「プロキシちゃんもたっくんも遅かったじゃん!町長さんとこへ挨拶に行くだけって言ってたのに」
「カーサさんから色々聞いてたん──たっくん?」
いきなりバーニスにたっくんと呼ばれたタクミは思わず面食らう。
「うん、たっくん! こっちの方が呼びやすいと思って! もしかして、ダメだった?」
「だ……ダメじゃねぇけどさ」
「『たっくん』って呼び方、懐かしいなぁ。小さい頃はタクミの事そう呼んでたっけ」
「へぇ〜そうなんだぁ!」
「小さい頃のタクミ、すごく怖がり屋さんだったんだよねぇ。昔はトイレの水が流れる音が怖いって──」
「姉ちゃんストップ!!!」
何故か自身の(恥ずべき)過去が公になろうとしていたので、急いで黙らせる。
リンを連れ出し、小声で話す。ここで修復不可能な精神的ダメージを負う訳にはいかない。
「姉ちゃんどさくさに紛れて何話そうとしてたんだよ!」
「え〜? タクミってそういうの気にしないと思ってたのに」
「あのな、俺にも体裁ってもんがあんだよ! あんなん話されたら嫌に決まってんだろ!」
「コホン……お二人共、そろそろよろしくて?」
会話の外にいたルーシーが二人に呼びかける。
「あ、ごめんね。それでさっきの話なんだけど」
「おい」
「その話はしなくてもいいですわ。まずは今日やる事について話をしなければなりませんの」
「あれ? ルーシーちゃん聞きたくないの?」
「聞かなくていいし、言わなくてもいいからな」
「……気にならないと言えば嘘になりますけど、このままじゃいつまでも話が進みませんわ。その話は後にして、さっさと本題に入りますわよ」
「……後にしなくていいっての」
なんとか(タクミにとっての)危機を乗り越えたところで、ルーシーが今日やる事について説明する。
「今朝もう一人のパエトーンと話したんですけれど……郊外のホロウデータがまだ足りないそうですわね? 近いうちに、私たちとホロウへデータ収集に参りましょう」
「あ! 実は私も手伝って欲しくて。レースで使う車両をカスタムしなきゃいけないんだけど、欲しいパーツがあるんだよねぇ」
そんな話をしていると、丁度アキラがやって来た。
「リン、お待たせ」
「お兄ちゃん、お疲れ様。早速H.D.Dを調整しに行こっか!」
「その必要はないよ。さっき、ここの電圧と回線速度で試運転してみたけれど、H.D.Dはちゃんと動いた」
「おお! それなら早速ホロウに行けるね!」
ひとまず、ホロウにデータ収集に行こうという事でリン達は準備を進めることにした。
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出発の準備が整い、シーザー達はそれぞれが愛用しているバイクへ乗った。
リンもボンプへの感覚同期を完了させている。
[5・5・5][Standing by…]
「変身!」
[Complete]
タクミの方もベルトを装着し、ファイズへと変身する。
しかし、ルーシーはファイズが持っているというバイクが無いことに疑問を抱いた。
「……? 貴方、バイクを持っているとお聞きしましたけど、どこにあるんですの?」
「ちゃんとあるぞ」
ファイズはフォンを開き、コードを入力する。
[5・8・2・1][Auto Vajin, Come Closer]
コードを入力するや否や、どこからかバイクが独りでに走って来て、ファイズの近くで停止した。
ファイズはボンプを持ってバイクに乗る。
「……自律走行が出来るなんて随分とハイテクなバイクですのね」
「確かに。改造したのか?」
「……うん、まぁそんなとこだ」
ファイズも出発の準備を整え、一行はホロウへと向かった。
数十分後。
シーザー達はホロウに入った後、設置したデータスタンドに群がるエーテリアスを殲滅していた。
『スパークルカット』でエーテリアス達をまとめて薙ぎ払うファイズ。
エーテリアスを片付け終えたファイズはシーザー達の元へ向かう。
「よし、ここのデータ収集は終わったみたいだな──あれ? シーザー、どうした?」
「……いや、昨日のホロウでも見たけどよ、ファイズは強えなって」
次の設置地点へと向かいながら、シーザーはファイズに問いかける。
「そこまでの強さなら、誰かから因縁吹っかけられる……なんて事も少なくねぇんじゃねぇか?」
「……確かに、前にやけに自分の強さを誇示したがるギャングの親玉に喧嘩を売られた事があったな」
「へー、そん時はお前が勝ったのか?」
「いや……そもそもその喧嘩を買わなかった」
「え? そうなのか?」
「……あんまり詳しくは言えないけど、この力は人からもらったものだ。これは人に強さを示すものじゃなく、人を守るためのものだって言われたんだ」
ファイズの力はエーテリアスを一捻りで倒せるほど強力なものだ。
扱いを間違えば、簡単に人を死なせてしまう。この力を使って人を死なせるような真似だけはしてはいけない。
誰かが言った、『大いなる力には大いなる責任が伴う』という言葉。
タクミはファイズに変身している間はずっと、この言葉を胸に戦ってきた。
「──ま、そんなとこだ。自分から人間相手には喧嘩は売らないし、仮に戦うことになったとしても武器は絶対に使わない」
「……そうか、お前にはお前なりの信念ってやつがあんだな」
「シーザー、ファイズ! 何をボサっとしてますの! とっとと目的地に行きますわよ!」
「おっと、悪い!」
話しこんでいたせいか、いつの間にかルーシー達との距離が離れていた。
ホロウではぐれないよう、急いで後を追う二人だった。