「あれ……二人とも、どこ行くんだ?」
とある日の事。タクミは二人が何やら出掛ける準備をしているのを目にした。
「新しい車の免許証を受け取りに行くんだ。そろそろ行かないとマズいからね」
「あー……もうそんな時期なのか」
アキラとリンは社用車運転のために普通自動車免許を取得している。
一方タクミは普通二輪免許は持っているが、自動車の方は持っていない。そもそもまだ取れる年齢でも無い。
「いつ頃帰るんだ?」
「ルミナスクエアの治安局に免許証を取りに行くだけだから、昼前には帰ってくるよ」
「それじゃあ行ってくるね! あ、出掛ける時は戸締りしなきゃダメだよ?」
「分かってるよ」
二人を見送ったタクミは、今日の天気でも調べようとスマホを取り出そうとするが……
「……あれ?」
ズボンのポケットに入れていたはずのスマホが見当たらない。どこかで落としたのかと探していると……
「捜し物はこれかにゃ〜?」
「え?」
ふいに聞き慣れた声がした。振り返ってみるとそこにはタクミのスマホを持った猫又がいた。
猫又はイタズラに成功した子供のようにニマニマと笑っている。
「……猫又、お前」
「おっと、そんな顔をされるのは心外だぞ? あたしはアンタが落としたスマホを拾ってあげただけだし〜」
「はぁ……じゃ、そういう事にしといてやるよ」
十中八九こっそり抜き取ったのだろうが、タクミは敢えて追及しない事にした。
「それで、なんの用だ? ビデオでも借りに来たのか?」
「ううん、暇だから遊びに来ただけ〜。そういえばアキラとリンちゃんは何してるんだ?」
「免許の更新に行ってる。すぐに帰るとは言ってたけど──」
その時、タクミのスマホから着信音が鳴る。リンからの電話だった。
「もしもし?」
『あ、もしもし? ごめんね、ルミナスクエアの駐車場が空いてないらしくて、思ったよりも時間かかるかも! だから今日のお昼ご飯は自分で用意してくれない? タクミの分だけでいいから!』
「お……おう、分かった。気をつけて帰れよ」
『うん、またね!』
電話が切れる。随分と慌ただしい様子だった。これはしばらくは帰って来れなさそうだ。
「……どうしたの?」
「いや……兄ちゃん達、帰ってくんのが遅くなるらしい。昼飯どうすっかなぁ」
「……ねぇタクミ」
「ん?」
「お昼ご飯まだ食べてないならさ……あたしと一緒に食べない?」
「……んー、そうだなぁ」
恐らく猫又はタクミと一緒に外食でも行きたいのだろう。しかしあいにくタクミは外食という気分でもない。
「ラーメン屋にでも行って──あ」
そこまで言ったタクミは何かを思いつく。
「……なぁ、猫又」
「うん? どうしたの?」
「買い物に行ってくる。ちょっと待っててくれねぇか」
「買い物?」
「ああ、すぐ済むから」
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ビデオ屋を出てから数分後、タクミは買い物から帰ってきた。
「ただいま」
「あ、お帰り〜! 何買ってきたの?」
「昼飯の材料だよ」
「え……?」
猫又は目を丸くする。
「外食には行かないの?」
「自分で作った方が安上がりだからな。安心しろ、猫又の分も作ってやっから」
そう言ってタクミは昼飯の支度にとりかかる。
「……タクミの手料理」
「? なんか言ったか?」
「え!? あ、えっと……タクミって料理作れたんだな〜って」
「めったに作る機会は無いけどな。最後に作ったのは確か半年ぐらい前だったかな……」
普段はアキラかリンのどちらかが作っているため、タクミが作ることはほとんどない。
半年前にその二人がまとめて風邪をひいた時、レシピとにらめっこをしながらおかゆを作った、というぐらいだ。
「ま、できるまで時間がかかるからそれまで映画かなんかでも見とけよ」
「う、うん」
そう言ってタクミは昼飯の支度の続きをした。
「……」