ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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ヴィクトリア家政

 

 

 

 

 

「やっぱり……カリンちゃんだ!」

 

「……あ、猫又様! それに調査員様……!」

 

 

カリンは猫又達を見るなり深くお辞儀をした。

 

 

「カリン、面識が?」

 

「はい、そうなんです! ホロウで迷子になっていたカリンを助けてくれた方々なんです!」

 

「なるほど……リナ、もう良いでしょう」

 

「はぁ〜い」

 

「うぉぉあ!!」

 

 

いつの間にかファイズたちの背後に、白髪の女性がいた。リナと呼ばれるその女性はまるで幽霊かのようにフワフワと浮いていた。

 

ビリーが言っていた『足元をすり抜けていく何か』、そしてアンビーが言っていた『時折感じる謎の視線』というのは彼女の事なのだろう。

 

 

「ふふ……鋭い子ですわ……一時はバレてしまうかと」

 

『まだまだ甘ェな!!』

 

『甘ェな、甘ェな!』

 

「……!?」

 

 

金髪ぱっつんボブのボンプと茶髪おさげのボンプもリナ同様、ゆらゆらと浮いていた。

 

 

「……顔見知りなのでしたら、手間が省けます」

 

 

狼のシリオンの執事は襟を正す。

 

 

「申し遅れました。私共は、『ヴィクトリア家政』です」

 

 

すると大きな尾ひれが特徴的なサメのシリオンの少女がこちらに歩いてくる。

 

 

「エレン?」

 

「……」

 

 

少女、エレンはファイズの所まで歩いて来たあと、こう言った。

 

 

「……えっと、こっちからぶん投げといてアレだけど……それ、返してくんない? あたしのだからさ」

 

「え?あ、ああ」

 

「ん」

 

 

ファイズは大狹をエレンに返した。

 

 

「ヴィクトリア家政……聞いた事のない名前ね」

 

「……あん時カリンが言ってたことが本当なら、雑用からホロウ関連の業務まで、広い分野でビジネスを展開してる家事代行会社って事になる」

 

「ええ、ファイズ様のおっしゃる通りですわ。私達は新エリー都における、少数の富める方々にお仕えしております。故に、世間一般的には知られていないのです」

 

「むむ……あたしたちがビンボーだって言いたいの!? まあ、反論できないけど……!」

 

「皆様、どうか従業員の失言をお許しください。ヴィクトリア家政の執行責任者、フォン・ライカンが代わってお詫びを申し上げます」

 

 

狼執事、ライカンはなぜバレエツインズにいるのかを説明する。

 

 

「私共は本日、バレエツインズのオーナー様のご指示で設備のメンテナンスに参りました」

 

「バレエツインズの、オーナー? でも、このビルを建てたバレエ兄弟ってとっくに破産してるはずじゃ?」

 

「左様でございます。おっしゃる通り、このバレエツインズは長きに渡り抵当に入れられておりましたが──」

 

 

現在、とある機関がラマニアンホロウの活性低下に乗じ、近くの共生ホロウの鎮圧を計画している。

 

鎮圧が成功すればホロウの中にあるビルの価値が上がると踏んだ主人は、早速ビルを購入の手続きをし、バレエツインズのオーナーとなったのだった。

 

 

「……ホロウの中にある建物に投資するなんて……さっすが金持ち、発想が大胆……」

 

「ところで、皆様はどうしてこちらに? ここはご主人様の私有地ですから、協会のお仕事にいらしたわけでもないですよね?」

 

「ギクッ」

 

 

カリンからの問いにどもる猫又。ファイズはどうしようかと頭を搔く。

 

 

「……そのように警戒なさらずとも、ホロウでご活躍されている『非公式』の方々に、無礼を働くつもりは毛頭ございません。胸の内を明かしてくださるのなら、この場を訪ねてくださったお客様として、私共も可能な限り協力致します」

 

「……」

 

 

猫又達が調査員でない事は彼らは既にお見通しである。

 

そしてヴィクトリア家政の人間の中で、少なくともライカンはファイズのことを知っていた。

 

……もう調査員のフリをする意味はない気がするので、ファイズはカリンに本当のことを打ち明けることにした。

 

 

「あーその……カリン。実はな、俺達は別に調査員でもなんでもないんだ」

 

「ええっ!? そうだったんですか!?」

 

 

カリンは驚いた様子を見せるが、エレンやリナは動揺することは無かった。

 

やはり最初から気づいていたようだ。

 

 

「……うん、ファイズの言う通り、私達は調査員じゃないんだ。実は──」

 

 

プロキシはライカン達に自身の正体とその目的について話した。

 

 

「やはり……貴方様がかの伝説のプロキシ、パエトーンだったのですね……そしてここへ来られたのは、失踪されたご友人を探すため……と」

 

 

『パエトーン専属のエージェント』であるファイズがこの場にいた事から、一緒にいた彼女がパエトーンである事は大方予想していたようだった。

 

 

「早速お役に立ちたい所なのですが……当局に配布されたキャロットのデータが古く、私共もまだ棟内の状況を把握してきれておりません」

 

「……そうなん──」

 

「リン、リン? 聞こえるかい?」

 

 

ボンプからアキラの声が聞こえる。何か急用があるみたいだ。

 

 

「お兄ちゃん?」

 

「リン、急に割り込んですまない。実はニコの方で、少し面倒な事になってて……」

 

 

先程アキラに届いたニコの連絡によれば、今から向かう裁判の書類に、邪兎屋の四人で出廷すると書いてしまったらしい。

 

なのでアンビー達三人は至急ニコの元へ行く必要がある。

 

 

「てことは、俺らも飛行船に乗んなきゃいけないのか!? でもよ、そしたら店長の人探しはどうなっちまうんだ?」

 

「……申し訳ありません。聞き耳を立てておりました。不躾ながら提案をお許し頂きたいのですが──プロキシ様、私共と行動を共にされてはいかがでしょう」

 

「!」

 

「貴方様は人探しをしており、私共はホロウのデータが古いために難儀しております。ここは、互いに力を合わせましょう」

 

「……いいの? 私達みたいな部外者が、ご主人様のビルに入っちゃう事になるけど」

 

「勿論でございます。設備のメンテナンスを行うあいだ、ご主人様より全ての裁量をお預かりしておりますので」

 

「ありがとう、ライカンさん。とりあえず、アンビー達の見送りをしてくるね」

 

「ええ。用がお済み次第、共に建物の奥へと向かいましょう」

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

ホロウの出口にて。

 

 

「それじゃあ店長、行ってくるぜ!」

 

「うん、三人とも、気をつけてね!」

 

「……? おい猫又、なんで俺の手を掴んでんだ」

 

「え? タクミも一緒に行くんじゃないの?」

 

「行かねぇよ?」

 

「行きましょう」

 

「だから行かねぇって!」

 

 

こんなやり取りがあったとか、無かったとか。

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