ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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ホルス・ベロボーグ

 

 

 

 

 

「──クレタ、クレタ!」

 

「……あ、どうかしたか?タクミ」

 

「……依頼が完了したからそろそろ帰るって事を伝えに来た」

 

「そ、そうか」

 

 

帰りの準備を済ませたタクミは、挨拶をするためクレタの元に来ていた。手には感覚同期解除済みのボンプを持っている。

 

 

「まあ、ちょっとしたハプニングもあったが、行方不明になっていた知能重機は三台とも見つかった。力を貸してくれてありがとな。パエトーンにも、そう伝えといてくれ」

 

「……おう」

 

「……何だよ、何か言いたげだな?」

 

「いや……パイルドライバーが言ってた『ホルス』ってのは──」

 

「あーっと、タクミ君!今回は君とプロキシさんのおかげでとても助かった!依頼料は後日振り込んでおく!さあ社長、早いとこ入金手続きを……」

 

「……ベン、大丈夫だ。そんな風に気を遣わなくていい。今ここで答えなかった所で、ネットで調べりゃすぐに出てくる事だ」

 

「社長……」

 

「それに、タクミとプロキシの兄妹はウチらの恩人で、信頼出来るダチだ。はぐらかす必要はねぇよ」

 

 

そしてクレタは『ホルス』について説明した。

 

ホルスというのは先代白祇重工の社長、ホルス・ベロボーグの事。クレタの父親だった。

 

旧都陥落の前日に、白祇重工の口座から大金を引き出し、行方不明となった。

 

治安局によれば、白祇重工の経営悪化、当時請け負っていた記念広場の完成の遅れ。これらが原因でホルスは経費を持ち逃げした、との事らしい。

 

テレビで言っていた『白祇重工の黒歴史』とは、これの事なのだろう。

 

 

「……アイツの後先考えねぇ行動のせいで、白祇重工はどん底に突き落とされた。残されたうちらはその辛い時期を乗り越えて、ここまで這い上がって来たんだ」

 

「……そういう事だったのか」

 

 

クレタが若くして当代白祇重工の社長となった理由。白祇重工には、自分には想像し得ない苦労があったのだとタクミは感じた。

 

 

「ま、そんなわけだ。あたしはとっくにホルス・ベロボーグの事を親父だとは思ってねぇ。今の白祇重工だって、あの無責任ヤローとは何の関係もねぇ」

 

「待つんだクレタ!自分の父親に対してそんな言い方はないよ!」

 

 

クレタに対して待ったをかけるグレース。彼女の発言に対して何か言いたい事があるようだ。

 

 

「当時、会社の口座からお金が無くなったのは事実だけど……それがホルスさんの仕業だと証明できる人はいないじゃないか!治安局の言う事だって、ぞんざいな推測に過ぎない!」

 

 

先代社長であるホルスをよく知るグレース達は、ホルスが理由もなく会社の大金を持ち逃げするわけがないと、常にそう信じている。

 

だから、クレタには父親をそう憎む必要はないと、彼女はそう言っているのだ。

 

 

「……それにあの人が失踪した時、君はまだ幼かった。親子で過ごした時間も多くはないんだから、分からなくても無理は──」

 

 

「分かってねぇのはお前の方だろッ!!」

 

 

「……っ!」

 

「……クレタ?」

 

「あ……」

 

 

タクミの声で我に返ったクレタは、自分の髪を苛立たしげにワシャワシャとかきながらその場に座り込む。

 

 

「……あー、その、なんだ……ホルスって名前の説明が出来ればいい訳で、そこまで踏み込んだ話はしなくても良いんじゃないか……?」

 

 

場の雰囲気をこれ以上悪化させないよう、ベンは話題を変える。

 

 

「そ、そうだグレース。アンドーと一緒に知能重機の点検をしてたはずだろ?それを放り出して、一体何しに来たんだ?」

 

「……あの子たちが逃走した原因について、目星がついたって知らせに来たんだ」

 

 

デモリッシャー、デュアルショベル、パイルドライバー……これら三台の重機は逃走する前、ホロウの深部から同一の信号を受信していた。

 

その信号の識別コードは白祇重工の知能機械と同じフォーマットだったらしい。

 

 

「そこから解析出来た文字列は──『BLG Prototype』」

 

「……それって、まさか……」

 

「そうだよクレタ。信じ難い事だけど……この信号は、どう考えても『プロトタイプ』から送られたものさ」

 

「……? グレースさん、プロトタイプってなんだ?」

 

 

この場で唯一その名前にピンと来ていないタクミ。

 

 

「先代社長が失踪する前に、白祇重工が開発していた最初の知能機械だ」

 

 

当時、白祇重工の生産ラインは他社と比べ遅れをとっていた。その末開発できたのは核となるパーツだけだった。残りは全て、図面通りに製造するよう外注せざるを得なかったらしい。

 

 

「だが惜しいかな……完成して、あとは支払いだけという所で旧都陥落事件が起きてしまった。外注先はホロウ災害に巻き込まれて消滅し、プロトタイプも行方不明になった、はずだったが……」

 

「プロトタイプは、消えてなんかいなかった。しかも、未だに一部の機能は生きている」

 

 

プロトタイプも、それに搭載されている論理コアも、白祇重工の価値ある資産である以上、放置しておく訳には行かない。

 

グレースはクレタに問いかける。

 

 

「おチビちゃん……君はどうしたい?プロトタイプを探す?そんな物は始めからなかったことにする?」

 

「……あたしは──」

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

ビデオ屋、Random Play。タクミはボンプを連れて帰宅した。

 

 

「ただいま」

 

「あ、おかえり、タクミ。遅かったね」

 

「白祇重工の先代社長についての話を聞いてな」

 

「! それって……」

 

 

タクミは今日聞いた事を二人に説明する。

 

 

「……なるほど、先代社長が残したプロトタイプが、まだどこかに残っていると」

 

「プロトタイプを探すと決断したら、また連絡するって言ってた。二人はどうする?俺は、協力するつもりだけどよ」

 

「……もしクレタがそう決断するなら、私は協力するよ。クレタにとって、簡単に決められる事じゃないとは思うけど……」

 

「僕も同意見だ。とは言え、今できることは何も無い。向こうから連絡が来るまで待とう」

 

 

今日はホロウを走り回って疲れが大きい。ひとまず今夜は明日に向けて英気を養う事にした。

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