ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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揺れる心

 

 

 

 

 

リンはアリアの言葉に驚きを隠せない。

 

一度だけファイズをちらりと見た後、またアリアを見た。

 

 

「さっき店長さんが、この姿でも可愛いって言ってくれた事……凄く嬉しかったです。でも……それでもやっぱり、怖いんです」

 

「アリア……」

 

「……今襲ってきたのあの子たちは、戦うために、傷つけるためだけに造られた兵器。アリアと、同じです」

 

「同じ? 何言うてんねん! アリアちゃんは別に、あの構造体とは違うやろ! 世界に一人しかおらへん、妄想エンジェルのアリアちゃんやんか!」

 

「千夏の言う通りだよ。確かに製造元は同じかもしれない……けど、それでも──」

 

「それでも、同じである事に変わりないんです」

 

 

アリアと彼女たちは『仲間』。

 

同じ目的で造られ、同じ戦場に駆り出され、同じ場所で眠りにつく。

 

人間やシリオンとは違い、そこに違(・)い(・)は(・)な(・)い(・)。

 

 

「そんなアリアを、もしタクミくんが目にしたら……少しでも『恐い』って思われたら……そう思うだけで、息が詰まるような感じがして……」

 

「……」

 

 

ファイズはアリアの言葉を聞き、何も言わずに俯いていた。

 

 

「……大丈夫だよ、アリア。タクミはそんな事は絶対思わないから」

 

「せやでアリアちゃん! 身内の店長さんがこう言ってるんやから、なんも心配することなんかあらへんって!」

 

「……仮に、そう思われなくても……アリアがホログラムであの子を騙してたのは本当です。隠し事をしてるのを知ったら……きっと、幻滅するかも……」

 

「アリア」

 

「!」

 

 

話を聞いていたファイズが、アリアの方を向く。

 

そしてゆっくり、彼女の元へ歩み寄る。

 

 

「……その『タクミ』って奴なら、怖がったり、幻滅する事はねえよ。安心しろ」

 

「っ、安心って……そんな確証、どこにもないのに……」

 

「あるさ。今から、証(・)明(・)する」

 

「……?」

 

 

何を言っているのか分からないとでも言いたげなアリアを他所に、ファイズはバックルからファイズフォンを取り出す。

 

千夏はきょとんとしながら、リンは目を丸くしながら、ファイズを見ていた。

 

 

フォンの通話終了ボタンを押したと同時に、ファイズの体は赤い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

心の底からだった。

 

心の底から、まるで吸った息が吐きだされるように、自分でも驚くほど無意識に、声が出た。

 

 

 

アリアの目の前に現れた少年の姿。

 

 

 

ズボンを見て、服を見て、顔を見る。

 

それは彼女にとって、ひどく見覚えがあるものだった。

 

 

千夏も、その姿を見てあんぐりと口を開けた。

 

 

「……その服……シンザンくんと同じ? というかその顔、えっ、なっ、あ、あれっ!?!?」

 

「…………」

 

 

先ほどの戦闘の時よりも大きな声が出たアリア。

 

無理もないだろう。

 

先ほどまで話題に出ていたタクミ本人が、いきなり目の前に現れたのだ。

 

 

しかも以前見た時よりも、はるかに成長した姿で。

 

 

「た、た、た……」

 

「アリア、千夏。ごめん、今まで黙ってて。実はシンザンもファイズも、全部俺なんだ」

 

 

アリアも千夏も羽も、何の関係もない一般人。

 

本来ならファイズやパエトーンとは全くの無縁であるべきで、本当はこうしてホロウで共に行動する事さえグレーゾーンである身なのだ。

 

だからこそ、こちらの事情に理不尽に巻き込まれる可能性を万が一にでも考え、最後まで正体を隠し通すつもりだった。

 

 

 

だが、先ほどのアリアの言葉を聞いて、そうする事が本当に正しいのか……タクミはひたすらに考えた。

 

アリアはタクミを騙していたと言ったが、それはタクミも同じ。

 

自身の事情で、アリアに罪悪感に苛まれて欲しくはなかった。

 

 

葛藤の末、タクミは正体を明かす事に決めたのだった。

 

 

「許してくれとは言わない。けど俺の事で、自分を責める必要はない。それだけは言っておきたかった」

 

「あああ……た、たたた……」

 

「それに、その事情抜きにしたって、俺がアリアを恐ろしいなんて思う事は億が一にもない」

 

「たっ、たた、たく……」

 

「……アリア?」

 

「システムエラー」

 

「アリア!?」

 

 

衝撃の出来事に、アリアがキャパオーバーを起こした。

 

タクミは倒れそうになったアリアを急いで受け止める。

 

 

「ちょ、アリア!? 大丈夫!?」

 

「あ、あかん、気絶しとる……! セルシー様の限定グッズが抽選で当たった時と同じ状況や……!」

 

「そうなの!?」

 

 

ひとまず、リン達はホロウを出て、澄輝坪へと戻る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

すっかり日も暮れ、静けさが訪れた夜の澄輝坪。

 

シーシィアにノックノックで依頼完了の報告をした後、改めて千夏とアリアに事情の説明をした。

 

あとリンがパエトーンである事もついでに説明した。

 

 

「……店長さんが、あの『パエトーン』で……」

 

「タクミくんがシンザンくんで、ファイズさんで……」

 

 

二人の表情を見るに、まだ飲み込めていないようだ。

 

 

「まあ要するに……私たちは一般人じゃないよって事だね」

 

「ま、待って……まだ理解が追いつかへん……なんやねん『体が縮んでしまっていた』って、どこの探偵漫画やねん……!」

 

 

それはタクミも大いにツッコみたい部分ではある。

 

 

「まあその、悪いやつと戦った時にな。色々あって、小さくなったんだ。その後は色々あって、元に戻った」

 

「その『色々』がごっつ気になるんやけど!」

 

 

しかし千夏もそこまで踏み込むべきではないと判断したのか、それ以上は何も言わなかった。

 

 

「前にノックノックで言ってた、『ライブに行けなくなった』っていうのは、もしかして……」

 

「……ああ、それが理由だ。巻き込まないためとはいえ、お前にずっと嘘をついてた……本当にごめん」

 

「……ううん。それはお互い様だよ。私だって貴方に知能構造体だって事を、ずっと黙ってたから」

 

「…………」

 

「ねえ、って事はさ。タ(・)ク(・)ミ(・)く(・)ん(・)は(・)、ライブには行けるって事だよね?」

 

「! まあ、そうだな。依頼も終わったし、黄金の日には行けるはずだ。……シンザンじゃなくて、俺がな」

 

「……!!」

 

 

アリアの瞳が揺れる。

 

喜びと不安が、同時に押し寄せる。

 

 

(……あの時も、ずっと傍で応援してくれてたんだ)

 

 

昨日の、ライブハウスでの出来事を思い出す。

 

バブルちゃんのお面を被った謎の少年が、自分と一緒に新曲の改良について真剣に考えてくれていた。

 

 

(……)

 

 

先ほどの『仲間』と会ったせいか、論理コアに、思考モジュールに揺らぎがある。

 

だがタクミといると、自然とそれが安定する気がした。

 

 

 

「……なあ、これうちら離れた方がええんちゃうか?」

 

「ちょーっとだけ距離とろう」

 

「?」

 

 

アリアの後ろにいる千夏とリンが離れる。

 

何故か距離を取った二人に疑問を抱いたタクミだが、今はアリアとの話に集中する。

 

 

アリアが、ホログラムを解除する。

 

 

「……タクミくん。アリアが、どんなアリアだったとしても……応援、してくれますか? 見限らないで……くれますか?」

 

「見限るわけねーだろ。俺はむしろ、応援させてほしい。モーソー族として、一人の友達として」

 

「……! はい……!」

 

 

「! あの笑顔、可愛い……!」

 

「せやろせやろ!? アリアちゃんの笑顔は、知能構造体の姿でも天下一品なんや!」

 

 

知能構造体の姿では、今日一度も笑顔を見せてこなかったアリア。

 

それが今、弱々しくも華々しい笑顔を見せた。

 

 

(…………)

 

 

ふと、アリアはライブハウスで『シンザン』としたやり取りを思い出す。

 

アレもすべて、シンザンではなくタクミと話をしていたわけで。

 

願いの妖精との会話履歴も、見せた記憶がある。

 

 

 

 

『ねえ店長さん……タクミくん、喜んでるかな』

 

 

 

『願いの妖精さん。最近気になる子がいるんだけど……その子に、ありがとうを伝えたくて』

 

 

 

 

 

 

 

「…………ふえ」

 

「……!? アリア!?」

 

 

今度はオーバーヒートを起こしかけたアリアだった。

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