郊外へ
「あれ、タクミ? 何調べてるの?」
「姉ちゃんか」
リンが部屋に入ると、タクミはゲーム──ではなく、パソコンで調べ物をしていた。
「姉ちゃんはさ……このホロウレイダー知ってる?」
「え?」
タクミはパソコンの画面を見せる。そこに映っていた写真には、全身スーツの人間の姿があった。
リンは写真の姿にピンとは来なかったが……
「……このホロウレイダー、よくは知らないけど……なんか──」
「ファイズに似てる、か?」
「! うん、そう!」
黒いボディに明度の高い白の線。頭部にはオレンジ色の複眼。
そして何より目に付くのは──
「このホロウレイダーは、ベルトを装着してるって事だ」
「あ、ホントだ……!」
「外見は色々違うけど、比べてみたらコイツとファイズはかなりの共通点がある。バレエツインズで会った金色の奴も、ベルトを着けてたしな」
装着しているベルトを使用して、この姿に変身しているとすれば、ファイズと同類という事になる。
調べたところによると、奇妙な事にこのホロウレイダーは主に人命救助などをやっており、エーテル資源の違法採掘など、普通のホロウレイダーがするような事はやっていないという。
このような事をしているのに、何故ホロウ調査員ではなくホロウレイダーの道を選んだのかは定かではない。
さらに、そのホロウレイダーは名前を聞かれた際に──
「『デルタ』って名乗ってたらしい」
「デルタ……」
「……こいつに会えば、もしかしたらスマートブレインってのが何なのかが分かるかもしれない。まぁ、一週間ぐらい前に出没し始めたから、今どこにいるのかは全く分からないけどな」
タクミはノートパソコンの電源を消し、閉じる。
「……んで? 姉ちゃんはなんの用で来たんだ?」
「あ、そうそう! タクミ、ビリーと一緒に郊外に行かない?」
「……こう、がい?」
リンの唐突すぎる提案に、タクミは面食らう。
「あれ? 郊外知らない?」
「いや知ってる。知ってるけどさ……そんな『GOD FINGER行こうぜ』みたいなノリで行ける場所じゃねぇだろあそこは。そもそもなんで行く事になった」
「うん、実はね……郊外にいる走り屋の人達が、パールマンのについての情報を持ってるって言うの」
「……!」
「その人達は『カリュドーンの子』って言うんだけどね、パールマンの情報を提供する代わりに、直接会って協力の話し合いに応じて欲しいんだって」
「……それ行って大丈夫なやつなのか? なんか怪しくねぇか……?」
「それなら大丈夫だよ。聞くまで私も知らなかったんだけど、ビリーが昔郊外にいたらしくて、走り屋の人達とも知り合いなんだって」
「……なるほど、ビリーが」
ビリーのジャケットの後ろには何やら派手な絵が描かれていたが、あれも郊外にいた頃の名残なのだろうか。
「……分かった、行こう。いつ出発するんだ?」
「明日の朝だよ。寝坊しないようにね!」
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「やべぇ寝坊した!!」
朝、姉から『もう先に行ってるからね』というDMの内容を見て飛び起きたタクミ。
リンに抗議の電話をする。
「姉ちゃんなんで起こしてくんなかったんだよ!」
『何回も起こしたでしょ? それなのにアンタ、ぜーんぜん起きなかったんだもん』
「ぐ……」
『ハハハッ! まぁでも、俺達も出発したのはそんなに前じゃねぇ。先にブレイズウッドで待ってるぜ、タクミ!』
通話が終わるや否や、タクミは支度をしてオートバジンに乗り、出発した。
そして現在、郊外の道路を爆走中である。バイク用ナビを頼りに、目的地を目指す。
「ンナナー!(はやーい!)」
「しっかり掴まっとけよイアス」
……何故イアスが同乗しているのか。それはイアスが『自分も郊外に行きたい』と言い出したからである。故に同乗させている、というわけだ。
ガードレール越しには、調査が進んでいないのか、大きめのホロウがあちらこちらに点在していた。
新エリー都では見られないであろう、郊外の景色を楽しんでいると、アキラから電話がかかって来る。
タクミはインカムで通話をする。
「もしもし?」
『タクミ、無事か!?』
「? どうしたんだ」
『大変だ……今さっき、リンとビリーがホロウへ落ちた!』
「は!?」
思わずバイクを止める。
『今二人が落ちたホロウの位置情報を送る。悪いけど、そこの付近まで行ってくれないか?』
「わ、分かった」
タクミはオートバジンを走らせ、リンとビリーが落ちたというホロウの上までやって来た。
そこではガードレールが大きく破損していた。恐らく何かの拍子にガードレールを突き破り、二人はトラックごとホロウへ落ちてしまったのだろう。
『今、イアスと一緒にいるよね?』
「ああ、いるよ」
『よし。今から下のホロウへ突入するから、準備を頼む』
「分かった」
タクミは周りに誰も居ないことを確認し、ベルトを装着する。
[5・5・5][Standing by…]
「変身!」
[Complete]
タクミはファイズへ変身し、オートバジンに再び乗る。
同時にアキラもイアスへの感覚同期を完了させた。
「ファイズ、今からホロウへ突入するよ。準備は良いかい?」
「ああ、勿論だ──行くぜ!」
ファイズはイアスを抱え、バイクを走らせる。そして崖から飛び出し、そのまま真下にあるホロウへと落ちて行った。