっと待って、ロックスプリング。始まりの主には戎具の力が必要なんだよね? ならなんでファイズの力も始まりの主に捧げるって事になるの?」
「そんなの決まっているだろう」
「ファイズドライバーも、本来は『虚狩る戎具』の一つなのだから」