夕方。
アンビー、ビリー、猫又と合流したプロキシ達はバレエツインズ前の下層広場に来ていた。
「到着したね。それにしても……」
プロキシはニコから渡された一枚の写真を見る。その写真には桃色の髪の黒いフードを被った少女が写っている。
プロキシはこの少女の顔に見覚えがあった。
「まさか『レイン』ってハッカーがうちの常連さんだなんて……人は見かけによらずだね」
「んで……そのレインがいるっていうバレエツインズはどこにあるんだ?」
「……対岸のホロウの中」
広場から見える大きな極彩色の球体。あれがバレエツインズを呑み込んだというホロウだ。
「そのハッカー、マジであそこから連絡を──ん?見ろよ、ホロウの上!」
「あれは……バレエツインズの屋上?」
ホロウの上から、片方のバレエツインズの建物の屋上が見える。
恐らく共生ホロウが縮んだ影響で、屋上だけがはみ出したのだろう。
「……てことは、ニコに来たのはあそこからのメッセージって事?」
「……仮にそうだとして、なんでレインは屋上なんかにいるんだよ。実はメッセージを送ったのはレインじゃなくて幽霊でした、なんてオチじゃねぇだろうな……」
バレエツインズへ行くと決めてから、タクミのテンションはずっと低いままだった。
「……タクミ、もしかして怖いの?」
「怖い」
「いや、即答かよ」
「……だって俺がホラーもの苦手なの皆知ってるだろ? 意地を張るだけ無駄だ」
「え? あたしは初耳だぞ?」
「……」
「……だ、大丈夫だタクミ! 猫又はああ見えて口は堅いからな。言いふらすなんて事はしないはずだぜ!」
「そうそう!安心していいぞ。あーでも意外だな〜、タクミってホラー苦手だったんだ〜。だから何ってわけじゃないけど、もしかしたら何処かでうっかり言いふらしちゃうかもな〜」
「う……」
猫又はタクミを見てニヤニヤと笑い、わざとらしくそんな事を言う。
完全に強請る気満々な顔だった。
「待って、猫又」
「にゃ?」
プロキシが猫又に待ったをかける。
「どうせならタクミの怖がっている顔を見る方が──」
「おい姉ちゃん、そこは止めるとこだろーが!!」
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[5・5・5][Standing by…]
「へ、変身」
[Complete]
ファイズへ変身するタクミ。辺りが暗いからか、纏う赤い光がより一層眩しく見えた。
バレエツインズへと入った一行。夜だから、というのもあるが屋内は今にも幽霊が飛び出てきそうな雰囲気を醸し出していた。
「うぅ……なんかここ寒くね……?」
「確かに……中はピカピカなのにみょーに居心地が悪いぞ……」
「……警戒して。霧が濃い……何かが潜んでるかも」
一行は歩を進める。その時──
ゴトン!!
「うおおお!?」
「にゃぁっ!?」
[Exceed Charge]
「いや早いよファイズ、判断が早い!」
ファイズショットを構え、臨戦態勢に入るファイズ。その間約0.5秒。
しかし音の正体は、ボンプの彫像が倒れる音だった。
「……」
「……ファイズ? もう大丈夫じゃない?」
「まだだ……彫像が一人でに倒れるなんて有り得ねぇ……!」
「うーん……でもここってホロウに呑まれて随分経つんだろ? 経年劣化で壊れたってだけじゃねぇか?」
というよりこの男、怖がり過ぎである。
ビリーも猫又もそれなりに恐ろしいとは感じてはいたが、それ以上にタクミが怖がるので、あまり恐怖心を感じなくなっていた。
人間、自分より怖がる人が近くにいると不思議と冷静になるものだ。
「まぁ……とにかく、先を急ごっか。ここに居ちゃマズいかも」
一行はロビーの奥へと進んだ。
「…………」
某配管工弟ばりにビビりなタクミ