ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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アリア

 

 

 

 

 

「それにしてもすごいなあ……まさか店長さんが、こんな凄腕のプロキシやったなんて」

 

「えへへ……面と向かって言われると、ちょっと照れるね。でも、今まで隠しててごめんね?」

 

「ううん、気にしないで! 誰にだってちょっとした隠し事はあるし……店長さんにも事情があったんでしょ?」

 

「うん、まあ……そうだね」

 

「…………」

 

 

リンはファイズの方を見る。

 

ファイズは何も答えなかった。答えなかったが……

 

 

(やばい……どうする……!? これじゃ正体が──いや落ち着け俺! 『シンザン』の時は声は変えてたし、いつも通りしてればバレないはずだ)

 

 

内心パニックになっていた。

 

しかし、ここは落ち着いて対応する。

 

 

「……プロキシ。ルートの設計は終わったか?」

 

 

他人の呼び方にも気を付ける。

 

物凄く久しぶりに、リンをプロキシ呼びした気がする。

 

 

「はいはいファイズさん、今からやるよ。Fairy、お願い」

 

 

そして物凄く久しぶりに、リンにファイズ呼びされた気がする。

 

 

 

『目的地までの最適ルートを計算中……』

 

「!! えっ……?」

 

 

リンのスマホからFairyの声が聞こえた瞬間、アリアの眼が大きく見開かれた。

 

 

「? どうした、アリア」

 

「あ……う、ううん。な……なんでもないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fairyが演算したルートを辿り、一行は広い場所へと出た。

 

リンはロープウェイ駅でシーシィアから預かったシグナル追跡装置を取り出す。

 

この装置があれば、例のAIの痕跡がある場所をへと向かえるらしい。

 

 

「よし、これだけ広ければ、装置を起動できるかな」

 

「……! 店長さん、あそこ!」

 

「!」

 

 

アリアが指を差す先。

 

暗がりから、エーテリアス達が飛び出した。

 

ファイズはリンの前に出て、戦闘態勢に入る。

 

 

「ねえちゃ……プロキシは装置を起動しろ! 俺はこいつらの相手をする!」

 

「分かった!」

 

「ふぁ、ファイズさん! ここはうちらがやるで!」

 

 

千夏とアリアが、ファイズの前に出た。

 

 

「ファイズさんは、店長さんを守ってて! 私たちがパパっと倒しちゃうから!」

 

「……分かった。無理はすんなよ」

 

「大丈夫だよ! ……けど」

 

「? けど?」

 

「……ううん、なんでもない。さ、いこっかちなつちゃん」

 

 

千夏はメガホン型の武器を、アリアはマイク型の武器を持ち、エーテリアス達の前へ出る。

 

 

「……店長さん、ファイズさん」

 

「?」

 

「今から私が見せる姿を見ても……怖がらないでいてくれる?」

 

「え? 何を言って……」

 

 

アリアは答えずに、エーテリアス達の元へ駆け出す。

 

 

『グォオオオオオ!!』

 

 

アリアを標的に定めたエーテリアス達は咆哮とともに、彼女へ襲い掛かった。

 

 

武器を構えた彼女の体が、わずかながらに光る。

 

次の瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

 

『人間』だったアリアはホログラムを解除し……瞬く間に別の姿へと変貌した。

 

 

「……アリアお前、その姿……!」

 

「…………」

 

 

ここに来てリンとファイズは、アリアが人間ではなく、『知能構造体』だという事を知るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の連携により、エーテリアス達を一掃した後。

 

アリアは武器を収め、こちらへと歩いてきた。

 

 

彼女は非常におどおどとした様子で、人間の姿の時の元気いっぱいな感じとは正反対だった。

 

まるで人に見られる事を極度に恐れているかのような、そんな表情をしていた。

 

 

「……見て、ください。これがアリアの、本当の姿です……」

 

 

頭部のピンク色のフレーム、額には黒いバイザー。

 

目も黒色に変わっており、その違いは一目瞭然だった。

 

 

リンとファイズは驚きの感情をあらわにした。

 

やがて、リンは口を開く。

 

 

「……アリア、それ」

 

「っ……」

 

「すっごくかわいいじゃん!! もっと早く見せてもよかったのに!」

 

「……やっぱり、そうですよ──え?」

 

 

アリアを見たリンの口から出たのは非難ではなく、心からの「かわいい」だった。

 

今度はアリアが驚いた。

 

 

「知能構造体の姿って、結構コロコロしてるんだねえ。カッコいいと可愛いが共存してる感じ!」

 

「ほら言うたやろ! アリアちゃんは知能構造体の姿でも可愛いんやって!」

 

 

先ほどから見守っていた千夏も、リンと同じ言葉をかける。

 

 

「か、可愛いなんて……アリアはただの無骨な知能構造体で……ホログラムで、皆を騙してただけなのに……」

 

「……? 無骨? どこが」

 

「えっ?」

 

「……あ、いや、その……」

 

 

無意識に、思った事が疑問として口に出たファイズ。

 

アリアの姿を見て、一ミリもそんな事を思わなかっただけに、声に出てしまっていた。

 

 

「アリアは無骨なんかじゃないよ。それと、皆を騙してるって言ったけど……誰にだって、ちょっとした隠し事くらいはあるってさっき言ったでしょ? アリアだって、私たちと同じだよ」

 

「…………」

 

「……ありがとう、ございます」

 

「さ、シグナルの発信源を探しに行こ!」

 

「……はい!」

 

 

アリアは頷くと、ホログラムを起動させ人間の姿へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追跡装置に示されている発信源への方角。

 

それと設計したルートを参照し、先へと進む一行。

 

 

気づけば、無人の廃坑エリアまで来ていた。

 

 

エーテリアス達を倒しながら進むにつれ、徐々にシグナルが強くなっていく。

 

 

「目的地はもうすぐだね。アリアも千夏も、体調は大丈夫?」

 

「うちは平気やで。……アリアちゃんは?」

 

「……私も、大丈夫」

 

 

そう口にするアリアだが、その瞳は隠しきれないほどに、不安で揺れていた。

 

 

 

 

 

 

そうして少しもしないうちに、リン達は広い空間へと出た。

 

しかし。

 

 

「……なんや、何もあらへんな」

 

「プロキシ。ここが発信源のあるエリアなんだよな?」

 

「うん、間違いないよ。もしかしたら、待ち伏せしてるのかも。あのAIの事だし、可能性は十分ある」

 

 

ファイズは周りを見渡しながら、辺りに何か手がかりがないかを探す。

 

埋まっている瓦礫の中に何かないかと、どかそうとした……その時。

 

 

「!! ファイズさんっ!」

 

 

アリアが叫んだ。

 

その声を聞いたファイズは、反射的に身をかがめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直後、ファイズの頭上を紫(・)色(・)の(・)刃(・)が横切った。

 

 

「!!」

 

 

とっさに振り返ると、そこにいたのは──

 

 

「あ、あれって……」

 

「っ……!!」

 

 

先ほど見た、知能構造体の姿のアリア。

 

色合いこそ少し違うが、そのほとんどが、彼女と同じ姿。

 

二体の『兵器』が、そこに立っていた。

 

 

「こいつら、一体どこから……!」

 

『戦闘プログラムを起動。ターゲットを直ちに排除』

 

「っ!!」

 

 

アリアに似た兵器は腕から先ほど見た紫色の刃を伸ばし、二体同時に、真っ先にファイズへと襲ってきた。

 

 

「……! いま、うちらの方見向きもせずに、ファイズさんとこに……!」

 

 

千夏たちも、兵器たちの視界に入っていたはずだ。

 

なぜファイズだけを狙うのか。

 

それを考える余裕はなかった。

 

 

一切の慈悲もなく、冷たい刃がファイズを襲う。

 

ぎりぎりで攻撃を防ぎ、かわしながら反撃に出ようと考えたが……アリアに非常に似たその姿を前に、攻撃に踏み出せずにいた。

 

 

頭部、胸部、脚部を的確に狙われる。

 

防御するだけでも精いっぱいだった。

 

相手を『殺す』ためだけに創られたプログラムは、冷徹にファイズを追い詰めていく。

 

 

「アリアちゃん! うちらも……!」

 

「うん……!」

 

 

もちろん、アリアもファイズを助けるため加勢しようとした。

 

だが。

 

 

「……っ!」

 

「! アリア……?」

 

 

足が動かない。

 

兵器二体は攻撃を止める気配もなく、ファイズはそれをなんとか捌いている状況。

 

まさに混戦状態。

 

 

その中に、自身が突っ込めばどうなる?

 

混戦の中、何かの拍子に誤(・)っ(・)て(・)ファイズを傷つけてしまうかもしれない。

 

あの『兵器』と同じように、殺してしまうかもしれない。

 

 

普段共闘している千夏や羽と違い、ファイズと共闘したのは今日が初めてだ。

 

いつものような連携が出来るとは思えない。

 

その事実が、余計に彼女の足をすくませていた。

 

 

助けたい。

 

だが、どう助ける?

 

 

 

「ファイズさん!!」

 

 

考えた末に、アリアは叫ぶ事にした。

 

今の自分にはこれしかできないと、判断した。

 

 

「っ……なんだ、アリア!」

 

「そいつらを、壊(・)し(・)て(・)っ!」

 

「壊す、だと? でも──」

 

「早くっ! 貴方が傷ついちゃう!!」

 

「……っ!」

 

 

アリアの切実な叫びを聞いたファイズは、瞬時に兵器の攻撃の隙を見極める。

 

そして。

 

 

「はあっ!!」

 

 

片方の攻撃を右腕で防ぎつつ、もう片方の攻撃の直前に身をかがめ、兵器の腹部を肘打ちでひるませ……渾身のストレートで壁へと吹っ飛ばす。

 

一対一となったチャンスを見逃さず、残った片方にも迷わず連撃を仕掛けた。

 

 

『……!』

 

 

膝蹴りの直後にファイズポインターを取り出し、直後に追撃で横蹴りをかまし、先ほどパンチで吹き飛ばした片方へ兵器と『同じ方向』へ吹っ飛ばす。

 

すかさずポインターにミッションメモリーを装填。

 

 

[Ready]

 

 

素早く脚部にセットし、ENTERキーを押した。

 

 

[Exceed Charge]

 

 

壁に叩きつけられた二体の兵器。

 

フォトンブラッドがチャージされるや否や、ファイズは大きく飛び上がる。

 

 

ポインターから射出された赤色のマーカーが、立ち上がろうとしていた兵器を、二体同時に封じ込めた。

 

 

「やぁぁああああっ!!」

 

 

雄叫びと共に、ファイズは『クリムゾンスマッシュ』をお見舞いした。

 

二体の兵器は『Φ』の文字を浮かべ、火花を上げた後に跡形もなく爆散。

 

 

無事に、撃破に成功したのだった。

 

 

「ファイズさん! だ、大丈夫ですか!? 怪我は……!」

 

 

その後すぐに、アリア達が駆け寄って来た。

 

アリアは余程動揺していたのか、再びホログラムが解けてしまっていた。

 

 

「……良かった、怪我は……ないみたいですね」

 

 

ファイズに怪我がない事を確認すると、アリアは安堵の表情を浮かべるが……すぐに俯いてしまう。

 

 

 

どう声をかけたものかとリン達が考えていると、アリアはゆっくりと顔を上げた。

 

 

 

 

「……店長さん。えっと……店長さんとタクミくんって……姉弟、なんでしたよね?」

 

「? う、うん。そうだけど……どうして急に?」

 

「……店長さんにお願いが、あるんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリアの、正体を……タクミくんには、言わないで欲しいんです」

 

「……え?」

 

 

最初に声を上げたのは、ファイズだった。

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