ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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年末ですがいつも通り投稿していきます


ツール・ド・インフェルノ

 

 

 

 

 

 

郊外で知らぬ者はいない一大イベント──ツール・ド・インフェルノ。

 

二つの走り屋のチームがバイクでレースをし、ゴール地点にある『シンダーグロー・レイク』に先に『火打石』を投げ入れた方が勝ち、というルール。

 

しかしただのレースではない。旧油田エリアにある石油資源の安全を定期的に確保するという目的もある。

 

さらに、『ツール・ド・インフェルノ』に出場する事にはもう一つ重要な意味がある。

 

 

「──レースの勝者は、旧油田エリアにおける走り屋連盟の『覇者』たる地位に着けるんですの!」

 

「覇者?」

 

「そうだぜ! 今の覇者陣営は『トライアンフ』っていうチームだ。そのチームに勝って『覇者』になりゃあ、走り屋連盟でも最強と認められるんだ!」

 

「……お二方、あのアホがあんな事を言ってますが、真に受けないでくださいまし。みんながみんな、『最強』の称号の為に、命懸けで覇者の地位を競ってるわけじゃなくってよ」

 

 

ルーシー曰く、覇者になれば走り屋連盟のトップとして輸送ルートの割り当てを決める権限が手に入るらしい。

 

そうなれば当然、それにより得られる利益も増やす事ができる。

 

そして今現在、その輸送ルートを割り当てているのは、現覇者であるトライアンフ。

 

しかしトライアンフは、いつも最悪の輸送ルートばかりをカリュドーンの子に割り当ててくるのだそう。

 

トライアンフのNo.2であるルシウス曰く、『現覇者は今は不在で、ルートはくじ引きで決めた』との事らしいが……

 

 

「どうも胡散臭さが拭いきれませんの。あいつら、裏で良からぬ事を企んでるに違いありませんわ!」

 

「んー……確かに覇者のおっさん、ここ半年ばかり面を拝んでねぇな。一体何の用事で忙しくしてんだか」

 

「……ルーシー、聞きたい事があるんだけどよ」

 

「なんですの」

 

「その『最悪なルート』って、どう言った意味で最悪なんだ?」

 

「……どう言ったも何も、言葉通りの意味ですわよ。他のルートと比べて、路面の状態が著しく悪かったり、後は──」

 

「──輸送のついでに、化粧道具やら菓子やらが買えなかったりな」

 

「シーザー!!」

 

 

タクミの質問に答えてたルーシーは顔を真っ赤にしてブチギレる。

 

 

「客人を前にそういう話はするなって、以前に合意しましたでしょう!?」

 

「誰でも知ってる事だ、合意のうちに入んねーだろ。つーか、お前こそさっきからオレ様をアホ呼ばわりしやがって……オレ様のメンツもズタズタなんだが?」

 

「開口一番、私の計画をぶち壊しておいて……どの口がほざいてやがりますの?」

 

「はん、よく言うぜ。お前、伝説のプロキシに会えたのが誰のおかげか忘れてねぇか? 昨日は興奮して眠れなかった癖によ」

 

「ちょ……っ!! も、もうブチ切れましてよシーザー!! 決闘を申し込みますわ! 貴方が大将でいられるのも今日限りですわぁぁあ!!」

 

「いいぜ、かかって来いよ! ライト、お前こっち来て立ち会い人やれ!」

 

「……あいよ」

 

 

そして止める間もなく、シーザーとルーシーは説明そっちのけでタイマンでの決闘を始めてしまった。

 

 

「……これ俺のせい、か?」

 

「だいじょぶだぜぃタクミ〜。日に二、三回は起きることだからな、気にするこたないぜぃ」

 

「そーそー、ホントなんでも無いから! あ、でも立会い人にされちゃうと、下手したら二人から詰められる事になっちゃうから気をつけてね!」

 

 

大型トレーラー、『アイアンタスク』の運転手パイパーと、バーテンダーのツインテ少女バーニスがそんな事を言う。

 

どうやら『決闘』というのは郊外では日常茶飯事らしい。

 

 

「とにかく良かったよ〜。ツール・ド・インフェルノに協力してくれる気になって。これから、皆で一緒に頑張ろうぜぃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

夜になった頃。

 

リンとタクミはブレイズウッドの野営地に泊まる事となった。

 

夕食も食べたあと、暇を持て余していたタクミは外にあるタイヤのブランコに座りながらぼーっとしていた。

 

すると、後ろから足音が聞こえる。

 

 

「なんだ、まだ寝てなかったのか」

 

 

先程、シーザーとルーシーの決闘の立ち会い人をしたライトだった。

 

 

「子供なら今は寝る時間だろ?」

 

「……確かに夜更かしはしない主義だけどさ、この時間はさすがに起きてるっての」

 

「そいつはすまんな。気を悪くしたか?」

 

「別に」

 

 

そこから少しの間無言の時間が続く。夜の静寂の中、タイヤのブランコを漕ぐ音だけが響く。

 

 

「……タクミ。一つ聞きたい事があるんだが」

 

「なんだよ」

 

「お前はそのファイズとやらの力を、人助けの為に使ってるらしいな」

 

「んー、そうだな。でも、それは姉ちゃん……パエトーンがそういう依頼を受けるから、結果的に人を助ける事に繋がってるってだけだな」

 

「そうか……なあ、もう一つ聞いていいか?」

 

「?」

 

「……もしだ、もしアンタの身内、もしくは仲間が危険なホロウに入る事になったとする。しかし仲間はアンタを気遣って協力を拒んだ。その時は……大人しく仲間の帰りを待つか? それともついて行くか?」

 

「ついて行く」

 

「即答か」

 

「だって仲間が危険な目にあう可能性が1%でもあったら不安になるだろ? 大人しくするよりかは一緒に行って仲間と戦う」

 

「ファイズの力がなくても、か?」

 

「勿論だ」

 

「……少しは迷わないのか?」

 

「迷ってるうちに誰かが死ぬかもしれないだろ? それなら俺は『戦う』って選択肢を取る。迷う事はしない」

 

「…………」

 

「……んで、なんでこんな質問したんだよ」

 

「……別に。なんとなく聞いてみただけさ」

 

 

ライトはタクミの頭をポンと撫でたあと、その場を後にした。

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