「ぐわあッ!?」
バレエツインズ屋内。
反乱軍からレインを取り戻すため、プロキシ一行は軍の兵士たちと戦闘を繰り広げていた。
少数ながら、圧倒的な戦力を前に撤退を余儀なくされる兵士たち。
「しまった、デバイスが!」
逃走中、兵士の一人がアタッシュケースの様なものを落とした。
構わず兵士たちは逃げようとする。しかし──
「お二人とも……そんなに急いでどちらへ行かれるのですか?」
『ブッ倒れろ!!』
『倒れろ! 倒れろ!』
「ひ……ひぃっ……!!」
逃走虚しく、この場にいた兵士達は全て倒されてしまった。
「ライカンさん。お掃除は終わりましたが、レイン様もファイズ様も見つかりませんでした……」
「……どうやら、ただの雑兵だったようです。人質がいるとしたら、隊長の所でしょう」
プロキシは兵士が落としたアタッシュケースに近づく。
「……これ、なんだろ。何かの送信機かな?」
「ご名答でございます。そちらはG03型多周波数信号送信機──軍用の、とても高出力なものでございます」
特定のマルチメディア機器と一緒に使えば、強固なセキュリティシステムであろうと突破する事ができる代物なのだそう。
「なるほど……じゃあ反乱軍がレインを誘拐したのは、ハッキングが出来る人間を狙ったからなんだね」
「……ね、こんなのあったけど」
エレンは写真がクリップでとめられたファイルをライカンに手渡した。
「これって……司法府の専用飛行船?」
ファイルの中には飛行船が飛ぶルートと時間が示されたスケジュール、総合制御システムハードウェアの構成図が描かれたものまであった。
「なんでこれがこんな所に……」
「マスター、ビリーから着信です。繋ぎます──」
「……ビリー?もしもし?」
『ててて、店長か!?』
電話を掛けてきたビリーは何やら慌てている様子だった。
『まずいぜ……飛行船が大変な事になってる……!』
「? ビリー落ち着いて、飛行船に何があったの?」
『ああ、実は──』
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「──飛行船がバレエツインズのホロウに向かってるだと……?」
「うん」
バレエツインズのビルの屋上へと向かいながら、ファイズはレインから今回の件に関する詳しい事情を聞いた。
レインは誘拐した反乱軍のリーダーの指示により、ニコ達が乗った司法府の飛行船の航路設定を改ざん。
さらに、信号を偽造する事で外部からはあたかも飛行船が正常に飛んでいるかのようにカモフラージュされているのだそうだ。
「……それならさっきお前が言ってた、屋上にある防御装置ってのを取り除けば飛行船の制御は取り戻せるんだな?」
「……制御自体は取り戻せる。でも……」
「でも?」
「反乱軍のリーダーが言ってたの。万全を期すために、飛行船の乗客を操縦士含めて全員眠らせたって。仮に制御を取り戻せたとしても、飛行船を操縦できる人がいない……!」
「……!」
飛行船を救うには制御を取り戻した後、
飛び乗れるタイミングがあるとしたら、飛行船がホロウに激突する直前になるだろう。
ファイズに変身している今なら、飛行船に飛び乗る事自体はできる。
しかし、当然飛行船の操縦はできない。ただ──
「……アイツなら……」
「ファイズ?」
「レイン、ひとまずはプロキシと合流しないと話にならない。恐らくプロキシ達もお前を探しに屋上に向かってるはずだ。先を急ぐぞ」
「う、うん」
幸いにも、ここに来るまでに反乱軍の兵士とは出会っていない。
ファイズはエーテリアスを蹴散らしながら、キャロットを頼りに屋上へと向かおうとした。
その時──
「な、なに……!?」
「……これは……」
突如、どこからかクラシック音楽の曲が聞こえ始める。ファイズにとって、それは聞き覚えのあるものだった。
「……あん時音楽プレーヤーから流れてたやつだ」
という事は、アトリウムでファイズを襲ったエーテリアスが来るに違いない。そう思ったファイズはレインを守るように構え、警戒態勢に入った。
そしてファイズの予想通り、そのエーテリアスは音楽と共に出現した。
しかしここで予想していなかったのが……そのエーテリアスが一体だけではなかったという事だ。
「おいおい、二体いるなんて聞いてねぇぞ……!!」
「……まさかあの噂、本当だったの……!?」
「……噂?」
バレエツインズの噂──この地で命を落とした姉妹が怨霊としてビルの中を彷徨っている、と。
レインの話はリナから聞いたそれと合致していた。
「──つまり、このエーテリアスは姉妹って事か……レイン、物陰に隠れてろ。俺が良いって言うまで絶対出るなよ!」
「わ……分かった!」
二体から逃れながら屋上へ向かうのは難しそうだ。
エーテリアス──マリオネット・ツインズはまるでこちらをダンスに誘うかのように、その手を差し出していた。
「踊んのは……苦手なんだけどな……!」