ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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お礼

 

 

 

 

 

 

『タクミ様、お身体の方は大丈夫でしょうか?』

 

「俺は大丈夫だライカンさん。怪我だってしてない」

 

 

Random Play二階、タクミの部屋。タクミはライカンと通話をしている最中だった。

 

時は数時間前を遡る。

 

プロキシをビリーがキャッチした後、大急ぎで飛行船の操縦席へ。

 

Fairyの指示のもと、飛行船を操縦した事で何とか衝突は回避。そのまま不時着した。

 

飛行船から麻酔で眠った乗客を救出するが……同乗していたパールマンがいち早く目覚め、ビリーが気付かないうちに飛行船に再び搭乗し、何処かへと行ってしまった。

 

そしてファイズの方だが……屋根から落下し地面に激突する寸前でライカンがキャッチし救出。

 

九死に一生を得る形となった。

 

その後ヴィクトリア家政によって家まで送り届けられ、現在に至る。

 

なお、飛行船を救出した事については感謝されたが……それはそれとして、話も聞かずに独断で行動した事については兄と姉から数十分ほど説教された。

 

 

「ライカンさんがいなけりゃ、いくらファイズに変身してたとしても無事じゃ済まなかっただろうな。借りができちまった」

 

『とんでもございません。貴方様が無事ならば何よりです。むしろ、借りが出来たと言うのはこちらの方でございます』

 

「え?」

 

『バレエツインズに来てからというもの、貴方様には幾度となく助けられました。本来ならば貴方様とプロキシ様をお助けするのが私共の役目だったのですが、こちらが不甲斐ないばかりに……』

 

 

電話越しにライカンが頭を下げているであろう雰囲気を感じ取ったタクミは慌ててフォローする。

 

 

「い……いやいや、そんな事ねーよ。ライカンさん達がいたおかげで結果的にレインも救出できたんだからよ。俺とプロキシだけじゃ多分無理だったはずだ」

 

『……お気遣い、痛み入ります』

 

 

少しの間無言の時間が流れる。いたたまれなくなったタクミは話題を変える。

 

 

「……そ、そう言えば、バレエツインズの例の怨霊の話は聞いたか?」

 

『双子のエーテリアスの事でしょうか? その話については、レイン様からかねがね伺っております』

 

「ああ。アトリウムで俺に襲いかかってきた奴いただろ? あれ、その双子の片割れだったんだ」

 

『なんと……タクミ様の姿を模したドッペルゲンガーと言い、バレエツインズについては引き続き調査を進めていく必要がありそうですね』

 

 

心霊現象については分かったが、それでもあのビルには謎が多い。

 

 

『タクミ様、先日は改めてありがとうございました。貴方様とプロキシ様のご協力の甲斐あって、私共はご主人様の名誉をお守りする事ができました』

 

「気にすんな。それに俺はライカンさん達と知り合えて良かったと思ってるよ」

 

『身に余るお言葉でございます。私共としても、貴方様という知己を得られ、光栄の至りでございます』

 

 

少しの間の会話の末、通話を終了した。そして先程のライカンの言葉が頭の中で反芻する。

 

 

(俺の……ドッペルゲンガーか……)

 

 

別にドッペルゲンガー自体がいる事は不思議では無い。ホロウを探せば他の人間のドッペルゲンガーにも会えるだろう。

 

問題はそのドッペルゲンガーが巻いていた金色のベルト。

 

 

(あれがドッペルゲンガーが作り出した幻とかじゃなく、実在するものだとしたら──)

 

「タクミ様♪」

 

「うぉぉああ!!!」

 

 

急に後ろから声が聞こえ、きゅうりを後ろに置かれた猫の様な跳躍を披露するタクミ。

 

 

「ふふ。そんなに驚かれなくても」

 

「り、リナさん!? なんでここに……?」

 

「バレエツインズの件で、まだタクミ様にお礼を言っていませんでしたもの。なのでこうしてここまで参った次第でございますわ」

 

「……わざわざ来てもらわなくても、DMとか電話とかでも良かったんだぞ」

 

「それでは私の気が収まりませんわ。ヴィクトリア家政としてだけでなく、私個人としても貴方様には直接お礼を言いたいのです。本当に、ありがとうございました」

 

『世話ンなったな!!』

 

『ありがと! ありがと!!』

 

 

頭を下げるリナと、それに続いてお礼を言うドリシアとアナステラ。

 

タクミは非常にむず痒い気分になる。

 

 

「り……リナさん、頭を上げてくれ。こっちの身が持たねぇ」

 

「あら、左様でございましたか?」

 

 

リナはくすくすと上品に笑う。何やらからかわれている気がするが、リナの感謝の気持ちはしっかりと伝わった。

 

 

「──あ、そうですわ! タクミ様、お菓子はお好きでしょうか?」

 

「え? まあ、好きだけど」

 

「よろしければ、お礼としてデザートを振る舞わせては頂けませんか? メニューは──そうですね、パンケーキなんていかがでしょう?」

 

「えっ良いの?」

 

「勿論でございます。腕によりをかけて、お作り致しますわ」

 

 

メイド長であるリナの作ったパンケーキ……さぞ美味しいのだろう。

 

タクミはありがたくお言葉に甘える事にした。

 

 

「そんじゃあ……近い内に頂こうかな」

 

「ふふっ。楽しみにしていらして下さい」

 

 

『それではお邪魔いたしました』と言い、リナとボンプ二匹は去っていった。

 

 

「……メイドが作るパンケーキかぁ──」

 

「タクミ!」

 

「うわぁああ!!!」

 

 

本日二度目の跳躍。声の主は猫又だった。

 

 

「びっくりしたぁ……猫ちゃんも顔負けの跳びっぷりだったぞ」

 

「び……びっくりしたはこっちの台詞だ……」

 

「相変わらず怖がりだなぁタクミは〜。そんな様子じゃあたしたちが飛行船に乗ってた時もビクビクしてたんじゃないの?」

 

「……あのな、別にそんな事ねぇっつーの。バレエツインズにいたのはエーテリアスだけで、幽霊とかはいなかったしな」

 

「ふ〜ん?」

 

 

ニヤニヤしながら見つめる猫又。タクミは気怠げに頭をかく。

 

 

「……つーかお前は何しに来たんだよ」

 

「あたし? ただ遊びに来ただけだぞ」

 

「そーかよ」

 

「……ねぇ、タクミ」

 

「あん?」

 

「飛行船のこと……ビリーから聞いた。その、助けてくれて、ありがと」

 

「……礼なら姉ちゃんに言えよな。俺は走っただけだ」

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