ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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伝説

 

 

 

 

 

 

翌朝。起床したリンとタクミはビリーとシーザーの元へ来ていた。

 

 

「おはよう二人とも! ちゃんと休めたか?」

 

「うん。おかげさまでね」

 

「ちょうど良いとこに来たな。実は二人に伝えときたい事があったんだ」

 

「伝えたいこと?」

 

 

ビリーの説明によれば、アキラは現在H.D.Dデバイスの一部を社用車に積み、移動式のプロキシ工房にするための準備を進めているらしい。

 

新エリー都からだとやり取りが不便になり、また郊外には通信設備が少ないため長距離のデータ通信に遅延が起きてしまうからなのだそうだ。

 

これで格段に仕事がしやすくなるはず、とのこと。

 

 

「電気とネットについてはこっちに任せな。例え郊外でも、オマエらを『水を蹴った魚』みたいにしてやるからな!」

 

「……アネゴ、それを言うなら『水を得た魚』だぜ」

 

「あれ?そうだったっけか? まあ、細けーことは良いじゃねぇか!」

 

 

会話の途中で、タクミはある事を思い出す。

 

 

「そういやシーザー、聞きたい事があるんだけどさ」

 

「ん? なんだ?」

 

「シーザーは、『デルタ』ってホロウレイダーの事は知ってるか?」

 

「デルタ……?」

 

 

シーザーはビリーを見るが、ビリーは知らないようで首を横に振る。

 

 

「わりぃが知らねぇな。知り合いか?」

 

「知り合いじゃない。ただ、ファイズと色々類似点があるんだ。ソイツがどこにいるのか分からなくてな……シーザーなら何か知ってるかもって思って」

 

「んー、思い当たる節がねぇな……あ、カーサなら何か知ってるかもな」

 

「カーサ?」

 

「この町、ブレイズウッドの町長だ。そうだ、挨拶がてらそのデルタって奴について聞いてみるのはどうだ? 案内してやるぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人はシーザーの案内の元、ブレイズウッドの町長であるカーサの元へ来た。

 

 

「おやシーザー、街から来たプロキシってのはこの人の事かい?」

 

「貴方がカーサさんですか?」

 

「その通りだよ、あたしはこの町の町長をやってる。この町は昔、カリュドーンの子の世話になってね。貴方たちも必要なものがあるなら、あたしに言っとくれ」

 

 

リンはカーサが手に持っている何かに目がつく。これは……工芸品か何かだろうか。

 

 

「……カーサさんが手に持ってるものって何ですか?」

 

「ああ、これかい? これは『サン・フリント』ってやつさ。ツール・ド・インフェルノの時期が近付くと、旧油田エリアのほとんどの家がこれを掲げるのさ」

 

 

カーサは手に持っていたサン・フリントをリンとタクミに見せる。

 

その工芸品には何かの絵が描かれていた。

 

 

「爺さん連中曰く、この絵は太陽と炎の神の顔面らしいんだ。神は英雄を導いて燃える湖に火をつけさせ、ホロウの中から無事生還できるように加護を与えるんだと」

 

「……そうなのか。てっきり逆さまの人間の絵かと」

 

「お、鋭いな。タクミの言う通り、この絵は逆さまの人間説もあって……その人間ってのは走り屋連盟の初代覇者なんだそうだ」

 

「もしかしてこのサン・フリントにまつわる逸話、みたいなのがあったり?」

 

「その通りだ。実はな、コイツのモチーフになってんのは最初のツール・ド・インフェルノと、その初代覇者にまつわる伝説だ」

 

 

ツール・ド・インフェルノのゴール地点である『シンダーグロー・レイク』。

 

今でこそ燃え盛っている炎の湖だが……昔、とある要因によりその火が消えかけた事があった。

 

どうにかしようと、若い走り屋が仲間と共に湖があるホロウへと入った。

 

そしてシンダーグロー・レイクへ辿り着いた時、湖湖の火は今にも消えそうで、一刻の猶予も許されない状況だった。

 

それを見た走り屋はバイクに乗ったまま、湖にある噴出口へと飛び込み──持っていた特製の火打石を使って、再び湖に炎を蘇らせたのだ。

 

 

しかし、この伝説が伝説と謳われている理由はその後の話にある。

 

炎の噴出口に飛び込み、走り屋の仲間は誰もが彼は焼け死んだものだと考えていた。

 

しかしその翌日、なんと死んだはずの走り屋がホロウから出て帰還した。

 

それを見た人々は、『若き走り屋の勇気に心動かされた太陽と炎の神が彼を蘇らせたのだ』と信じてやまなかったらしい。

 

 

「──この出来事を元に、火の中へと真っ逆さまに落ちていくイメージ、そして神様のお顔を住民たちはサン・フリントに編み込んだのさ」

 

 

その後生還した走り屋は、旧油田エリアの様々な走り屋を集め、走り屋連盟を創った。

 

 

「それからはツール・ド・インフェルノを数年ごとに開催するってルールで定めたのさ。シンダーグロー・レイクに、二度と同じ危機が訪れないようにね」

 

「良いお話だね! この土地に広く伝わってるのも納得かも!」

 

「……そういやタクミ、カーサに聞きたい事があるんだろ?」

 

「あ……そうだった」

 

 

初代覇者の伝説に聞き入っていたせいで、完全に忘れていた。

 

タクミはデルタについて説明をする。

 

 

「デルタ、か……そういえば、誰かがそのデルタって人とホロウで会ったって噂を聞いたよ。もしかしたら、郊外にいるかもしれないね」

 

「分かった……ありがとうカーサさん」

 

「気にしないでおくれ。これからはお互い助け合っていこうじゃないか」

 

 

旧油田エリアに伝わる初代覇者にまつわる逸話とホロウレイダー『デルタ』についての情報。

 

悪くない収穫だった。

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