翌日。リンとタクミは、白祇重工から『プロトタイプを捜索をする』という旨の連絡を受け、クレタ達の元へ来ていた。
「二人とも、わざわざ来てくれて礼を言う。白祇重工は、本腰を入れてプロトタイプの捜索をすることに決めた」
「簡単な事じゃなかったよね。決心できたみたいで良かった!」
「ああ。プロトタイプには会社の重要技術が詰まってる。社長として、あれを放っておくようなマネはできねぇ」
話している彼女の顔はどこか浮かない表情だった。
「……とは言え、アイツを探すのはグレースの専門だ。詳しい話はアイツとしてくれ。それとタクミ。ちょっと面貸してくれねぇか?」
「……? 俺?」
「ああ。ちょっと用がある」
そう言うとクレタは、俯いたまま行ってしまった。タクミは何も分からぬまま彼女の後を着いて行った。
「あ……社長、待ってくれ!」
「心配すんな、ベン。うちの社長は、後から決めた事を後から後悔するようなタマじゃねぇ」
「その通り。おチビちゃんが決断してくれたなら、それで充分さ」
(……それにしても、用って何だろう。タクミに相談したい事でもあるのかな)
疑問が浮かんだリンだったが、それを頭の片隅に追いやり、プロトタイプの捜索についての話を聞くことにした。
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「悪いなタクミ。わざわざ来てくれて」
「それは別に良いけど……用ってなんだ?」
「それは、だな……お前に相談したい事があってよ」
「相談?」
「ああ、あたしと一番歳が近いお前に相談すんのが一番良いと思ってさ」
「そういうことなら、いくらでも乗る」
「ありがとよ。それで相談したい事なんだけどよ……お前ってさ……自分の家族と喧嘩した時ってどうしてる?」
「……あー」
何となくクレタの悩みが分かった気がした。ここ最近ではあまりないが、タクミの方もアキラやリンと言い争いをした事はある。
タクミはその時どうしてたかを思い出す。
「……そうだな。あくまで俺の経験談だけど……仲直りできないまま時間が経つと余計拗れちまうんだよな。だから……」
「だから?」
「さっさと謝る」
「……謝る……か」
「ああ。つってもすぐには無理だ……何か気分転換を挟んで気持ちを落ち着かせる。それから勇気を出して謝る」
「……」
「……まぁ、謝る以外にも仲直りの方法はある。とにかくだ、何かしら行動しないと、どこかで必ず後悔する羽目になる」
実際にタクミがそういう経験をした訳では無いが、何かが原因で仲直りできないまま離れ離れになるなんて事も有り得ない話ではない。
突然交通事故に遭う。突然難病にかかる。突然誰かに襲われる。突然ホロウ災害に巻き込まれる。
いつこのような『突然』が起こるかは分からない。この新エリー都では尚更そうだ。
後悔したくないのなら、行動は早めに起こした方が良い。
「……そんなとこだ。悪いな、気の利いた答えが出せなくて」
「いや……大丈夫だ、ありがとなタクミ。ちょっと……いや、大分気が楽になった」
「……そうか? それなら良いけどよ」
クレタはタクミに礼を言う。その表情は、先程よりも明るくなっていた。
気を遣っている訳ではなさそうだ。
「さ、こうしちゃいられねぇ……早いとこプロトタイプを見つけちまうぞ。協力してくれ、タクミ」
「ああ」
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『もしもし?皆、聞こえているかい?』
「聞こえてるよ」
しばらくした後。プロトタイプを探すため、一行は地下鉄改修プロジェクトの建設予定ルートにあたる、新エリー都と旧都の境界付近のホロウにいた。
ちなみに、当然と言えば当然だが治安局の許可は一切降りていない。
「……なあベン。またこの場所に戻ってくる羽目になるとはな」
「なんだよ、ここら辺に来たことがあんのか?」
「旧都陥落前は、開発途上の新エリアとしてそれなりに注目を浴びていたんだ」
白祇重工もかつてこの辺りでプロジェクトに関わった事があったらしい。
『よし。それじゃあ僕が計画を説明しよう』
まずデモリッシャー、デュアルショベル、パイルドライバーの三台を特定のポイントへと配置させる。
その後グレースが信号発信機を起動。三台にはプロトタイプのリプライ信号を受信させて、中継機の役目をしてもらう。
三台が中継する信号の強度はそれぞれ異なる。そのため彼らの近くに適した場所を見つけて、信号を分析する必要がある。
そうする事で、プロトタイプの具体的な座標を見つけられる、という寸法だ。
『グレースさんとパイルドライバーの持ち場はこの近くにあるから、僕が連れていこう。リンは他の人と一緒に、あとの二台を指定地点まで連れて行ってくれ』
「よし!三台の力を借りて、プロトタイプを探すぞ!」
こうしてプロトタイプ捜索作戦は開始された。