育成が適当すぎるせいで激変7のSクリアで毎回苦労するぜ!
しばらくホロウを進んだ後。アンビーは異変に気づく。
「うっ……この辺りの空気、やけに淀んでいるみたい」
「ああ……俺の視覚センサーの解像度も若干下がっちまってるぜ……」
「つまりあたし達、目的地に着いたのね!」
「……」
「……?」
先程から何の反応も示さないプロキシにファイズは違和感を抱いた。
「ね!そうよね、プロキシ?」
「……え?あぁ、うんうん、その通りだよ」
「……パエトーン、さては聞いてなかったわね!?ホロウに入った時からぼーっとしてるけど……お得意先に向かって、よくそんな態度が取れるわね!」
「……」
「ちょっと!聞いてるの!?」
「待て、ニコ」
ボンプに詰め寄るニコを止める。そしてボンプの目の前で手をかざしたり振ったりする。
やはり何の反応もない。
「……何か様子が変だ」
「変?一体どうしたの?」
「分からん。さっきは接続が不安定って言ってたし、もしかしたらホロウの活性がH.D.Dの信号に支障をきたしてるのかもしれねぇ」
「ええっ、マジかよ!それじゃあどうすりゃいいんだ!?」
「また再接続されるのを待つしかねーな。今のままじゃ探索は──」
すると突然、ボンプが歩き始めた。
「プロキシ先生。もう平気なの?」
「……」
アンビーの問いにも反応を示さない。
「あー……とりあえずボンプに着いてけば大丈夫そうか?」
「まだ何か引っかかるとこはあるけど、今の所はそうする他ないな」
四人は再びホロウを進んだ。
「…………」
───────────────────────
「っ!邪魔しないで!」
「後ろからも敵だ!」
「側面からも……!」
エーテリアスの集団に、応戦する四人。
しかし不自然な程に敵が多く、一同は若干苦戦を強いられていた。
「ハァッ!──あーくそ、キリがねぇ!」
倒しても倒しても再び現れるエーテリアス。
痺れを切らしたファイズは、バックルからファイズフォンを取り出し、コードを入力した。
[1・0・3][Single Mode]
飛びかかってくるエーテリアスを片足で止め、そのまま蹴り飛ばす。そしてファイズフォンをフォンブラスターに変形させた。
精密射撃に優れるフォンブラスターのシングルモード。ファイズは銃撃でエーテリアスの弱点を的確に撃ち抜いていく。
そして先程よりも少し大きなエーテリアスも出現。
「グルルルァァァア!!」
「……」
ファイズは再びコードを入力していく。
[1・0・6][Burst Mode]
そしてフォンブラスターを構え、そのままエーテリアスへ接近。掴みかかって膝蹴りをかまし、怯ませる。
その隙にエーテリアスの土手っ腹へバースト射撃をお見舞いした。
「──ねえ!ホントにこの道で大丈夫なの!?」
「……」
ボンプは黙って歩き続ける。周りのエーテリアスにすらも、何の反応も示さない。
「店長、どうしたんだ?ずっと黙って歩くばっかで、戦闘を回避するつもりもなさそうだけどよ」
「──プロキシ?」
「……怒ってる?ニコが着手金を支払う時に値切ったりしたから?」
「えぇ?そうなのか!?」
「そんなわけないでしょ!」
ボンプは一言も喋らずにひたすら歩き続ける。その間にもエーテリアスは次々と現れる。
「……おかしい、ホロウに入った時から全然ガイドしてるようには見えない……ねぇファイズ、前にもこんな事ってあった?」
「いや、こんな事は今までなかった……さっきの接続不良から、どうも様子がおかしい」
ファイズは最後のエーテリアスを倒し、ボンプの前でしゃがむ。
「おいプロキシ、さっきから一体どうしたんだ?」
「……」
依然ボンプからの反応はない。ボンプはただこちらを見つめている。
すると、ボンプは再び歩き出した。
「あ、ちょっと!そっち行かないで!」
ニコの制止も聞き入れず、ただひたすら歩いていく。
その間もエーテリアスは次々と襲いかかってくる。
「ああもう!奴らを食い止めて!」
今の状態がどうであれ、エーテリアスによってボンプが損傷するのはマズい。
ひとまずボンプの安全を守るため、四人は再びエーテリアスの群れと交戦するのだった。
──────────────────────
しばらくした後。
いつまでもエーテリアスの相手をしていてはキリがないので、四人はひとまず物陰へと隠れ、身を潜めていた。
「……エーテリアスの群れはまだそこにいる」
「家賃を取り立てにくる大家さんみてぇだな」
エーテリアス達にはまだ見つかっていない。
このホロウに来て随分と時間が経っている。
ビリーはタイマーを取り出した。
「時間だ……これで四回『ホロウ内安全活動推奨時間』が過ぎたぞ」
「プロキシ、早く正気に戻らないと、永遠に借金を回収できなくなるわよ……!」
「っ!隠れて!」
アンビーが声を上げた。
「な、何だ?また化け物が来たのか?」
「……エーテリアスじゃない。ホロウ調査チームよ。この前にいる」
そこにはホロウ調査員達がホロウの調査に来ていた。
「なんだよ、調査員か──待て、調査員!?」
ビリーは嬉しそうな様子でニコの元へ向かう。
「助かったぜニコの親分!調査協会の連中なら、キャロットを持ってるはずだ!助けを求めれば、奴らと一緒にホロウから出られるぞ!」
「何バカなこと言ってんの、あれって治安局の仲間でしょ?あたし達はホロウレイダーなのよ。ここから出られても最後には逮捕されちゃうわ」
「俺達だけじゃそうかもしれねぇが、こいつも一緒なら……」
そう言ってビリーはボンプを指さした。
「覚えてるか?治安局の政策で、プロキシを突き出せば手柄として減刑して貰えるって」
「ビリー」
「今なら間に合うかもしれねぇ。調査員が通り過ぎちまわないうちに──」
「ビリー」
「──なんだよ、アンビー!さっき……か……ら……」
ファイズの方を見る。ファイズは、じっとビリーの事を見つめていた。
「…………」
仮面からはその表情を読み取れないが、少なくとも笑っていないことは確かだった。
慌ててビリーは弁明する。
「……あ、その、えっとだな!これはあくまで最終手段ってやつで、ハナから店長の事を突き出そうってわけじゃ──」
「ビリー」
「!!」
「俺は別に怒ってるわけじゃねぇよ。プロキシの身柄と自分たちの安全を引き換えにするか。それとも引き続きここを彷徨いながらボンプが直るのを待つか……ホロウレイダーにとっては、前者を選ぶのが合理的だろうよ」
ファイズは続ける。
「俺に選択を強いる権利は無い。ホロウレイダーであるお前らにプロキシを庇う義務はないし、庇わなかったからと言ってお前らの事を恨めしく思うつもりもない」
「ファイズ……」
「ニコ。お前はどうする?どっちを選んでも、お前を責めたりはしない」
「……仮にプロキシを突き出したとして、あんたはこれからどうするつもりなの?」
「……まあ少なくとも、もうファイズには変身しなくなるかもな。変身する意味がないから」
「……」
ニコはしばらく考えた後、口を開いた。
「──ここは、長く留まっていい場所じゃないわ……行きましょ」
そう言うとニコは持っていたボンプを下ろし、歩いて行ってしまった。
他の三人も後に続いた。
「……ねぇ、ファイズ」
「あん?」
「もし貴方ならどっちを選んでいたの?」
「……俺はボンプが直るまで待つよ。二人の意思がどうであれ、いつまでもな」
「……」
仮面の奥の表情をアンビーは読み取ることが出来なかった。