クリティホロウにて、高危険度エーテリアスが再び出現。
緊急招集を受けた雅たちは、すぐさま現場へ急行した。
タクミも適当観にいる悠真に念の為連絡を送った後、早急に準備を済ませた後ホロウへと向かった。
「…………!!」
柳とペアでクリティホロウに突入してしばらくしての事。
タクミは件の『高危険度エーテリアス』を見て、目を丸くした。
「この個体は……先日取り逃がしたスウェルドナですね。まさかとは思いましたが、やはり高危険度エーテリアスと言うのはアレの事でしたか」
先日、クリティホロウに入った際、柳と悠真はこれに遭遇した……と聞いた。
戦闘後に姿を消してしまったらしいが……今日、再び姿を現した。
子分のエーテリアスを引き連れ、極彩色のコアから咆哮が轟く。
「親分諸共叩く絶好の機会……今度は逃しません。浅羽隊員、用意はいいですか?」
「あ、はい」
薙刀を構えエーテリアスへと突撃する柳。
タクミは手に持った武器を見つめる。
普段悠真が使っている軽合金エーテル製のコンパウンドボウ。
悠真は普段この弓を使いエーテリアスと戦っているわけだが……
(どうする……? 弓の使い方なんて分かんねえぞ──あれ、待てよ)
そういえば、と。
悠真が使っているこの武器にはもう一つ形態があった事をタクミは思い出す。
持ち手から分離させる事で、弓だったものはあっという間に二振りの刀へ形を変えた。
「おお……! これなら……!」
タクミは「眠花」「暗流」を両手に持ち、子分エーテリアスをバッタバッタとなぎ倒し、斬り裂いていく。
「ふっ! はあっ!!」
囲まれてもその勢いは衰えず、後ろに回り込まれたら肘打ちで引きはがし、横蹴りやストレートパンチなどを織り交ぜた、いつものファイズの闘い方も無意識に組み込んでいた。
変身しなくても十分に戦えるのは、やはり悠真の身体能力が高いからだろう。
跳び蹴りで最後のエーテリアスを倒すタクミ。
結局刀は使っていない気がしなくもない。
「…………」
「……あれ、どうしました?」
「……浅羽隊員、今日は随分と荒々しい戦い方をしますね」
「え? ……あっ」
「その戦い方、なぜだか見覚えがある気がするのですが。私の気のせいでしょうか?」
「きっ、気のせいですよ! それよりほら、さっさと親玉にリベンジしましょうって!」
残すは親玉のスウェルドナのみ。
「グォオオオオ!!」
子分を倒され、怒り狂うスウェルドナ。
咆哮と共に突撃するが、すんでのところで身をかわす。
「……アイツを倒せば、元に戻れるのか」
「? 何か言いましたか」
「あっいえ、なんでも! それより攻撃を仕掛けるタイミングですけ──ゲホッゲホッ……!!」
「!」
突如、咳き込んでしまうタクミ。
膝を着いたところに、柳がとっさに彼の体を支える。
(……これは)
詳しい事は聞いていないが、悠真が病に侵されているというのは聞いた。
(しまったな……いつもの感覚でやり過ぎた。そりゃすぐにガタが来るよな……)
風邪をひいたときの咳とは違う。
とにかく苦しく、内側から蝕まれていくような感覚。
下手すれば、すぐに意識を持っていかれそうなほどだった。
「ぐ……薬飲んだんだけどな……」
「タクミくん、どうか無理はしないでください。今課長と蒼角がこちらへ向かっています」
「そうは言っても──」
───ん??
「……あれ、月城さん……今なんて──」
その時だった。
スウェルドナの背後から、エーテルの裂け目が現れる。
スウェルドナもそれに気づき、すぐさま振り返るが──
「はあっ!!」
裂け目から飛び出た渾身のキックが、あえなく体に直撃した。
その威力に、スウェルドナの巨体が吹き飛ぶ。
「お、本当にここに来れるとはねえ。つくづく、オルフェノクってのは不思議な生き物だ」
「……! お前、なんで……!」
「そりゃあ、事の発端は自分のミスだし、君にそこまで負担はかけらんないよ。 尻拭いくらいはしないとね……っ!」
タクミの体で、ファイズへと変身した悠真。
裂け目を通じて、ラマニアンホロウからクリティホロウまで駆けつけに来たのだ。
吹き飛ばされたスウェルドナがゆっくりと起き上がる。
「タクミ! アレ貸して!」
「!!」
こちらを見て片手を差し出したファイズに、タクミは持っていた二つの刀を投げ渡す。
ファイズはそれを受け取り、次の瞬間──
「!!」
アクセルフォームの力でも使ったのかと見紛うほどの速度でスウェルドナの背後へ回り込み、雷電の斬撃をお見舞いする。
スウェルドナに体勢を立て直す間すら与えず、一方的に蹂躙していく。
「ふう。ここまで動き回ったの、何年ぶりかな」
これほど怒涛の攻撃を繰り出した後にも関わらず、悠真が変身するファイズは疲労の色一つない。
「眠花」「暗流」を合体させ、弓の状態に戻す。
そして。
[Exceed Charge]
ファイズフォンのENTERキーを押し、弓を構える。
纏う青い雷が、フォトンブラッドにより赤色に変わっていく。
弦を引き、アルティメットファインダーを駆使し狙いを定める。
そして。
「ふっ!!」
その一本の矢は、まさに赤き雷が如し。
寸分の狂いもなく狙いを定め、放たれたその矢は瞬く間にスウェルドナのコアを貫く。
『Φ』のマークを浮かべ、スウェルドナは断末魔も上げる事ができず、消滅した。
「…………」
その時だった。
力なく弓を落とし、どさりと倒れるファイズ。
タクミはその姿を見届けた後、悠真と同じく意識を手放した。
そしてしばらくもしないうちに、目を覚ました。
「……!」
起き上がる。
視界に、先ほどまで悠真が変身していたファイズの手が写る。
どうやらスウェルドナを倒した後、無事に元に戻ったようだ。
「タクミくん」
「!」
悠真の体を支えながら、柳がこちらへと向かってきた。
ぐったりしているが、悠真も一応目は覚ましているようだ。
「どうやら知らぬ間に、浅羽隊員が貴方に迷惑をかけていたようですね……」
「クリティホロウにエーテリアスが現れたって君から聞いて、居ても経っても居られなくてさ。君の姉弟子の制止を振り切って、ここまで来たんだ」
「はあ……やはりお二人は入れ替わっていたんですね。無断欠勤だけならともかく、それに他人を巻き込むのは言語道断です」
「それに関しては返す言葉もな──あれ? 副課長、僕達が入れ替わってたの知ってたんですか?」
「入れ替わっていたこと自体には先ほど気が付きました。というより、確信に至った……と言った方が正しいですね」
先日も悠真と行動していた柳は、彼がスウェルドナに奇襲を受けた事も知っていた。
しかし、負傷はしていなかったため攻撃自体は受けなかったと悠真は思っていた。
「スウェルドナの厄介なところは、攻撃を受けたかどうかが、入れ替わるまで全く分からないという事です。攻撃自体に殺傷性はなく、また身体検査をしてもその前兆が確認できないため、事前の対処は困難を極めます」
そこで柳は被害を最小限に抑えるため、悠真が入れ替わっているかどうかを直接確かめる事にした。
本当に入れ替わっているのか、誰と入れ替わっているかは見ただけでは分からない。
入れ替わったのを良い事に悠真の成りすましをしている可能性もあるため、自己申告は期待できない。
「相手を割り出すまで、長い道のりになるかと思いましたが……今朝出社してきた浅羽隊員を見て、誰と入れ替わったのかすぐに分かりました」
「…………」
すぐ顔に出る。
すぐ慌てる。
そして話している途中に面白いくらい見え隠れするタクミの面影。
極めつけは、ホロウの中での戦い方。
ファイズそのものな戦い方を見て、柳は確信に至った。
「……そんなに似てなかったですか」
「あの可愛らし……ではなく愛嬌は、浅羽隊員本人にはとても出せないものですから」
「あれっ、いま僕、暴言を吐かれた……?」
どうやらタクミに、他人の物真似は向いていないようだ。
「犬とか猫はいけるのになあ」
「……そういうところですよ」
「えっ」
「とにかく、本日はご迷惑をおかけしました。謝礼については、後ほど連絡させてください」
「いやあ今日はごめんねタクミ。やっぱ自分の体が一番だよね。自分の体でサボるのが一番!」
「浅羽隊員。今日の貴方の始業時間は現在の時刻からでも大丈夫ですか」
「すみませんでした」
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「疲れた……」
柳たちと別れたあと、クリティホロウからラマニアンホロウへと戻ったタクミ。
今日は長い一日だった。
まだ正午にすらなっていないが。
ともかく、これ以上入れ替わる時間が長引かずに済んで良かったと言えるだろう。
そのままラマニアンホロウを出て、ロープウェイで澄輝坪へ戻る。
「…………?」
ロープウェイを降りると、誰かが待っていた。
「…………」
ぷくーっと頬を膨らませて、お冠状態の姉弟子だった。
「……タクミ」
「は、はい」
「怪我がまだ治ってないのにホロウに行っちゃうわる~い弟弟子には、姉弟子からのきつ~いお仕置きが必要だと思わない?」
「…………」
「沈黙は肯定と受け取るわ。はい連行っ!!」
「ぐわーーーーっ」
瞬光はタクミの頬をこねくり回しながら、適当観へと連れ帰る。
そして日が暮れるまで、瞬光の『栄養補給』の刑から逃れることはできなかった。