大量に分身したローカストオルフェノクの攻撃を捌いていく。
青溟剣の力を開放した瞬光は、大勢が相手でも気に留めず次々と分身体を斬り伏せていった。
「瞬光ちゃんすごいねえ。ザオちゃん達も負けてらんないね?」
「もちろん!」
[Faiz Edge, Materialize]
ネクストファイズはアイコンをタップしファイズエッジを呼び出す。
フォトンブレイカ―モードのファイズブラスターと、ファイズエッジの二刀流。
分身体の猛攻にも押される事なく、フォトンブラッドの力で分身体を倒していく。
照も、リンに危害が加えられないよう分身体達の猛攻を退けていた。
『良い運動になるでしょ? 君たち、こういうスタミナがいるタイプのスポーツは得意だったりするのかな?』
「……!」
闘いの最中、本物と思しきローカストオルフェノクの声が、どこからともなく聞こえてくる。
挑発にも似たその声が、どこから聞こえてくるのか分からない。
(野郎……分身に紛れて姿を隠しやがったか?)
分身体は倒しても倒してもすぐに現れる。
つまりこの場に残って分身しているという事なので、恐らく逃げた訳ではないのだろう。
本物は分身体のどこかにいる。
[Exceed Charge]
画面のアイコンをタップし、ファイズエッジとファイズブラスターにフォトンブラッドをチャージさせる。
「ふっ!!」
武器を構え刃を振り抜き、回転斬りで周囲にいる分身体を一掃。
同タイミングで瞬光の方も、周りにいる分身体を青溟剣で全滅させる。
攻めの勢いが衰えたこのタイミングで、二人は合流し互いに背中を合わせる。
「瞬姐さん、まだいけるか?」
「まだ大丈夫。タクミも平気?」
「ああ。にしてもキリがないな……やっぱ本物を叩かないとダメみたいだ」
気配を消しているのか、見ただけでは誰が本物なのか分からない。
だが、先程までの戦いで分かったことがある。
それは分身体には、始まりの主の力がない事だ。
つまり、始まりの主の力を持っているただ一体のローカストオルフェノクが本物という事だ。
「……」
瞬光は感覚を研ぎ澄ませ、その力の源流を突き止める。
そして。
「いたっ!」
瞬光は青溟剣を構え、分身体を蹴散らしながら猛スピードかつ一直線に飛んでいく。
「!!」
本物のローカストオルフェノクへ、青溟剣を振りかざした。
「……! へえ、すごいね。やっぱ分かっちゃうんだ」
余裕を崩さない彼に、瞬光は怒涛の猛攻を仕掛ける。
だが……
「……っ」
「かの剣主サマは、持久戦は得意じゃないみたいだね……!」
青溟剣を使い続けた事により、体力の消耗も激しくなっていく。
やがて限界を迎え、瞬光は元の状態に戻ってしまう。
攻勢は逆転し、今度はローカストオルフェノクが攻めの勢いを強め、瞬光を防戦一方へと追い込む。
攻撃を弾き飛ばし、瞬光に膝をつかせる。
「くっ……!」
「どうしたの? このままじゃ、何も守れないんじゃない……!?」
「いや、守れる! 俺達がいる!」
「!!」
分身体を倒し、瞬光に加勢したネクストファイズは後ろからローカストオルフェノクに斬りかかる。
瞬光を庇うように立ち、二つの武器でローカストオルフェノクに反撃を許さない攻めを繰り出す。
「君はまだ僕のレベルには及ばない。勝てると思ってるの?」
「よく言うぜ。勝ち星は俺の方が上だ……!」
ネクストファイズとローカストオルフェノク、二人のタクミが鍔迫り合いを繰り広げる。
「っ、ワタシも……!」
瞬光は立ち上がり、再び剣を構え加勢する。
ネクストファイズと瞬光の連携で、体勢を立て直しつつ劣勢から押し返していく。
「お前、実は余裕ないんだろ……?」
「……はあ?」
「お前を攻撃した途端、分身が止まった。さすがに戦いながら、数を増やすなんて器用な事はできないみてえだな!」
「何もわかってないね。これまで僕の何を見てきたのかな……!」
ネクストファイズの攻撃を弾き飛ばし、ローカストオルフェノクは不愉快な表情を浮かべる。
「勘違いしないで欲しいな。僕はオルフェノクと始まりの主、二つの力を持ってるんだ。完全じゃないとは言え、君たちを捻りつぶすのは容易い」
「!」
次の瞬間、ローカストオルフェノクの体に変化が生じる。
体がひとまわり巨大化し、爪や牙なども鋭さを増す。
見た目もより禍々しいものとなり──やがてその姿は激情態へと変化を遂げた。
「僕は君を殺し王となる。葉瞬光の青溟剣も手にし……この世界は僕のものとなる」
「……絶対に、させない……!」
二人は武器を構え、ローカストオルフェノクへと向かう。
先ほどと同じく、彼を防戦に持ち込ませようとするが……
「ふっ!!」
「ぐうっ……!」
まるで一つの武器のように硬質化した右腕で、いとも容易く払いのけられる。
「この野郎……!」
[Exceed Charge]
ネクストファイズはエクシードチャージで再びフォトンブラッドを収束させ、その刃をローカストオルフェノクに思い切り振り下ろした。
だが。
「……冗談だろ?」
「悲しいねえ。今の人類にはバッタ一匹にすら勝てやしない」
全くひるむ様子も見せず、肩に置かれたファイズブラスターの刃を片手で掴み──
「ぐああっ!!」
もう片方の手でエーテルエネルギー弾をネクストファイズの腹部にゼロ距離で発射。
吹き飛ばされるネクストファイズ。
その拍子に、変身が解除されてしまった。
「タクミ……!」
瞬光は剣を取り、一矢報いるべく攻撃を繰り出す。
だが青溟剣の代償により、決して少なくない量の体力を消耗した瞬光の太刀筋は次第に勢いをなくしていく。
「やる気あるのかな? もうちょっと人連れてきた方が良かったんじゃないか……なっ!」
「きゃあっ!」
軽い振りで瞬光は為す術なく吹き飛ばされる。
「瞬光! タクミ!」
ちょうどその時、分身体をすべて倒した照がリンと共に駆けつけて来る。
倒れていたタクミと瞬光を起こす。
「ありがとう、リン……もう一度、青溟剣の力を……」
「っ! ダメだよ、瞬光! そんな事したら、今度こそ……!」
「諦めなって。皆一緒に死なせてあげるからさ。青溟剣を使って一人で死ぬより、そっちの方がいいでしょ?」
「…………っ」
ローカストオルフェノクの右手に、ミアズマの巨大なエネルギー弾が作られる。
これを食らえば、間違いなく無事では済まない。
まさに『とどめの一撃』が放たれようとしていた、その時だった。
ローカストオルフェノクの前に、巨大な影が割って入った。
「!」
赤いボディから繰り出される拳の一撃は、ローカストオルフェノクの攻撃を中断するには充分な威力。
突如現れたその姿を見て、瞬光達は驚愕した。
「……アナタは……!」
「……なんのつもりかな」
「ロックスプリング」
「……っ!」
瞬光達の前に現れたのは、戦闘ロボに乗ったロックスプリングだった。
ロックスプリングはロボを操作し、力づくで押さえ込む。
「……悪いけど、「タクミ」。君の計画は成功しない」
「お前にそれを決める権利はない。僕を裏切るのか?」
「今の人類は、まだ力を持っている。こんな終わりかけの世界で、なお揺るがぬ意思を持って生き続けている。僕の使命は──」
ローカストオルフェノクを抑えるその手に、力が入る。
「──そんな人類を、守る事なんだ……!」
「…………」
彼を抑えたまま、ロックスプリングは拳を振り下ろし攻撃をする。
ローカストオルフェノクは苛立たしげに、ロボを突き飛ばし体勢を立て直そうとするが──
「っ!!」
上空からオートバジンが現れ、ガトリングガンで援護射撃を繰り出す。
攻撃の隙を与えないまま、オートバジンは地面にいるタクミに何かを投げ渡した。
「……! これは……」
オートバジンが渡してきたのは、旧型のファイズドライバーだった。
恐らく、乾がオートバジンに預け届けに来てくれたのだろう。
「…………」
タクミは立ち上がり、吹き飛ばされた際に落としたファイズブラスターを拾い上げる。
「タクミ……」
「ロックスプリングの言う通りだ。人類ってのはこんなんじゃへこたれない。そうだろ?」
「……ええ! もちろん!」
瞬光は再び立ち上がり、剣を構える。
「ザオちゃん達もいる事、忘れないでね? ここいらが踏ん張り時だよお」
「皆がいるからね。必ず皆で、澄輝坪に帰ろう!」
「うん!」
気力を取り戻した瞬光は剣棺から剣を引き抜き、再び青溟剣の力を開放させる。
タクミもファイズドライバーを装着し、ファイズブラスターにコードを入力する。
[5・5・5][Standing By…]
コードを入力しENTERキーを押した後……ファイズブラスターにファイズフォンをセットした。
[Awakening]