再び青溟剣の力を開放した瞬光と、ブラスターフォームに変身したファイズ。
それぞれ剣を構え、ローカストオルフェノクの元へ駆け出す。
「自分から死にに行ってるって事、理解できてないのかな……!!」
ローカストオルフェノクは、再び大量の分身体を召喚。
本体を守るように、二人の前に立ちはだかるが──最早それは意味をなさなかった。
「ふっ!!」
ブラスターフォームに変身した事で、ファイズブラスターの出力も最大まで引き上げられ、分身体は容易くフォトンブラッドの刃の餌食となっていく。
瞬光が操る青溟剣も先ほどより力を増していき、生み出される無数の剣が片っ端から分身体を貫いていく。
「……!!」
一瞬で分身体を破られたローカストオルフェノクは向かってくる二人に対し応戦する。
ファイズに対し攻撃を仕掛けるローカストオルフェノクだったが──
「……くっ……!」
「はあっ!!」
容易く弾き飛ばされ、重い拳の一撃を受ける。
さらに瞬光による青溟剣の攻撃が、まるで雨のようにローカストオルフェノクに襲い掛かる。
先ほどまでとは打って変わり、圧倒的な力により劣勢に追い込まれるローカストオルフェノク。
「……! 人間が……!」
「これがワタシたちの力! ここまで来れたのも、皆の力があったから!」
「……そんな弱い力、僕が……!」
「打ち破ってみろ、偽者! やれるもんならな!!」
二人が繰り出す隙のない連携により、ローカストオルフェノクの体力は徐々に削られていく。
そして。
「たあっ!!」
「ぐうっ……!!」
フォトンブレイカーでの一撃で、ローカストオルフェノクは壁へと吹き飛ばされた。
「瞬姐さん」
「うん!」
二人は頷き合う。
ファイズはファイズポインターを脚部にセットし、コードを入力する。
[5・5・3・2][Faiz Pointer, Exceed Charge]
直後、背中のフォトンフィールドフローターで空中へ飛び上がった。
瞬光も青溟剣を右手に、無数の剣とと共にローカストオルフェノクへと突撃した。
『はぁぁああああっ!!』
前方からの瞬光の青溟剣の攻撃と、上空からのファイズの『強化クリムゾンスマッシュ』が同時に繰り出され……ローカストオルフェノクの体に直撃する。
青溟剣から放たれる白銀色のエネルギーとフォトンブラッドの赤色のエネルギーが入り交じり、空間自体を破壊しかねない勢いで奔出される。
「が、あ……っ、馬鹿な、奴だ、青溟剣が自分を破滅に導くと知っていながら……!!」
「ワタシは、それでもいい!」
瞬光の赤い眼には、燃え滾るような決意と信念が込められている。
青溟剣から、全てを呑み込まんばかりの光が溢れ出す。
「例え暗闇に落ちても、何度でも這い上がる。百回忘れたとしても、百回思い出す!──だってワタシには、共に手を取り合える皆がいる!!」
「──だから何があっても、ワタシは……ワタシ達は、絶対に諦めない!」
青溟剣の絶え間ない斬撃により、ローカストオルフェノクが持っていた始まりの主の力も弱っていく。
『強化クリムゾンスマッシュ』の圧倒的なパワーが、その体を跡形もなく消し去っていく。
「…………が、あ……!!」
断末魔すら上げる余裕もなく、やがてローカストオルフェノクの体は始まりの主の力とともに、光に呑み込まれた。
「……終わったの?」
「みたいだねえ」
ローカストオルフェノクの姿が跡形もなく消え去った後。
先ほどまでの熾烈な戦いが嘘かのように、その空間には静けさのみが残っていた。
「…………」
瞬光は元の姿に戻った後、疲れてしまったのか地面に座り込んでいた。
そんな彼女に、手が差し伸べられる。
「! タクミ……」
「お疲れさん。立てるか?」
「……ありがとう」
にこりと笑って、瞬光はファイズの手を取り立ち上がる。
その時、後ろからガシャンという音が聞こえ、二人は反射的に振り向いた。
「……!! ロックスプリング!」
戦闘ロボから転げ落ち、力なく地面に横たわるロックスプリング。
瞬光たちは急いで彼の元に駆け寄り、体を起こす。
「ロックスプリング、大丈夫!?」
「ぐ……『彼』が行った後も、自分なりに粘ってみたけど……どうやら限界みたいだ。どうやら、寿命が来たらしい」
「寿命って、まさか……」
「うん。さっきタクミにも言ったけど……元より壊れかけだった僕は、半ば強引に生き延びている状態だった。残された時間ももうないと、エンゾウさんも言っていた」
ロックスプリングは、まるで憑き物が落ちたかのように、穏やかな笑みを浮かべていた。
「君たちは悪くない。結末がどうあれ、こうなる定めだったんだ」
「ロックスプリング……」
「僕は今、幸せな気持ちだ。君たちを信じて、正解だったと分かったから。ミス・サンブリンガーにより課せられた使命を……僕は果たせたかな……?」
「……ああ。お前があの時来てくれなければ、きっと皆無事じゃいられなかった。ありがとう」
「……」
センサーの点滅の感覚が次第に遅くなる。
ロックスプリングとの別れの時間が近づいている事を、暗に示していた。
「ゆっくり、眠っていい。俺達の事を……これからも見守ってくれ」
「……ありがとう。最期の最期に、君たちと出会えて……ほんとうに……よかった……」
消え入りそうな声でそう言った後……断続的に響いていたセンサーの音が、完全に途切れる。
「───」
「……!」
一匹のボンプの命が、今ここで消えた。
だが瞬光たちは、彼のことを忘れる事は決してないだろう。
「……ロックスプリング」
瞬光が名前をつぶやく。
ファイズは、動かなくなったロックスプリングの体をそっと抱きかかえた。
その時、アキラから連絡が入った。
『リン、聞こえるかい?』
「! お兄ちゃん」
『今さっき、ホロウの拡大が完全に抑えられて、元の大きさに戻った。任務は完了したんだね?』
「うん、無事に完了したよ。今から澄輝坪に戻るね!」
アキラとの通信を終えた後、リンは三人を見る。
皆、決して無傷という訳ではないが、それでも致命傷を負ったわけではない。
「ともかく、やっと終わったって感じだねえ。みんな、お疲れ様」
「照もね。そう言えば瞬光、体の調子は? 二回も使っちゃったけど、異常はない?」
「ワタシは大丈夫。確かに、もしかしたら……って思ったけど、皆の事はしっかり覚えてるもの」
「代償を受けなかったって事か?」
「分からない……けど、タクミと一緒にとどめを刺した時、青溟剣に変化が起きたのを感じたの」
ローカストオルフェノクの体を青溟剣で貫いたとき、青溟剣がいつもと違う輝きを放っていた。
リンと照も、傍から見てその様子は見えていた。
「あくまで直感だけど……ワタシと青溟剣の関係が、対等に近づいたのかも。青溟剣の力が、前は蝕むような感じだったのが……今は穏やかに流れるような感じ、って言うのかな」
「青溟剣と仲良くなれた、って事かなあ。ただそうだとしても反動がゼロになった訳じゃないよね」
「うん。けど、明らかに前よりこの力をものにできた気がする。先代までの剣主の意思と力を……確かに感じたから」
瞬光の言葉を聞き、リンは考えにふける。
恐らくその現象が、青溟剣の反動を抑えるカギになるのかもしれない。
(……まあ、見ただけじゃなんとも──あれ?)
「……え?」
遠くに見えた、赤紫色の人影。
それを見た途端、リンの動きが固まった。
「……姉ちゃん? どうかしたか」
「……っ!!」
「姉ちゃん!?」
何かに操られたかのように、いきなり走り出すリン。
その時ファイズ達も、ミアズマの幻がある事に気が付いた。
『…………』
「先生っ!」
リンは取り乱し、その名を呼ぶ。
それは以前にも見た、カローレの幻だった。
「なんで、先生がここに……!」
「先生って、確か前にも見たカローレ先生の……?」
「ここにもいたのか……それに誰かと話してるみたいだ」
カローレの話し相手が誰なのか、ぼやけていて分からない。
『全てを呑み込む──終焉……あの子たちがもし……私は、後悔しない……』
「先生、何を……」
「途切れ途切れで何を言ってるのかさっぱりだけど……穏やかな内容じゃないのは確かだねえ」
『──の後、エリー都の史書には、こう書かれ……かしら……』
『両手を血に染めた、狂人と』
その言葉を聞いた瞬間、リンの顔から血の気が引いていく。
「……! そんな、先生が……まさか、違う、そんなはずない……!!」
「姉ちゃん、落ち着け……! いったんホロウから──」
「うっ!!」
「!!」
カローレの幻が消えた、その直後。
リンが眉間を抑え、苦しそうに蹲った。
「リン、リン!? しっかりして!!」
「……! この目……」
地面に座り込むリンの眼は金色に光り、何か紋章のようなものも見える。
インプラントに異常が起きたのか。
そう考える暇もなく、眼の光は鳴りを潜める。
「……っ、今の……」
リンも落ち着きを取り戻し、ファイズに肩を貸してもらいながらゆっくり立ち上がる。
「姉ちゃん、平気か?」
「……うん、大丈夫。でも、さっきのは……」
また考えに耽ってしまいそうになったが、今はそうしてる場合ではないと頭の片隅に追いやる。
「……また分からない事が増えたけど、ひとまず帰ろっか」
「それは良いけど、本当に大丈夫か? 病院に行った方がいいだろ」
「もう、タクミがそれ言うの? 本当に大丈夫だから、心配しないで。とりあえず、市長さんには相談しとくから」
「……」
何もなかったかのように振る舞うリンを見て、タクミは嫌な胸騒ぎを覚えた。