ZZZ × 555   作:びぎなぁ

56 / 302
顔合わせ

 

 

 

 

 

「──ヴィクトリア家政かぁ〜」

 

 

ライカンから連絡を受け、リンとタクミは車でバレエツインズ前の地下広場へと向かっていた。

 

 

「……姉ちゃん。なんかテンション高ぇな」

 

 

助手席のタクミは何やらウキウキな様子のリンを不思議に思っていた。

 

 

「あ、分かる? 実は家を出る前にFairyにヴィクトリア家政について調べて貰ったんだよね。あそこのサービス料金ってさ、めちゃくちゃ高いらしいよ」

 

「まぁ金持ち御用達みたいだからなぁ……俺達には縁のない世界だろ」

 

「ま、普通はそう思うよね。でもさ、今回あの人達と一緒に行動するじゃん? それってつまり普段お金持ちのVIPサービスを味わえるかもしれないって事なんだよ? しかも無料で! ワクワクしてこない?」

 

「しな……くは、ないな。うん」

 

「でしょ〜?」

 

 

それに、ヴィクトリア家政と交友を深めていけば、例の件の情報収集にも進展ができるかもしれない。

 

そう話しているうちに、目的地へと着く。

 

車から降りるとすぐにライカンの姿が見えた。

 

 

「あ、ライカンさん!」

 

「! 貴方様は……もしやパエトーン様であらせられますでしょうか?」

 

「うん、そう!私はリン、それでこっちは弟のタクミ。ファイズだよ!」

 

「よろしく、ライカンさん」

 

「これはこれは……私共の方こそ、御二方にお会いできて光栄の至りでございます」

 

 

ライカンは深くお辞儀をする。

 

 

「御二方はヴィクトリア家政の協力者であり、お客様でもあります。快適で安全なホロウの旅をお過ごし頂くため、最善を尽くすことをお約束致しましょう」

 

「ありがとう」

 

「ら、ライカンさん!」

 

 

声がした方を振り返る。そこには先程会ったカリン、リナ、エレンの三人が来ていた。

 

 

「……ボス。その二人がプロキシ?」

 

「……エレン、失礼ですよ。こちらの方々は──」

 

 

ライカンはリンとタクミについて紹介をした。

 

 

「ふーん……アンタがファイズなんだ」

 

「含みのある『ふーん』だな」

 

「別に。もっとオッサンなのかと思ってた」

 

「こーらエレン? 失礼のないように、ですよ?」

 

「……はーい」

 

 

エレンを優しく諭したあと、リナは両手で長いスカートの両端を軽く持ち上げる、所謂カーテシーをこちらに披露した。

 

 

「リン様、タクミ様。お初にお目にかかりますわ。アレクサンドリナ・セバスチャンと申します。どうか気安くリナ、とお呼びくださいまし」

 

「カリン・ウィクスです!は、初めまして! お会いできてとても嬉しいです」

 

「ああ、俺も会えて嬉しいけど……カリンは別に初めましてって訳じゃねぇぞ。前に自己紹介したろ?」

 

「あ、そ……そうでしたね! うっかりしてました……」

 

 

その時、リンのスマホから着信音が鳴る。

 

 

「あ、ごめんライカンさん。ちょっと良いかな?」

 

「勿論でございます。私共の事はお気になさらず」

 

「ありがとう」

 

 

リンは電話に出る。アキラからだった。

 

 

『リン、ヴィクトリア家政の人達とはもう会えたかい?』

 

「うん。今お話してたとこ」

 

『おっと、邪魔しちゃったかな? ごめんね』

 

「ううん、大丈夫。それよりどうかした?」

 

『H.D.Dの調整が終わったと伝えたかったんだ。早く帰って、準備ができたらホロウへ入ってレインを探そう』

 

「うん、分かった。それじゃまたね」

 

 

リンはそう言って電話を切った。

 

 

「ライカンさん、お兄ちゃんがもう準備できたって。いつでもホロウに入れるよ!」

 

「左様でごさいますか。そうと決まれば早速私共も準備に取り掛かるといたしましょう。リナ、イアス様は……」

 

「はい。こちらに」

 

「ンナ、ンナナ!」

 

 

イアスはリナに抱きかかえられている。

 

バレエツインズに入った後、イアスはリナから疲労回復のために深層回路へのマッサージを受けていた。

 

心なしかホロウを出た後の時よりも元気になっているようだった。

 

 

「それでは準備が出来次第、私共と合流しましょう。バレエツインズのホロウの入口でお待ちしております」

 

 

リンとライカンのやり取りを遠巻きで眺めていると、エレンが声をかけてきた。

 

 

「…………ね、タクミ」

 

「どうした?」

 

「なんか飴とか、持ってない?」

 

 

そう聞くエレンの瞼は今にも閉じかけていた。

 

 

「……? 悪いけど、持ってないな」

 

「だよね……────っ、もう無理……限界」

 

「は?──ちょ、エレン!?」

 

 

エレンは突然、タクミにもたれ掛かるように倒れてしまった。

 

 

「た、タクミ様! どうされましたか!?」

 

 

タクミの声を聞いたカリンが駆けつけてきた。

 

 

「大変だカリン、エレンが気絶しちまった! 」

 

「あ……そ、それなら心配はありませんよ」

 

「え? どういう事だ?」

 

「その、エレンさんは少し特殊な体質で……激しい運動をするとエネルギー切れでしばらく眠ってしまうんです」

 

「……寝てるのか、これ」

 

「は、はい。怪我をしたわけじゃないので大丈夫ですよ」

 

 

激しい運動をするとエネルギー切れで眠ってしまう……アクセルフォームを使用した後のタクミと似ている。

 

タクミの場合は寝ると言うより気絶する、と言った方が正しいのだが。

 

 

「……ちなみにいつ起きるんだ? いつまでも抱えたままってのはあれだな……かと言ってベンチで寝かすのも……」

 

「そ、それならカリンがお持ちしますね……!」

 

「ああ、頼ん──いってぇ!?

 

「ちょ、エレンさん!? 噛んでます! 手を噛んじゃってますから!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。